2009年11月 7日 (土)

「平均的美人」の話

 平均顔、というのをご存知でしょうか。
 眼が上がってたり、口が大きかったり、眉毛が太かったり。人の顔はそれぞれに個性的です。そういった人の顔写真をたくさん集め、コンピュータで目の位置や大きさ、鼻の形などを足しあわせ、平均化した顔をつくります。例えば、上がり目の人と下がり目の人の写真があれば、足して割って普通の目に。大口は小口と足して割って、適度な口に。こうして数々の顔を平均した、一つの顔が完成します。これが平均顔です。
 そしてこの平均顔、たいていの場合は美男美女です。

 美男美女の条件は、顔の部品や位置のバランスが取れていること。顔が極端に下膨れだとか、鼻がむやみに大きいとかいうことはありません。特徴の無いのが、きれいな顔だと言い換えても良いでしょう(顔のパーツが非常に微妙なバランスをとっている「個性的な美人」というのもないことはありませんが)。
 多くの人の顔を平均して出来上がった平均顔は、顔の部品も位置もバランスが取れているはず。美男美女なのはあたりまえですね。

 話は変わって、だいぶ前にも書いたことがありますが、私は人の顔を憶えるのが苦手です。新学期にはクラス全員の顔を憶えるのに一ヶ月かかりました。今でも一回や二回会ったくらいの人では、まず憶えられません。その私がもっとも苦手とするのが、いわゆる美男美女です。
 先ほども書いたように、バランスが取れて、極端な特徴が無いのが美男美女。 何度見ても憶えられないのですね。

 八起堂に来てくださる患者さんでも、まだ顔と名前が一致していない方が何人かおられます。道でお会いしても気づかなかったり、お名前を尋ねなおしたりすることもあります。もし、そんな目に合われた場合には
「そうか、自分は美男(あるいは美女)なんだ」
 と、悪しからずご了承いただけると幸いなのですが…。 

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2009年10月25日 (日)

アンチエイジングいろいろ

 先日は、若い気分でいることが老化を防ぐ、という話を書きました。
 仕事がら医療関係の記事には眼を通すようにしていますが、意識してみると、アンチエイジング(老化防止)の方法って、いろいろ出ています。

1.すでにわかっているアンチエイジング

科学的に見て確実なのは、
・適度な有酸素運動
・紫外線を避ける
・タバコを吸わない

 などでしょうか。ちなみに有酸素運動は代謝を良くして血行を改善、活性酸素の発生を減らす効果があります(強すぎる運動は逆効果)。

 紫外線は、細胞を破壊する作用がありますので、当たりすぎると老化を招きます。皮膚であればシワ、シミの原因になりますし、眼であれば、白内障の原因になります。帽子や日焼け止め、サングラスで防ぐのが一般的。

 タバコはいうまでもありませんね。各種有害物質による直接の細胞損傷のほか、血管が収縮して血行を悪くしてしまい、皮膚をはじめとする組織を傷めます。数量に比例して害は増えますので、できれば少なくしたいもの。
 面白いのは、軽いタバコであっても害はあまり減らないということ。むしろ、強いタバコの方が吸う本数が少なくなるだけ害が減る、という調査もあります。

2.まだよくわかっていない諸々の…

 その他、いろいろなアンチエイジングの方法で目に付いたのを拾ってみました。

・ビタミンCの大量摂取
 細胞を老化させる活性酸素を除去する働きがあるとか。アメリカなどでは一日に1000ミリグラム摂取せよ、とする科学者もいます。基本的には摂り過ぎの害はないとされていますが、1000ミリグラムは少し行き過ぎな気もします。そして、もちろんこの方法に反対している科学者もいます。
 活性酸素を除去するものとしては、他にハーブの一部、ワインや野菜のポリフェノールにも同様の効果があるとされています。

・カロリー制限
 サルやネズミでは、食べる量を減らすと寿命が延びるという現象が確認されているとか(人間では未確認)。
 ちなみに制限は20%程度。一日の摂取カロリーが2000キロカロリーの男性であれば、20%は400キロカロリーになります。ラーメン一杯、ハンバーガー一個くらい、食べる量を減らすわけです。本当の腹八分目、満腹禁止。
 それくらいなら我慢できるかも、と思うのですが、脳科学者の池谷裕二氏が試してみたところ「カロリーを減らしたまま長期間過ごすのは想像以上につらい」ということでした。それはそうかもしれません。わたしも満腹するまで食べるほうですから。

 ただ、このカロリー制限には良い副作用があります。先ほどの池谷氏の調査では、カロリーを減らすと脳が活性化するらしく、記憶力の向上が見られたとのこと。受験生なら割り切って我慢できるかもしれません。くれぐれもリバウンドにはご注意を。

・瞑想
 瞑想といってもいろいろありますが、大雑把に言って「頭をカラッポにする訓練」です。じっと座って、自分の呼吸を数えたり、一つの言葉を繰り返し唱えたりして「何も考えない」境地を目指します。

 この瞑想、精神的なストレスを減らしたり、神経症の治療にも使われていますが、瞑想を5年間続けた人は、実年齢よりも平均12歳若く見えたという調査があります。ストレスの害が減るせいなのか、感情が安定して眉間のシワが減るせいなのかはわかりません…。


 昔の日本では、年上扱いするほうが喜ばれる時代もあったとのこと。それが西洋化してしまったのは惜しいような気もします。いや「年寄りらしくおとなしくして」などと言われなくなったのは、やはり良いことでしょうね。

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2009年10月 3日 (土)

転ばぬ先の…

 なぞなぞです。「いつも転んでばかりいる虫は?」

 昔は、今ほど転ぶことについてのニュースは聞きませんでした。それが社会の高齢化で、転倒が寝たきりの最大原因とされるに及んで、クローズアップされましたね。
 かく言う我が家でも昨年の暮れ、母が転倒して骨折しました。もっともこれはスポーツ中、他の選手との接触が原因なので、一般的な例からは外れますが(おかげさまで、最近はすっかり元気です)。

 転倒の原因にもいくつかありますが、最大の原因はつまづくことです。
 よくあるケースが、段差。街でも家でも、歩くところには段差はつきものです。歩道と車道の間にある段差や、建物の入り口の段差。家の中では、廊下と部屋の境目。大抵は数センチ程度のもので、一見つまづきそうには見えないのですが、多くの方がそこで転倒しています。
 
 原因は、目測の誤りです。段差のあるところでは、誰でも段差を越えられる高さに足を上げて通ります。ところが筋力の衰えや、運動不足による感覚の狂いで、正しい高さにまで足が上がらないことがあるのです。そうして越えたつもりの段差に足を引っ掛けて、転倒することになります。

 ここでも「使わないものは衰える」の原則は有効です。
 とはいえ「足を上げる」という動作は日常ではあまり行いません。せいぜい、階段を登るときくらい。ウォーキングも、心肺機能を鍛える意味ではいいのですが、あまり足を高く上げることはありません。時々は、膝を高く上げる足踏みなどするのも良いと思います。
 やってみるとわかりますが、足をしっかり上げると、かなりこたえます。雨でウォーキングができない日の、補助運動としてどうぞ。

 ちなみに、上記なぞなぞの答えは「テントウムシ」です。ちょっとつまらなかったので、もう一つ虫のなぞなぞを。
「オスとメス。虫の世界で立場が強いのはどちら?」








 立場が強いのは、メス。泣いている(鳴いている)のはオスばかりだから、とのこと。あしからず。

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2009年9月11日 (金)

古傷の痛みにお灸が効く

 肩こりに、腰痛に、お灸を使っている人は、意外と多いものです。せんねん灸などをはじめとして手軽なお灸も増えてきましたからね。

 ところでこのお灸、ケガや手術の古傷にも効果があるって、ご存知でしたか?

 手術やケガの跡、傷口は盛り上がった線になることが多いです。

 人間の皮膚は、構造の異なる何層もの重なりでできています。ところが、手術やケガではそのつながりが断たれ、無理に寄せられてくっついた形になります。皮膚はぶあつく、硬くなって、うまく動きません。

 皮膚は、骨や筋肉を包むもの。動きにあわせて伸びたり、縮んだり、動いたりするから、楽に運動できるのです。ところが傷口の部分では、伸びも動きも悪くなります。動くたびに、引きつれて痛むというわけですね。

 こうした傷口の痛みに対しては、マッサージするのも一つの手です。
 傷口部分をつまんで、引っ張ったり、つまみ上げたりするのです。あちこち動かしているうちに傷口の組織が整理されて、すこしずつ動くようになってきます。しかし、この方法、有効ではありますが、痛いのですよ。

 そんな方のために良いのが、お灸です。

 昔から言われていることなのですが、お灸には筋を伸ばす力があるというのです。科学的に言えば、熱刺激によって組織の再生力を増し、柔軟性を取り戻すのだといえるでしょうが、あまりはっきりとはしません。
 治療方法は、いたって簡単。痛む傷口をさすってみて、痛みの強いところ、皮膚の動きの悪いところにお灸をするだけです。

 お灸は、ご自宅でされる場合には「せんねん灸」などの簡易灸がいいでしょう。強さのランクは様々ありますが、大抵の場合は一番弱いもので足ります(せんねん灸では「竹生島」がこれにあたります)。

 なお、お灸をするときには熱さを我慢しないこと。あまり我慢しすぎると、水ぶくれなどができることがあります。「熱いなあ」と感じるようになったら、外してください。

 

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2009年8月28日 (金)

手首のかんたんマッサージ

 手首、不思議だと思いませんか? 曲げることはもちろん、すぼめる(親指と小指を近づける)こともできます。

 こんな器用なことが出来るのは、手首が細かな骨のあつまりで出来ているからです。Tenohone
 右の図は、手のひらを甲の側から見たものです(下の部分に、腕の骨がつながる)。

 手のひらの根元、わずか数センチ四方の中にある骨は、全部で八個。どれも、豆粒くらいの小さな骨です。この骨が、それぞれに動くことで、手首の柔軟な動きができるようになっているのです。

 肩こりや、腕の痛みで悩んでいる方を診ていると、この手首の骨がうまく動いていない方が見受けられます。
 手首の動きが悪くなると、普通に手首を動かすのに、いつも以上に力を込めて動かさなければなりません。手首を動かす筋肉は腕(肘と手首の間)にありますから、知らず知らずのうちに、この部分が張ってきます。このコリ、疲れは腕から肩、首にまで及びます。

 手首は、使いすぎると不調を起こしやすいものです。文字をたくさん書く方、楽器を演奏する方、パソコンのマウスで精密な作業(作図など)をする方はご注意ください。
 
・手首マッサージ
 手首の不調は、軽い間は自分で治せます。Tenomassa
 座布団や椅子のマットなど、柔らかいものの上に手を置き、もう一方の手で図の斜線部を押さえます。そのまま皮膚を引っ張り回すように、ぐるっと大きくマッサージしてください。次に、裏返して手のひらの部分も同じようにマッサージします。
 力はかなり強め。この動きで、手首周辺の組織が引っ張られ、ひいては細かい骨も引っ張られて、柔軟性を取り戻します。

 手が疲れたなあ、と思ったときにお試しください。

 ちなみに自分以外の人にやるときには、相手の手首を掌の間に挟むようにして。皮膚が荒れない程度に注意してください。

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2009年8月10日 (月)

五十肩と親指の関係

 世の中には、いまだに科学的に解明されていない病気がいくつもあります。それも、ごく身近に。

1.謎の病気、五十肩

 五十肩。これも、謎の病の一つです。なぜ起こるのか、いまだに解明されていません。親兄弟や知り合いで、一人や二人は悩んでいたのを見たことがあるでしょう。

 ある日、急に肩が痛くなり、寝ていても痛む。腕を上げたり、後に回したりすると、痛む。こういうのが典型的な症状です。

 急に痛くなる上、動きも悪くなるものですから、非常に心配する人もあります。年齢によっては「もう私の肩はダメになったのかしら」なんて言ったりして。でも、心配はいりません。半年から一年もすると痛みが消え、治ってしまうのも、特徴の一つです。もちろん治る理由もわかっていません。

 動きにくいという後遺症が残ることがあるので、治療院では、痛みを抑えつつ、動きが悪くなるのを防ぐ治療をします。

2.手の痛みに注意

 ただ、これまで見てきた患者さんの傾向から言うと、五十肩になる人に、一つの傾向が見えてきました。手首から先、とくに親指周辺に不調がある人は肩が痛くなりやすく、また痛みが長引くようなのです。

 解剖学の本で骨格や筋肉を見てみると、五十肩でよく痛くなる肩の前面には「上腕二頭筋」があります。この筋肉は腕を曲げるために働く筋肉ですが、同時に前腕(肘から先)を回転させる働きをする筋肉なのです。おそらく、手先の動きが悪くなったことで、前腕を緊張させてつかわなければならなくなるせいでしょう。

 たくさん文字を書くこと、楽器、大工仕事。あまりに集中して手を使うときは無理の無いよう、ご注意ください。もし手の痛みが肘、肩へと上がるときには、ご相談ください。

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2009年4月20日 (月)

もうすぐ紫外線の季節

 今年は桜が咲き出してからすぐに冷え込んだので、花の時期が長かったですね。もっともすぐに初夏並みの気温になったので、あっという間に葉桜になりましたが。

 新緑の時期は、日光の強くなる時期でもあります。
 紫外線は夏だけの問題と考えがちですが、注意するべき季節は夏至をはさんだ数ヶ月。つまり、5月くらいには対策を考えなければなりません。

・サングラスも
 
紫外線対策には、帽子、長袖、日焼け止め薬。
 
それに加えて、もう一つおすすめしたいものが、サングラスです。

 紫外線の季節、太陽光は木々や路面を照らします。眼は、いつも紫外線を含む太陽光線を受け止めているわけですね。

 眼の病気の一つ、白内障は眼の水晶体が白く濁る病気です。この病気は加齢と、紫外線が原因となっていることが確認されています。発病するのは歳をとってからですが、それまでの生活で受けた紫外線の量が影響するとのこと。若いうちからの対策が必要です。

 対策としては、サングラスが一番です。単に色が付いているだけで、紫外線を防げないサングラスもありますから、説明札を見て「UV400」という表示を選んでください。これは波長400nm(ナノメートル)以下の紫外線を防ぐと言う意味で、有害な光をかなりの割合で防いでくれます。

・100円ショップでも売っている!
 
そんな本格的なサングラス、どこで買えばいいの? ということですが。
 不思議なことに、
UV400加工のサングラスは100円ショップでも買うことができます。最初は「本当かな?」と思ったのですが、何年たっても行政指導が入らないところを見ると、本当なのでしょう。
 考えてみれば、メガネの原価は材料費と加工費のみ。UV400加工のプラスチック板を安く仕入れられれば、不可能な価格ではありません。

 そういえば、眼鏡屋で売っている高級品と比べると、いかにも重いです(メガネ屋の商品はポリカーボネイトを使ってたので、薄くて軽かった。1800円)。そして作りも雑。
 私はメガネに付けるクリップタイプを使っていますが、クリップ部分をペンチで調整しないとうまく作動しなかったりします。このあたりが100円の限界でしょう。

 ただ、ポケットに突っ込んだり、落っことしたりという雑な扱いにはかえって向いているのかもしれません。私は愛用しています。

 

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2009年3月19日 (木)

腰はあんまり曲がらない

 前回、腰の骨はねじれるようにできていない、と言う話をしましたが、今回はその続き。

 小中学生のころ、体力測定で「立位体前屈」をやらされましたよね。立ったまま前に体を曲げて、手がどこまで届くか調べるテスト。苦手でしたね。手が床に付くことがなかったですから(今は付きます。小学生のときより体が柔らかい不思議)。
 当時、腰を曲げるテストだと思ってましたが、違うようです。

1.腰はあまり曲がらないSebone

 背骨は、骨と椎間板(クッション)を交互に積み重ねた構造になっています。その背骨が曲がるときには、右の図のように椎間板の弾力で曲がっています。つまり曲がるのは椎間板の弾力分だけ。
 手足の関節など、動く構造がきっちり作られている部分と比べると、大きく曲げるのに向いていないことがわかります。

 それどころか、弾力の範囲を超えて無理に曲げると、椎間板を痛めるおそれもあります。

2.骨盤を動かせ!

