2009年11月 7日 (土)

「平均的美人」の話

 平均顔、というのをご存知でしょうか。
 眼が上がってたり、口が大きかったり、眉毛が太かったり。人の顔はそれぞれに個性的です。そういった人の顔写真をたくさん集め、コンピュータで目の位置や大きさ、鼻の形などを足しあわせ、平均化した顔をつくります。例えば、上がり目の人と下がり目の人の写真があれば、足して割って普通の目に。大口は小口と足して割って、適度な口に。こうして数々の顔を平均した、一つの顔が完成します。これが平均顔です。
 そしてこの平均顔、たいていの場合は美男美女です。

 美男美女の条件は、顔の部品や位置のバランスが取れていること。顔が極端に下膨れだとか、鼻がむやみに大きいとかいうことはありません。特徴の無いのが、きれいな顔だと言い換えても良いでしょう(顔のパーツが非常に微妙なバランスをとっている「個性的な美人」というのもないことはありませんが)。
 多くの人の顔を平均して出来上がった平均顔は、顔の部品も位置もバランスが取れているはず。美男美女なのはあたりまえですね。

 話は変わって、だいぶ前にも書いたことがありますが、私は人の顔を憶えるのが苦手です。新学期にはクラス全員の顔を憶えるのに一ヶ月かかりました。今でも一回や二回会ったくらいの人では、まず憶えられません。その私がもっとも苦手とするのが、いわゆる美男美女です。
 先ほども書いたように、バランスが取れて、極端な特徴が無いのが美男美女。 何度見ても憶えられないのですね。

 八起堂に来てくださる患者さんでも、まだ顔と名前が一致していない方が何人かおられます。道でお会いしても気づかなかったり、お名前を尋ねなおしたりすることもあります。もし、そんな目に合われた場合には
「そうか、自分は美男(あるいは美女)なんだ」
 と、悪しからずご了承いただけると幸いなのですが…。 

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2009年10月25日 (日)

アンチエイジングいろいろ

 先日は、若い気分でいることが老化を防ぐ、という話を書きました。
 仕事がら医療関係の記事には眼を通すようにしていますが、意識してみると、アンチエイジング(老化防止)の方法って、いろいろ出ています。

1.すでにわかっているアンチエイジング

科学的に見て確実なのは、
・適度な有酸素運動
・紫外線を避ける
・タバコを吸わない

 などでしょうか。ちなみに有酸素運動は代謝を良くして血行を改善、活性酸素の発生を減らす効果があります(強すぎる運動は逆効果)。

 紫外線は、細胞を破壊する作用がありますので、当たりすぎると老化を招きます。皮膚であればシワ、シミの原因になりますし、眼であれば、白内障の原因になります。帽子や日焼け止め、サングラスで防ぐのが一般的。

 タバコはいうまでもありませんね。各種有害物質による直接の細胞損傷のほか、血管が収縮して血行を悪くしてしまい、皮膚をはじめとする組織を傷めます。数量に比例して害は増えますので、できれば少なくしたいもの。
 面白いのは、軽いタバコであっても害はあまり減らないということ。むしろ、強いタバコの方が吸う本数が少なくなるだけ害が減る、という調査もあります。

2.まだよくわかっていない諸々の…

 その他、いろいろなアンチエイジングの方法で目に付いたのを拾ってみました。

・ビタミンCの大量摂取
 細胞を老化させる活性酸素を除去する働きがあるとか。アメリカなどでは一日に1000ミリグラム摂取せよ、とする科学者もいます。基本的には摂り過ぎの害はないとされていますが、1000ミリグラムは少し行き過ぎな気もします。そして、もちろんこの方法に反対している科学者もいます。
 活性酸素を除去するものとしては、他にハーブの一部、ワインや野菜のポリフェノールにも同様の効果があるとされています。

・カロリー制限
 サルやネズミでは、食べる量を減らすと寿命が延びるという現象が確認されているとか(人間では未確認)。
 ちなみに制限は20%程度。一日の摂取カロリーが2000キロカロリーの男性であれば、20%は400キロカロリーになります。ラーメン一杯、ハンバーガー一個くらい、食べる量を減らすわけです。本当の腹八分目、満腹禁止。
 それくらいなら我慢できるかも、と思うのですが、脳科学者の池谷裕二氏が試してみたところ「カロリーを減らしたまま長期間過ごすのは想像以上につらい」ということでした。それはそうかもしれません。わたしも満腹するまで食べるほうですから。

 ただ、このカロリー制限には良い副作用があります。先ほどの池谷氏の調査では、カロリーを減らすと脳が活性化するらしく、記憶力の向上が見られたとのこと。受験生なら割り切って我慢できるかもしれません。くれぐれもリバウンドにはご注意を。

・瞑想
 瞑想といってもいろいろありますが、大雑把に言って「頭をカラッポにする訓練」です。じっと座って、自分の呼吸を数えたり、一つの言葉を繰り返し唱えたりして「何も考えない」境地を目指します。

 この瞑想、精神的なストレスを減らしたり、神経症の治療にも使われていますが、瞑想を5年間続けた人は、実年齢よりも平均12歳若く見えたという調査があります。ストレスの害が減るせいなのか、感情が安定して眉間のシワが減るせいなのかはわかりません…。


 昔の日本では、年上扱いするほうが喜ばれる時代もあったとのこと。それが西洋化してしまったのは惜しいような気もします。いや「年寄りらしくおとなしくして」などと言われなくなったのは、やはり良いことでしょうね。

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2009年10月12日 (月)

TAM手技療法に関する質問⑥

・M先生の質問
 TAMで、顎関節の操作も教えていただけませんか? 私としては、「誰でもTAM」的に顎の皮膚に前後左右にテンションをかけながら、その状態で顎を自動運動で開閉するくらいしか思いつかないもので・・・。

あと、感覚の件でもう一点!組織の三種類の感覚(2009年6月5日「TAM手技療法に関する質問①」参照)ですが、あれは動きの小さい関節(仙腸関節とか手・足根骨とか)でも感じ取れるものですか?また軽い力でテンションをかけなければならない時でも感じ取れるものですか?


・八起堂の回答

 顎関節症ですか。これはなかなかに難しいですね。TAMの技術的には確かに先生のおっしゃるとおり、前後左右のテンションをかけながら、口の開閉(これは自動運動で)をしてもらうのが良いと思います。あと、下顎骨を横から押し込んで、自動運動をしてもらうという手もあります。
 ただ、私自身の臨床では、TAMまたはAKAで直接、顎関節症の治療をしても、症状の軽減を見られたのはせいぜい数日でした。長続きしないのですね。顎関節はよく言われるように、歯並びなどの影響を受けやすい関節です。周辺の組織が顎関節を歪ませているところを解消しないと、根本的な解決にはならないのではないかと思われます。
 
 歯並び以外では、首、肩の筋肉などが影響しているのではないかと考えています。私自身、無茶をして肩を壊してから顎関節の調子が悪くなり、二度ばかりアゴが外れたことがあります(八起堂通信でも書いたと思いますが、アゴはずれは本当に同情してもらえません。タクシー運転手から病院の受付、看護婦から医者にまで笑われましたもの)。
 
 ということで、歯並びを点検の上、首周りの不自然な緊張がないかを調べて治療されるのが良いかと思われます。あまりお役に立てず、申し訳ありません。

 組織の感覚ですが、小さい関節でも感じ取れるものです。軽く操作する場合でも感じます。というか、この手ごたえで力加減を見ますので、感じたほうが安全ですね。といっても、私自身も仙腸関節でこれがわかるようになったのはせいぜいこの一年くらいのところですけど。ということで、気長にやってみてください。 
 他に磨いたほうが良い感覚として「不自然に動かない部分を感じ取る感覚」が上げられます。例えば上腕骨が動くとき、途中で回転の軸が変化するとか、コッドマンリズム(腕を挙上するとき、上腕骨と肩甲骨は、2:1の割合で動く)が途中から変化する、背骨を押したとき、弓のように全体として曲がってゆくはずが、いびつに曲がるとか。こちらのほうは、手で感じるとともに、目で見てもわかるようになります。

 まずは、患部の状態を感じとるほうに集中してみてください。患部の「おかしさ」がわかってくると、「これを解消すればいいんだ!」という形で具体的な技術の試行錯誤がやりやすくなり、急速に技術が進むようになります。

