心と体

2007年11月 2日 (金)

TMS理論と剣豪

 前回書いた、TMS理論。心理的な問題が抑圧されることで筋肉が緊張し、痛みを引き起こすと言う理論は、考えてみればいろいろなところに波及しそうな気がします。

 非常にかけ離れた話ですが、昔の剣の達人には、座禅の修行の話が出ることが多いです。柳生宗則や白井亨、幕末の山岡鉄舟など、禅によって強さに磨きをかけた人のエピソードがたくさんあります。
 昔はこのエピソードを「物事に動じない精神力がないと、勝負に勝てないんだなあ」と、単純に考えていました。
 しかし、心理的な問題が筋肉を固くすると考えれば、話は違ってきます。恐怖や劣等感、怒りや憎しみを抱えていれば、それだけあちこちの筋肉が緊張することになります。あちこちに緊張を抱えたままでは、身体の機能が十分に発揮できないのも道理。座禅で心理的な問題…つまりは緊張を解消して、さらなる技術の向上を得たのかもしれません。

 身体能力の向上を目指す方、スポーツで今ひとつ記録が伸びない方、このアプローチはいかがでしょうか?

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2007年1月27日 (土)

祝! あるある大事典打ち切り

 納豆ダイエットのデータ捏造で、関西テレビ「あるある大事典」が、放送打ち切りとなりました。まことにめでたいことです。以前、このブログでも書きましたが(2005年12月27日「健康番組の信頼度」)、かなりいい加減な情報を流す番組でしたから…。
 とくに困るのは、患者さんにこう言われたとき。
「先生、私『あるある』で○○が身体に良いって言ってたから食べてるのよー」
 効果がないだろうとわかっていても、無邪気に信じている人に、「それ、効かないと思います」と水を差すことも言いづらく。
「さあ、どうでしょうねえ」
 と言って、お茶を濁すのが精一杯でした。だから、終わってくれてほっとしていると言うのが正直な気持ちです。少しでも医療関係の仕事にかかわっている人なら、みんな同じように感じているでしょう。それほどひどい番組だったわけですが…。視聴率、高かったですねえ。 

 実は、医療関係の番組、広告には売れる法則があります。「あるある」はそれをきちんと押えていたのですね。その法則は次の三つです。
① 勧めるものが、ハッキリしている
② 目新しい理論がついている(正しいかどうかは別)
③ 我慢させない

① は、今回で言えば「納豆を食べる」という明快さです。見た人が、迷わず実行できることが、流行する第一条件。
 これが「緑黄色野菜を一日350グラム食べる」だと、「緑黄色野菜っていうけど、具体的に何?」とか「どうやって食べるの?」とか考えなければなりません。視聴者自身が考えなければならない要素が入ると、ウケません。

② の新しい理論。今回で言えば、納豆の成分が有効、という新しさです。
 すでに知っている理論では、その効果もだいたいわかってしまいます。ところがまったく聞いたことがない理論だと「もしかしたら、これは効くかも!」と思わせられてしまいます。本当のところを言えば、新しい理論はまだ実証されていないことが多く、間違いである可能性も高いのですが。

③ の「我慢させない」。人間は、自分に都合のいい意見を優先的に取り入れる傾向がありますから、「我慢しなくて良い方法」があれば信じたくなります。
 アメリカではいまだ流行中の「炭水化物断ちダイエット」がその例ですね。多くのダイエット法が肉料理を制限するのに対し「肉を好きなだけ食べても良い」としたことが、多くの肉好きアメリカ人にウケたわけです。(余談ながら。炭水化物断ちダイエットは、インシュリンの分泌を減らして脂肪の蓄積を抑えるダイエットです。「抑える」だけですから、食べすぎれば、やはり太ります。また、糖分を取らないことは脳の働きを低下させ、肝臓に負担をかけます。健康上はお勧めできません)。

