AKAの治効理論①
今回の記事は、同業の専門家向けのものです。過度に専門的なので、一般の方は読み飛ばしてください。
AKA(関節運動学的アプローチ)は効果的な治療法であり、関連書籍も講座もある。しかし、その治効理論は未だに判明していない。その意味ではAKAはいまだに「やった、効いた、治った」の「三た療法」のレベルにあるといえる。もちろん患者にとっては、効果があれば理論はどうでもいい。しかし困るのは、それを学ぶ者である。
理論のある技術は、操作の意味が明確である。学ぶにあたっても「方向・力の大きさ」などを理論から推測し、無駄の少ない試行錯誤ができる。しかし「三た療法」では、教える側さえ何を狙って治療しているのかわからないために「へたな鉄砲も数打ちゃあたる」式の試行錯誤を重ねるしかない。上達までに莫大な時間を浪費してしまう。
AKAは、現代医学にもとづく治療法である。現代医学の枠組みを使えば、治効理論を確定することはできないまでも、推測による仮説を立てることはできる。この文章は、その仮説の一つである。AKAを学ぶ人のヒントとなれば幸いである。
1. AKAとは「凹凸にあわせた外力を加えての他動運動」
AKAは、関節運動を改善し痛みや機能不全を治療する技術である。比較的小さい力で、即時に効果を得ることができるという特徴がある。
AKAの基本手技は、関節の引き離しと滑りである。特に滑りについては、他動運動と同時に関節面に合わせた外力を加えるという特徴を持っている。例えば、運動する側の関節面が凸であれば骨運動と反対方向、凹であれば骨運動と同方向へ、骨を圧迫して関節包内の滑り運動を助ける(凹凸の法則。図を参照のこと)。他の治療とAKAを分ける、もっとも大きな特徴はこの凹凸のすべりである。
AKAの技術を定義するなら、
「関節の凹凸にあわせた外力を加えつつ行う、他動運動」
となる。この定義にしたがって、効果の理由を推測する。
2. 関節運動異常の原因とAKA
AKAの治効理論を考えるにあたっては、AKAが関節のどの組織に働きかけているかを考える必要がある。関節を構成している要素は、
a.関節の両面を構成している骨・関節軟骨
b.関節内液
c.関節を運動させる筋肉
d.関節包と靭帯
となる。関節運動の障害はこのいずれかの組織の異常によって発生する。したがってAKAの治効を考えるには、これらの組織のうち、引き離し・凹凸の滑りによって改善する可能性の高いものが、有力な候補となる。以下、個別に検討する。
a.骨と関節軟骨
骨および関節軟骨に起こりうる組織異常は、関節面の破壊・変形または癒着である。加齢、事故などにより関節面が破壊された場合(変形性膝関節症など)、関節面が相互に張り付く癒着が起きた場合には、滑り運動は起こらず関節運動は制限される。
これらの異常のうち、破壊・変形は、AKAで行うような引き離し・滑りによって改善する可能性はない。関節面の癒着で完全な骨癒合が起こっているものも、改善の可能性はない。関節面の一時的な癒着は、引きはなしによって解消しうる。しかし凹滑り、凸滑りのような滑り技法とは、とくに関係がない。
以上から考えて、AKAは関節の骨または軟骨に働きかける治療法ではないと考えてよい。
b.関節内液
関節液が関節の運動に影響をもたらす場合には、関節液の不足や過剰、粘度の不足や過剰などが考えられる。一般的にはこのような問題は注射や抗炎症剤で改善される。
このような関節液の問題を、AKAのような関節運動で短時間に改善することは不可能である。したがって、この関節内液も、AKAの治効とは関係ないと言える。
c.筋肉
関節周辺の筋肉の状態が関節運動に大きな影響をもたらしていることはよくある。
しかしAKAの手技はあまり筋肉に力をかけない。直接、筋肉に働きかけている可能性は低いといえる。
筋肉の支配神経に対する再教育という説もあるが、AKAの操作はほとんどの場合、筋弛緩状態で行われるので、神経教育効果はあまり期待できない。また、一度で効果を出すことが多いことを考えても、神経教育により効果が出ている可能性は低いといえる。
さらに問題なのは、AKAの特徴である凹凸すべりが、筋肉には影響を及ぼさないことである。凹凸すべり運動も、単なる運動も、筋肉にとってはただの他動運動であり、そこに差があるとは考えにくい。
以上から、筋肉・神経に対してアプローチしている可能性は完全に否定はできないものの、低いといっていいだろう。
d.関節包・靭帯
関節包、靭帯のような結合組織に起こりうる異常は、癒着と拘縮である。結合組織は、タンパク質の繊維成分でできており、血液・リンパ液中のタンパク質繊維成分の沈着により、動きが悪くなることがある。沈着は炎症時、長期固定時などに顕著である。
結合組織が他の組織と接着した場合を、癒着という。また結合組織の繊維が不揃いに配列された場合には伸縮性を失い、動きを阻害する。これを拘縮という。
関節の一部に拘縮・癒着が起きた場合には、関節運動の方向や可動域の制限が起こる。
これら繊維成分の沈着は比較的容易に起こるが、運動やマッサージ(強擦法など)によって解消することが可能である。
関節包などの軽度の癒着は、運動によって改善しうる。しかも、癒着の剥離に対しては運動の方向が重要である。凹凸の法則が関係する可能性が高いといえよう。
以上、a~dの組織異常のうち、AKAの「関節の凹凸にあわせた外力を加えつつ行う、他動運動」操作で改善する可能性が最も高いのは、結合組織の異常である。AKAはこの結合組織の異常を解消する技術であると、推測できる。
次回は、AKAの特徴である凹すべり、凸すべりが結合組織の異常を解消する原理について考察する。
・今回のまとめ
AKAは、関節包や靭帯などの結合組織に働きかける技術である可能性が高い。
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