 というところでいかがでしょうか。

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2009年10月 3日 (土)

転ばぬ先の…

 なぞなぞです。「いつも転んでばかりいる虫は?」

 昔は、今ほど転ぶことについてのニュースは聞きませんでした。それが社会の高齢化で、転倒が寝たきりの最大原因とされるに及んで、クローズアップされましたね。
 かく言う我が家でも昨年の暮れ、母が転倒して骨折しました。もっともこれはスポーツ中、他の選手との接触が原因なので、一般的な例からは外れますが(おかげさまで、最近はすっかり元気です)。

 転倒の原因にもいくつかありますが、最大の原因はつまづくことです。
 よくあるケースが、段差。街でも家でも、歩くところには段差はつきものです。歩道と車道の間にある段差や、建物の入り口の段差。家の中では、廊下と部屋の境目。大抵は数センチ程度のもので、一見つまづきそうには見えないのですが、多くの方がそこで転倒しています。
 
 原因は、目測の誤りです。段差のあるところでは、誰でも段差を越えられる高さに足を上げて通ります。ところが筋力の衰えや、運動不足による感覚の狂いで、正しい高さにまで足が上がらないことがあるのです。そうして越えたつもりの段差に足を引っ掛けて、転倒することになります。

 ここでも「使わないものは衰える」の原則は有効です。
 とはいえ「足を上げる」という動作は日常ではあまり行いません。せいぜい、階段を登るときくらい。ウォーキングも、心肺機能を鍛える意味ではいいのですが、あまり足を高く上げることはありません。時々は、膝を高く上げる足踏みなどするのも良いと思います。
 やってみるとわかりますが、足をしっかり上げると、かなりこたえます。雨でウォーキングができない日の、補助運動としてどうぞ。

 ちなみに、上記なぞなぞの答えは「テントウムシ」です。ちょっとつまらなかったので、もう一つ虫のなぞなぞを。
「オスとメス。虫の世界で立場が強いのはどちら?」








 立場が強いのは、メス。泣いている(鳴いている)のはオスばかりだから、とのこと。あしからず。

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2009年9月11日 (金)

古傷の痛みにお灸が効く

 肩こりに、腰痛に、お灸を使っている人は、意外と多いものです。せんねん灸などをはじめとして手軽なお灸も増えてきましたからね。

 ところでこのお灸、ケガや手術の古傷にも効果があるって、ご存知でしたか?

 手術やケガの跡、傷口は盛り上がった線になることが多いです。

 人間の皮膚は、構造の異なる何層もの重なりでできています。ところが、手術やケガではそのつながりが断たれ、無理に寄せられてくっついた形になります。皮膚はぶあつく、硬くなって、うまく動きません。

 皮膚は、骨や筋肉を包むもの。動きにあわせて伸びたり、縮んだり、動いたりするから、楽に運動できるのです。ところが傷口の部分では、伸びも動きも悪くなります。動くたびに、引きつれて痛むというわけですね。

 こうした傷口の痛みに対しては、マッサージするのも一つの手です。
 傷口部分をつまんで、引っ張ったり、つまみ上げたりするのです。あちこち動かしているうちに傷口の組織が整理されて、すこしずつ動くようになってきます。しかし、この方法、有効ではありますが、痛いのですよ。

 そんな方のために良いのが、お灸です。

 昔から言われていることなのですが、お灸には筋を伸ばす力があるというのです。科学的に言えば、熱刺激によって組織の再生力を増し、柔軟性を取り戻すのだといえるでしょうが、あまりはっきりとはしません。
 治療方法は、いたって簡単。痛む傷口をさすってみて、痛みの強いところ、皮膚の動きの悪いところにお灸をするだけです。

 お灸は、ご自宅でされる場合には「せんねん灸」などの簡易灸がいいでしょう。強さのランクは様々ありますが、大抵の場合は一番弱いもので足ります(せんねん灸では「竹生島」がこれにあたります)。

 なお、お灸をするときには熱さを我慢しないこと。あまり我慢しすぎると、水ぶくれなどができることがあります。「熱いなあ」と感じるようになったら、外してください。

 

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2009年8月28日 (金)

手首のかんたんマッサージ

 手首、不思議だと思いませんか? 曲げることはもちろん、すぼめる(親指と小指を近づける)こともできます。

 こんな器用なことが出来るのは、手首が細かな骨のあつまりで出来ているからです。Tenohone
 右の図は、手のひらを甲の側から見たものです(下の部分に、腕の骨がつながる)。

 手のひらの根元、わずか数センチ四方の中にある骨は、全部で八個。どれも、豆粒くらいの小さな骨です。この骨が、それぞれに動くことで、手首の柔軟な動きができるようになっているのです。

 肩こりや、腕の痛みで悩んでいる方を診ていると、この手首の骨がうまく動いていない方が見受けられます。
 手首の動きが悪くなると、普通に手首を動かすのに、いつも以上に力を込めて動かさなければなりません。手首を動かす筋肉は腕(肘と手首の間)にありますから、知らず知らずのうちに、この部分が張ってきます。このコリ、疲れは腕から肩、首にまで及びます。

 手首は、使いすぎると不調を起こしやすいものです。文字をたくさん書く方、楽器を演奏する方、パソコンのマウスで精密な作業(作図など)をする方はご注意ください。
 
・手首マッサージ
 手首の不調は、軽い間は自分で治せます。Tenomassa
 座布団や椅子のマットなど、柔らかいものの上に手を置き、もう一方の手で図の斜線部を押さえます。そのまま皮膚を引っ張り回すように、ぐるっと大きくマッサージしてください。次に、裏返して手のひらの部分も同じようにマッサージします。
 力はかなり強め。この動きで、手首周辺の組織が引っ張られ、ひいては細かい骨も引っ張られて、柔軟性を取り戻します。

 手が疲れたなあ、と思ったときにお試しください。

 ちなみに自分以外の人にやるときには、相手の手首を掌の間に挟むようにして。皮膚が荒れない程度に注意してください。

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2009年8月12日 (水)

TAM手技療法に関する質問⑤

M先生の質問
(前文略)

質問① 胸・腰椎の話が出ていますが、頚椎のTAM操作はどんなものでしょうか。また、胸鎖関節・肩鎖関節などのTAM操作も詳しく教えていただけると嬉しいです。

質問② ギックリ腰で寝起きがつらいような患者の場合、座位でも仙腸関節などのTAM操作はできますか?
 また、人工関節の場合はどうされてますか?

質問③ 池浦先生は鍼灸治療もされておられますが、TAMを鍼灸の理論の中で使うこともありますか?例えば、肩の前面が痛いとして、肺経の痛みだから母指にTAM操作をするとか、さらに飛躍して、肺経の陰陽交差を利用して胃経絡上の関節にTAM操作をするとか・・・。どうでしょうか?

質問④ 仙腸関節のTAM操作で、「骨盤を患者にとっての前屈、後屈となるように回転させ、仙腸関節に軸回旋を起こさせる」時ですが、これはもちろん、仙腸関節の可動範囲(つまり数ミリ単位)での、ほんのわずかな「前屈・後屈」という意味ですよね?患者の骨盤を、ガクンガクンと動かす訳ではないですよね?