 こうしてみると、①考えるのが嫌 ②新しいものが好き ③我慢が嫌 という人間心理を見事についていて、嫌になりますね。
 「あるある」が終わっても、また同様の番組がでてくるのでしょう。捏造のみならず、いい加減な情報を流さないようにする規制もほしいものです。

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2006年7月18日 (火)

耳も違う

 人によって違うのは、見え方ばかりではありません。私の妻も、ちょっと人と違った感性を持っています。以前も書いたことがありますが、視覚については私と対極。見たものを記憶する力が強く、動体視力も悪くありません。違うのは耳というか、脳の言語野。 

 ある日、妻が歌を口ずさんでいました。始まりから正確に歌詞を追ってゆき、終わり近く。急に歌うのをやめ、私に尋ねました。
「この歌って、どういう内容の歌?」
 …冗談ではないとわかるまで、ずいぶん聞き返しました自分が歌っていた歌の内容を知らないというのです
 本人は「音として覚えていたので内容は知らなかった」といいます。歌詞を思い出してみれば、というと、1小節歌って、言葉に置き換えるたどたどしい方法で、歌詞を再現し始めました。改めて置き換えをしたところをみると、歌詞はまったく言葉として意識されていなかったことになります。普通の人なら、歌っている時点で、言葉として頭に入っているものですが。

 これほど極端な例は、さすがに一回だけでした。しかし普段でも「歌の歌詞は音の一部で、言葉としては認識してない」そうです。
 お気に入りの歌を何回聞いても、言葉としては頭に入りません。だから歌詞はサビしか覚えていないことが多く、歌詞の内容もほとんど理解していません。歌という音の組み合わせから、言葉を取り出すことが非常に苦手なのです。
 歌詞を覚えるには、歌詞カードを見るか、テレビならテロップが流れるのを見ればいいそうです。文字として入ってくる言葉なら、言葉としてすぐ記憶し、間違わずに歌えるようになります。脳の回路がどこか人と異なっているのでしょう。

 こうして考えてみると、すべての人が同じ素質、同じ五感をもって生まれていると考える教育には無理があるのではないかと思われますね。それぞれの人が、自分にあった方法を見つけられるようになれば、勉強やコミュニケーションも容易になるかもしれません。

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2006年7月13日 (木)

人と違う目…文字通りの意味で

 子供のころ、こう考えたことはありませんか?
「僕の見ているものは、みんな同じように見えているんだろうか?」
 たとえば、私には赤く見えている郵便ポストは、別の人の目には青く見えているかもしれない。しかし、誰も目を取り替えることはできません。たとえ別のものを見ていても、他人の目で見る方法がないため、一生涯それに気づくことはないわけです。
 ところが、なにかの拍子に別の視界が開けることもあります。今回の話は、私の体験談です。

 7、8年前のある日、電車に乗っているときでした。風の強い日で、窓から見える竹林が、大きく揺れています。不意に、その竹の動きに目が留まりました。
「あ、動いてる…」
 このときの感覚を表す、うまい言葉が見つかりません。竹が本当に揺れていたのです。あまりにも鮮やかに、なめらかに動いて見えました。まったく新しい見え方、「動いているもの」を初めて見たような気がしました。

 それ以前はどんな風に見えていたのか、と聞かれると困ります。新しい視界を得ると同時に、それまでの見え方を忘れてしまったからです。ただ「鮮やかに、なめらかに、動きがつながって見えた」と感じたところから見ると、ビデオのコマ送りのような断続的な動きで見えていたか、ぼんやりとだけ見えていたか、そんなところだろうとは思います。
 しかし生まれてからずっとその世界しか見ていなかった私は、動くものが十分に見えているつもりでした。視界が変わって初めて、自分以外の人が鮮やかな動きの世界を見ていたのだ、と気づいたのです。

 この「ものの動きが鮮やかに見える」現象は、しばらく続きました。テレビを見れば、人物の動きに目を奪われましたし、車の運転をしていれば対向車が大きくなってくることに感動しました。「動いて見える」ことが当たり前になって感動が薄れるまで、一ヶ月はかかったと思います。

