TAM手技療法に関する質問③
・M先生の質問
今回も回答をありがとうございます。今回の内容について、わからない点がありましたので、詳しく教えていただけませんでしょうか?
前回、胸椎、腰椎の治療技術に触れていますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか?
それと、これは確認のためにお聞きしたいのですが、例えばTAM治療で「内旋の力をかけたまま、屈曲・伸展させる」といった場合の「屈曲・伸展」は患者の自動運動ではなく、術者が行う他動運動で良いですか?
臨床におけるTAMについてお伺いしたいのですが、池浦先生は、ばね指や手足のシビレには、TAMでどのような治療をされていますか?
質問攻めで申し訳ありません。今まで見聞きした治療法の中で、TAMの理論がもっとも自分にしっくりくるんです。今までもやがかかっていたような部分が、TAM理論に当てはめると「あーまるほど!」と納得できるというか・・・。
というわけで、今後も池浦先生にはご迷惑をおかけすると思いますが、どうかよろしくお願いします!
P.S. ところでTAMって「ティーエーエム」ですか?それとも「タム」でしょうか・・・?
・八起堂の返信
TAMはタムと読んでいます。
テンション・アンド・モーションと、プル・アンド・モーションの二つの候補があったのですが、個人的に親しみのある音にしました(「ジャングル黒べえ」といってわかるのは私の世代までですね)。今にして思えば最後に「アプローチ」をつけてもよかったですね。TAMA。可愛いくてよいのですが。
さて胸椎、腰椎の技術ですが、基本としては脊椎に当てた手でテンションを、肩や骨盤の動きでモーションを作ります。
患者は側臥位。術者は患者後方に立ちます。一方の手を患者の肩(腰椎の場合は骨盤)におき、もう一方の手を狙う胸椎(腰椎)にあてます。
胸椎は回旋が可能なので、棘突起を横(患者中心から外方へ向けて)に圧迫、椎体を中心とした回旋を起こさせテンションをかけます。腰椎は構造上、回旋がほとんどできません。そこで棘突起を垂直(背中から腹方向へ向けて)やや外向けに圧迫、軽い沈み込みとわずかな回旋を起こさせ、テンションをかけます(横突起を狙って垂直に押しても可)。
そのまま、まず肩(骨盤)を患者から見て前方(胸の方向)へ押すと、脊椎はねじりの力を受けます。ついで、そのまま患者の頭方向へ押してゆくと、脊椎は引き伸ばしの力を受けます。そのまま背中方向へ押してゆくと先ほどとは逆のねじりを、足方向へ押すと圧縮の力を受けることになります。上から見ると、患者の肩は円運動をすることになります。
円運動はそれ自体がテンションとモーションを含む動きになりますので(先ほどの例で言うと、前への引っ張りを残したまま上に向かうことで、テンションとモーションが同居するわけですね)、棘突起への圧迫は治療目標点を明確にする程度、円運動を中心で施術を行います。
余談ですが、円運動がテンションとモーションを含むのは、筋肉、皮下組織などをマッサージする場合でも同様です。腕などは、両手で挟んで施術(自転車のペダルを漕ぐような交互運動)したりすることもあります。
ただ、M先生のメールを頂いてから自分の技術を観察してみると、背骨のねじりや引き延ばしの方をテンションに使って、棘突起に当てた手をモーションに使っているケースも結構ありました。この場合、肩や骨盤は一方向に押さえたまま、棘突起をあちこちへ運動することになります。
背骨の操作を始めたときには、本当に棘突起を押さえて肩腰を円運動していたのですが、いつのまにか変化していたようです。
次の質問。TAMでの運動は自動運動か他動運動か、という問題ですが、だいたいは術者が行う他動運動ですね。自動運動を含むものは「そのまま体操」の項目に載せました。もちろん、実際には患者さんが動く自動運動を取り込んでも問題ないので、やりやすい方法でよいと思います。
私は細かい操作をしたいことと、患者さんにいちいち指示するのが好きではないので、他動運動を中心に行っています。
次に、ばね指としびれについて。
ばね指の治療では、腱の通る通路を確保することを考えています。
まずは、腱を触りながら運動させてみて、引っかかっている場所を特定します。その腱と腱鞘の周辺の癒着を解消するべくマッサージをまず試み、変化がなければ関連する関節にTAMの施術を行います。
手首関節の施術については、ブログに書いたものを基本にして、より細かな動きで手根骨の動きを改善します。指関節については、関節をごく軽く牽引しつつ、ずらし、曲げ、ねじり等の動きをゆっくり、軽い力でおこないつつ、癒着の開放を模索します。
ばね指を含む指の不調では、指が関節部分でねじれていることがあります。上記施術の最中に、キュッと音を立ててねじりが戻ることがあり、その場合は大抵即治します。
関節のズレが原因になっているものでは、TAMによって比較的早く治ります。腱の通り道が狭くなっている場合のほうが比較的難治です。私の臨床で、ばね指全体の治療成績を考えると、即治が三分の一、少しずつ改善するのが三分の一、全く効果を示さないケースが三分の一というところでしょうか。
しびれは、感覚鈍磨や筋力低下を伴う「しびれ」と、感覚・筋力ともに正常で、しびれだけを訴える「しびれ感」に区別します。
「しびれ」については、神経の通り道をたどりつつ、異常な緊張のある場所、正常な可動範囲を見られない場所を重点的に治療しつつ、解消を目指します。胸郭出口症候群など、一般の解剖学の知識で考えて治療するのが有効です。
「しびれ感」は、感覚異常で、神経そのものよりも周囲の不快感が原因になっていると考えています。そこで、しびれ箇所に近いところで、動きの不調のある場所を探します。手の痺れでは、肘などが原因になっているケースが多く、比較的早く治療に反応します。
足のしびれで、SLR(足を伸ばしたまま持ち上げる)が極端に悪いなど、重度のヘルニアのケースでは、残念ながら満足できる治療成績を得られていません。即治はあきらめて神経の通り道を確保、悪化を防ぎつつ、自然治癒を待つことになります(ヘルニアは自然退縮してゆくという研究結果がでています)。ただ、お年寄りの場合には、神経の回復に時間がかかることが多く、足先などに症状が残ることが多いです。
臨床上の注意ですが、ヘルニアという診断をされた足の痺れ患者の中には、梨状筋症候群が含まれていることがあります。梨状筋を狙って鍼を打つだけで、痺れが完全に消えた患者さんを何例か見ていますので、とりあえず試みて損はないと思います。マッサージでも有効でしょう。
いかがでしょうか?
池浦誠
付記
脊椎の治療については、その後も技術が変化した。
M先生の質問で意識するようになってから急に技術が変わり始め、治療効果がさらに上がってきた。肩や骨盤の手を支えとして使い、脊椎に当てた手でテンションとモーションを兼ねる方法である。
・技術
患者側臥位。術者は患者後方に立つ。
肩や骨盤を片手で支え、もう一方の手根(小指丘または拇指丘)で横突起を患者皮膚に対して垂直に圧迫、脊椎の回旋や沈み込みでテンションをかける。そのまま、当てた手で上下左右の動きを与えてモーションとし、患部を狙った治療を行う。
掌の傾きや、圧迫の方向を変化させることで、これまで以上に微妙な治療ができるようになった。沈み具合で患部の状態(硬さ)もわかり、力の集中もやりやすい。まだ発展途上だが、これからも改善の余地があるだろう。
M先生からの質問がなければ、まだこの方法を考え付くことはなかっただろう。M先生に深く感謝したい。
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