 本当は細かい操作について、いろいろお聞きしたいこともあるんですが、そのへんはとにかく、臨床で回数をこなしてから改めておたずねいたします。

八起堂の返事
質問①
そうでした、頚椎の話を書いてませんね。実は頚椎には「誰でもできるTAM」の技法があって、いずれ書かねばと思っていたところでした。

 首の具体的な技法としては、患者仰臥位、術者は患者頭位置に。
 左右の手で患者の首(手根でも、四指でも可、やりやすいように)を挟み、片方の手を患者足方向へ、もう一方を患者頭方向へと引っ張ります。つまり首左右の組織を互い違いに引っ張るわけですね。これで首の皮膚、筋肉にテンションをかけます。また、頚椎も片方が上、片方が下へ向かう力を受けることで、少し斜めになるのではないかと考えています。
 その状態で手首を使い、患者の頭を左右に転がします(患者が痛くない速さ、範囲で)。この方法は首の筋肉、頚椎、皮下組織などにまとめて働きかける方法で、首のコリ、痛みがかなり減少します。本格的な治療の前フリとしても使えます。

 頚椎で特に不調の場所がわかる場合は、こんな技法があります。
・目標頚椎を下から押し上げつつ、頭を左右に転がす。
・ 目標頚椎を横から圧迫しつつ、患者の頭を持ち上げ、軽く前屈、後屈させる。
・ 頚椎付近で動きの悪い組織を狙い、皮下組織にテンションを与えて動かす方法。

 もちろん、それでも残る不調には、厳密な方向と精度での狙いが必要になりますが…。

 胸鎖関節ですが、患者側臥位か仰臥位で、鎖骨の胸鎖関節に近い部分の下に指を入れ、患者頭方向へ引き上げます。胸鎖関節を引き離すわけですね。そのまま肩甲骨を動かすことで胸鎖関節を運動させます。
 しかし、これよりも有効なのが、鎖骨下の皮膚・皮下組織を引っ張りながらの運動です。鎖骨下の組織、それもかなり鳥口突起に近い部分の皮膚・皮下組織を肩関節の方向へ引っ張ります。その状態で肩甲骨を動かし、鎖骨を運動させることで、胸部の負荷が解消されます。なお、鳥口突起周辺組織をひっぱりながらの運動は、肩関節の運動不調を解消する場合にも有効です。

 肩甲骨の運動は、胸鎖関節を中心とした円弧、というよりは球面運動になりますね。ところが、患者さんでこの運動が自分でできる人は決して多くはないのです。肩を動かしてください、というと、大抵は肩の上下運動だけで終わってしまいます。体幹部に沿った動き(肩甲骨の動きで言うと、内外へ動かす動き)がうまくできない人はわりといますし、ぐるっと動かせる人はもっと少ないです。なので、術者が動かしてやるほうが、たいていは大きな動きになります。大きな動きの方が、効果は出しやすいですね。
 具体的には、普通の動きで上下左右。できれば、患者さんの腕を挙上した状態で(肩甲骨が外に回った状態になる)、上下左右。この二つからはじめてください。もし、手応えで不調部がわかるようになったら、角度を変化させたり、押し引きを加えるなどして、小さい動きでも良くなります。

 この話に限らず、肩甲骨を十分に動かせている患者さんは少ないです。肩こりの患者さんの肩甲骨を十分に動かしておくと、それだけでかなりコリが解消します。とくに、外転(腕を挙上したとき、肩甲骨が大きく外に回りますよね)の状態で十分に動かすと、効果大です。というか、多くの肩こり患者さんでは、バリバリ音がします。癒着が剥がれているのでしょうねえ。「肩ってこんなに動くんですねえ」と言われることが多いです。

 肩鎖関節ですが、これは鎖骨と肩甲骨の間にテンションをかけます。具体的には、側臥位患者の後ろに立ち、片手の拇指を肩甲棘、四指を鎖骨にかけます。ここで四指を軽く握るなどの形でテンションをかけ、肩甲骨の運動を行います。
 この場合も、周辺の皮下組織への皮膚滑り法は有効です。

 質問② ギックリ腰で寝たり起きたりがつらい患者の場合、座位で仙腸関節などにTAM操作できますか? また、人工関節に関しては、どうされてますか?

 さすがに、座位のままでは仙腸関節の操作はちょっと…。
 以前に全身の過剰緊張で横になれなかった方を診た事があります。横になるとあちこちの痛み、頭痛、めまいが一度に襲ってくるので、1週間くらい、椅子に座ったまま眠っていたという方でした。
 この方の場合には、一番楽な座った姿勢のまま、両手、両足から施術を始めました。全身の筋肉、関節には相関関係がありますので、一部だけでも治療が進めば、それだけ全体も改善します。この方の場合には、最初は座った形での治療、二度目には横になれるようになったので、初めて普通の形で治療ができました。今にして考えれば、鍼を使っても良かったと思いますね。
 ぎっくり腰の場合も、鍼を使ってから、寝て治療するのはいかがでしょうか。

 人工関節についてですが、タイプにもよりますが、関節包、靭帯はほぼ原型のまま存在していると考えています。ただし関節包、靭帯ともに手術で傷がついており、その瘢痕組織が残っている分、柔軟性には欠けるはずです。
 瘢痕組織の分、普通の関節とは可動域の形が違ってきますが、技術的にはそれほど差はないと考えます。

 実際の臨床ですが…。
 これは私の考えすぎかもしれませんが、人工関節と骨の接続部は信頼してよいのでしょうかねえ。差込み型の股関節など、抜けたらどうしようかという怖さがあって、私は人工関節の患者さんの足を、強く牽引することができません。関節包や靭帯が、人工関節をまたいで骨に接続していれば、引っ張ろうがどうしようが問題ないのですが、患者さんで自分の人工関節の構造を理解している人はあまりいません。いちいちレントゲン写真を持ってきてもらうわけにもいきませんし…。
 というわけで、主に周辺組織の皮膚滑り法、ねじりと押し、曲げを使った技法を使用していることが多いです。牽引が必要なときは、おそるおそるやっています。
 恥ずかしながらの回答ですが…。

 質問③ 池浦先生は鍼灸治療もされておられますが、TAMを鍼灸の理論の中で使うこともありますか?例えば、肩の前面が痛いとして、肺経の痛みだから母指にTAM操作をするとか、さらに飛躍して、肺経の陰陽交差を利用して胃経絡上の関節にTAM操作をするとか・・・。どうでしょうか?

 治療において東洋医学的な思考をすることはほとんどありません。
 ただし、経絡と似た意味で、身体を縦に走る「関連性のライン」ははっきり感じますので、これは使います。
 この「関連性のライン」は、一部の症状が別の部分にまで波及する関連性のことです。手で触れて、筋肉の緊張としてたどることも出来ますし、ねじりと曲げをあわせた動きをしていると、関節可動域制限の関連として感じることも出来ます。
 例として挙げていただいた、肩と手の親指の関連は本当にあり、親指や手首が原因となって、肩に不調を起こしたと思われるケースは何度も見ました。
 この「縦の関連」については「誰にもわかる操体法の医学」(橋本敬三 農文協出版)に概論が書いてあり、私は大いに影響を受けました。

 なお、鍼を使うときは「トリガーポイント鍼療法」を基準にしてはいますが、トリガーポイントの思想にはこの「縦のライン」がありません。ということで、私の鍼はトリガーポイントと「縦のライン」の複合治療です。

 質問④ 仙腸関節のTAM操作で、「骨盤を患者にとっての前屈、後屈となるように回転させ、仙腸関節に軸回旋を起こさせる」時ですが、これはもちろん、仙腸関節の可動範囲(つまり数ミリ単位)での、ほんのわずかな「前屈・後屈」という意味ですよね?
患者の骨盤を、ガクンガクンと動かす訳ではないですよね?

 これについては、実際に見たらおそらくびっくりされるくらい動きが大きいです(笑)。患者さんの膝を持って操作するときには、さらに大きな動きです。
 というのは、この「TAMによる仙腸関節の調整」は、やや専門的ではあるものの「誰でもTAM」の一種ですから、それほど精密な動作ではないのです。

 仙腸関節は深いところにあり、運動の中心なので、腸骨棘の位置で数センチの動きも、仙腸関節では数ミリの動きに縮小されます。また骨盤を多少大きく動かしても、大きすぎる動きは骨盤の移動(主として腰椎の曲がり)によって吸収されるので、仙腸関節そのものにはさほど負担がかからないのです。痛みのない範囲でゆっくり行い、曲がらないものを無理に曲げることがなければ、まず問題ありません。以前に書いた、三種類の組織の感覚を頭においてもらえればよいかと思います。
 もちろん、本当にミリ単位の操作を行うこともありますが、安全性のためというよりは、正確な位置に力を作用させるためですね。

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2009年8月10日 (月)

五十肩と親指の関係

 世の中には、いまだに科学的に解明されていない病気がいくつもあります。それも、ごく身近に。

1.謎の病気、五十肩

 五十肩。これも、謎の病の一つです。なぜ起こるのか、いまだに解明されていません。親兄弟や知り合いで、一人や二人は悩んでいたのを見たことがあるでしょう。

 ある日、急に肩が痛くなり、寝ていても痛む。腕を上げたり、後に回したりすると、痛む。こういうのが典型的な症状です。

 急に痛くなる上、動きも悪くなるものですから、非常に心配する人もあります。年齢によっては「もう私の肩はダメになったのかしら」なんて言ったりして。でも、心配はいりません。半年から一年もすると痛みが消え、治ってしまうのも、特徴の一つです。もちろん治る理由もわかっていません。