 脳や身体の働きには、極端な個人差があります。世の中には、昔の私のように動きの見えない人もいるでしょう。逆に、早い動きを見るのが得意な人もいるでしょう。鮮やかな色彩や形の世界にいる人も、いるのではないでしょうか。
 音でも、味でも、匂いでも。人の感じているものは、本当に一人一人違うのだと実感した経験でした。 

付記
 この現象の原因は、以前に書いた速読の練習ではないかと考えています。
 速読練習は、動体視力の訓練にもなるそうです。私は「すべての球技が天敵」というほど球技が苦手な人間ですが、おそらく動体視力が極端に低かったのでしょう。訓練のおかげで動体視力が上がり、新しい視界を得たのではないでしょうか。もっとも、それでも動体視力は人並み以下ですが。

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2006年4月30日 (日)

妊婦の体重、不足もダメ

 前回、妻の妊娠中体重増加を12キロと書きました。
「多すぎる!」と思った方もいらしたでしょうか。少し前の常識では、妊婦の体重増加は7キロから10キロまでとされていましたから。しかしこの体重増加の理想値、近年変わりつつあるのです。

 今まで妊婦の体重増加を少なめに制限していたのは、主に妊婦のリスクを低減するためでした。体重が増えると妊娠中毒症の危険は増えますし、胎児が大きくなって難産になる確率も増加します。なので、体重は増加しないほうが良いとされていたのです。
 ところが最近、過度に体重制限をした妊婦からは低体重児(出生時体重が2500グラムを下回る子供。各種リスクがある)が生まれる確率、切迫流産の確率が高いことが知られるようになってきました。そこで厚生労働省は行き過ぎた体重制限を避ける意味でBMI(体重㎏÷身長mの二乗)ごとの基準を定めました。
 BMI18.5未満   9~12キロ
 BMI18.5~25未満 7~12キロ
 BMI25以上    5キロを目安に個別対応
     
 妻のBMIは19だったので(ここまで発表してしまっていいのか? 本人が見てないからいいか…)、12キロなら適正範囲内。
ところが近年はもっと大きな問題が出てきました。低体重で生まれる子供は、将来生活習慣病にかかるリスクが高いというのです。

 人間の体質は遺伝子が決定します。もちろん病気にかかりやすいかどうかも、遺伝子の影響を受けます。ところが、同じ遺伝子を持っていても、病気にかかる人もいればかからない人もいます。これは遺伝子にもスイッチのようなものがあって、条件次第で働いたり働かなかったりするためです。
 そして胎児の時に低栄養状態にさらされると、成人病になりやすいスイッチが入るというのです。たとえるなら胎児の間ずっとダイエットしていて、誕生後にリバウンドを起こすようなもの。
 この理論に沿って日本産婦人科医会が紹介している体重増加の数値は、
 BMI 19.8未満   12.5 ~ 18 キロ
 BMI 19.8 ~ 26.0 11.5 ~ 16 キロ
 BMI 26.0以上   7 ~ 11.5 キロ
 厚生労働省の数字よりもさらに高いですね。
 このような数字は、調査や研究のたびに変化するので、どこまで信じていいのか迷うものがあります。とはいえ、行き過ぎた体重制限は常識から言っても問題があります。無理の無い生活。結局はそれに尽きるのかもしれません。

厚生労働省「すこやか親子21」
http://rhino.yamanashi-med.ac.jp/sukoyaka/ninpu_syoku.html

日本産婦人科医会
http://www.jaog.or.jp/japanese/jigyo/SENTEN/food.htm

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2006年4月15日 (土)

過ぎたるはなお及ばざるが如し(論語)

 徳川家康は「及ばざるは過ぎたるよりもまされり」と言っていますが…。

 長らく、胃痛が持病でした。寝起き、食事の前後と時間を問わずです。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の痛みにしては痛み方に節操がありません。病院にも行きましたが、とくに異常は無し。まあ、気のせいだろうと片付けていました。

 ある日、何気なくテレビを見ていると、緑茶の効用について解説しているところでした。
「緑茶を多く飲む人はガンになる確率が低い」とか「抗酸化作用で細胞を保護する」とか「血圧を下げる」とか。その説明の最後に、説明担当の医師はこう付け足しました。
「緑茶が身体にいいことは良く知られていますが、あまりに飲み過ぎると鉄分の吸収を妨げることがありますし、カフェインが胃痛や食欲不振を引き起こすこともあります」
 …これか!