 本当は、身体を前に曲げるのは股関節の役目です。
 具体的に言うと、太ももの外側にぽっかり出ている丸い部分。このでっぱりの位置に股関節がありますので、これを支点に、骨盤ごと前に傾けるのが、正しい前かがみのやり方です。

Kosimage_2   右の図は、先ほどの立位体前屈をしているところです。頭の高さは両方とも変わりませんが、左側のほうが、腰骨の曲がりが大きいのがわかります。骨盤が水平なため、背骨を大きく曲げるしかなかったのです。

 右のほうは、股関節で身体を折り、骨盤を前に傾けた状態。骨盤が前に傾いているので、背骨があまり曲がらなくても、頭が下がります。

 股関節で曲げる、と言うと難しそうですが、お尻をちょっと押し出すつもりでやると、自然に骨盤が傾き、楽に曲がります。

 試しに立位体前屈をやってみてください。これを意識するだけで数センチ違ってきますよ。

3.横向きでも同じYokomage

 横に曲げるときも、同じです。
 曲げる方向と反対側に、ちょっとお尻を押し出すようにすると、骨盤が傾き楽に曲がります。

4.身体の動かし方でケガをすることも

 これまで「腰痛の最大の原因は前かがみの姿勢です」と言っていましたが、この通信を書いていて、それだけではないなあ、と実感しました。椎間板や腰椎などを傷める背景には、構造が知られていないゆえの無理な使い方もあるようです。
 憶えていたほうが良い身体の構造、今後も時々お知らせしようと思います。

私事ながら

 骨の構造については、私自身も失敗しています。
 まだ会社員だったころ、肩が疲れたなあ、と思って背中と腕を強くストレッチしたとたん。
 ゴキッと音がして、肩の関節がズレた感じがしました。痛みは無いし、動くのですが、なんとなくダランとのびた感じがします。

「これは、関節が外れたかなあ」と思ったのですが、どんな病院にいけばよいかもわかりません。「押せば何とかなるだろう」と、素人の生兵法で横から押し込んでみたところ…。

 ゴキッ。

 全然関係ない鎖骨のあたりで音がして、急に痛み出しました。それからかなり長く、違和感が残りましたね。

 この仕事に入って肩関節を勉強した時、初めて自分のやったミスがわかりました。
 詳しくは書きませんが、あえてたとえればスライド式の戸を押し開けようとしたような…。

 何事にも知識は必要なものです。

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2009年3月 4日 (水)

腰はねじれない

 スポーツで「腰をねじって」と言われることがあります。ところが、あまり知られていない事実があるのです。
 
腰は、ねじれません。

1.ねじれない構造
Youtui
 右の図は腰の骨、腰椎の簡略図です。

 背骨の構造は、骨と椎間板(クッション)を交互に積み重ねた構造になっています。それだけだと不安定なので、後(背中側)に、上下の骨が支えあうための突起が出ています(椎間関節)。

 拡大図を見るとわかるのですが、上の突起を下の突起が挟み込むようにできています。上下には動けますが、ぶつかってしまうので左右には動けません。 
 つまり前後左右に曲げることはできても、回転させることができないのです。

 ですから「腰をねじるのだ」と思い込んで無理に腰をねじっても、回りません。骨や筋肉に負荷がかかるだけです。
 それどころか、無理に回せば骨の突起部が骨折してしまうことさえあります(いわゆる脊椎分離症)。

2.背中の骨は回る。肩も。

 「いや、腰ねじってるよ、ほら!」
 と言う方もいるとは思いますが…。 

 胴体で、ねじれることが可能なのは胸・背中の部分だけです。背骨のこの部分(胸椎といいます)は、突起が斜めについているのでぶつからず、横に動くことができるのです。
 また、肩の骨(肩甲骨)は、鎖骨を中心として大きく左右に動かせます。
 つまり、ねじれているのは背中の上の部分と、肩だということです。

 ではなぜ「腰をねじっている」と感じるのか。
 胸・背中がねじれると、胸椎についている肋骨が横に移動します。するとお腹の皮膚や筋肉が肋骨の移動に引っ張られるので、腰がねじれているように感じるわけです。

 ということで、実際にスポーツなどで「腰をねじる」場合には、「みぞおちの高さでねじり、腹筋と腹圧で力を溜める」気持ちでやるほうが、解剖学的には良いことになります。見た目はほとんど同じ。意識の持ち方の問題ですね。

3.余談ながら

 ねじりを腹筋、腹圧で受け止めると言うことは、筋力や腹圧しだいでねじれの反発が違ってくるということですね。ためしに身体をねじった状態で、強く息を噴き出すと、ねじれが押戻されます。

 武道で大きな声で気合を入れるのは、呼吸の圧力で胸椎のねじりを押戻し、力を出す意味もあるかもしれません。


もう一つ余談ですが…

 自宅にかかってくる電話の中には、怪しい投資話もあります。
 株式投資とか、金地金の投資だとか、土地の投資だとか。このあたりまでは、怪しいけれども、詐欺とまでは断言できない電話です。もちろん、お金を出したりはしませんけど。
 しかし、先日かかってきた電話は、あからさまに詐欺の電話でした。

「池浦さんのお宅ですか?」


「はい」

「実はいい投資があるんですよ。年利6%の債券なんですけどね」

「はあ」

アフリカ政府公認の債券なんですよ」

「…いりません」ガチャ(切)

アフリカ政府って、なんだよ!」
 とは、あえてツッコミませんでした。
 手はツッコミの形に動いてましたけど。

 若い女性の声でしたが、もしかしてこれも、学力低下の表れ?

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2009年2月 5日 (木)

腰痛の話

 腰痛には、いつもじわじわ痛い慢性の腰痛と、急性のぎっくり腰があります。この二つ、違っているように見えますが、原因はほとんど同じです。負担がかかっている腰が、ゆっくり痛くなるか、あるきっかけで痛くなるかだけの差です。

1.前かがみはつらい!
 腰痛の一番の原因は、前かがみの姿勢です。
 長い棒を片手で持っていると考えてください。まっすぐに立てて持っていると楽ですが、斜めにして持つと、かなりつらいものです。前かがみの姿勢はそれと同じで、腰の負担は、立っているときの数倍におよびます。この負担は腰や背中の筋肉を疲れさせ、背骨の椎間板を傷めます。

2.予防法
 予防策にはいろいろあります。
 時々前屈して腰の筋肉をストレッチしてやる(無理に姿勢を良くするのは、筋肉を疲れさせるので逆効果)。腹筋を鍛えて負担を減らす。腰痛体操をする…。

 最も簡単な対策は、歩くことです。
どんな筋肉にもいえることですが、疲れた場合に必要なのは血行の改善です。そしてもっとも有効な血行改善策は、動かしてやることなのです。
 椎間板も同じです。椎間板は適度な振動を受けることで栄養を補給され、弾力性を取り戻してゆく性質があります。
 適度な動きと適度な振動。その二つを実現する最も簡単な方法が、歩くことなのです。力みすぎると血の巡りが悪くなるので、力をいれずダラダラ歩くことがお勧めです。

3.ところで八起堂の見解としては…
 上記の話は、一般的な腰痛対策の話です。「足の八起堂」としては、これに足の影響も加えたいと思います。腰痛に悩む方を診ていると、足首が固く、つま先の上がらない方が多いのです。
 つま先が上がらない人が膝を曲げると、足首の固さがネックになって、滑らかに歩けません。その方向の足を無理に持ち上げることになり、腰痛を起こしているのではないかと思われる節があります。特に思い当たる理由がないのに、偏った腰痛が起こる方は、一度ご相談ください。

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2009年1月 2日 (金)

あけましておめでとうございます+新宣言

また新しい一年が始まりました。

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて八起堂治療院は、今年、新しい宣言をします。それは、

 効果を感じない・治療が合わない方には返金

 という宣言、つまり保証宣言です。 

・空のどんぶりにお金はいらない

 例えば、ラーメン屋に入ったとしましょう。店員がラーメンを作ります。ところが、そのラーメンを運んでくる途中でひっくり返してしまい、空っぽのどんぶりを持ってきたら。あなたは、お金を払いますか?

 私なら、払いません。ラーメンを食べに来たのですから、どんぶりが空では困るのです。

 でも治療業界では、これが当たり前でした。決まった時間だけ施術したら、効果があろうがなかろうが、患者さんが快適だろうが不快だろうが、お金をもらうのが普通です。

 しかし患者さんは「症状を治す」ため、「気持ちよくなる」ために治療院に来てくださるはずです。としたら効果がない、気持ちよくもない治療は「空のどんぶり」ですよね。
 患者さんは自分に合った治療を受ける権利があります。ダメな治療にお金を払う必要はありません。

 返金保証は、治療院としては珍しいかもしれません。しかしそれは現在の話。
 将来はこれが標準になって、患者さんが効果のある治療を選んで受けられるようになると信じています。

・返金内容の詳細

 治療を受けてみて「効かない、合わない」と思われたら、お申し出ください。三回分を上限として、それまでに払われた治療費をお返しします。
 治療に効果があるかどうかは、一、二回の治療でわかっていただけると思っています。


 新しい患者さん以外でも
「最近、効きが悪い。八起堂での治療をやめたい」
 という方はお申し出ください。やはり三回分を上限として、返金いたします。

 八起堂は今年も「中身のある治療」を心がけてゆきます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

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2008年11月20日 (木)

腰痛から考える幸福論

 先日、NHK「病の起源 … 腰痛」を見ました。その中でも「慢性の痛みは脳の中に痛みの回路を作り出し、実際には無い痛みまで感じさせる」というくだりは、興味深いものでした。

1.痛みの専用回路
 人間の神経は、使うほど流れが良くなります。スポーツの練習など見ていると、繰り返しているうちに上手になり、意識しなくても出来るようになりますね。繰り返しによって脳に専用の回路ができ、早く確実に信号が伝わるようになるのです。 

 同じことが、痛みでも起こります。痛みが繰り返されると脳に「痛みの専用回路」ができあがり、痛みに「上達」します。しまいには痛み回路が勝手にはたらき、原因が無くても痛みを感じるようになるとのこと。
 このことがわかってから、病院でも麻酔薬を早めに使うようになってきたそうです。腰痛も、長く我慢をするよりは早めの処置が良いようです。

2.不機嫌専用回路
 ところでこの「専用回路」の話、医学を離れても通用しそうな気がします。
 例えば、顔の筋肉を動かしているのも神経。使うほど流れがよくなります。毎日不機嫌な顔をしていると不機嫌顔の専用回路ができるわけで、やがては理由がなくても不機嫌な顔になるはずです。
 リンカーンは「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」と言ったそうですが、ふだんどんな顔をしているかが、顔のつくりまで変えてしまうことがわかります。

 怒りや悲しみ、嫉妬といった感情も、脳においては信号として処理されます。したがって、怒りを感じている時間が長い人は「怒り専用回路」ができて、より怒りやすくなるでしょう。悲しみにひたっている人は、すぐに悲観的になる回路が出来てくるはず。
 逆に、日々幸せを感じている人は「幸せ専用回路」ができて、幸せを感じやすくなるのではないでしょうか。

3.ポリアンナは正しかった
 回路が自動的に出来てしまうのだとしたら、なるべく幸せの回路を作りたいもの。
「そんなことを言っても、腹が立つことが起こるんだから仕方ない」
 という声がありそうですね。

 もちろん悪いことがあれば、誰でも腹が立つものですが。
 怒りには「その場で怒る」と「思い出して怒る」の二種類がありますよね。その場の怒りはしかたないとして、思い出して怒る回数は、減らせます。腹が立つことを思い出しかけたとき、わざと別のことを考えて頭から追い出せばいいのです。
 昔から「落ち込んだら身体を動かせ」とか、「失恋の痛みを癒すには新しい恋を」といわれるのは、悪いことを思い出さないための対策だったのでしょうね。趣味に没頭してもいいし、笑える本やテレビを見ることもできます。
 使われない回路は衰えて、やがては消滅します。回路は変更できるのです。

 昔、ハウス名作劇場「愛少女ポリアンナ」の主人公は、寝る前にその日の良い事を数える「良かった探し」を習慣にしていたと聞きました(すみません、番組は観てなかったので、伝聞)。
 最初に聞いたときには「なんと説教くさい話か」と思ったものですが、今にして思えば科学的根拠のある幸福技術だったことになります。
 ポリアンナは正しかったのですよ。たぶん。

4.ストレスが作る腰痛
 話はもどって、同じNHKの番組で、精神的な緊張が腰への負担を増やす、という実験がありました。ストレスが作る緊張が、筋肉を固くしてしまうのです。実際に患者さんを見ていても「ストレスがコリになってるなあ」と思う方は少なくありません。身体の緊張が強すぎて、力が抜けないのです。
 だとしたら、幸福の回路が出来ればストレスも減って、腰痛や肩こりの予防にもなるはず。なるべく幸せの回路に変更していきたいものですね。

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2008年10月 2日 (木)

足の治療で、速く走れる場合

 八起堂治療院は足首の治療を重視しています。それは足首の傾きやズレを整えることで、膝や腰にかかる負担が減らせ、痛みが減らせるからです。

 ところでスポーツ選手に足首の調整をするとどうなるでしょうか。理屈から言えば、調整で動きのバランスが良くなり、速く走れても不思議ではありません。

 このたび、明治国際医療大学(明治鍼灸大学)陸上部と、京都府立南丹高等学校陸上部の協力により、この実験を行うことが出来ました。以下、そのレポートです。私は陸上競技は門外漢なので、必要事項の不備などありましたら、お教えいただけると幸いです。

1.当日の条件
・ 天候 晴天 微風 
・ 場所 明治国際医療大学 陸上競技場(タータン)

2.実験手順
①ウォーミングアップの後、100メートルを一回走り、記録をとる。
②足首を中心に関節の治療、調整を行う。(一人あたり5分程度)
③100メートルを走り、記録をとる。
 計測方法は手動計測を用いました。

3.結果
・高校生

 高校生で1回目、2回目を走ってくれたのは5人。全員に調整を施しました。

名前  自己ベスト   一回目 → 二回目

A君   12.08    12.24 → 12.10
B君   11.18    11.18 → 10.88 (自己ベスト更新)
C君   11.45    11.63 → 11.53
D君   11.98    12.15 → 11.93 (自己ベスト更新)
E君   12.60    12.30 → 12.30 (調整前に自己ベスト更新)

 5人中4人のタイムが、調整後に記録短縮しています。しかし比較群(調整を施さない被験者)をおかなかったため、調整によってタイムが短縮したのか、たまたま一回目よりも二回目の方が走りやすい環境になっていたのか(風速、温度など)はわかりません。

 ただしB君、D君の二人が、調整後に自己ベストを更新していることは、意味があるかと思われます。E君は調整と関わりなく、一回目で自己ベストを更新しています。

・大学生
 大学生では、全体を二組に分け、片方のみに調整を施すことで、比較群を設けました。

名前  自己ベスト 一回目 → 二回目
F君    11.40    11.63 → 11.52  -
G君   11.30    11.74 → 11.61  -
H君             13.06 → 12.76  -
I君     11.96    12.62 → 12.27  調整有り
J君    11.30    12.15 → 12.03  調整有り
K君    11.80    13.30 → 12.45  調整有り

 全員のタイムが短縮しています。調整しなかったランナーの記録も短縮していることから、何らかの理由で2回目のコンディションがよかったと考えることができます。

 実験群と比較群の数字を見る限りでは、はっきりした差を見てとる事はできません。
 ただし施術後に記録が落ちた例はないので、少なくとも害はないようです

4.施術を受けた人の感想
・ 「足が軽い」
・ 「動きやすい」
・ 「体重が真っ直ぐ抜ける」
などなど、おおむね調整後の感想は良好でした。

5.まとめ
 結論を出すにはサンプルが少なすぎますが、足関節の調整のみでは、調整群と実験群で、わかりやすい結果は出ませんでした。
 もっと多数で実験すれば、記録のばらつきに埋もれていたような、微妙な差が出る可能性はありますが、それには実験をかさねる必要があります。

 ただ、個々の選手に着目すると、別の見方も出来ます。
 今回の実験前に今までのケガの記録を書いてもらったのですが、過去(小中学生のとき)に足関節の捻挫、不調があったと書いてくれた人が4人いました。B君、D君、I君、J君です。このうちB君、D君が自己ベストを更新しています。

 自己ベストという結果を重く見るなら「足関節に捻挫の後遺症を持っていた人では、施術によって記録が伸びる場合もある」と言えそうです。
 いずれにせよ、さらにサンプル数を増やして実験しなければ、十分な結論はだせないでしょう。

 今後、実験の課題としては、
①さらに多くの人数で同じ実験をしてみることと
②長期で追跡調査をした場合の結果を見ること
③他の部分の動きを改善する実験をしてみること
 などが挙げられます。

 ③についてですが、足首の他に、走る際に大きく動かす肩、骨盤などの調整を考えています。 
 もし、実験に参加しても良いという方、おられましたら、ご連絡をいただけると幸いです。

 なお、足首の捻挫後遺症で現在困っておられる方は、このブログの「そのまま体操8」を参照してください。本格的な施術には及びませんが、ある程度の効果が期待できます。
そのまま体操 http://hakkidou.cocolog-nifty.com/kawaraban/cat20225055/index.html

  

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2008年8月 3日 (日)