 動きにくいという後遺症が残ることがあるので、治療院では、痛みを抑えつつ、動きが悪くなるのを防ぐ治療をします。

2.手の痛みに注意

 ただ、これまで見てきた患者さんの傾向から言うと、五十肩になる人に、一つの傾向が見えてきました。手首から先、とくに親指周辺に不調がある人は肩が痛くなりやすく、また痛みが長引くようなのです。

 解剖学の本で骨格や筋肉を見てみると、五十肩でよく痛くなる肩の前面には「上腕二頭筋」があります。この筋肉は腕を曲げるために働く筋肉ですが、同時に前腕(肘から先)を回転させる働きをする筋肉なのです。おそらく、手先の動きが悪くなったことで、前腕を緊張させてつかわなければならなくなるせいでしょう。

 たくさん文字を書くこと、楽器、大工仕事。あまりに集中して手を使うときは無理の無いよう、ご注意ください。もし手の痛みが肘、肩へと上がるときには、ご相談ください。

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2009年8月 3日 (月)

ナメクジを退治する

 TAM手技療法が続いているところにこんなものをはさんでもいいのか、とは思いますが、もともと雑多なブログですから…。

 我が家では、今年はなぜかナメクジが大量発生しました。犬の餌にたかり、コンクリートの上に並び、浴室にまで侵入する。ムカデや毛虫のように刺されるわけではないのですが、なんとなく精神衛生に悪いものです。花や野菜を齧ることもありますし…。ということで、今年は思い切って駆除に乗り出すことにしました。

 最初は殺虫剤を考えましたが「使用後のビンは必ず三回以上洗ってから捨てること」などの怖そうな文章が並んでいて、二の足を踏みます。

 そこで思いついたのが、ビールを使う方法。ビールを入れたコップを置いておくと、匂いに引かれたナメクジが入り込んで死ぬと言うのです。

 さらに言えば、ビールを使うのももったいないので(酒飲みの思考)、手近なもので合成してみました。成分は以下の通り。

 水      … コップに半分。

 アルコール … 濃度が5~10%位になるように。

 米ぬか   … ひとつまみ。

 完全自然素材(笑)。
 重要なのはアルコールです。アルコールの匂いに引かれるという意味では誘引剤ですし、効果の意味では殺虫剤でもあります。アルコールがあまりにも多いと、刺激が強すぎるらしく入りませんでした。ビールと同程度の濃度が良いようです。私は消毒用エタノールを使いましたが、酒なら焼酎でも何でもいいと思います。

 米ぬかがない場合には、水の替わりに米のとぎ汁を入れればいいでしょう。

 湿気の多い日に試してみてください。すごいです。ただし、入った後のコップをあまりじっと見ないことをおすすめします。

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2009年7月11日 (土)

TAM手技療法に関する質問④

M先生の質問

 お返事をいただき、本当にありがとうございます。背骨の操作、さっそく家内で練習してみたいと思います。
 なにはともあれ実践が大事、今後は少しずつ自分の臨床にTAMを、というのはまだ早すぎるので、「TAMもどき」を取り入れて行きたいと思います。

 そこで、もう少しだけ教えていただきたいのですが、TAMの操作中に患者が痛みを訴えた場合、その操作はしないほうがいいのでしょうか?あるいは多少痛くても無理のない範囲で操作したほうがいいのでしょうか?

 また、ひとつの操作を行う回数や時間、頻度などに、何か注意点はありますでしょうか?例えば、「牽引しながら屈曲・伸展」する回数(何回以上はしないほうがいい、とか)、あるいはその牽引する時間(何秒くらい、とか)、週に何回くらいがいいか(毎日はしないほうがいい、とか)などの注意点があればアドバイスいただけませんでしょうか。


八起堂の返信

 TAMの操作と痛みについてですが、これは私自身の反省も踏まえて「痛いことはしないほうが良い」と言わせてください。
 最初のころ「癒着がとれれば治るんだ」とばかりに、強い力で操作したことがありましたが、施術後に痛みがでることが結構あったのです。患者も痛みに抵抗するので癒着の感覚がつかみにくくなる上、とても疲れました。

 技術の向上を考える上でも、痛みの無い操作の方が良いでしょう。
 ブログに載せた「セロハンテープを剥がす」たとえですが、テープを水平に近い方向で引っ張っても剥がれることは剥がれますよね。でも、上に引っ張ればその何分の一かの力で剥がせるはず。
 痛みを感じるような力で操作すると、多少強引でも治療効果が出てしまうために、より繊細な技術の向上を妨げてしまいます。痛みを感じない範囲での操作は結果が出づらく、いらいらすることもあると思いますが、試行錯誤が増えるため、結果的には早く上達すると思います。

 とはいえ、全く痛み無しと言うのも非現実的な話です。具体的には、患者が一瞬顔をしかめるくらいまで痛みまでで収めたいと考えています。
 操作がうまくいくときには、バリバリと癒着の取れる音がしていても、患者は痛みを感じません。派手な音がしているのに、患者はうとうとしているなどという、不思議なこともあります。

 なお、操作の強さに関しての注意ですが、上肢の操作は考えるより軽く、下肢の操作は考えるより強く行って下さい。上肢は繊細な運動を行う部位であるだけに、痛みを感じやすいものです。また下肢は体重を支えている丈夫な組織だけに、操作に力が要ることが多いのです。


 次に、操作を行う回数や時間、頻度ということでした。
 私は主として実費の治療をしているので、毎日というペースでの治療はほとんど経験がありません。ただ、患者が痛みを感じない程度の操作であれば、基本的にやりすぎということはないはずです。毎日もおそらく大丈夫でしょう。
 一度の治療で何度も同じ操作をすることについても、患者が苦痛を感じない限り、組織には無理がかかっていないはずです。単なる運動法とほとんど差がないので、大丈夫でしょう。

 ただし、一つの操作を何度も行うことは、あまり意味が無いと思います。
 TAMは基本的に癒着の剥離を目指します。癒着は正しい方向、正しい動きがあれば剥離するはずですね。ということは、正しい動きであれば一回で癒着が取れますし、正しくない動きであれば、何回やっても取れません。同じ動作の繰り返しは、少なくとも癒着の剥離においては意味がありません(マッサージ効果はあると思いますが)。
 私自身は「同じ操作は二度と行わない」ことを心がけ、施術中も角度や力加減、狙う場所などを一回ごと微妙に変えています。そうして問題が解消できる動きを探します。
 治療の目安は、関節や筋肉の状態です。うまく治療できたときには関節なら動きの軸が変化しますし、筋肉なら緊張が変わります。変化が起これば、その動きは正解。変化が起こらなければ、動きに新たな工夫を加えてゆきます。

 牽引の時間ということですが、時間の長さが問題になるのは、主として短縮した組織をストレッチするときですね。先日のメールで書いた「餅を引っ張るように、一定の力でずるずる延びるときは、その組織はストレッチできることを示しています」のように組織が伸びる場合には、その伸びが止まるときが終わりになります。一箇所の変化は長くても十数秒の間に起こると思います。

 なお、組織の伸長時間については、数分という時間を書いている本もあります。これは、目的とする組織状態の違いであると思われます。
 TAMの施術は「剥がし」が中心であり、伸長は短縮した組織が自然に伸びる範囲だけで行っています。つまり短縮は軽度のものを対称にしているということになるでしょう。
 長時間のストレッチを提唱する手技は、TAMの対象よりも、もっと硬化した組織を対象としているため、時間をかけているのだと思われます(剥がしを使わず伸長だけを用いるためかもしれませんが…)。
 剥がし、自然伸長だけでは効果が不十分な場合には、このような長時間のストレッチを必要とするケースもあるでしょう。ただし、手ごたえだけでなく、外見や動きの観察により適切な変形量を決めてから治療する必要があります。このあたりについては、私ももっと研究してみます。
 
>なにはともあれ実践が大事、今後は少しずつ自分の臨床にTAMを、
>というのはまだ早すぎるので、「TAMもどき」を取り入れて行きたいと思います。

 厳密に考えず、必要なところだけつまんで役立てていただければ、幸いです。

                            池浦誠

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2009年6月27日 (土)

TAM手技療法に関する質問③

・M先生の質問

 今回も回答をありがとうございます。今回の内容について、わからない点がありましたので、詳しく教えていただけませんでしょうか?