 緑茶が好きです。ほうっておくと、一日に20杯や30杯くらい。一日の摂取水分量の八割を緑茶が占める程です。それも渋みの強い静岡産。
 緑茶を飲む量を大幅に減らして数日。胃痛がなくなりました。腹が立つくらいあっさりと。

 緑茶が健康にいいことは広く知られています。
 お茶は、もともとは中国から伝わったもの。そのときは単なる飲物ではなく、薬の扱いでした。消化を助ける効果や、内臓を強くする効果があるとされていました。その効果が、現代医学で実証されつつあるといっていいでしょう。
 最近は、認知症(痴呆症)を防ぐ可能性まで発見されました。
 とはいえ、過ぎたるは及ばざるがごとし。何でも度を越してはいけないという話です。

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2006年4月 9日 (日)

スポーツ…上達のために脳を鍛える

 日経BPネットの記事「プロゴルファー桑田泉の一口ヒント・超スローで素振りをしよう」は、練習におけるスロー素振りの効用、姿勢や動きを緻密にチェックする重要性を書いています。ゴルファーのみならず、スポーツをするすべての人にお勧めしたいと思います。下記リンクから読むことができます。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/secondstage/tanoshimu/kuwataizumi_060403.html

 そこから派生しての話ですが。

 人間の運動は、脳の指令で筋肉が動いて成立します。脳が良い指令を出せなければ、筋力があってもうまく動くことはできません。
 運動の上達とは脳に良い動きをプログラムすることなのです。スポーツ選手が「正しいフォームを学ぶ」とか、「新しいスイングを模索する」などというのは、このプログラムの形成を表しています。

 しかしこのような考えは、まだスポーツ現場では少数派のようです。いまだに、猛練習が唯一の上達法だと考えている指導者がいて、毎日何時間も、くたくたになるまでの猛練習を繰り返させたりします。しごき、筋トレ、ランニング、千本ノック。たしかに体力はつきますし、やりとげる充実感もありますが、苦労に見合うだけの効果は上がっているでしょうか?

 やみくもな猛練習では、練習メニューをこなすだけで精一杯になり、動きの良し悪しを考える余裕がありません。未熟な動きのまま関節や筋肉に高負荷をかけるため、故障も起こしやすくなります。
 もともとセンスのある人、身体の丈夫な人は、このような練習でも強くなることができるでしょう。しかし多くの人は負荷に耐えられず、身体を壊してしまいます。治療院に来るスポーツ選手の大半が、このようなオーバーワークによる故障です。
 何人もの選手を壊しながら強いチームを作る、このような方法を、私は認めることができません。

 スポーツの上達は、脳に合理的な動きのパターンを形成すること。それを再確認すれば、猛練習以外にも上達の方法が見えてくるはずです。
 桑田氏が書いている練習方法は、そのヒントになるでしょう。

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2006年3月22日 (水)

パンチドランカーの症状と対策②

3. データ
 このデータは「スポーツ現場での脳震盪」(有限会社ナップ刊)のデータのごく一部です。詳しいデータが必要な方は、原典をあたってください。

 1969年、イギリスで三年間以上の経験を持つ元ボクサー224人を調査した結果です。それによると、全体の17%、36人がPDによると思われる障害を持っていました。
 年齢別では、50歳代で27パーセント。とくに、150試合以上を経験した元選手では、約50パーセントにPDの症状が見られました。