ダイエット 食欲を抑えるには

 先日、面白い本を読みました。「ヒトはおかしな肉食動物」(高橋迪雄 講談社)。消化器官の比較などから、人間の食性について考える本です。その中で「すべての生物は、十分な必須アミノ酸を摂取するまで食べ続ける」という意味の記述がありました。

1.理想は高栄養と低カロリー
 例えばネズミ。主食は穀物、麦などの穀物ですが、穀物には必須アミノ酸であるリジンが少ないので、十分なリジンが取れるまで穀物を食べつづけます。当然、かなりのオーバーカロリーになりますが、余ったカロリーは、走る事で消費します。よく、ネズミがネズミ車を回しているのは、必要上の問題なのですね。走るのを止めると、簡単に肥満してしまうとのこと。

 肉や魚を多食する現代の日本でアミノ酸の不足はまず起こりません。
 しかし、ビタミンとミネラルでは同じことが起こりえます。それについて書いていたのが「丸元淑生のシステム料理学」(文春文庫 現在絶版)でした。

 人間が生きてゆくためには、食物のカロリーだけでなく、各種ビタミン、ミネラルが必要で、一種類でも足りなくなれば病気になります。ところが現代の食生活は、カロリー中心に偏りがちです。
 例えばコンビニで「焼肉弁当」を買って食べるとしましょう。肉の脂肪とタンパク質、白飯の炭水化物で、カロリーは十分にとれます。ところが、野菜類はあまり入っていないので、ビタミンCを始めとするビタミン類が足りません。
 不足すると、身体は「足りない」という信号を出し、食欲を起こします。もっと多く食べて、不足を補おうとするのです。そこでまた焼肉弁当を買ってくれば、カロリーは増えて、不足は同じ。いくら食べても満足感がなく、際限なく食べてしまって肥満を進行させます。
 ここで、バランスよく栄養を摂れると、むやみな食欲に襲われなくてすみます。つまり、食欲を抑えてダイエットを成功させるには、少ないカロリーで足りない栄養素を補う食べ方が必要だということです。

2. 炭水化物絶ちダイエットの難関
 足りないものを欲しがる、という意味では炭水化物も同じです。人間の脳は、栄養分としてブドウ糖(炭水化物)を使うようにできており、炭水化物が足りないと、食欲が出てくるようになっています。そこで脂肪の多いものを摂ったりすれば、やはり食欲は満たされず、カロリーだけが増えてゆきます。
 つまり炭水化物を適度にとっているほうが、かえって食欲が過剰にならず、ダイエットは成功しやすいはず。もちろん多すぎる炭水化物はやはり脂肪の元ですし、一度に多く摂りすぎると血糖値が急激にアップ→ダウンして、過剰な食欲を招きますから、適量を守る必要があります。

 巷でよく聞く「炭水化物絶ちダイエット」には、「肝臓に負担をかける」「コレステロール値が上がる」など、医学的な面からの批判があります。
 しかし、それよりもまず空腹感と戦い続けるのが大変そうです。私の身近に、炭水化物断ちダイエットを成功させた人はいませんが、貫き通すのが難しいからかもしれません。

3.食欲を抑えるには、バランスのよい食事
 少ないカロリーで十分な栄養、つまりアミノ酸、ビタミン、ミネラルと、適量の炭水化物をとることできれば、身体が要求する食欲は抑えられます。あとは「つい食べてしまう食習慣」だけ。
 また、ビタミン・ミネラルが足りていると、脂肪や炭水化物の燃焼が良いので、効率よくカロリーを使うことができます。カロリーを使う点からも、バランスの良い食生活は欠かせません。

 現代人の場合、不足しているのは主に野菜類、豆類です。こういった食材をとりいれて、と言いたいところですが、それが難しい場合には、マルチビタミンのサプリメントや、野菜ジュースを使うのも一つの方法でしょう。

 マルチビタミンダイエットなんてのも、できるかもしれません。

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2008年4月 7日 (月)

献血とコレステロールと体重

 「A型の血液が不足していますー」
 という呼び声に応えて、十年ぶりに献血をしてきました。近鉄奈良駅の5階に献血ルームがあるのです。きれいな部屋に本やマンガ、テレビがあり、ジュースや水は自動販売機で飲み放題。ほとんど漫画喫茶状態の中、400mlを献血しました。
 それから二週間後、赤十字から封書が届きました。血液を検査したついでに、コレステロールやγ-GTPなどの血液の検査結果が届くのです(健康診断の代わりに使えて便利!)。前回、前々回の検査結果も載っていて、比較できるようになっています。驚いたことに10年前の検査結果がしっかり残っていました。
 10年前に比べて、コレステロールが少し増えていました。といっても、標準値の真ん中くらい。もともとが少なめだったのです。

 このコレステロールの数値には思い出があります。
 これももう10年近く前になりますが、生の牡蠣を食べてあたったことがあるのです。猛烈な吐き気とめまいの中、採血検査。と、医者が検査結果を見て
「コレステロールが低いな。あまり良いもの食わしてもらってないだろ」

 これを聞いた妻が、怒ったの怒らないの。
「なんて失礼な医者だ、ちゃんと食べさせてるのにー」
 ちなみに妻は、同じ牡蠣を食べたのに、あたりませんでした。不思議です。

・コレステロールが多いほうが長生き?
 コレステロールと言えば、最近の医学ニュースで「血液のコレステロール値が高いほうが、長生きする傾向が見られた」という研究結果が報告されました。
 一般的には、血液中のコレステロール値が高くなると動脈硬化を起こしやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の原因になるとされています。一般的には総コレステロールの値を220mg/dl以下にすることが必要だとされています。
ところが大規模な調査によると、死亡率が低かったのは、総コレステロールが240mg/dlから260mg/dlだったそうです。現在の基準では立派な高コレステロール血症です。
 「コレステロール値は高めのほうが良い」という研究は、すでに何回か発表されています。コレステロールは体内で生産されるホルモンの材料であり、また細胞の壁をつくる成分でもありますから、不足すれば血管が弱くなっても不思議ではありません。
昔の日本では、脳卒中による死亡率が今よりはるかに高いものでした。その原因は、塩分の取りすぎといわれていますが、コレステロールが足りなかったせいではないか、という説もあります。
アメリカ人の基準をそのまま持ってきたコレステロール値ではおかしい、と主張する学者もいます。
 とはいえ、コレステロールと死亡率の関係はまだ確定してはいないそうです。今後の研究を待ちたいところですね。

・そういえば体重も
 この、基準と寿命とのズレは、体重についても言われています。
 体重を、伸長の2乗で割った数字を、BMIと言います。例えば私の場合には体重が66キログラム、伸長が1.75メートルですので、
     66÷(1.75×1.75)=21.55
 となります。このBMIが22のときに、もっとも病気のリスクが低いとされています。ところが、統計的に調査すると、死亡率は必ずしもそうなっていないようです。高齢になるほど、高め(つまり太め)の方が長生きする確率が高いとされています。これも、まだ議論の余地のあるところ…。

 健康の数字は、人種により、年齢、性別により、場合によっては個人個人で適切に決めなければならないものかもしれません。

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2008年3月22日 (土)

アレルギーとキャッチフレーズ

 八起堂治療院も、開院から三年。記念の春とともに、いよいよ始まりましたね、花粉の季節。

・閑居して不善を為す…アレルギー編
 ご多分に漏れず、私も花粉症です。仕事柄、だらだら流しているわけにもいかず、薬のお世話になっています(運転をする場合には、点鼻薬を使用。飲み薬より眠くなりにくいので)。

 花粉症と言うと、杉、ヒノキが代表格ですが、北海道には杉やヒノキはほとんどありません。では花粉症はないのかというと、やっぱりあるのです。白樺の花粉症です。
 白樺と言うと北国・高原を代表する樹木で、いかにも風情があるのですが、かなりひどい花粉症だそうです。しかも、白樺アレルギーではリンゴが食べられなくなると言います(情報提供、当院常連のK様)。白樺とリンゴが近い種類の植物であるため、連鎖したアレルギーが起きるわけです。

 現代病と言われるアレルギーですが、原因の一つは環境の清潔さだそうです。
 もともと人間の免疫細胞は、細菌やウイルス、寄生虫といった、身体外からの攻撃を迎え撃つ役目があります。ところが現代日本のように清潔なところに住んでいると、細菌にも寄生虫にもあまり出会うことがありません。こうなると、免疫細胞たちはヒマをもてあますことになります。
 やることがなく、ヒマでヒマで、あまりにヒマな免疫細胞たちは、戦う相手に飢えているのです。花粉やダニの糞などは、本来ほとんど害のないものですが、これを見つけた免疫細胞は、これぞ仕事、と大立ち回りを始めます。免疫細胞の無駄な大騒ぎ、これがアレルギーなのだそうです。

 現在開発中のアレルギーの治療には、この原理を応用したものがあります。その一つは、予防接種のBCGを定期的に注射するというもの。実験では、かなりの割合で症状の軽減があったといいます。何でもいいので、早く実用化して欲しいものです。

・閑居して不善を為す…身体編
 私は、身体についても同じことが言えると考えています。患者さんの身体を診ていると、ところどころに「動かない部分」がある方が多いのです。
 我々は使い慣れた部分だけを使って、慣れない部分を使わない癖があります。筋肉を使わないでいると、細く、弱くなります。神経も過敏になり、軽い刺激で痙攣を起こすこともあります(ふくらはぎの痙攣「こむらがえり」も、あまり歩かない方に多いものです)。皮膚や関節は、繊維成分が沈着して硬くなり、動く範囲が狭くなっていきます。
 痛みと言うと、使いすぎばかりを考えがちです。しかし、治療の時には、動かなかった部分を動かして、機能を取り戻してやることも必要です。

・近況
 多くの店に、キャッチフレーズがありますよね。牛丼の吉野家なら「うまい、早い、安い」、ラーメン屋なら「日本一うまい」。今まで見た中で面白かったのは「遅い、まずい、無愛想」という店。通りすがりに見た看板ですが、あの店はまだ健在なのか、人事ながらときどき心配になります。
 八起堂は、どんな治療院でありたいか。それを考えてきました。痛みを取ること、気持ちよくなってもらうことはもちろん重要です。加えて、日々を前向きに生きる人の、力になりたいと思いました。
 開院三年を機に、この言葉を掲げてますます努力してゆきたいと思います。 
「歩き続けるあなたを応援します」

 また、すぐに修正するかもしれないですけど。

付記
「これ、どうだろう?」と、妻に尋ねました。
「いいんじゃない。治療院名の七転び八起きにもつながるし、娘の名前も入ってるし」
いや、決して娘の名前を踏まえたわけでは…。

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2008年3月 3日 (月)

治療院の季節感

 今年は雪の多い年でしたね。その冬もようやく終わりそうで、日差しが温かいです。暦の上ではもうすぐ啓蟄。虫たちが動き始める季節とされています。

・治療院の季節感
 私たちのような治療の仕事には季節は関係ない、と思われがちなのですが、やはり季節ごとの風物詩はあります。

 春の風物詩は「草取り腰痛」です。これから初夏にかけて、腰痛の患者さんが増えます。腰痛を訴える方に、
「何か、思い当たることはありますか?」
 こう尋ねると、半分以上は、こう答えられます。
「庭の草取りをしまして…」
 つまり、前かがみの仕事が続いたゆえの疲れが、腰痛になって現れるわけですね。ちょっと血行を良くして、ゆっくりすれば、比較的簡単に治る腰痛です。

 夏の風物詩は「孫腰痛」。特にお盆過ぎに多く発生します。
 遠くに住んでいる子供さん、お孫さんが、たまに帰ってくるときが危ないです。会わないでいる数ヶ月で、お孫さんの体重は急に増えています。そこを抱っこするものですから、腰にドシンときます。しかも、たまに会うお孫さんですから、抱っこをせがまれると断れません。ついつい無理をしてしまうわけですね。

 もっとも、この「孫腰痛」の方は、
「孫は来てよし、帰ってよし」
 などといいながら、どことなく楽しそうです。
 なお、この「孫腰痛」は、お正月にも多発します。

 秋は…。秋は、思い当たるような風物詩がありません。ばたばたしているうちに季節は変わります。

 冬の風物詩は「こむら返り」。ふくらはぎが痙攣する、あれです(こむら、は古い言葉でふくらはぎのことです)。もっとも、こむら返りが私たちの目の前で起こることは少ないので、あとで訴えを聞くだけですが。
 こむら返りが冬に多いのは、筋肉が寒さの刺激で痙攣を起こすためです。もう一つ、筋肉は使わないでいると、ちょっとした刺激で痙攣を起こしやすくなるのです。寒さで外に出られず、運動不足になるのも原因ではないかと思います。

・近況
 ところで、こんなことを書いている私も今、軽い腰痛を感じています。孫腰痛ならぬ、娘腰痛です。出張治療の時以外は自宅にいるので、子供をだっこする時間が増えます。
このところ、寝付くときには親の抱っこで歌を聞きながら眠る、という癖がついていて(しかも曲名の指定つき!)、本人は上機嫌で、両手を振り回して踊ったりして、なかなか寝なかったりします。長い時には一時間近く…。抱っこが腰にこたえます。この腰痛は、もうしばらく続きそうです。

 そういえば、花粉症の季節も始まりますね。私は20年来の花粉症で、いわばベテランの花粉症です。だから何だ、と言われると困りますが。

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2008年2月19日 (火)

老化は生活習慣病?

 大学生の頃、ゼミの担当教授は50代の教授でした。ところがこの教授、どう見ても30歳そこそこにしか見えなかったのです。どういう謎があるのか、みんなで噂したものです。
歳をとる、ということを医学的にいえば、細胞の分裂能力の低下による新陳代謝の不足、となります。骨や筋肉は弱くなりますし、皮膚をはじめ、全身の水分量は減少します。細胞レベルでこのような変化が起こることは事実ですが、それだけで老化を語ってはいけません。

1.老化は生活習慣と
 70歳でエベレストを登頂したプロスキーヤーの三浦雄一郎さん。筋肉の年齢は30歳代、骨密度は20歳代だったそうです。
人間の体力は、だいたい20歳、30歳くらいをピークにして、衰えていきます。このピークは、ほとんどの人で変わりません。ところが、そこからの低下の速度が違います。Nenrei

 右の図でわかるように、落ちる人ではあっという間にピークの数分の一になってしまいますが、落ちない人はほとんど下がりません。生活習慣によって、下がる速度には大きな個人差があるのです。大げさにいえば、老化そのものが生活習慣病だといっていいのです。
ちなみに、三浦さんは65歳までは家の裏山に登るのもつらいほど衰えていたとか。そこからわずか5年でエベレスト登山ができるところまでいけるのですから、何歳になっても取り返しがつくことがわかります。

2.紫外線を防ぐ
 筋肉や骨の話はよく言われているので、その他の話を。他に生活習慣が影響する老化に、紫外線の影響があります。紫外線は少量ならビタミンDの合成を助け、身体の抵抗力を増す働きがありますが、量が過ぎれば細胞を破壊し、老化を促進します。
 よく知られているものとして、皮膚があります。皮膚は紫外線を受ける量に比例して老化しますから、紫外線を避けるか避けないかで、外見がかなり変わってきます。いつまでも若い肌を保ちたい人は、日傘を使う、日焼け止めを塗るなど、気をつけたほうがいいでしょう。自ら日焼けサロンに行くなどもってのほかです。

 ほかに紫外線の影響をうける場所は、目です。老化が関係する眼の病気として、白内障や黄斑変性があります。白内障は眼の水晶体が白く濁って見えにくくなる病気、黄斑変性は、眼の奥の視細胞が集中しているところ(黄斑)の毛細血管が異常に増殖して、やはり眼が見えにくくなります。
 この二つの眼の病気に共通しているのも、紫外線です。これらの病気を防ぐには、眼に入る紫外線を減らすのが一番です。日差しの強いときにはサングラスをかける。メガネをかけている人は、レンズをUVカット加工のものにするなどすることが必要でしょう。

3.その他習慣
 食生活も、大事な生活習慣です。
 まだ完全に証明されたわけではありませんが、身体内の活性酸素を防ぐために、ビタミンCなどの抗酸化ビタミンが有効と言う説があります。新鮮な野菜や果物を取るのは必要でしょう。
 歳をとると、あっさりした食べ物が良い、と思われがちですが、実際には相当量のタンパク質が必要です。筋肉を維持するにも、内臓を強く保つにも、タンパク質が欠かせないからです。

4.ところで
 さて、最初に話に出た大学教授ですが、健康法として行っているのは真向法だけだということでした。これは主として股関節の柔軟性を高める健康法で、たった四つだけの運動で構成された、おそらく日本一簡単な健康法です(興味のある方は、インターネットか本屋で)。
 私の知る限り、この真向法をやっている人は、なぜかみんな年齢よりも若く見えます。股関節の柔軟性と、外見の若さには、きっと何か関連性があるとにらんでいるのですが…。

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2008年2月 8日 (金)