 前回、胸椎、腰椎の治療技術に触れていますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

 それと、これは確認のためにお聞きしたいのですが、例えばTAM治療で「内旋の力をかけたまま、屈曲・伸展させる」といった場合の「屈曲・伸展」は患者の自動運動ではなく、術者が行う他動運動で良いですか?

 臨床におけるTAMについてお伺いしたいのですが、池浦先生は、ばね指や手足のシビレには、TAMでどのような治療をされていますか?

 質問攻めで申し訳ありません。今まで見聞きした治療法の中で、TAMの理論がもっとも自分にしっくりくるんです。今までもやがかかっていたような部分が、TAM理論に当てはめると「あーまるほど!」と納得できるというか・・・。
 というわけで、今後も池浦先生にはご迷惑をおかけすると思いますが、どうかよろしくお願いします!

 P.S. ところでTAMって「ティーエーエム」ですか?それとも「タム」でしょうか・・・?

・八起堂の返信

 TAMはタムと読んでいます。
 テンション・アンド・モーションと、プル・アンド・モーションの二つの候補があったのですが、個人的に親しみのある音にしました(「ジャングル黒べえ」といってわかるのは私の世代までですね)。今にして思えば最後に「アプローチ」をつけてもよかったですね。TAMA。可愛いくてよいのですが。

 さて胸椎、腰椎の技術ですが、基本としては脊椎に当てた手でテンションを、肩や骨盤の動きでモーションを作ります。

 患者は側臥位。術者は患者後方に立ちます。一方の手を患者の肩(腰椎の場合は骨盤)におき、もう一方の手を狙う胸椎(腰椎)にあてます。
 胸椎は回旋が可能なので、棘突起を横(患者中心から外方へ向けて)に圧迫、椎体を中心とした回旋を起こさせテンションをかけます。腰椎は構造上、回旋がほとんどできません。そこで棘突起を垂直(背中から腹方向へ向けて)やや外向けに圧迫、軽い沈み込みとわずかな回旋を起こさせ、テンションをかけます(横突起を狙って垂直に押しても可)。
 
 そのまま、まず肩(骨盤)を患者から見て前方(胸の方向)へ押すと、脊椎はねじりの力を受けます。ついで、そのまま患者の頭方向へ押してゆくと、脊椎は引き伸ばしの力を受けます。そのまま背中方向へ押してゆくと先ほどとは逆のねじりを、足方向へ押すと圧縮の力を受けることになります。上から見ると、患者の肩は円運動をすることになります。
 円運動はそれ自体がテンションとモーションを含む動きになりますので(先ほどの例で言うと、前への引っ張りを残したまま上に向かうことで、テンションとモーションが同居するわけですね)、棘突起への圧迫は治療目標点を明確にする程度、円運動を中心で施術を行います。

 余談ですが、円運動がテンションとモーションを含むのは、筋肉、皮下組織などをマッサージする場合でも同様です。腕などは、両手で挟んで施術(自転車のペダルを漕ぐような交互運動)したりすることもあります。

 ただ、M先生のメールを頂いてから自分の技術を観察してみると、背骨のねじりや引き延ばしの方をテンションに使って、棘突起に当てた手をモーションに使っているケースも結構ありました。この場合、肩や骨盤は一方向に押さえたまま、棘突起をあちこちへ運動することになります。
 背骨の操作を始めたときには、本当に棘突起を押さえて肩腰を円運動していたのですが、いつのまにか変化していたようです。

 次の質問。TAMでの運動は自動運動か他動運動か、という問題ですが、だいたいは術者が行う他動運動ですね。自動運動を含むものは「そのまま体操」の項目に載せました。もちろん、実際には患者さんが動く自動運動を取り込んでも問題ないので、やりやすい方法でよいと思います。
 私は細かい操作をしたいことと、患者さんにいちいち指示するのが好きではないので、他動運動を中心に行っています。

 次に、ばね指としびれについて。
 ばね指の治療では、腱の通る通路を確保することを考えています。
 まずは、腱を触りながら運動させてみて、引っかかっている場所を特定します。その腱と腱鞘の周辺の癒着を解消するべくマッサージをまず試み、変化がなければ関連する関節にTAMの施術を行います。

 手首関節の施術については、ブログに書いたものを基本にして、より細かな動きで手根骨の動きを改善します。指関節については、関節をごく軽く牽引しつつ、ずらし、曲げ、ねじり等の動きをゆっくり、軽い力でおこないつつ、癒着の開放を模索します。
 ばね指を含む指の不調では、指が関節部分でねじれていることがあります。上記施術の最中に、キュッと音を立ててねじりが戻ることがあり、その場合は大抵即治します。

 関節のズレが原因になっているものでは、TAMによって比較的早く治ります。腱の通り道が狭くなっている場合のほうが比較的難治です。私の臨床で、ばね指全体の治療成績を考えると、即治が三分の一、少しずつ改善するのが三分の一、全く効果を示さないケースが三分の一というところでしょうか。

 しびれは、感覚鈍磨や筋力低下を伴う「しびれ」と、感覚・筋力ともに正常で、しびれだけを訴える「しびれ感」に区別します。
 「しびれ」については、神経の通り道をたどりつつ、異常な緊張のある場所、正常な可動範囲を見られない場所を重点的に治療しつつ、解消を目指します。胸郭出口症候群など、一般の解剖学の知識で考えて治療するのが有効です。
 「しびれ感」は、感覚異常で、神経そのものよりも周囲の不快感が原因になっていると考えています。そこで、しびれ箇所に近いところで、動きの不調のある場所を探します。手の痺れでは、肘などが原因になっているケースが多く、比較的早く治療に反応します。

 足のしびれで、SLR(足を伸ばしたまま持ち上げる)が極端に悪いなど、重度のヘルニアのケースでは、残念ながら満足できる治療成績を得られていません。即治はあきらめて神経の通り道を確保、悪化を防ぎつつ、自然治癒を待つことになります(ヘルニアは自然退縮してゆくという研究結果がでています)。ただ、お年寄りの場合には、神経の回復に時間がかかることが多く、足先などに症状が残ることが多いです。

 臨床上の注意ですが、ヘルニアという診断をされた足の痺れ患者の中には、梨状筋症候群が含まれていることがあります。梨状筋を狙って鍼を打つだけで、痺れが完全に消えた患者さんを何例か見ていますので、とりあえず試みて損はないと思います。マッサージでも有効でしょう。
 
 いかがでしょうか?
                                 池浦誠 

付記
 脊椎の治療については、その後も技術が変化した。
 M先生の質問で意識するようになってから急に技術が変わり始め、治療効果がさらに上がってきた。肩や骨盤の手を支えとして使い、脊椎に当てた手でテンションとモーションを兼ねる方法である。

・技術
 患者側臥位。術者は患者後方に立つ。
 肩や骨盤を片手で支え、もう一方の手根(小指丘または拇指丘)で横突起を患者皮膚に対して垂直に圧迫、脊椎の回旋や沈み込みでテンションをかける。そのまま、当てた手で上下左右の動きを与えてモーションとし、患部を狙った治療を行う。
 掌の傾きや、圧迫の方向を変化させることで、これまで以上に微妙な治療ができるようになった。沈み具合で患部の状態(硬さ)もわかり、力の集中もやりやすい。まだ発展途上だが、これからも改善の余地があるだろう。

 M先生からの質問がなければ、まだこの方法を考え付くことはなかっただろう。M先生に深く感謝したい。

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2009年6月13日 (土)

TAM手技療法に関する質問②

・M先生からの質問

  池浦先生、お返事ありがとうございます!
 さっそくですが、お言葉に甘えていくつか質問させていただいてもよろしいでしょうか?

 質問① 仙腸関節調整についてなんですが、2008年12月10日の「TAM手技療法による仙腸関節の調整」の中で、骨盤上口の開閉による調整を説明されてますが、これと2005年11月23日の「AKAの治効理論⑧」にある「普段の臨床では、仙骨を固定し上前腸骨棘と坐骨を圧迫して滑らせる操作を行うことが多い」という手技との違いはなんですか?