 データでは、年齢が高くなるほど発症率が上がっています。これはPDが時間とともに進行することを示しています。あまり知られていませんが、PDは進行性の病気なのです
 
 PDは打撃によって脳細胞が破壊され、減少することによって発症します。打撃によって脳細胞が減少しても、若い間には脳細胞の数に余裕があるため症状が出ません。
 ところが、よく言われるように人間の脳細胞は1日に10万個が死滅しています。年齢を重ねるにつれて余裕が少なくなり、足りなくなったところでPDを発症するのです。
 競技をしている20代、30代では何の症状も出ないのに、引退して何年も過ぎてから症状が現れてくることが少なくありません。

 また、試合数が多い選手ほどPDの発生率が高いという相関関係が見られます。

4. 治療法
 発症後の治療はかなり難しいといえます。脳細胞には可塑性(変化・回復の能力)がありますが、先ほども書いたように年齢とともに自然に減少してゆく性質があります。それを上回る速度で回復させるのが可能かどうか…。
 ただし年齢による脳細胞の減少にブレーキをかければ、発症・進行を遅くできる可能性があります。有酸素運動を行う、脳のトレーニングをする、酒・タバコをやめるなど、認知症治療に準じた方法は、一定の効果が期待できるでしょう。

5. 予防方法
 試合件数のデータでもわかるように、PDの症状が出るかでないかは、現役時代にどれだけ打たれたかで決まります。逆に言えば、予防の方法は「打たれないこと」に尽きます。
 寸止め、当て止めなどの方法で頭部に衝撃を与えないルールは最も有効だといえます(実戦で知られる極真空手が手による頭部攻撃を認めていないのは、卓見だといえましょう。足による攻撃は認めていますが)。ヘッドギアなどの防具は、脳のダメージを完全には防いではくれませんが、つけないよりは有効です。

 もっとも、ボクシングなど頭部への直接打撃を行うスポーツでは、このような方法はとれません。防御の技術を高め、受ける打撃を減らすことが、PDを防ぐ唯一の方法になるでしょう。これは試合においても損にはなりませんから、練習では防御に重点を置くべきだと思います。

 その他、先ほどのデータにおいては26歳までに引退した選手ではPDの発生率が低いということでした。これが試合数によるものか、年齢による回復力の差なのかは、わかりません。
 
6. ネットで
 ネットでPDについて書いているページはどのくらいかと調べてみましたが、やはりごく少数でした。詳しくはやはり、「スポーツ現場での脳震盪」を読まれることをオススメします。

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2006年3月18日 (土)

パンチドランカーの症状と対策①

 前回までの脳震盪の話に引き続き、今回はパンチドランカーについての話です。
 ボクシングなど、直接打撃制の格闘技で脳に蓄積するダメージ。それが限度をこえると発症するのが、パンチドランカーです。しかし、その具体的な症状や、予防法については、驚くほど情報がありません。調べてみましたが、パンチドランカーについて書いた資料は「スポーツ現場での脳震盪」(有限会社ナップ刊)一冊しか見つけることができませんでした。ここでは概略を記載しますので、詳しく知りたい方は、この本を調べてください(下のリンクからアマゾンにつながります)。

長いので、以下、パンチドランカーをPDと略します。

1. 定義

 脳に与えられる脳震盪性、あるいはそれより軽い衝撃による、蓄積性の脳への悪影響。

 重い軽いに関わらず、衝撃を受けた脳には少しダメージが残ります。普通は問題にならない程度の小さなダメージですが、繰り返し衝撃が加わることで蓄積し、一定限度を越えると発症します。