北風のマッサージ太陽のマッサージ

 「マッサージは強いほど効く」と誤解している方は、少なくありません。しかし実際には、強すぎるマッサージは百害あって一利なしです。強く押すことで逆にほぐれにくくなっていることもあるのです。

1.北風のマッサージ
 北風と太陽のたとえ話は、皆さんご存知のことと思います。太陽と北風が、どちらが旅人のマントを脱がせることが出来るかを競った、あの話です。
 北風が力ずくでマントを吹き飛ばそうとしたところ、旅人はマントを押さえて飛ばないようにしました。結局、温めて脱がせた太陽が勝ち、北風は負けてしまいます。
 マッサージも同じです。凝っている筋肉は緊張しているので、そこに力を加えれば対抗してさらに緊張してしまいます。それでも効果を出そうとして無理やり押せば、今度は細胞の柔らかい部分が押しつぶされてしまうのです。一時的には柔らかくなっても、つぶされた部分が腫れて、さらに凝りを感じることになります。

2.太陽のマッサージ
 マッサージの治療効果は、大きく分けて3つしかありません。一つは血行を改善すること。二つ目は、癒着した部分を緩め、ほどくこと。三つ目は、神経の過剰な働きを鎮め、緊張を緩和することです。

 血行を良くするのに必要なのは、強い力で押しつぶすことではなく、筋肉(あるいは皮下組織)を動かすことです。それには柔らかく、大きく動かすマッサージが効果的です。
 硬くなった筋肉にも、強い力は必要ありません。ご自分で揉むときには、強く押すかわりに、一箇所にかける時間を長くしてみてください。じっくり押さえていると、時間とともに、筋肉に手が沈みこんでいくのが感じられます。
 癒着した部分を緩め、ほぐす場合にも、力の強さは二の次です。この場合に必要なのは、癒着している場所を見極める的確さと、狙った場所に正確に力を伝える操作です。
 神経の働きを鎮める場合にいたっては、力の強さはかえって邪魔になります。首のコリなど、強い力では緩まないものが、軽い軽い刺激でスッと緩むことさえあります。

3.絶対にしないで欲しいことSenaka
 強いマッサージにもいろいろありますが、絶対にやめていただきたいことがあります。
 それは、背中や腰の疲れを取るために家族に踏んでもらうことです。強さを調整できず、体重がそのままかかるため、いためてしまうことが多いのです。また、間違って脇腹に近いところに乗ってしまうと、肋骨を折る恐れもあります。
 その代わりになる方法として、背中に枕を当てて寝転がる方法があります。安全で、気持ちの良いものです(あまり長い時間やりすぎるとやはり痛くなるので、このまま眠るのはやめてくださいね)。

 家族に踏んでもらって身体をいためた人は、私が直接みた方だけでも、一人や二人ではありません。くれぐれもご注意ください。家族に揉んでもらうときは、必ず手でお願いいたします。

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2008年1月19日 (土)

治療にもお国柄

 鍼灸や按摩は、もともと中国から伝わったものです(マッサージは西洋から入ってきたもの)。では、本家である中国と日本の鍼灸は似ているのか、というと、これがあまり似ていません。診断にも治療にも大きな違いがあります。

1.複雑な中国、シンプルな日本
 中国で行われている鍼灸(中国では漢方も含む)は、「中医学」としてまとめられています。その特徴は、とにかく複雑なことです。
 診断も、恐ろしく項目数の多い問診を行うのみならず、顔色から声、匂いまでを判断に用います。それを五行説、陰陽、表裏などの面から(内容は複雑なので説明は省きます)分析して、診断を行います。
 治療も複雑で、鍼を打つ場所だけでなく、刺した鍼をどのように動かすか、どのように配置するか、など、それぞれに何種類もの方法があります。
 
 日本で多く行われている経絡治療は、同じ思想背景を持ちながら、きわめてシンプルになっています。診断は手首の脈を中心に決定します。五行や陰陽も使いますが、ほとんどの場合は問題のある場所、行き過ぎているか、足りないか、が判断の基準になります。治療もそれほど多くの方法は用いません。
 中医学も経絡治療も、治す人は治すので、どちらが優れているということはありません。治療する人(場合によっては治療を受ける人)の好みですね。

2.治療にも国民性
 日本に最初に鍼灸が伝わったのは奈良時代とされていますが、その時期の日本の医学書、「医心方」にしてからが、すでにかなり簡略化されたものでした。この傾向は、昔からのもののようです。
考えてみれば、仏教も日本に入ってきてから簡略化されました。「南無阿弥陀仏」の念仏をひたすら唱える仏教などは、その簡略化の最たるものでしょう。そして、簡略化されることによって、爆発的に普及しています。

 何でも複雑にする中国人、何でも簡略化する日本人。人間の身体はどこでも共通。しかし、その人体の治療にまで、国民性は影響を与えているものなのですね。面白いものです。

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2008年1月 6日 (日)

あけましておめでとうございます

 旧年中のご愛顧を感謝いたしますとともに、皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
 今回は、正月関連の話を二つほど。まあ、正月というには少し遅れましたが…。

1.御屠蘇の話
 御屠蘇は正月に欠かせないお酒となっていますね。御屠蘇を正月に飲むのは、唐の時代の中国で始まった習慣だとのこと。日本では、平安時代からだそうです(インターネット辞典、ウィキペディアより)。
 子供のころから変わった匂いのするものだなあ、と思っていましたが、これが単なる香料でなく、薬だと知ったのは、大人になってからです。
 「一年間の邪気を払い長寿を願って正月に呑む薬酒」となっていますが、単におまじない的な要因で飲むのではありません。実は御屠蘇の原型「屠蘇散」は、胃の薬なのです。では、どうして胃の薬が、長寿に効くのか。これには、東洋医学の思想が背景にあります。

 東洋医学では、人間が持って生まれてくる「先天の気」と、後に外部から取り入れる「後天の気」が、健康に必要であると考えています。このうち、先天の気を司るのは「腎」(現代医学で言う腎臓とはことなります)。そして胃は、後天の気に関わるとされているのです。
 胃は、食べ物から気を取り入れる器官と考えられていました。つまり胃が丈夫なら、後天の気を十分に取り込める → したがって健康、ということになるのですね。この「胃が健康のもと」という思想は他の部分にも現れていて、鍼灸の診断である「脈診(手首の脈で全身の状態を見る)」でも、胃の気を重視します。胃の気が充実していると、治りが良いと考えるのです。また「奥の細道」にも出てくる足三里の灸。健康の灸として有名ですが、この足三里も、胃のツボです。
 よく「食欲があれば大丈夫」などといいますが、胃が基本という考えは、そのあたりから出たのかもしれません。
 
2.三日坊主のために
 「新年に新たな決意 → 三日で挫折」
 この挫折は、もはや永遠のパターンと言って良いでしょう。運動なんかもそうですね。毎日必ず1時間歩く、などという決意も、日がたつにつれて薄れてゆくもの。

 片付けの極意の一つに「ワンアクションの収納」というのがあるそうです。片付けの行動は、動作数が少ないほど、心理的な抵抗が少なくて、続けやすくなるというのです。
 例えば「棚に食器を置く」収納は「置く」というワンアクション。ところが、扉を開けて置く収納は「開ける」「置く」「閉める」という3アクションになります。
さらに、扉を開けて前のものをよけてから置く、となると「開ける」「よける」「置く」「戻す」「閉じる」の5アクションになってしまいます。アクション数が多くなると、面倒くさくなって続きません。よく使う食器をワンアクションで収納できるようにすることが、長続きのコツだといいます。
 運動も同じです。ウォーキングの場合「帰宅して」「着替えてから」「出かける」となると、3アクションになって、心理的な抵抗が大きくなってしまいます。そこで帰宅途中で回り道するか、せめて着替えないで出かけるようにしたほうが、続きやすいといえます。

 そのほか「ノルマを決めない」というのも有効です。
 ウォーキングで言えば「一時間歩く」と決めると、空き時間が一時間ないときには「時間がないからやめよう」という方向に傾きがちです。そこで単に「一日一度は歩く」と決めておくほうが、続きやすいというのです。

 では私自身はどうか、というと、以前この通信で書いた「なわとび5分」も三日坊主になってしまいました。現在は、家のテレビの前に運動の道具を置いています。出かける必要もなく、もちろん着替える必要もなく、「ながら」で出来るので、これだけは続いています。

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2007年12月19日 (水)

視力と肩こり

 数日間、頭痛が続いていました。じわじわと始まり、少しずつ強くなる頭痛…。

1.緊張性頭痛
 痛みの感じから、いわゆる「緊張性頭痛」だということはわかりました。緊張性頭痛というのは要するに、肩こり、首こりによる頭痛です。
 頭には筋肉はほとんどありませんが(正確には噛筋や表情筋といった筋肉の端っこが少々)、帽状腱膜という膜に覆われています。首こりや肩こりがひどいと、この膜が引っ張られて頭が締め付けられ、痛むのです。孫悟空の頭の輪に似ていますね。

2.さて、私の頭痛ですが
 このような頭痛を起こすことは今までにも何度かありました。しかしたいていは前かがみの作業が長く続いて、首が疲れたときで、今回には当てはまりません。
 頭痛が始まったときにしていたこと…、そういえば、貯まっていた新聞をまとめて読んだなあ、と思ったときに気付きました。
「目だ!」

3.目の疲れと肩こり
 目の疲れが肩こりにつながることは少なくありません。患者さんでも、パソコンをよく使う方などによく見られます。特徴としては、首の横にある筋肉が凝ってくることと、頭痛につながりやすいこと。
 よく発生するのは、左右の視力に極端な差があるときと、メガネの矯正度が強すぎて「見えすぎる」ときです。強い矯正にあわせようとして、目の筋肉が緊張するために、首や肩の緊張を招いて、コリになります。

 視力の問題が肩こりにつながることは知っていたのに、自分のことには気付かないものです。新聞の読みすぎにしては緊張が強いので、翌日眼科医へ。視力測定で、左右の矯正視力が違っていることがわかりました。しかも。

「メガネは弱めに作ってあったんですか。えーと、今は矯正視力で1.5ありますから、かなり度が強くなってますね。見えすぎるでしょう?」と眼科医。

メガネの度が強くなっているって?

「まあ30代も後半になりますと、目の調整力も少しずつ弱くなってきますから、だんだん遠視気味になってくるんです。老眼と言うと言葉が悪いのですが…」

 要するに、老眼だそうです…。
 皆さんも、急に肩こり・頭痛がひどくなったときにはご注意ください。

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2007年12月 2日 (日)

薄着と厚着

 冬になると寒さが身に染みます。この季節になると迷うのが、厚着をするか薄着をするかという問題です。昔はよく「薄着が健康のもと」といわれたものですが、厚着には厚着の、薄着には薄着のよさがあります。

1. 薄着の力
 薄着が健康のもとと言われるのは、自律神経を鍛えることができるからです。自律神経は環境に対応して、意識しなくても体温を上げたり、血流を調整したりする働きがあります。まるでエアコンの自動制御のような、非常に便利な機能です。
 ところがこの自律神経、他の器官と同じように、使わないと少しずつ衰えてしまいます。ある程度、環境の変化に対応しているほうが、身体の調整能力は保たれて良いのです。とくに子供のときに鍛えるのが良いとされています。
 薄着のときには、温度変化がすぐに身体に影響します。そこで自律神経が鍛えられ、身体の適応能力を上げることになります。

 もう一つ、これは個人的な推論なのですが、薄着はメタボリックシンドロームの予防になる可能性があります。
メタボリックシンドロームは「高血圧、高血糖、高脂血症」の三つのうち、二つ以上が該当する状態です。原因の一つが内臓脂肪であることはご存知の通りです。あとは、どうやって内臓脂肪を減らすかです。
 
 少し前のことですが、南極越冬隊の装備品に「南極ビスケット」なる携帯食料があったそうです。驚くのはその成分で、なんと脂肪が重量の45%を占めているのです。日本で試食した時には、ほとんどの人が油あたりで気分が悪くなってしまったとのこと。ところが南極では美味しく食べられたというのです。
 南極のような寒いところでは、身体はどんどん脂肪を燃焼させて体温を上げようとします。いくら南極ビスケットの脂肪分が高くても、すぐに使い切ってしまうので平気で食べられるというわけです。南極には及ばないにせよ、薄着でいれば体温を上げるためにどんどん内臓脂肪を使うことは間違いありません。

 ただ、誤解を生じないように書いておきますが、ダイエットに使うのは難しいと思います。寒さはたしかに脂肪の燃焼を促進しますが、同時に食欲を増加させ、皮下脂肪を増やすようにも働くからです。皮下脂肪は内臓脂肪のように悪さはしませんから、多少増えても健康上は問題ないのですが…。
 もちろん食べる量を増やさないでいられれば、脂肪が燃焼した分は痩せるのが早まるはず。興味のある方は、試してみるのも面白いと思います。

 なお、すでに血圧の高い人、心臓に問題のある人には、急激な温度変化が危険をもたらす可能性もありますので、薄着はおすすめできません。
 肩こりの強い人も、より凝る可能性があるので、あまりおすすめしません。

2.厚着の意味
 厚着の価値は、体温の急激な変化から身体を守ってくれることにあります。前の項目で薄着をおすすめしなかった方、血圧の高い方や心臓に問題のある方には、これが役立つのです。
 脳溢血、心臓発作などの症状は、温度変化によって誘発されることがあります。温かいところから急激に寒いところに行くと、寒さに対応しようとした血管が収縮し、血圧が一気に上昇するのです。
 厚着をしていると、温度変化の影響がゆるやかになります。その分、血圧の急な変化もなく、危険が少なくなるというわけです。

 もう一つ、冷え性の人にも厚着は有効です。
 冷え性は、体内の熱が足りないときに起こることが知られています。寒いとき、内臓や脳の温度を保つために、手足への血流を減らしているから冷えるのです。
 そこで厚着をして体温を逃がさないようにし、熱を余らせてやると手足にまで血液がめぐって冷えが治まります。
 なお、冷え性には風呂上りに手足に水をかける刺激療法も有効です。

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2007年11月21日 (水)

寝違えのウラ技

 朝起きた時に、首が回らなくなっている。ムリして回すと、痛みが出る。これが、いわゆる寝違えです。
 寝違えはほうっておいても数日で治るものですが、せめて痛みは軽くしたいもの。痛みを軽減する簡単なウラ技をご紹介します。

1.手順Netigae
 痛むのは、たいてい片側ですね。痛む側、肩の後ろで、背骨から指の幅三本分くらい離れたところに手をかけて、前へ向かって引っ張る。
 引っ張ったまま、思い切り息を吸い込み、ついで思い切り吐く。これを2,3回繰り返します。これで終了。
 普通の寝違えなら、これだけで痛みが半減しているはずです。

2.説明
 これは何をしているのかというと、肋骨を動かして、首の筋肉を緩めているのです。
 寝違えのときには、首の筋肉がひどく緊張しています。首の筋肉を直接揉んでもいいのですが、揉むとかなり痛みが強いものです。
 そこで、背骨と肋骨とのつなぎ目を手で押さえ、深呼吸で肋骨を動かしてやります。専門的な説明は省きますが、この動きが、肋骨周辺を柔らかくします。首の筋肉は多くが肋骨と関わっていますので、筋肉の緊張も解け、痛みが減ると言うわけです(専門的な内容に興味のある方は、右のカテゴリー「治療技術論」の2005年11月5日、「AKAの治効理論④」を参照してください)。

 寝違えで治療院にこられる患者さんにも、最初に行う治療です。これで痛みを減らしたあと、全身の調整を行います。寝違えは、首の問題と言うよりも、全身の歪み・緊張が首に現れるもののようで、手、肩、背中など広い範囲からの治療が望ましいです。

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2007年11月13日 (火)

温めるか冷やすか

 関節などが痛いとき、湿布を貼ったりしますね。温めたり冷やしたり、どちらにすればよいか、と聞かれることが少なくありません。

1.冷やすわけ
 患部を冷やすのは、炎症を抑えるためです。
 一般的に「腫れる」時には、組織で炎症が起きています。細菌が入ったとき、打撲のときなど、余分なものを排除して回復するために、患部に血液が集まっているのです。
 ところが、この炎症があまりに大きいと、回りの組織にまで連鎖して炎症が広がり、かえって回復が遅れてしまいます。そのため、冷やすことで炎症の広がりを抑えようとするのです。
捻挫や打撲、関節の腫れなどでは冷やすことが必要です。

2.温めるわけ
 温めるのは、患部の血行を良くして回復を早めるためです。筋肉の緊張があまりに強いとき、疲労が強いときなど、血管が圧迫されて血液の循環が悪くなります。栄養も酸素も行き届かないので、回復が遅れてしまいます。そこで温めることで血液の循環を増やし、回復を助けるのです。また、温めることによって緊張を緩和し、痛みを和らげる作用もあります。
 じわじわと痛む痛み、慢性の痛みでは温めることが適する場合が多いものです。