 質問② AKAでは「まず仙腸関節を調整、次に胸鎖関節・・・」といった治療手順がとられるようですが、TAMではどういう治療手順をとられることが多いですか? 例えば膝が痛い場合は、まず膝を調整するのでしょうか?

 質問③ TAMがあまり効果を示さない疾患や症例はありますか?

 以上、三つの質問について、池浦先生がお手すきの時でけっこうですので、ご教授いただければ幸いです。本当に、お忙しい中、勝手申し上げましてすみません。私の方こそ、今後ともどうぞよろしくお願い致します。
  

・八起堂の返信

 メール拝見いたしました。質問の内容を見ますと、ブログを熱心に読んでいただいていることがよくわかります。自分の書いたことをきちんと受け止めてくださる方がいるのは、本当に幸せなことです。ありがとうございます。では。

 質問①ですが、私は仙腸関節は平面関節ではなく「骨盤の開閉を行う凹凸の関節」(ただし、荷重は前の部分にかかっている)と考えています。これについては「AKAの治効理論」で書いたとおりです。
 ご質問の2005年11月23日「普段の臨床では、仙骨を固定し上前腸骨棘と坐骨を圧迫して滑らせる操作を行うことが多い」は、外からの圧迫で仙腸関節を凸滑りさせる動きです。当時はまだTAMの出始めで、AKAの凸滑りの治療技術を残していたことによるものです。
 その後、テンションとモーションについてさらに考えるようになり、この動きにAKAの治効理論⑦に書いた「仙腸関節の前後への軸回旋の動き」を加えることで、「TAM手技療法による仙腸関節の調整」の動きに発展したのです。そんなわけで「仙骨を固定し上前腸骨棘と坐骨を圧迫して滑らせる操作」は、今は使っていません。

 質問②について
 AKAにおいては、全身のどんな症状についても、仙腸関節の不調が影響して起こったものであると考えます。「第一原因である仙腸関節を調整しない限り、いかなる治療も効かない」と考えるために、最初に仙腸関節を調整するのです。
 私は「関節に主従関係はない」と考える立場ですので、とくに治療の順番を気にすることはありません。どんな順番で行ってもいいと思います。
 私自身は、
①側臥位の肩→足
②反対側の側臥位の肩→足
③仰臥位で頭→足
④伏臥位で頭→足
 の手順で行っていますが、特に意味はありません。
 ただ、患者さんが「○○が痛い」と言っているときに杓子定規にやると「話を聞いてるの?」ということになるので、主訴の部分と関連部分を最初に調整してから、全身調整に入ることが多いです。

 なお、関節に主従関係はないと思いますが、関連性そのものは確実にあります。一つの関節が痛いと訴える方がいれば、どんなに時間がなくてもその上下の関節を調べて見なくてはなりません。不調のある関節のとなりの関節は、やはり不調を抱えていることが多いです。

 質問③について
 TAMは「組織の癒着をとる」ことを目的にした技術です。したがって、癒着に由来しない症状には効果を出しにくいです。例えば組織の断裂など、大きな変形がある場合には十分な効果は望めません。
 また、筋肉の極端な疲労による場合、炎症がひどく起きている場合には、TAMよりも筋肉のマッサージや冷却の方が効果が高いと思われます(ただし、炎症の後にはよく癒着が生じますから、その治療には有効です)。

 また、技術の性質上、苦手なものもあります。胸椎、腰椎は深くにあるため、不調の位置を調べにくく、正確なテンションとモーションをかけるのが難しい関節です。
 最初のころは「狙い」が不十分で、AKAを使っていたころと同程度の治療効果しか出せませんでした(あくまで当社比)。最近は技術の進歩で効果も上がってきましたが、まだまだ改良の余地はあると思います。

 苦手というのとはまた別ですが「狙った組織にテンションをかけ、それから必要な動きを与える」には、患者さんの筋力が邪魔になることがあります。筋肉が余りにたくましい人、筋肉の緊張が過剰で力を抜けない人の場合には、その筋力を超えて動かさなくてはならないので、かなり疲れます(笑)。最近は、患者さんの動きを誘導して、その動きに乗ってゆく方法を模索しています。
                          池浦誠 

 この項、まだ続きます。

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2009年6月 5日 (金)

TAM手技療法に関する質問①

 先日、熊本県のM先生から、TAM手技療法について質問をいただきました。
 他の方にも役に立つことがあるかもしれませんので、ご本人の許可を得て、掲載させていただきます。
 ただし、文面は必要に応じて省略、改変してあります。

・M先生のメール

「はじめまして。私は熊本で整骨院をしております、Mと申します。最近ブログを読ませていただき、TAM手技療法に大変興味がわき、メールさせていただきました。
 現在、八起堂さんのブログの「治療技術論」の部分をプリントアウトしてファイルして勉強しているんですが、もっと詳しく勉強したいと思っています。
 できましたら、TAMの勉強会のテキストをわけていただけませんでしょうか。本当はセミナーに参加しないといけないのでしょうが、なかなかそちらの方にまで行くことができませんので・・・。
 厚かましいことは充分承知しているつもりですが、それ以上に、もっとTAMのことを知りたく、お願いのメールをさせていただきました。よろしくお願い致します」


・八起堂の返信

 こちらこそはじめまして。八起堂治療院の池浦です。このたびはメールをありがとうございました。
 さて、お問い合わせの件ですが、実は講座で使ったテキストも、ほとんどブログと変わりません。というよりも、ブログの文章の体裁を整えただけのものがテキストになっています。講座では、原則だけ説明して、あとは質問に答えつつ具体的な方法を解説していますので…。

 TAMでは不調の原因を関節や筋肉の癒着と考えていますが、関節一つとってもその障害部位は様々です。例えば肩関節の不調でも、上部が動かない場合、前部が癒着している場合など、ケースによって原因がちがいます。そこで問題部位を治療するため「押す、引く・ねじる・ずらす・皮膚を引っ張る」など、ケースに合わせて動きを変え、原因の部分を「狙う」ようにします。そのため「肩はこれ」というような技法の一般化が難しいのです。もっとも重要な「狙う」ことが抜け落ちて、形骸化してしまう可能性がありますので…(「そのまま体操8」とか「寝違えの対応」のような、誰がやってもある程度の効果を出せる技法は別)。

 そこで、講座では基本原則を説明し、実技で「こんな動かし方もできるのかあ」というイメージだけを持って帰ってもらうことにしました。あとは各自試行錯誤してもらうほうが「原因を狙う」という目的に合った技術を身につけられると思いますので。
 TAMは、技術と言うよりもコンセプトですので「癒着をとる」という意識をもって試行錯誤していれば、講座など受けなくても使えるようになると思います。

 練習方法ですが、まずは「動かない部位、動きを制限している部位」を探すことに習熟してください。関節でしたら、回転の中心や、運動線の変化を見て、原因を見極めます。前面なのか後面なのか、内側なのか外側なのかくらいの大雑把なところから始めて、だんだん精度を上げていきましょう。筋肉、皮下組織なら、患者さんの身体を動かしながら、どの位置で組織が緊張するか、などを見て、判断してください。

 次に、狙う部分に適切なテンションをかけるようにします。
 組織の緊張度は、段階的に変わります。最初は、かける力に比例して抵抗が増える状態(ゴムをひっぱるようなもの。伸びるのに比例して抵抗感が大きくなる)。
 次に、一定の抵抗のまま伸長が起こる状態。餅を引っ張るような感じ。この段階では、短縮した組織に伸長が起きています(この状態では、短縮した組織が正常な状態になるよう、伸長が起きています。この伸長にも治療効果があります)。
 最後に、また急激に抵抗が増し、皮ベルトのような固い弾力を感じる状態。この状態が組織にテンションがかかった状態です。
 テンションが狙った場所にかかっているかどうかは、手応えと運動線から判断してください。

 テンションをかけられたら、このテンションを保ったまま、癒着が解消する方向を探して運動を行います。TAMの項目で書いたような、セロハンテープが剥がれる図を頭において、試行錯誤してみてください。

 テンションの操作、癒着のとれる運動の操作はかなり微妙な場合があり、数センチ、数ミリの差が重要になることもあります。最初はなるべくゆっくりした動作でやってみてください。

 以上、「より詳しい技法のテキスト」はお届けできませんが、不明点などお問い合わせくだされば、できるかぎりご説明したいと思います。
 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
                                 以上