2. 症状
軽度

手足が震え、軽い運動障害がでる(動作が鈍いなど)。記憶力、集中力が衰え、感情が鈍くなる。

中度
平衡感覚が悪くなり、運動障害がでる(動作がぎこちなくなる)。感情の抑制が効きにくく、攻撃性が出やすい。

重度
平衡感覚が極度に悪化。手足の震えが強く、重い運動障害がでる。キレやすい性格になる。人格の崩壊。

 PDは脳の機能のうち、無意識の運動…バランスを取る、筋肉の微妙な調節を行う…の能力が落ちる病気です。このような運動を錐体外路系の運動と言いますが、どんな運動をするにも欠かせません。PDではこれが傷害されるために、手が震えたり、素早く歩けないなどの障害が生じます。
 症状は運動神経だけに起こるのではありません。記憶力、思考力の低下、また高度な脳機能(前頭前野等)が障害されることにより、感情抑制が効かないなど変化も起こり、場合によっては廃人となることもあります。
 なおPDの運動障害はパーキンソン病に似ているといわれます。元ボクサーのモハメド・アリもパーキンソン病と言われていますが、PDかもしれません。

 次回は、パンチドランカーのデータと予防策です。

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2006年3月14日 (火)

脳震盪の話②「ダウンしたら、車に乗るな!」

 前回に引き続き、脳震盪の話。今回は、危険なのに、あまり知られていない、長期症状の話です。

脳震盪と交通事故
 脳震盪で気絶することは誰もが知っていますが、その後、めまいや注意力不足が数週間も続くことは、あまり知られていません。
 注意力の不足は自覚しにくいものです。いつもどおりに行動しているのに、ミスをする。いつもなら気付いているものを、見落とす。
 歩いているときならともかく、車やバイクの運転中だったら命取りです。自損事故でも、人をはねても、その後の人生は真っ暗です。
 事故を防ぐ方法はただ一つ「脳震盪を起こした後、一週間は車やバイクに乗らない」ことに尽きます。どうしても乗らなければならない場合は、自分の判断力を信頼せず、いつも以上の安全運転を心がけてください。「ダウンしたら、車に乗るな!」と覚えてください。
 ラグビーやアメフト、格闘技など、コンタクトの多いスポーツ選手は、練習に行くときも車やバイクを避けるべきでしょう。できることなら、現役の間は車やバイクの運転をしないことをオススメします。

防具について
 日本拳法やフルコンタクト空手では、防具を使用して打ち合うことがあります。
 防具は打撃力が一点に集中するのを防ぎますが、衝撃を吸収する力はあまり期待できません(少林寺拳法の防具で、頭に衝撃を伝えないように工夫されたものがつくられているらしいです)。
 防具をつけていると、直接的な痛みがない分、打たれても平気で組手を続けてしまうことがあります。知らないうちに打たれすぎ、脳にダメージを溜め込めば、将来パンチドランカーになるリスクを増やすことにもなります(パンチドランカーについては、次回に書きます)。
 防具を過信せず、寸止め練習を取り入れるなどして、脳のダメージを減らすことをお勧めしたいと思います。

 余談ですが、上記したように脳震盪のあとは注意力の欠如が続きます。試合前の数日は頭部に衝撃を加えないほうが、本番での集中力が増すはず。良い成績を出せるかもしれません。

知られざる脳震盪長期症状
 これには、私の体験があります。  数年前、日本拳法をやっていたときのこと。当たり前のように毎週打ち合いをするわけですが、いつまでも残るめまい、あちこちに手足をぶつける不注意などが続きます。車の運転中に、かなり危ない目をみるに至り(見通しの良い横断歩道で歩行者に気付かず、ぎりぎり寸前でブレーキ)、ようやく「これはおかしいのではないか」と思うようになりました。
 調べてみてわかったのが、今回書いた長期症状です。多くの文献にあたりましたが、記載していたのはわずかに2冊でした。生命に直接の影響が無いので、重視されなかったのでしょう。しかし、これだけ車やバイクが普及してきた時代には、知らないでは済まされません。自分の、他人の命を守るために、知っておく必要があります。(資料としては「スポーツ現場での脳震盪」をお勧めします。下のリンクからamazonに入れます。

 スポーツをする方は、どうか安全な方法で競技を楽しんでください。

 次回は、頭部衝撃が重なった場合に起こる後遺症、パンチドランカー症状についてです。

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