3.どちらを選ぶか
 炎症が起きているか、血行不良が起きているか、それによって選ぶ方法が変わります。わかりやすいのは、痛む部分を触って、温度を調べる方法です。
 痛む部分が、他の部分よりも熱く感じるときには、炎症が起きているときです。この場合は冷やすほうが良いのです。湿布もいわゆる冷湿布をします。
 痛む部分を触っても、他の部分とさほど温度差を感じないとき、また冷たく感じるときには、炎症が起きていません。この場合は、温めるほうが治療には良いでしょう。

 迷ったときには、自分の感覚に従うのが確実です。冷やすことと温めること、試しに両方をやってみて、気持ちの良いほう、痛みの減少するほうを行ってください。

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2007年10月21日 (日)

肩こり腰痛が治る本

 読んだだけで腰痛が治る、という評判の本をご存知ですか?
 題名は「サーノ博士のヒーリング・バック・ペイン」。あやしげなオカルト本ではなく、れっきとした治療の本です。
 うさんくさい話だなあ、とお思いでしょうが、少しお付き合いください。

1. いまだわからない腰痛
 一般に、腰痛で病院にいくと、まずはレントゲンをとって骨を調べます。それでも原因がわからないときには、MRIで椎間板と神経を調べる、というのがお定まりのコース。
 ところが腰痛の多くは、この検査では異常が発見できません。逆に、レントゲンやMRIでは異常があるのに、全く痛みを感じないでピンピンしている人もいます。

 原因不明腰痛の大半は、筋肉性の痛みと考えられています。筋肉の緊張と疲労による痛み、ということですね。我々の治療もこの線にそって行っています。
 しかし、たくさん働いていても腰痛にならない人もいますし、ちょっとしたことで痛みが出る人もいます。その差が何なのか、何が直接の原因になるのかなど、まだ不明なことがあります。腰痛は、身近なようでいて、実はわからないことの多い症状なのです。
 もちろん筋肉の血行改善など、治療をすれば良くなりますが、もっと別の方法で治そうとするのがこの本です。

2.緊張と腰背痛Senzaiishiki
 この本の特徴は、腰痛や肩こりの原因を、心理的なものとしたところにあります。
 といって「痛みは気のせい」といっているのではありません。「TMS(緊張性筋炎症候群)理論」といって、心理的な理由による筋肉の酸欠状態が、痛みを引き起こしていると考えるのです。著者はニューヨーク大学医学部教授ジョン・E・サーノ博士。

 我々は毎日、怒ったり、笑ったりします。こういった気持ちが素直に表せるときには問題が起こりません。ところが、なかなか感情を表せない場合もありますね。そんなとき、人によっては悲しみや怒りを表さないように、心の中に深く、いわゆる潜在意識にまで押し込んで隠してしまいます。すると、押さえつけた感情を思い出さないように押し込める努力が背中の筋肉を緊張させ、血行障害・痛みが発生します。誰でも、感情を抑えようとしたときに、思わず手や肩に力が入ってしまった覚えがあると思います。それが、背中で起こっていると考えればわかりやすいでしょう。
 一たび痛みが出ると、その恐怖がさらに緊張を呼んで痛みが慢性化する、というのがTMS理論の概要です。

3.TMSの治療
 サーノ博士によるTMSの治療は簡単です。まず、ほとんどの腰痛が骨の異常などと関係ないことを説明し、恐怖感を取り除きます。ついでTMS理論を説明し、心理的な問題が痛みを起こすことを理解してもらうだけです。痛みの原因が身体でなく、心であると納得すれば、問題は心に戻ります。つまり、身体の痛みが消える、というわけです。
 実際に、納得しただけで多くの人の痛みがなくなったそうです。理解して受け入れるだけなので、本を読んだだけで治った、という人もでるわけですね。ヘルニアがあると診断されていたのに痛みが消えた人もいれば、何年も抱えていた腰痛が跡形もなく消えたという人もいるそうです。

 もちろん、この治療がすべての人に当てはまるわけではありません。実際に骨や関節が原因の痛みの場合には身体の治療が不可欠です。
 しかし、心理的な緊張が腰背部の緊張を呼び、痛みを作り出すという意見には、納得するものがあります。私の臨床経験から見ても、生真面目な人、我慢する人の身体は緊張しやすく、腰痛や肩こりを抱えているケースが少なくないのです。心の影響で腰痛や肩こりを起こしている人の割合は、かなり多いでしょう。そういう方には、この本が効果を発揮する可能性は高いといえます。

 この本の価格が2100円。八起堂治療院で一回治療をうける料金の、ほぼ半額。追加費用はありませんし、副作用も全くありません。腰痛、肩こりでお悩みの方、一度読んでみる価値はあると思うのですが、いかがでしょうか? このブログの右側、オススメ本のところにいれてあります。

「サーノ博士のヒーリング・バックペイン」ジョン・E. サーノ (著), 春秋社  2100円

上記の本の翻訳者が書いた本として
「腰痛は怒りである」長谷川 淳史 (著) 春秋社 1365円もあります。こちらの方が、やや簡単になっています。

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2007年9月17日 (月)

老化と背中の曲がり

 少し前のことですが、頭の無い人が歩いているのを見たことがあります。足、腰、背中があって、その上にあるべき頭がない。
 もうオチはわかりますよね。背中と首が思いっきり曲がったおばあさんでした。頭が肩よりも低くなるほど曲がっていたわけです。

1.背骨の構造Tuikanban
 背骨は右の図のように、積み木と座布団を交互に重ねたような構造をしています。積み木に当たるのが椎骨、いわゆる背骨です。座布団に当たるのが椎間板と呼ばれる組織で、クッションの役目をしています。それが首に6組(頚椎一番と二番の間には椎間板がないので)、肩から腰までに12組、腰から骨盤までに5組、合計23組積み重なって出来ているのが、人間の脊柱です。
 椎間板は弾力があり、ショックを吸収し、また変形して背骨の運動を作り出します。

2.若い人の曲がりは
 一般的に「背骨が曲がっている」といわれるときに、もっとも多いのは、筋肉や結合組織(スジなど)の癖によるものです。筋肉が特定の方向だけで緊張したり、結合組織が厚くなって伸びなくなったりすると、背骨の構造が引っ張られて曲がったままになります。骨盤に傾き癖がある場合、極端な疲労による筋肉の硬化などの場合に起こります。
 この場合には、骨の構造そのものは変形していませんから、原因となっている歪みや、筋肉の緊張が取れれば、回復させることが可能です(もちろん、治療の開始が早いほうが、治りが良いのは言うまでもありません)。

3.お年寄りの曲がりは
 お年寄りの腰曲がりは、若い人の腰曲がりとは違い、構造そのものの変化によるものです。
 椎間板は、たとえて言えばこんにゃくやゼリーのようなもの。多くの水分を含むことで弾力を保っています。ところが歳をとってくると、水分が減って薄く、固くなってしまいます。薄くなった分だけ背が低くなり、前に傾いて曲がります。

 背骨の骨折も腰曲がりの原因になります。背骨も、年齢が上がるにつれて少しずつ弱くなってきます。いわゆる骨粗しょう症です。
 弱くなってしまった背骨は事故などのきっかけで、折れます。折れると言うよりは、空き缶を踏んだときのようにつぶれます(圧迫骨折)。やはりつぶれて高さが低くなった分だけ、曲がります。

 この場合の背骨の曲がりは、構造そのものが変化しているので、治すことが出来ません。骨折も、添え木を当てることが出来ないので、元通りの形に直すことが出来ません。腰曲がりを防ぐには、予防が重要になります。

4.予防は
 背骨の骨折を防ぐことについては、普通の骨粗しょう症と同じです。カルシウムの摂取と、適度な運動が骨の強度を守ります。
 椎間板についても、やはり適度な運動が必要です。椎間板のような組織は、伸び縮みすることで栄養を取り込むように出来ています。ですから動いて刺激を与えることによって柔軟性を長続きさせることが出来ます。
 もっとも、長時間にわたって負荷をかけ続けると、逆に栄養を吸収できなくなってしまいます。農作業などでかがみこむお年寄りに腰曲がりが多かったのはそういう理由です。何でも行き過ぎは禁物。
 
 皆さんどうぞお気をつけて。

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2007年9月 4日 (火)

身体を包む皮膚

 マッサージと言えば筋肉ばかり相手にしているようですが、皮膚も重要な治療対象です。今回は、皮膚治療の話を。

1.皮膚の健康
 肩や背中が痛かったり、重かったりするときには、もちろん筋肉、関節をマッサージします。しかし、それ以上に皮膚の治療が効果を発揮することがあります。それは、皮膚の固さや柔軟性の不足が症状を起こしている場合です。
 例えば、肩や腰の痛みが長い場合や、腫れがあった場合。またアトピーなど、皮膚そのものの炎症があった場合にも血液中の成分が沈着して、皮膚の動きが悪くなることがあります。
 皮膚には多くの働きがあります。皮膚が柔軟に保たれ、よく働いていてはじめて、強い身体が守られるのです。

2.皮膚は包む
 皮膚は身体の表面をくまなく覆って、外界からの刺激から守っています。それと同時に、身体を外から覆ってまとめる働きもしています。筋肉は、この皮膚の内部で伸びたり縮んだりすることで、身体を動かしているのです。
 ところが、皮膚の動きが悪くなると内部での筋肉の滑りが悪くなってしまいます。滑らかに伸び縮みできなくなって引っかかります。また関節周辺の皮膚が固くなると、うまく曲げ伸ばしできなくなります。どちらも、疲れや緊張につながります。

3.皮膚は運ぶ
 血液の液体成分が血管から染み出たものを、リンパ液といいます。血管の届かない隙間に入り込んで、栄養をとどけ、老廃物を運び出す働きをしています。このリンパ液が流れているのは細胞の隙間、そして皮膚の下です。美容でリンパマッサージというのがありますが、このリンパ液の流れを助けることで、皮膚に栄養をとどけ、美しさを高めようとする方法です。
 皮下組織に癒着があると、このリンパ液の通路がふさがれて循環がうまくいきません。皮膚の美しさを保つためにも、皮下組織の状態を整えておく必要があります。

4.皮膚は伝える
 皮膚には、細かな神経が張り巡らされ、痛みや温度などの情報を脳に伝える働きがあります。温度や触覚、圧力など、その感覚は生きてゆくのに欠かせません。物を持つ、というような簡単な動作でも、重さや力加減など、皮膚感覚がなければなかなかうまく出来ません。
 皮膚の状態が悪くなると、この皮膚感覚にも微妙な不調が生じます。テレビやラジオで言うと雑音が入っているようなもので、間違った情報が脳に伝わって、緊張や不調を生んでしまうのです。

 余談ながら、東洋医学では皮膚の表面に経絡というラインがあると考えています。例えば、胃のラインは、顔に始まって首から胸を下り、足の外側を通って足指先に抜けます。途中で胃とつながっていて、このライン上を治療することで胃を治療できるとされています。
 この経絡は、現代医学では存在が認められていませんが(神経の働きから考える説や、リンパ液の流れで考える説があります。私は、力学的な関係のラインという説を支持しています)、皮膚の「伝える力」の重要性を表す一例でしょう。

5.治療は
 八起堂では皮膚について、主に「伸ばす治療」と「滑らせる治療」を行っています。
 伸ばす治療は、縮んでいる皮膚に対して行っています。縮んだ皮膚内部では組織が不規則に配列して、絡み合っているとされています。この組織はじっくりと伸ばすことによって整理されて、もとの柔軟性を取り戻すことができるのです。この治療はほとんど痛みを伴いませんので、気軽に受けていただけます。
 滑らせる治療は、皮下組織や関節とくっついて動きの悪い皮膚に対して行います。方法は場所によって違いますが、皮膚を押さえたまま手足を動かす方法、皮膚をゆっくり横に滑らせる方法などがあります。こちらは、普通のマッサージ程度の痛みがありますが、比較的早く効果がでることが多いです。

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2007年8月19日 (日)

眠れない夜のために

 快適な睡眠をとりたいのは誰でも同じです。しかし眠れないときに無理に眠ろうとするのもストレス。今回は眠れない夜の眠り方…というよりは、開き直りの方法を中心に。

1. 眠るためにSitumin2
 眠るためには、身体を緩めることと、精神的にリラックスすることが必要です。身体を緩めるためには低温のお風呂や、軽いストレッチ。もちろん、マッサージも悪くありません(我田引水)。
 眠れないときに使うツボ、というのも実在します。右の図の「失眠」というツボがその一つで、足のかかとの真ん中にあります。
 刺激をするときは、お灸か指圧で。お灸では、私が相談された患者さんの8割以上で効果がありました。このツボは、むくみを取る働きもあるとされているので、もしかしたら水分の循環を良くする働きがあって、それが眠りを深くするのに働いているのかもしれません。

2. 眠れないときは開き直る
 眠れない、と考えているとリラックスできなくなります。それではますます眠れなくなるので、まずは開き直りましょう。
 人間に必要な眠りの量は人によって様々で、一定していません。しかし統計的には一日平均四時間以上であればとくに健康上の問題はないそうです。「短眠術」と言って、一日の睡眠時間を3~4時間にする方法を実行している人もいるくらいです。眠れなかったら起きている時間が長くて得だ、と開き直るくらいでいいと思います。

 そこまでいかないにせよ、眠れない時間を有効利用することが出来れば、つらさも減るはず。寝転んだままできて、健康にもよく、眠りの助けにもなる、そんな方法をいくつか。
 
3.寝たままの時間の使い方
①自律訓練法
 緊張しやすい人が、リラックスするための訓練方法です。お医者さんでも勧めている、れっきとした治療法です。

 横になって目を閉じ、呼吸をゆったり。ついで全身の力を抜きます。ただ抜こうとしても難しいので「足が先から重くなってくる」と自分に言い聞かせます。足の後は手。そして全身。だいたいの力みが抜けるまでに、数分かかります(慣れてくると早くなりますが)。
 そうしたら次は「手足の先が温かくなる」とイメージします。温かいような気分になったら、最後に「頭が涼しくなってきた」とイメージしてゆきます。
 これは、身体がリラックスしているときの状態を再現する、自己コントロールの方法です。眠れないときに練習しておくと、起きている時間の緊張も下げやすくなって、疲れやストレスの軽減に役立ちます。

②瞑想
 頭を空っぽにする瞑想は、ストレス対策に有効と言われています。とはいえ、わざわざ瞑想の時間をとるのは難しいもの。眠れないときは、絶好のチャンスだと言えます。

 横になって目を閉じ、何も考えないようにします。いきなり「何も考えない」といっても難しいので、まずは自分の呼吸を数えることに集中します。1から10まで数えて、また1にもどる。こうして呼吸を数える方法を、座禅では数息観と呼びます。
 人間は同時に二つのことは考えられませんから、呼吸を数えることで、余計な考えを頭から追い出すわけですね。呼吸を数える他には、気に入った言葉を繰り返すとか、時計の音に耳をすませる方法などもあります。余分な考えが浮かばなくなってくると、それだけでリラックスしてきます。
 日常の悩みを頭から切り離して、精神に余裕を与える方法だと考えてもいいでしょう。

③内観瞑想
 これは瞑想というよりも、自分の過去を思い出し、記憶を整理しなおすことで、ものごとの見方、考え方を変化させる方法です。自己啓発、精神的な問題の治療など、多彩な効果があるとされています。

 自分のこれまでの人生を「幼稚園前・幼稚園・小学校・中学校…」のように数年毎に区切り、それぞれの区切りについて「人にお世話になったこと」「自分が人にして返したこと」「迷惑をかけたこと」の三点に集中して思い返してゆく、というのが正式なやり方。詳しく知りたい方は、本もたくさん出ているので、そちらで調べてください。
 私自身は、記憶が出てくるにまかせて、だらだらしていることが多いです(眠くなりやすい、寝床向けアレンジ)。

 同じ事柄でも、起こった当時と、現在では感じ方が変わることがあります。昔は大事件だと思えたことが、現在の意識ではたいしたことがないと思えたり、見落としていたことに気づいたり。事柄の感じ方が変わると、意識が少しずつ変わります。
 意識が変わるときに、身体も変わることがあります。私の体験ですが、昔のことで「誤解だったな」と気づいたことがありました。誤解だったと思ったその瞬間、両肩から背中にかけての筋肉が一瞬で緩みました。そのときまで別に力んでいる自覚はなかったのですが、どこかに緊張があったのでしょう。柔らかくなった胸に息を吸い込みながら、考え方と身体とが関係していることをしみじみ実感しました。

 瞑想にせよ、自律訓練法にせよ、やっている最中に眠ってしまうことが少なくありません。それはそれで得した、と考えられます。眠れない方、だまされたと思ってお試しください。

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2007年8月 6日 (月)