 この項目、しばらく続きます。他にもTAM手技療法や、そのまま体操についての質問のある方がおられましたら、お気軽にコメントまたはメールでご連絡ください。

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2009年5月 8日 (金)

失敗のベテランを目指せ

 先月、娘が三歳になりました。
 ついこの間、二歳になったばかりの気がしますが、時間のたつのは早いものです。

 この一年、彼女にとっては失敗ばかりの一年だったなあ、と思います。
 二歳前くらいから、どんなことでも自分でやりたがるようになったので…。

 洋服を畳もうとする。
 ボタンを自分で留めたがる。
 鉛筆を削ろうとする。
 そしてその全てに失敗して、かんしゃくを起こす(笑)。

 「本人のやりたがることはなるべくやらせる」という甘い親の元、彼女の生活は毎日が失敗とともにあります。
 この年齢の偉いところは、失敗ばかりしているのに懲りないところですね。親の手を振り払い、あきらめもせず繰り返しているうちに、少しずつ出来ることが増えてきます。

 少年が事件を起こすと、決まって新聞などにでるコメントがあります。
 「子供のころから甘やかされて全能感を持ち、挫折に弱い」という例のあれ。どうも違和感があります。
 甘やかし、子供のやりたいことをやらせていれば、子供は必ず失敗するもの。毎日が挫折の連続で、全能感など持ちようがないと思うのですが…。

 あるいは、甘やかすという定義が違うのでしょう。
 挫折に弱い子供は、好き勝手を許されたのではなく、囲われていたのかもしれません。親の手出しや、先回りした指示で、本当ならたくさんあるはずの失敗を、得られなかったのではないでしょうか。
 失敗できなかったゆえに、万能感が保たれてしまったのなら、哀しいことです。

 本当の甘やかしは、意思を尊重すること。そして意思を尊重する限り、子供は失敗します。
 無駄といえば無駄なのですが、子供にはたくさんの失敗を与えたいです。失敗しつつ、それでもめげない失敗のベテランとして成長させたいものです。

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2009年4月20日 (月)

もうすぐ紫外線の季節

 今年は桜が咲き出してからすぐに冷え込んだので、花の時期が長かったですね。もっともすぐに初夏並みの気温になったので、あっという間に葉桜になりましたが。

 新緑の時期は、日光の強くなる時期でもあります。
 紫外線は夏だけの問題と考えがちですが、注意するべき季節は夏至をはさんだ数ヶ月。つまり、5月くらいには対策を考えなければなりません。

・サングラスも
 
紫外線対策には、帽子、長袖、日焼け止め薬。
 
それに加えて、もう一つおすすめしたいものが、サングラスです。

 紫外線の季節、太陽光は木々や路面を照らします。眼は、いつも紫外線を含む太陽光線を受け止めているわけですね。

 眼の病気の一つ、白内障は眼の水晶体が白く濁る病気です。この病気は加齢と、紫外線が原因となっていることが確認されています。発病するのは歳をとってからですが、それまでの生活で受けた紫外線の量が影響するとのこと。若いうちからの対策が必要です。

 対策としては、サングラスが一番です。単に色が付いているだけで、紫外線を防げないサングラスもありますから、説明札を見て「UV400」という表示を選んでください。これは波長400nm(ナノメートル)以下の紫外線を防ぐと言う意味で、有害な光をかなりの割合で防いでくれます。

・100円ショップでも売っている!
 
そんな本格的なサングラス、どこで買えばいいの? ということですが。
 不思議なことに、
UV400加工のサングラスは100円ショップでも買うことができます。最初は「本当かな?」と思ったのですが、何年たっても行政指導が入らないところを見ると、本当なのでしょう。
 考えてみれば、メガネの原価は材料費と加工費のみ。UV400加工のプラスチック板を安く仕入れられれば、不可能な価格ではありません。

 そういえば、眼鏡屋で売っている高級品と比べると、いかにも重いです(メガネ屋の商品はポリカーボネイトを使ってたので、薄くて軽かった。1800円)。そして作りも雑。
 私はメガネに付けるクリップタイプを使っていますが、クリップ部分をペンチで調整しないとうまく作動しなかったりします。このあたりが100円の限界でしょう。

 ただ、ポケットに突っ込んだり、落っことしたりという雑な扱いにはかえって向いているのかもしれません。私は愛用しています。

 

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2009年4月 1日 (水)

エイプリルフールに結婚しました

 4月1日といえば、世間ではエイプリルフールです。ウソをついてもいい日ということで、なるべくウソをつくように小学生のころから心がけています。

 この4月1日、私にとっては結婚記念日でもあります。正確には、3月31日が結婚式、4月1日が入籍の日です。別にこの日を選んだわけではなく、式場の予約がたまたま空いていただけなのですが。
 でも、考えますよね? 結婚式の次の日がエイプリルフールだったら。

 当時は会社員でしたが、結婚について職場では一切口外しませんでした。それまでに話していた友人と上司には緘口令を敷きました。そして3月31日、家族だけのささやかな結婚式をすませたのです。

 4月1日、午前休をとって区役所に結婚届を提出した後、出社しました。
 午後の仕事は昼礼から始まります(フレックスタイムの会社だったので)。その日の当番による短いスピーチ、ちょっとした連絡事項の後、上司が言いました。

「他に何か、連絡事項のある人は?」

 私は手を挙げました。

「はい、池浦君」

「さっき結婚してきました。よろしくお願いします」

 上司も一緒になって悪乗りしてくれました。「じゃあ、そういうことで」とあっさり昼礼を終了させたのです。ウソか本当かわからずに、顔を見合わせる同僚たち。これこれ。これがやりたかったんですよ。一生に一度のエイプリルフールネタ。

 席に戻っても、回りはひそひそ話をしていて、誰も話しかけてきません。
 しばらくして隣の席の先輩が、

「エイプリルフール?」

「本当です」

「えー!」

 そこからようやく話しかけてくる人が増えてきましたが、それでも信じる人、まだ騙されていると思っている人など、様々でした。一週間たってもまだ信じていない人もいましたから。
 このあと私は、なぜか「うそつき」と言われていました。エイプリルフールに本当のことを言っただけで、ウソはついてなかったのですが…。

 ちなみに、この話は全て本当ですよ?

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2009年3月19日 (木)

腰はあんまり曲がらない

 前回、腰の骨はねじれるようにできていない、と言う話をしましたが、今回はその続き。

 小中学生のころ、体力測定で「立位体前屈」をやらされましたよね。立ったまま前に体を曲げて、手がどこまで届くか調べるテスト。苦手でしたね。手が床に付くことがなかったですから(今は付きます。小学生のときより体が柔らかい不思議)。
 当時、腰を曲げるテストだと思ってましたが、違うようです。

1.腰はあまり曲がらないSebone

 背骨は、骨と椎間板(クッション)を交互に積み重ねた構造になっています。その背骨が曲がるときには、右の図のように椎間板の弾力で曲がっています。つまり曲がるのは椎間板の弾力分だけ。
 手足の関節など、動く構造がきっちり作られている部分と比べると、大きく曲げるのに向いていないことがわかります。

 それどころか、弾力の範囲を超えて無理に曲げると、椎間板を痛めるおそれもあります。

2.骨盤を動かせ!