補足 … ムカデ捕獲について

 前回のブログを読んだ知人から言われました。
「ムカデに刺されすぎ!」
 出るんだから仕方がありません。田舎ゆえの悩みではあります。昔は二日に一度は捕獲していましたね。たしかに年に二回もさされると言うのは珍しいのですが。

 ところで同じ田舎の皆様。ムカデ退治に何をお使いですか?
 殺虫剤? まさか素手の人はいないと思いますが…。我が家では、以前は火バサミで捕まえていました。
 最近、一番のお勧めは、ガムテープです。荷造り用の、あれ。
 ムカデを見つけたら、まず上に電話帳など重いものを載せ、動きを止めます。その間にゆっくりガムテープを用意。
 重石をとると同時に、ムカデの上からガムテープをべったり。これで終わりです。小さいムカデならそのまま剥がして、貼りついたムカデごと丸めてポイ、で大丈夫です。全く動けなくなっていますから危ないこともありません。
 大きなムカデ(私は15センチくらいのを見たことがあります)の場合には念を入れ、半分だけ剥がしたところで反対側からもガムテープをべったり。残り半分も剥がして、べったり。これで大丈夫。さらに念を入れる人は、熱湯でもかけておきましょう。
 前回書いたように、刺されたときにはなるべく毒を押し出してから、冷却。アンモニア水は使ってはいけません。
 皆様のムカデとの出会いが不幸なものでありませんように。

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2007年8月 1日 (水)

熱・日焼け・虫 夏の健康豆知識

 ようやく梅雨が明けましたね。これから夏本番。そこで、夏の健康に関する情報を軽くまとめてみました。

1.やっぱり熱射病
 季節がらテレビでもよく取り上げられていますから、ご覧になった方も多いでしょうが、ここでもう一度。
 熱射病は高温に長時間さらされることにより、体温の調整が効かなくなった状態です。高温と脱水症状により身体の機能が障害され、命を落とすことさえあります。
 対策の第一は、水分の補給です。水分は汗となって体温を下げるのに役立ちますし、血液が濃くなって循環障害を起こすことを防ぎます。少し多めに取るのが基本で「もう十分」と思ってから、さらにもう一杯飲むくらいが望ましいものです。
 もちろん、暑いところを避けるのが良いのですが、汗をかく汗腺も使わないと衰えるといいます。体温調節能力を保つため、時々は大量に汗をかくほうがよいといいます。

2.日焼け
 日焼けは健康の印、といわれたのは過去の話。今ではシミやシワ、挙句はガンの原因になるなどといわれるようになりました。
 日焼けが健康的といわれたのは、日光中の紫外線が、体内でビタミンD(骨の健康に必要)を作る働きをするからです。しかし一日に30分くらいの外出をする人は、それだけで十分だそうです。わざわざたくさんの日光に当たる必要はありません。
 また日焼けは、医学的には火傷(やけど)の一種に分類されます。もちろん、火や熱湯の火傷に比べれば軽いものですが、やはり体力を奪います。
 見た目が精悍に見えるというのはわかりますが、結論から言えば、極端な日焼けはやはりオススメできません。
 特殊な例として、湿布薬による日焼けがあります。湿布薬の中には紫外線に反応して皮膚に炎症を起こさせる成分が入っています。したがって、湿布を貼っているときはもちろん、剥がして数日はその部分を直射日光に当ててはいけません。

3.虫刺され
 夏は虫の季節でもあります。セミやカブトムシだけなら良いのですが、ムカデ、カ、ドクガなど、毒虫も多数出てきます。
 これらの虫それぞれについては別に調べていただくとして、刺されたときの共通対処法は「冷やすこと」です(以前にも書きました)。

 虫の毒は、刺された場所に炎症を起こします。炎症は連鎖反応を起こして拡大し、結果として大きな腫れを作ってしまいます。ところが、冷やしておくとその連鎖反応が起きないため、被害を少なくできるのです。オススメはケーキを買ってきたときについてくる小さな保冷パック。タオルに包んで当てておくだけです。
 決して自慢になることではありませんが、この夏すでに二回、ムカデに刺されました。一回は5センチ程度のもの、もう一回は10センチ程度の比較的大きなものででした、どちらもこのアイスパックだけで治療しました。30分くらいアイスパックを当てていただけで腫れは起こらず、次の日には痕も残さず治っていました。なかなかに有効です。

 薬を塗るときには、抗ヒスタミン剤の入った虫さされの薬か、ステロイド軟膏が効きます。どちらも腫れを防ぎ、被害の拡大を食い止めます。
 ところで、虫刺されにアンモニア水を塗る、という方法が昔から言われていますが、まったくの迷信なので注意してください。酸性の毒をアンモニアで中和する、というのですが、虫毒の成分は有害タンパク質であり、中和して毒性が消えることはありません。それどころかアンモニアのアルカリ性分が皮膚を痛めてしまうこともあります。絶対にしてはいけません。

 なお、ハチの毒はこの中でも強く、またアレルギー症状などを起こすこともあります。冷やすほうが良いのは同じですが、少しでも状況がおかしいと思ったら迷わず病院を訪ねてください。

補足
 虫などの毒を傷口から吸いだす「ポイズンリムーバー」という道具があります。毒を直接吸い出すのですから、有効なはずですね。私もこれを購入しましたが、しまいこんだ場所を忘れて、まだ使ったことがありません。使った人がありましたら、感想を聞きたいです。

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2007年7月26日 (木)

使わないと損をする

 止まっている機械は錆びる。人の住まない家は荒れる。
 限度はありますが、モノはたいてい、使わないでいると駄目になります。人体もまた同じです。使わないでいると、悪くなってくるのです。

1.動いていないところが固まる
 古い建物のドア、蝶番(ちょうつがい)が錆び付いて動かなくなっているのを見たことがあると思います。しかし、人が住んでいる家のドアが錆びて動かなくなることは、まずありません。なぜでしょうか?
 実は、住んでいる家のドアも、同じように錆びています。ところが、ドアの開け閉めのたびに部品同士がこすれ、錆がこすり落とされているのです。
 これと同じような現象が、人体でもおきています。

 関節でも皮膚でも靭帯でも、動きの少ない部分には繊維素が沈着して固くなってゆきます。よく動かしている部分では、動きによって沈着が阻害され、固くなりません。つまるところ、動かしている部分は動きがよいまま、動かない部分は動かなくなってゆくのです。
「動かしていない部分なんてないよ」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際に自分の身体を満遍なく使うことは、それほど簡単なことではありません。

例えば、首。思い切り上に、下に、あるいは右左に動かしてみてください。この前、これほど大きく首を動かしたのはいつのことでしょうか。
たとえば、肩。 腕を伸ばしたまま、頭の上で手を合わせて見ましょう。あるいは、両手を大きく回してみます。こういった動きも、もう何年もしていない方が多いのではないでしょうか。

 普通の生活をしていると、身体の使い方も決まった範囲に限られてしまうことが多いのです。そうなると、使う範囲だけが動きがよく、それ以外の部分では動きが悪くなると言う現象がおきてきます。
 動かない部分があると、それを補うために無理な動きをして、あちこちを傷めることも少なくありません。

2.動きを保つちょっとした体操
 こういった害を防ぐには、一日に一回でもいいので、身体を大きく動かすこと。といって、別に激しい運動をする必要はないのです。
手を大きく振り回す。身体を左右にねじる。前後左右に曲げる。膝を高く上げる。そのくらいでも、効果があります。とにかく、思いついたところを、大きく動かしてみるだけで、違ってきます。

 注意としては、ゆっくりやること。あわてて動かすと、急激な力が一箇所に集中して、いためてしまうこともあります。ゆっくり、あわてず、痛くない範囲で動かします。
 一日でうまくはいかないかもしれませんが、繰り返してやるうちには、動くようになってきます。身体の柔らかさを実感できるようになれば、しめたもの。どんどん改善してゆく流れに乗ったのです。

 そういえば、そろそろ夏休み。小学生たちがラジオ体操に出かけてゆく時期です。ラジオ体操もふだん使わない動きが、まとめてできる運動です。たまには小学生に混じってみるのも悪くないかもしれません。

3.治療の方法
 八起堂の治療では、なかなか自分では取りきれない引っ掛かりを、関節を動かし、指先や手のひらで押さえ、あるいはストレッチをかけたりして取ってゆくようにします。もちろん、無理にやれば痛みますから、動かす方向、力のかけ具合、速さなどを工夫して、引っかかっている部分だけに力が集中するようにします。
この治療をしているときに、よく言われることがあります。
「肩が、こんなに動くとは思わなかった…」 
 別に、無理に大きく動きを拡大したわけではないのです。使われていない、忘れられている動きを取り戻しただけなのです。
 普段忘れている、本当の動き。思い出してみませんか?

付記
 アルツハイマーなど原因の認知症。MRIの画像では相当に脳の萎縮が進んでいる場合でも、手先を使う、新しいことにチャレンジするなど、脳を使っている人では症状が出ないそうです。一説によれば、認知症の8割くらいは脳をよく使っていると、防げるのではないかと言われています。使わなければ悪くなるのは、脳も同じです。

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2007年7月 4日 (水)

心の痛みが身体に出る

 少し前まで、腰痛の原因は「老化」や「使いすぎ」あるいは「椎間板ヘルニア」などの故障とされていました。ところが、数年前からここに「ストレス」が正式に加えられたことをご存知でしょうか? 
 精神的な理由によって、身体の痛みが発生する場合があるのです。

1. ストレスが身体に与える影響
 ストレスは、身体に様々な影響を与えます。血圧の上昇、消化器官の不調、血糖値の上昇など。これらは自律神経でいう「交感神経過剰緊張」によるものです。
 交感神経をわかりやすく言うと「緊張したときに働く神経」です。これは動物が危険に出会ったときに起こる反応の名残で、心拍数の増加や、血糖値の上昇、血管の収縮などを起こします(逆に、リラックスしているときに働くのが、副交感神経)。
 これらは一般的な反応ですが、それ以外にも様々な影響が出てくることがあります。

2.心身症
 最近よく聞くようになってきた言葉の一つです。定義から言えば「心理的・社会的要因によって、身体に機能的・器質的な障害が生じる症状」となります。
 わかりやすく言うと「心が身体を壊す症状」です。

 先日、日本経済新聞で作家の夏樹静子さんが、自らの心身症体験を連載されていました(本にもなっています。「腰痛放浪記 椅子が怖い」)。夏樹さんは突如、椅子に座ることも出来ないほどのひどい腰痛に悩まされるようになったそうです。もちろん仕事も旅行もできない。じっとしていても耐えられないほどの痛み。
 病院で検査をしても原因が見つからず、鎮痛剤だけをもらう。それでも治まらない痛み。
 現代医学の治療はもちろん、鍼灸やマッサージ、カイロプラクティック、果ては祈祷まで、ありとあらゆる治療を試したそうですが、結果は変わらず。数年も苦しんだ後で訪れた心療内科で、心身症と指摘されたそうです。最初は本人も信じられなかったとの事。
 しかし、それまでの仕事に集中しすぎている生き方が、この腰痛を作り出している原因であることを自覚し、作家であることをやめようと思ったときに、その痛みが治まったといいます。
 心の問題が身体の痛みとして現れたものだったのです。 

3.仮面うつ病の場合も
 最近よく聞くようになった「うつ病」。やはりストレスが引き金になることが知られています。
 一般的な症状はひどい落ち込み、動けなくなるほどの憂鬱感です。しかし、人によっては症状が腹痛、腰痛などの身体的不調として表れることがあります。うつ病とわかりにくいため「仮面うつ病」という症状名がつけられています。
 症状が痛みや心臓の不安として表われるので、患者はなかなかうつ病と気付くことができません。消化器科や循環器科、内科を転々として、原因を探すことになります。そうして、かなり悪化してから初めて、うつ病とわかり、治療を受けることになります。(なお、うつ病にはストレスなどのはっきりした原因がなく起こる、自然発生的なケースもありますので、注意が必要です)。

4.心身症も防衛力の表れ
 誤解されやすいのですが、心身症にせよ、うつ病にせよ、決して「仮病」ではありません。
 もちろん本人に仮病と言う意識はありませんし、痛みや苦しみも本当です。また、内臓などの場合には、実際に損傷してしまうこともあります。

 個人的には、これらの症状もまた人間の生命を守ろうとする防衛反応ではないかと考えています。
 ストレスの多い現代社会。過剰なストレスが身体に悪影響を与えることはわかっていても、なかなか休んだりすることは出来ません。それらのストレスが限界まで来たときに、生活にブレーキをかけようとしているのではないでしょうか。その声に耳を傾けることは大事です。

 一昔前は、心のことで病院に行くのは恥かしいこととされていました。現在は、多くの有名人が自らのうつ病、心身症について告白することが増えて、気軽に相談できる場所になって来ました。
 原因のわからない痛みや不調。一度、心療内科の門を叩いてみるのも、一つの手です。

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2007年6月19日 (火)

魚の目治すべし

 先日来、足の歪みが全身に及ぶ、という話をしてきました。ところで、足の歪みにも匹敵する悪影響を持ちながら、軽視されているものが他にもあります。それは、魚の目です。

1.魚の目のでき方Photo_1
 皮膚は、刺激を受けると次第に厚く、固くなるものです。ただ単に皮膚が厚くなる場合を、タコと呼びます。
 魚の目は、一部だけがとくに厚くなり、身体の内側に向けて、棘状になります。こうなってくると画鋲を踏んづけているようなものですから、ひどく痛んできます。痛むから、その部分をかばってよけいに皮膚が厚くなる。厚くなるほどに尖る。尖るから、ますます痛くなる、という悪循環が、魚の目をさらにひどくします。

2.魚の目が起こす歪み
 魚の目はもちろん痛いわけで、それだけでもかなり不快なことではあります。それに加えて問題なのは、痛みをカバーするために、まっすぐ体重をかけられなくなることです。足の内側に魚の目があれば、外側に体重をかけます。前にあれば、後ろにかけます。場合によっては、立っているときに、片足のみに体重をかけることもありうるでしょう。
 いずれにせよ、体重の偏りが長期間続くことは、骨盤や背骨、筋肉に負荷をかけ、腰痛や肩こりの原因にもなります。
ケガの後遺症などと違い、比較的治療しやすい魚の目。治療をオススメします。

3.魚の目の治療は
 鍼灸師として言えば、お灸で治す方法があります。しかし灸で魚の目を治すには何日も連続して通っていただく必要があります。費用、手間を考えれば、現実的にはオススメできません。

 そこで真っ先にオススメしたいのが、絆創膏型の薬剤です(商品名スピール膏など)。これは、魚の目周辺の皮膚を柔らかくし、おのずから剥がれるようにしてゆく薬です。痛みも副作用もなく、自宅で手軽にできます。症状にあわせて形状も様々。自分の魚の目のタイプに応じて選ぶことができます。
 使用上の注意としては、あまり交換しすぎないこと。薬剤は数日かけて浸透し、皮膚を柔らかくしてゆきます。一度貼ったら、数日はそのまま動かさないでいることで、十分に効果を引き出すことができます。
 皮膚がすでにかなり厚くなっている場合には、軽石で削り取ってから貼るのも、効果を引き出す良い方法です。

 このような治療は、早くすれば早くするほど、楽にできます。あまりに大きく育ててしまうと、皮膚科で切り取ってもらわなければならないこともありますから、なるべく早めの治療をお勧めします。

4.こんなケースも
 少し前のことですが、歩くと足の骨に痛みが響く、という女性が来られました。さっそく足首、足根骨の調整。しかし、痛みは治りません。筋肉をほぐしても駄目。
困り果てて、もう一度患部を精密に調べてみました。痛みをたずねながら触ってゆくと、痛む範囲は親指下の狭い範囲に集中しています。
 よくよく調べると、直径数ミリの丸い点が見つかりました。その部分を触ると、まさしく痛みが再現されます。つまり、痛みはこの小さな魚の目の痛みだったのです。その後、皮膚科で相談して治療を行い、痛みは消えたそうです。

 小さいながらも、馬鹿にできない魚の目。お持ちの方は、一日も早く、治療を始めましょう。

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2007年6月 3日 (日)

足の治療を始めたわけは

 以前にも書いたように、八起堂は足の治療を重視しています。といって、いわゆる足裏マッサージのように、ツボを押したりするわけではありません。捻挫の後遺症や使いすぎで、ズレたり固まったりしている足の骨を調整するのです。

1. 足の治療を始めるまで
 もともとはAKA(関節運動学的アプローチ)という関節治療を主に学んでいました。骨と骨をつないでいる関節、それを正しい方向へ導きながら動かす治療法です。
 膝関節には膝関節のAKA法があり、それを行うことである程度の痛みは解消できます。
 しかし問題はそのあと。比較的すぐに、また痛みを訴える人が多かったのです。

 膝関節は、上下の骨がまっすぐに接しているときには摩擦が小さく、痛んでくることはめったにありません。そこで患者さんの足を手のひらで支えてみたところ、すぐに傾いてしまうことが多いのに気づきました。つまり、土台である足の骨がずれているために、すぐに傾いているのです。この傾きを治せば、膝の痛みが減るはず、と見当をつけました。

 ところが、調べてみると足の骨、それも足根骨といわれる足裏の骨を研究している人は、ほとんどいないようなのです(ふれている本はあるのですが、ズレがどのように影響するのか、またどのような位置に調整するかという問題は、全く無視されています)。
 そこからは足の構造調べです。骨のつながりから位置関係、動かした時の相関関係まで。骨格標本を分解して調べ、ようやくそれなりにズレを修正できるようになりました。実際に試してみたところ、多くの患者さんの膝痛が治り、しかも長期間治療効果が持続するようになりました。

 その後、足の歪みは膝痛だけでなく、腰痛や肩こりにも関係があるとわかってきました。考えてみればあたりまえですね。土台が傾いているのに、柱や屋根が影響を受けないわけはありません。具体的には、足の傾きが身体の傾きや曲げをつくりだし、腰痛や肩こりにつながっていきます。
 その後、治療対象は踵だけではなく足首の動き、ついで足アーチへと広がりました。また従来のAKAだけでは足首の治療には不十分だということもわかり、TAM手技療法など新しい治療方法も使うようになり現在に至っています(足関節は複関節であること、靭帯の構成が複雑であることで、いわゆる凹凸の滑りでは治療効果が不十分なのです)。

2.足の治療ポイント三点
①踵の位置
 前述したとおり、踵の骨がずれていると重心が歪み、下腿が傾いてしまいます。踵が内側にずれ込むことが多く、膝関節の内側が磨り減って痛む原因になります。また傾きは骨盤の高さに左右差を作りますので、腰痛・肩こりの原因にもなります。

②動きの歪み
 これは、主として足首の動きに関わるものです。足首を上下に動かすときには、内下方から外上方へと、やや斜めの円弧を描きます。ところが、足関節の一部に動きが悪いところがあると、その引っ掛かりによって動く方向がずれてしまいます。立っているときにはさほど問題がないのですが、歩くなどの動作時に力の方向がずれて、筋肉・骨格に無理がかかります。

③アーチの固さ
 土踏まず、といわれている足裏のへこみ。このアーチは体重を支える役目をすると同時に、適度な柔軟性で衝撃を緩和する役目も持っています。このアーチを構成する骨同士の動きが固いと、衝撃をうまく吸収できず、痛みの原因になります。

 骨盤の歪み、背骨の歪みなど、骨格の歪みについての報告は数多くありますが、土台となっている足の骨については、まだあまり重視されていないのが現状です。
 一度、点検してみるのはいかがでしょうか?

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2007年5月17日 (木)

泣こよっか、ひっとべ

 患者さんによく聞かれることのひとつに「完全に治りますか?」があります。そういうときは、こう答えます。
「完全に治るかどうかはわかりませんが、できることから始めましょう」
 治ると言い切れる場合でも、そう答えます。
 それは「完全に治る」ことを待って、生活を駄目にしてしまう人がいるからです。

1.完全に治るのはいつ?
 完全に元に戻ったときが、完治したとき。この定義は一見正しいようですが、実は間違っています。この定義でいると、いつまでも治らないことになります。というのは、治療家だろうが医者だろうが、どうしても直せないものが三つあるのです。

 一つは、時間です。
 ケガをしてから治るまでの間に、数ヶ月、長ければ数年という時間が過ぎます。たとえケガが完全に元通りになったとしても、その年月分の衰え(筋力・体力の減少。場合によっては年齢も)は取り戻すことができません。

 二つ目は、不安です。
 完全な治癒を求める方は、再発の不安におびえておられます。そして不安がある間は、治癒したと考えません。しかし記憶を消せない以上、そのケガをする前、ケガのことを考えもしなかったときのような、不安のない状態には戻れないのです。

 三つ目は、美化された記憶です。
 日常の生活では、体調の良い日もあれば悪い日もあります。しかし「元通り」を希望する方の「元」は、ベストコンディションが基準です。ケガ以前にも、頭が痛かったり、憂鬱だった日があったことを忘れてしまうのです。そのため完全に治った後でも、少しの不調があると「治っていない」と落ち込んでしまいます。

2.灰色の現在、ばら色の過去と未来
 完全な治癒を求める方は大抵「治りさえすれば、あれもできる、これもできる」
 と、期待しておられます。ところが時々、期待が大きすぎて、現在を見失ってしまうことがあります。病気をしなかった過去か、完全に治る未来だけが真実の自分、現在の自分は仮の姿、と考えてしまわれます。

 目の前に楽しいことがあっても楽しまず、やるべきことも後回し。そうしている間に、二度と戻らない時間が失われていきます。

3.泣こよっか、ひっとべ
 治療が長引くことは、たしかにあります。しかし症状の変化がないまま長引くことはまずありません。経験上、8割、9割までは比較的早く治り、1割、2割だけが長引く場合がほとんどです。
 その意味では、ある程度状況が改善したら、症状が少し残っていても動き出すべきです(ちなみにここまで来ると、動いていようが、じっとしていようが、治療の早さはほとんど変わりません)。
 将来の「完全な治癒」のために、現在の人生を腐らせてしまうことが無いように、今を大事に生活していただきたいです。

 表題は、鹿児島地方の慣用句です。
 意味は「泣くよりも、思い切り跳べ」
→ 立ち止まって悩むより、物事に立ち向かいなさい
 ということです。

 待ち続けるよりも、前に行く。そうして、手に入る幸せを、手に入れていただきたいと思います。

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2007年5月 2日 (水)

むくみと貧乏揺すり

 春は就職のシーズン。新しい環境で生活を始めた方も少なくないでしょう。仕事で初めて「立ちっぱなし・座りっぱなし」を体験して、新しい疲れを抱えておられる方も、おられるのではないでしょうか。
「立ちっぱなし・座りっぱなし」で困ることの一つが、足のむくみです。
 今回は、むくみの話を。

1.むくみは重力のしわざ
 血液、リンパ液などの体液が足に溜まり、ふくれた状態を「むくみ」と言います。筋肉を使った後に起こる「張り」と違うのは、指で押したときに弾力がないこと。
 「筋肉の張り」は、筋肉そのものが脹れているのですが、むくみの場合には血管、細胞間に水分が溜まっており、それが弾力の差になっています。

 むくみの原因は、重力です。
 血液は心臓を出て動脈を通じて全身に運ばれ、やがて静脈を通って心臓に戻ってきます。ところが立ちっぱなし、座りっぱなしでいると、足に向かった血液が、重力の作用で心臓に戻れなくなり、足に溜まってしまいます。これが、むくみです。

2.むくみが続くと
 前述したとおり、足の血管や組織間に水分が溜まったものが、むくみです。最初のうちは、血液の循環が良くなった時に水分が心臓に戻り、もとの形に戻ります。ところが、むくみが長引くと血管や組織が水分によって押し広げられ、もとに戻らなくなってきます。

 むくみが常態化すると、足が太くなり、血管も引き伸ばされて脹れ、皮膚の表面から赤黒く蛇行して浮き上がります。
 しかし、美容上の問題だけではありません。血液は、流れが滞ると固まる性質があります。これが血管をふさぐのが血栓です。この血栓が流れて、身体のあちこちで循環障害をおこすこともありますので、注意が必要です。

3.対策に貧乏揺すり
 よく言われる対策の一つが、弾性ストッキングなどで足を締め、水分がたまらないようにする方法です。少々値は張りますが、立ち仕事をする人には効果抜群です。

 しかし、それ以上に簡単で、お金のかからない方法があります。それは足を動かしてやることです。
 静脈やリンパ管には、血液の流れを一定方向に向かわせる弁がついています。筋肉を動かすと、血管・リンパ管は圧迫され、また開放されます。この動きと弁の働きによって、血液、リンパ液は心臓に向かって押し戻されるのです。これを筋肉ポンプと呼びます。

 立ちっぱなし、座りっぱなしの状態では、この筋肉ポンプが全く働きません。それが血液の滞留を招き、むくみを作り出すのです。
 逆に言えば、足の筋肉を動かしていればむくみを防げることになります。動きは何でもかまいません。立ち仕事なら足踏みをするとか、体重を左右交互にかけるだけでも筋肉は働きます。座り仕事なら、足首だけを動かす…いわゆる、貧乏揺すりでも筋肉は働き、血液やリンパ液を送り返してくれます。
 もしかしたら、貧乏揺すりそのものが足のむくみを解消しようとする本能的動作なのかもしれません。

4.その他の要因
 人類の歴史は数百万年。その間、起きている間はほとんど歩いているのが、人間の生活でした。この動きが血管を動かし、むくみを防いでいたのです。立ったまま、座ったままという生活を送るようになったのは、ここ数十年に過ぎません。やはり筋肉を動かしていた時代に合わせてやらなければなりませんね。

 ところで重力以外にも、凝りや皮下組織の癒着で血液・リンパ液の帰り道がふさがれて起こるむくみがあります。むくみに左右差があったり、特に立ち仕事をしていないのにむくむ場合には、ご相談ください。

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2007年4月18日 (水)

健康的な食事とは

 仕事柄、医療関係の情報、書籍にはなるべく目を通すようにしています。その中でかなりの範囲を占めているのが健康食の情報。「あるある大事典」のような怪しいものを除いても、かなりの数が存在しています。
 いくつかの健康法を見ていると、食事内容にかなりの共通点が見られることに気付きました。そこで、細かい違いは無視して、最大公約数的なところを引っ張り出してみます。

1. 玄米か半搗き米
 日本食の場合には、玄米か、五分搗きなどの半搗き米を主食に。洋食では、小麦を丸ごと挽いた全粒粉のパンやパスタを主食にします。

 多くの健康食では穀類を主食としてとらえています。一部ダイエット法では炭水化物を制限することが良い、としていますが、健康食で炭水化物を排除しているものは皆無です。
 現代医学で考えても、脂肪やたんぱく質よりも燃焼しやすく、脳に必須のブドウ糖の供給源である炭水化物が必要なのは言うまでもありません(ちなみに、長期にわたって炭水化物抜きの食事をしていると、肝臓、腎臓に大きな負担がかかります)。
 ここで重要なのは、玄米、全粒粉といった、精白度の低いものを食べることです。一般に穀物は胚芽にビタミンやミネラルを多く含んでいます。また、種皮は食物繊維の宝庫です。その全体をとることが健康に良い、というのはわかります。

2. 菜食中心
「人間の食事内容は歯を見ればわかる」と言ったのは、橋本敬三師です。
 成人の歯は全部で32本。そのうち、果物、野菜をかじるための歯、門歯(前歯)は8本。肉・魚を食べる尖った歯、犬歯は4本。穀物をすりつぶす歯である臼歯は20本あります。比率で言うと、4:1:5ですね。この比率で「野菜・果物:肉・魚:豆・穀物」を食べるのが、最も適しているのだ、というのがその主張です。

 この数字の根拠はともかくとして、多くの健康法では菜食中心の食事を勧めています。植物を多くした食事は食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富にとれますから、その効用でしょうか。タンパク質が不足しないのか、という疑問を持つ方もおられますが、豆類を増やすなどすれば、植物中心でも問題はないようです。
 とはいえ、肉好きという習慣はなかなか変わりませんね。「肉の脂肪は幸福感を感じさせ、ストレス耐性を増す」、という記事を読んだことがあります。ストレス社会が、肉食を必要としているのかもしれません。

3. 肉よりも魚
 動物性たんぱく質の中でも、ほとんどの健康法は魚を勧めています。健康法で、肉を勧めているものは無いと言ってよいでしょう。
 統計学的に見て、肉を食べる量が多すぎると、心臓病や脳血管性の病気が増えることが知られています。原因としては、肉が飽和脂肪酸を多く含み、動脈硬化や血栓の形成をすすめるせいだと考えられています。魚の油は不飽和脂肪酸を多く含んでおり、むしろ血液を固まりにくくするのです。なお、大きな魚よりは小魚を丸ごと食べることが推奨されています。骨ごと食べられるところが、カルシウム源としてより有効なのでしょう。

4. よく噛んで腹八分目
 カロリー過多が肥満を招き、健康に悪いことは言うまでもありません。過剰な消化により、胃腸に負担をかけるという説もあります。
 ネズミやサルを使った実験があります。餌を好きなだけ食べさせるものと、カロリーを通常の6割程度に制限したものの、寿命を比べたのです。すると、カロリー制限したものの寿命が延びるというはっきりした結果が出ています。「腹八分目は医者要らず」という格言は信じてもよさそうです。
 よく噛むことで時間をかけるのは、食べすぎを防ぐ方法の一つで、ダイエットにも有効です。

5. わからないのが乳製品
 乳製品は健康に悪いとしている健康法がいくつかあります。最近でも、ベストセラーになった「病気にならない生き方」などは、乳製品を取っている人は腸相が悪い、としています。
 しかし京都大学名誉教授の家森幸男氏が世界の長寿民族を調査したところ、長寿民族の多くが、ヨーグルトを食べる習慣を持っていました。
 こうなると、乳製品についてはどちらが良いのかわかりません。好みの問題と言うことになるでしょうか。
 なお、乳製品の脂肪も肉の脂肪と同じく動物性の脂肪ですから、とりすぎが良くないことはたしかなようです。

 まあ「これが良い食事だ!」といわれても、なかなか続かないのが人間の業。無理なく、続く範囲で続けていければ、良いのではないかと思います。

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2007年4月 1日 (日)

身体は治ろうとしている

「我は包帯するのみ。神、これを癒し賜う」
 16世紀フランスの医師、アンブロワズ・パレの言葉です。治すのはあくまでも患者の身体に備わった力であって、医師は手伝うだけだ、という意味です。これは、現代医学でも鍼灸マッサージでも変わりません。

1.治すのは患者自身の力
 人間には、自ら治ろうとする「自然治癒力」があります。
 例えば、ばい菌が身体に入れば、免疫細胞が働いて退治します。ケガをすれば、その部分の細胞が増殖して傷口をふさぎます。医学とは、この自然治癒力を助ける仕事なのです。
 現代医学では、抗生物質で多すぎる細菌を殺したり、大きすぎる傷口をふさいだりします。大雑把に言えば、自然治癒力の負担を軽くして、治すのを助けているといえるでしょう。

2.では、鍼灸マッサージは?
 この問題については、身体の歪みについて語らなければなりません。
 「身体の運動系(骨、筋肉)の歪みが、神経や血管に悪影響を与え、健康を害する原因となる」そう書いたのは、橋本敬三というお医者さんです。
 この理論で言えば、健康を回復するには、悪くなった部分を治すだけではなく、全体としての歪みを正す必要があります。歪みが無くなれば、身体の機能は十分に働いて、健康を回復するはずです。
 橋本氏は、鍼灸やマッサージも、このような運動系の歪みを正すことで自然治癒力を助ける治療法ではないか、と考えました。つまり、自然治癒力の働きを高めて、治してゆく方法だということです。鍼灸マッサージの治癒についてはいろいろ考えられていますが、現時点ではもっとも整合性の高い、信頼してよい理論だと思います。 

 なお橋本氏は、以前書いた「操体法」という治療法の提唱者として知られています。これは、身体が気持ちよいと感じる方向へ運動することで、自然に健康になると言う治療体操です。興味のある方は「万病を治せる妙療法-操体法」(農文協出版)をどうぞ。食養生等にも触れた、面白い本です。

3.鍼灸マッサージによる身体各部の治療
①筋肉
コリによって固まってしまうことが多いのが筋肉です。疲労や刺激によって固まると、動きを妨げ、場合によっては緊張することで骨や皮膚まで歪ませることがあります。鍼や灸、マッサージやストレッチによる血行回復で治療します。
②皮膚
ケガの痕の引きつれ、腫れの後の癒着。極端な疲労がたまった場合にも、皮膚が固くなってしまうことがあります。皮膚の動きが悪いと関節や筋肉に負担をかけ、歪みを作り出すことになります。主に、マッサージで治療します。
③骨
骨の歪み、という言葉はマスコミでもよく見られます。多くの骨は関節でつながっていますので、正確には、関節の歪みだと言っても良いでしょう。筋肉や皮膚の歪みから来るズレ、靭帯や関節包の固さが原因です。鍼灸や、マッサージ、TAM手技療法で治療します。

4.治りたがっている身体
 患者さんの治療をしていると、身体からの要求を感じることが少なくありません。
 真っ直ぐ押すと強い抵抗を感じるコリでも、横方向には軽く動いて柔らかくなったりします。関節も、手応えに導かれるままに動かしてゆくと、急に動きの制限がとれたり。自分で考えていると言うよりも、患者さんの身体に教えてもらっている観さえあります。
 そうしてみていると、患者さんの身体そのものが、治りたがっていると思わざるを得ません。その治りたさを助けることが、鍼灸マッサージ師の仕事なのでしょう。