 本当は、身体を前に曲げるのは股関節の役目です。
 具体的に言うと、太ももの外側にぽっかり出ている丸い部分。このでっぱりの位置に股関節がありますので、これを支点に、骨盤ごと前に傾けるのが、正しい前かがみのやり方です。

Kosimage_2   右の図は、先ほどの立位体前屈をしているところです。頭の高さは両方とも変わりませんが、左側のほうが、腰骨の曲がりが大きいのがわかります。骨盤が水平なため、背骨を大きく曲げるしかなかったのです。

 右のほうは、股関節で身体を折り、骨盤を前に傾けた状態。骨盤が前に傾いているので、背骨があまり曲がらなくても、頭が下がります。

 股関節で曲げる、と言うと難しそうですが、お尻をちょっと押し出すつもりでやると、自然に骨盤が傾き、楽に曲がります。

 試しに立位体前屈をやってみてください。これを意識するだけで数センチ違ってきますよ。

3.横向きでも同じYokomage

 横に曲げるときも、同じです。
 曲げる方向と反対側に、ちょっとお尻を押し出すようにすると、骨盤が傾き楽に曲がります。

4.身体の動かし方でケガをすることも

 これまで「腰痛の最大の原因は前かがみの姿勢です」と言っていましたが、この通信を書いていて、それだけではないなあ、と実感しました。椎間板や腰椎などを傷める背景には、構造が知られていないゆえの無理な使い方もあるようです。
 憶えていたほうが良い身体の構造、今後も時々お知らせしようと思います。

私事ながら

 骨の構造については、私自身も失敗しています。
 まだ会社員だったころ、肩が疲れたなあ、と思って背中と腕を強くストレッチしたとたん。
 ゴキッと音がして、肩の関節がズレた感じがしました。痛みは無いし、動くのですが、なんとなくダランとのびた感じがします。

「これは、関節が外れたかなあ」と思ったのですが、どんな病院にいけばよいかもわかりません。「押せば何とかなるだろう」と、素人の生兵法で横から押し込んでみたところ…。

 ゴキッ。

 全然関係ない鎖骨のあたりで音がして、急に痛み出しました。それからかなり長く、違和感が残りましたね。

 この仕事に入って肩関節を勉強した時、初めて自分のやったミスがわかりました。
 詳しくは書きませんが、あえてたとえればスライド式の戸を押し開けようとしたような…。

 何事にも知識は必要なものです。

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2009年3月 4日 (水)

腰はねじれない

 スポーツで「腰をねじって」と言われることがあります。ところが、あまり知られていない事実があるのです。
 
腰は、ねじれません。

1.ねじれない構造
Youtui
 右の図は腰の骨、腰椎の簡略図です。

 背骨の構造は、骨と椎間板(クッション)を交互に積み重ねた構造になっています。それだけだと不安定なので、後(背中側)に、上下の骨が支えあうための突起が出ています(椎間関節)。

 拡大図を見るとわかるのですが、上の突起を下の突起が挟み込むようにできています。上下には動けますが、ぶつかってしまうので左右には動けません。 
 つまり前後左右に曲げることはできても、回転させることができないのです。

 ですから「腰をねじるのだ」と思い込んで無理に腰をねじっても、回りません。骨や筋肉に負荷がかかるだけです。
 それどころか、無理に回せば骨の突起部が骨折してしまうことさえあります(いわゆる脊椎分離症)。

2.背中の骨は回る。肩も。

 「いや、腰ねじってるよ、ほら!」
 と言う方もいるとは思いますが…。 

 胴体で、ねじれることが可能なのは胸・背中の部分だけです。背骨のこの部分(胸椎といいます)は、突起が斜めについているのでぶつからず、横に動くことができるのです。
 また、肩の骨(肩甲骨)は、鎖骨を中心として大きく左右に動かせます。
 つまり、ねじれているのは背中の上の部分と、肩だということです。

 ではなぜ「腰をねじっている」と感じるのか。
 胸・背中がねじれると、胸椎についている肋骨が横に移動します。するとお腹の皮膚や筋肉が肋骨の移動に引っ張られるので、腰がねじれているように感じるわけです。

 ということで、実際にスポーツなどで「腰をねじる」場合には、「みぞおちの高さでねじり、腹筋と腹圧で力を溜める」気持ちでやるほうが、解剖学的には良いことになります。見た目はほとんど同じ。意識の持ち方の問題ですね。

3.余談ながら

 ねじりを腹筋、腹圧で受け止めると言うことは、筋力や腹圧しだいでねじれの反発が違ってくるということですね。ためしに身体をねじった状態で、強く息を噴き出すと、ねじれが押戻されます。

 武道で大きな声で気合を入れるのは、呼吸の圧力で胸椎のねじりを押戻し、力を出す意味もあるかもしれません。


もう一つ余談ですが…

 自宅にかかってくる電話の中には、怪しい投資話もあります。
 株式投資とか、金地金の投資だとか、土地の投資だとか。このあたりまでは、怪しいけれども、詐欺とまでは断言できない電話です。もちろん、お金を出したりはしませんけど。
 しかし、先日かかってきた電話は、あからさまに詐欺の電話でした。

「池浦さんのお宅ですか?」


「はい」

「実はいい投資があるんですよ。年利6%の債券なんですけどね」

「はあ」

アフリカ政府公認の債券なんですよ」

「…いりません」ガチャ(切)

アフリカ政府って、なんだよ!」
 とは、あえてツッコミませんでした。
 手はツッコミの形に動いてましたけど。

 若い女性の声でしたが、もしかしてこれも、学力低下の表れ?

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2009年2月18日 (水)

役立つ雑音

 いまでこそ寝つきの良さは折り紙付ですが、昔は眠れないこともありました(ごくまれに)。

 こんなときは、ちょっとした音が気にかかったりしました。風の音や、遠くの車の音、挙句には時計の動く音までうるさく感じたものです。

「もっと静かなら眠れるのに…」と思ったりしましたが、今にして思えば逆でしたね。静か過ぎる環境は、かえって神経を敏感にするのです。

 人間が一番リラックスできるのは、適度で変化の少ない雑音の中だそうです。 変化が少ない、というのは、音の大きさが変わるたびに神経が刺激されるため。単調なほうがいいのです。

 「意味がない音」であることも必要です。人の言葉や、歌詞のある歌では、つい聞き取ろうとしてしまうため、リラックスすることも集中することもできません。
 学生のみなさん、歌を聴きながら勉強するなんて、無理な話ですよ?

 ある会社では、社員が仕事に集中できるように社内に単調な音を流しているとのこと。他の社員が電話する声や、関係ない会話が雑音で打ち消されて、仕事の能率が上がったといいます。

 この話に感心して、私もやってみることにしました。「せせらぎの音」とか「波の音」といった環境音のCDを買ってきて、電車などで聞くことにしたのです。なるほど、車内の会話や雑音が聞こえなくなり、集中できました。なかなかのスグレモノです。

 と思っていたのですが、つい数日前に気付きました。

 手元のラジオをFMにして、チューナーを音声の入らないところにあわせると、「サー」という、いわゆる砂嵐の音になります。こちらの音の方が変化が少ない分、安定して騒音を打ち消せて、はるかに実用的だったのです。べつにCDを買うこともなかったのでは?

 いいですけどね、環境音CDは治療室で使いますから…。

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2009年2月 5日 (木)

腰痛の話

 腰痛には、いつもじわじわ痛い慢性の腰痛と、急性のぎっくり腰があります。この二つ、違っているように見えますが、原因はほとんど同じです。負担がかかっている腰が、ゆっくり痛くなるか、あるきっかけで痛くなるかだけの差です。

1.前かがみはつらい!
 腰痛の一番の原因は、前かがみの姿勢です。
 長い棒を片手で持っていると考えてください。まっすぐに立てて持っていると楽ですが、斜めにして持つと、かなりつらいものです。前かがみの姿勢はそれと同じで、腰の負担は、立っているときの数倍におよびます。この負担は腰や背中の筋肉を疲れさせ、背骨の椎間板を傷めます。

2.予防法
 予防策にはいろいろあります。
 時々前屈して腰の筋肉をストレッチしてやる(無理に姿勢を良くするのは、筋肉を疲れさせるので逆効果)。腹筋を鍛えて負担を減らす。腰痛体操をする…。

 最も簡単な対策は、歩くことです。
どんな筋肉にもいえることですが、疲れた場合に必要なのは血行の改善です。そしてもっとも有効な血行改善策は、動かしてやることなのです。
 椎間板も同じです。椎間板は適度な振動を受けることで栄養を補給され、弾力性を取り戻してゆく性質があります。
 適度な動きと適度な振動。その二つを実現する最も簡単な方法が、歩くことなのです。力みすぎると血の巡りが悪くなるので、力をいれずダラダラ歩くことがお勧めです。

3.ところで八起堂の見解としては…
 上記の話は、一般的な腰痛対策の話です。「足の八起堂」としては、これに足の影響も加えたいと思います。腰痛に悩む方を診ていると、足首が固く、つま先の上がらない方が多いのです。
 つま先が上がらない人が膝を曲げると、足首の固さがネックになって、滑らかに歩けません。その方向の足を無理に持ち上げることになり、腰痛を起こしているのではないかと思われる節があります。特に思い当たる理由がないのに、偏った腰痛が起こる方は、一度ご相談ください。

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