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2007年3月21日 (水)

何歳からでも鍛えられる

 確定申告も無事終了、ようやく更新できます・・・。

さて。
「もうこれからは、衰えるだけだしねー」
 と、おっしゃる年配の患者さん、少なくありません。しかし私は、こう応えます。
「何を言ってるんですか、まだまだこれからですよ」
 人間、何歳からでも鍛えることができるのです。

1.90歳でも増える筋肉
 筋肉を使わないと、一日で5%ずつ筋力が低下してゆく、というのはすでによく知られています。それで「寝たきりにならないように」という指導がなされているわけです。
 では、一度減ってしまった筋肉は増えないのか、というと、そんなことはありません。

 数年前に、外国で行われた研究の結果を読みました。90歳の男性に運動をしてもらい、筋肉の増加量を調べたところ、元よりも増加していました。この実験で大事なのは「筋肉の減少を止めた」のではなく「筋肉が増加した」というところです。
 筋肉は運動の刺激を受けることで太く、強くなります。この働きは、どんな年齢からでも鍛えれば確かに強くなるのです。もちろん、若い、成長ホルモンの多く出る年齢に比べれば、作用はゆっくりですが、理論的には生きている限り強くなります。

2.心肺機能も強くなる
 テレビで見たシーン。102歳の男性が散歩をしていました。しばらく歩いたところで、
「ではここから」
 と、駆け足を開始。追いかけるカメラマンが息切れした頃(カメラは重たいらしいです)、ようやく一休み。
「ときどき無理をしなけりゃ、鍛えられん」と言うのがその方の持論。さすがに百歳を超える人は迫力が違います。

 まあ、無理をしなくても、正しく運動をしていれば強くなるのが心肺機能。これも、何歳になっても鍛えられます。
 鍛え方の目安は、心拍数。一分あたりの心拍数が「180-年齢」になる運動の強さで、しばらく維持するのが、もっとも安全に持久力のつく方法だそうです(マフェトン理論より)。

3.最も鍛えられる部分…脳
 筋肉、心肺機能と来ましたが、もっとも鍛えられる部分が、脳です。
「歳をとったから、脳が衰えて…」
 と言う人がいますが、たいていの場合、衰えているのは記憶力だけです。

 人間の知性を二つに分ける考え方があります。
 一つは記憶力、計算力などの単純な働きです(流動性知性、というそうです)。
 もうひとつは、判断力、問題解決能力、まとめる力、など高度な働きです(結晶性知性、といわれます)。
 年齢とともに衰えるのは、このうちの単純能力のほうです。逆に、問題解決能力などの高度能力は、経験を積むことで向上する傾向があります。
「昔のほうが頭が良かった」と言う方でも、昔の自分を振り返ってみてください。「今の自分よりも利口だったなあ」と思いますか? ほとんどの方は「昔は馬鹿だったなあ」と言わずにいられないと思います。それが、経験により知性が向上している証拠です。高度な知性は年齢とともに向上し、使う限り伸び続けます。

 脳を鍛える本、ゲームなどがはやっていますね。計算、音読など、鍛える方法はさまざまあります。何よりも、広く好奇心をもって「新しいことにチャレンジする」ことが脳にとって良い刺激になります。新しい料理、新しい通勤コース、新しい楽器など、いくらでも考えられそうですね。 

 人間の身体全体にいえるのは「使うほど向上し、使わないと衰える」という単純な法則です。衰えないために、またより向上するために、持っている能力を有効に使おうではありませんか。
 痛み、痺れなどのために身体を十分に使えない、と言う場合は、ご相談ください。

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2007年3月 2日 (金)

柔かさと健康

 世の中にあふれる健康体操。ある程度の年数に耐えた、信頼性の高いものだけを選んでも、その数は膨大です。太極拳、ヨガ、真向法、ストレッチ…。そうした健康体操の紹介を見ているうちに、共通点に気がつきました。
 それは、どれも身体を柔らかくする体操だということです。

1.固さにも二通り
 身体が固いと言っても、その意味は二通りあります。関節が固くなっている場合と、筋肉が固くなっている場合です。

 関節は、骨と骨のつなぎ目を、弾力のある袋で包んだような構造になっています。関節を動かさなかったり、捻挫で関節を傷つけたりすると、この袋が固くなって弾力を失ってしまい、曲がらなくなってしまいます。
 筋肉は、力が入ったときには縮んで固くなり(力こぶを思い浮かべればわかりますね)、力が入っていないときには伸びて柔らかくなります。ところが精神的に緊張したり、力仕事をしすぎていたりすると、うまく脱力できず、固くなってしまうのです。
 そのほか、筋肉が疲れ切ることで弾力を失い、固くなってしまうこともあります。

2.身体が固いと
① 血行を妨げます。
血管は身体のあちこちに張り巡らされ、筋肉の間、関節の上を通り抜けています。筋肉や関節が固くなると、その固さに圧迫されて、十分な血液が流れなくなってしまいます。

②緊張を高めます。
 緊張によって身体が固くなると書きましたが、逆もあります。身体の固さが緊張を呼び、ストレスになるのです。緊張した筋肉が、脳に信号を出し続けるためです(余談ながら、マッサージのあと、眠くなる方がいるのは、緊張が緩むためです)。

③身体に負担をかけます。
 身体に柔軟性がないと、正しい姿勢が保ちにくくなります。無理のある姿勢は、身体の他の部分にも、内臓にも負担をかけます。

3.柔らかくするには
 関節も筋肉も、使わないと固くなります。逆に言えば、使ってさえいれば柔らかくなってくるのです。身体を大きく動かす運動なら何をしても効果があります(ただし、激しすぎる運動は、あまりお勧めできません)。ラジオ体操などもいいですね。
 その他、ヨガやストレッチは筋肉を伸ばし、関節を大きく動かすことで身体を柔らかくする効果を持っています。
 太極拳は、ゆるやかな動きを繰り返すことで身体から余分な力を抜き、柔らかくする訓練になります。
 真向法は、わずか4動作、二分間でできる健康法です(私の知り合いでこれをやっている人は、なぜかみんな年齢より若く見えます。不思議です)。興味のある方は、関連のホームページを調べることをオススメします。
 
 簡単なところでは、身体をねじって腕を振り回す運動。ラジオ体操にもありますが、中国の気功ではスワイショウという名前もある、れっきとした健康体操です。これを数分やるだけでも、肩や脊椎の柔かさを増進する効果があります。

 人間の身体は、赤ちゃんのときが一番柔らかく、歳をとるにつれて固くなってゆきます。「老化とは、固さだ」という言葉もあるくらい。
 ウォーキングなどで心肺機能を鍛えるのに加えて、このような柔らかさを向上させる運動を入れれば、効果が高いと思います。

4.鍼灸マッサージでお手伝いできること
 固さについて、鍼灸マッサージでお手伝い出来ることは以下の2つです。
①固くなった筋肉、関節を柔らかくし、循環を改善する。
②身体の歪みをとり、緊張しにくくする。

気になるときには、ご相談ください。

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2007年2月 3日 (土)

ダイエットを科学的に考える

 といっても、画期的なダイエット法を紹介するわけではありません。
 世の中にあふれている、ダイエット情報について考える方法です。

1.これを食べれば痩せる!の嘘
 「あるある大事典」で問題になったのは、納豆のダイエットでした。朝晩に納豆を食べることで脂肪の燃焼が高まり痩せる、というのが、その嘘理論です。
 これまでに、いくつもの食品の嘘が暴かれましたが、それでも「○○を食べると痩せる」という情報は際限なく出ますね。羊肉だったり、ココアだったり。
 そんな都合のよい食品はあるわけないのですが…。(ちなみに納豆を朝晩食べると、約200キロカロリー。ウォーキングで一時間分のカロリーを余分にとることになります)

 体内に取り込んだエネルギーを消費する方法は、二つしかありません。運動するか、熱になって体温上昇に使われるかです。脂肪が減るくらい代謝が高まるのなら、その食品を食べた後、数日間は身体がぽかぽか暖かくなるはず。そんな経験をした方はいませんよね? 
 薬ならともかく、普段食べている食品に、そんなものは存在しないと言い切れます。

 もっとも、「食べれば痩せる」に近いものなら、あります。
 食べ物を消化吸収するのにも、エネルギーは使われます。アスパラガスやリンゴなど、低カロリーの食品では、消化に使われるエネルギーが、食品の持つカロリーよりも多いことがあります。理論上は、食べるほど体重が減るはずですね。ただ、その差はごくわずかで、他の食品で取ったカロリーを消費するというほどではありません。そもそも、アスパラガスやリンゴを、食べ放題に食べてもかまわない、といわれてもあまり嬉しくないと思いますが。
 「○○の成分が脂肪を包み込んで吸収を妨げる」などという商品も売っていますね。オオバコの種皮や、キチンキトサンなど、いろいろありますが、たいていは単なる食物繊維です(キチンキトサンも食物繊維の一種)。食物繊維には栄養の吸収を妨げる働きがありますから、全くの嘘とはいえません。しかし所詮は食品、劇的な効果は期待しないほうが良いでしょう。
 なお、どんな食物繊維でも効果に大差はありません。高いサプリメントを買うよりも、野菜やキノコ、海草などを食事に取り入れるほうが、安上がりで健康的です。

2.低炭水化物ダイエットは?
 低炭水化物ダイエット。日本では、炭水化物を極端に制限する方法が多く用いられます。「炭水化物を減らし、血液中の糖分が脂肪に変わらないようにするから、食べても太らない」となっていますが…。
 私は、この炭水化物断ちダイエットには懐疑的です。「炭水化物として食べたカロリーが脂肪にならない」と言っていますが、肉の脂身など、脂肪として食べたカロリーが蓄積されることに言及していないからです。炭水化物があろうがなかろうが脂肪は蓄積しますから、食べればやはり体重が増えるはず。
 本当のところ「このダイエットで痩せた」と言う人はあまり脂肪を取らなかった人でしょう。平均的日本人の食事は、カロリーの半分程度が炭水化物です。炭水化物をとらないと大幅なカロリー減ですから痩せても不思議ではありません。逆に言うと「いくらでも食べられる」と、高脂肪食を食べれば、いくら炭水化物を制限しても痩せません。
 このダイエットで最大の問題点は、健康に悪影響があることです。脳は十分なブドウ糖を得られず、働きが悪くなります。肝臓はタンパク質を分解してブドウ糖を作るために疲弊し、腎臓は体液成分調整のために痛めつけられます。また、多脂肪により動脈硬化を促進することもあります。「痩せるためなら命もいらない」という人以外は、おすすめできません。

 では、GI(グリセミックインデックス)値の低いものを食べる、低インシュリンダイエットはどうでしょうか。GI値とは、炭水化物の消化吸収の速さを表した数字だと思ってください。このGI値が高いもの(うどん、パンなど)の炭水化物は急激に吸収されて血糖値を上げるので太りやすく、低いもの(玄米、サツマイモなど)の炭水化物はゆっくり吸収されるので血糖値を上げにくく、太りにくいというのです。
 こちらは、ある程度納得できます。血中で余った糖分が脂肪になるわけですから、急激に余らないほうが、脂肪になりにくいとはいえます。
 ただし、ゆっくり吸収しても、使わなければ結局は脂肪になります。GI値の低いものを食べるのにあわせ、運動などで糖分を消費すれば、効果は高いかと思います。ただし、あくまでエネルギーを使いやすくなるだけ。食べ過ぎれば太ります。カロリーを増やさないままGI値の低い食品に変更するなどの配慮が必要でしょう。(ところで、GI値の低いものはたいてい、食物繊維の多い食べ物です。前述した食物繊維の吸収阻害性を意味しています)。
 なお、GI値については「個人差がある」「根拠が不明瞭」などという批判があることも付け加えておきます。

3.真理はここに
 では、理想的なダイエット方法は?
 どんな形であれ、身体に入れたカロリーは消費するしかありません。入れすぎないのが一番の解決策。では食べなければ良いかというと、そうではありません。食べなければ身体の基礎代謝が下がってリバウンドしやすくなり、いずれは太ってしまうことが知られています。適度なカロリーが必要です。
 ビタミン、ミネラルなどの微量栄養素は、エネルギー消費に必要なので、バランスの良い食生活は必須。また血中の糖、脂肪を使いきるのに、運動以上の方法はありません。
 となると、当たり前のことですが、バランスよく適度に食べ、身体を動かすというのが最良のダイエットと言うことになります。
 「小梅ちゃんが行く」(青木みつえ著)という漫画に、こんなセリフがありました。
「私は悟ったね。……結局、食べて動かなんだら太るー!」
 これが真理だと思います。

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2007年1月18日 (木)

腰痛体操は時期が肝心

 治療院に来る方には、急性の腰痛(ぎっくり腰)やら、慢性の腰痛まで、腰痛の患者さんが少なくありません。その方たちよく訪ねられます。
「腰痛体操って、効くんですか?」
 試してみたけれど、効いた気がしない、というのがその理由です。
 結論から言えば、効きます。ただし、体操をする時期が問題です。

1.腰痛体操の原理
 腰痛体操は、腹筋、背筋を鍛えて、腰の負担を軽くしよう、という体操です。背筋は言うまでもなく腰を支える筋肉ですし、腹筋は腹圧を強くして、やはり腰を支えようとする方法です(空気の抜けたボールよりも、一杯に入ったボールのほうが重さに耐えられるようなものです)。
 では、どうして効かないという方がいらっしゃるのでしょうか?

2.痛くなってからでは効かない
 腰痛体操が効かない、という方の共通点。それは、腰痛になってから体操をしておられるということです。腰痛体操は本来、予防の体操です。したがって、痛み出してからでは効果が出ません。痛み出してからは、それなりの方法が必要になります。

 ぎっくり腰は、腰の歪みによって筋肉が引きつれたり、関節がずれたりすることによって傷ついて起こります。いわば一種のケガですから、筋力強化の体操で早く治ることはありません。傷ついた組織が修復されるまでは痛みが続きます。それどころか、激しく運動しすぎれば、痛みをひどくすることさえあります。
 
 慢性の腰痛は、ほとんどの場合、筋肉の疲れによって起こります。疲れて力が出せず、痛みが出ているのです。そこで筋肉を鍛えようと運動してもあまり効果はなく、場合によっては疲れをより慢性化させ、痛みを増加させるだけです。
 むしろこのような場合には、筋肉の疲れをとることが必要になります。

3.ぎっくり腰に、操体法
 ぎっくり腰は腰の歪みによって起きますから、歪みを取れば痛みは軽減します(前述したとおり、完全に痛みが無くなるには、少し時間がかかります)。
 一般的には治療院での治療をお勧めしますが、自宅で治療する方法もあります。以前にも書いた操体法がそれで「痛みのない、気持ちの良い方に動かすことで筋力のアンバランスを調整し、改善してゆく」方法です。いくつかをご紹介します。

 まず、膝を立てて仰向けに寝ます(真っ直ぐ寝るのは、ぎっくり腰の場合、痛むことが多いです)。その状態から足のつま先を片方ずつ上げてみます。左右を比べると、どちらかがより楽に上がるはず。痛くないほう、軽く上がるほうを、何回か上げ、ストンと落とします。これを2、3回。
 次に、つま先を左右に回します。これも同じく、楽に回せる方向に動かして、急に脱力することを2、3回繰り返します。
 足を持ち上げられる場合は、足の裏が数センチ浮くくらい持ち上げます。左右を比べ、軽く上がる方を2、3回繰り返します。
 大事なことは、痛い動きをしないことです。

4.慢性腰痛にストレッチ
 慢性腰痛のほとんどは疲れによるものですから、その筋肉の血行を改善すれば痛みが減ります。治療院では鍼灸やマッサージで血行を改善してゆきますが、自宅でできる方法はストレッチです。

 手をつま先に向かって伸ばす、前屈運動。なるべく力まずに、30秒。
 腰の筋肉は、背骨の前側にもついています。したがって、背中をそらす運動も必要です。立って反らす方法は危険なので、二つ折り座布団などを背中に挟んで、寝そべります。やはり、つらくない範囲で30秒以上です。

 そして、今痛みのない方は、普通の腰痛体操で、予防に努めてください。

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2006年12月 4日 (月)

頭痛の話

 日本人の、3、4人に一人は頭痛持ちだとか。
 頭痛にも種類があって、対処法も違います。今回は、頭痛の話を。

1. 緊張性頭痛
 頭痛の7割以上を占めているのが、このタイプの頭痛です。緊張性という言葉でわかるように、筋肉の緊張が原因となっているものです。
 頭は帽状腱膜という組織ですっぽり覆われています。首や肩の筋肉が緊張すると腱膜が引っ張られ、孫悟空の金輪のように頭を締め付けるのです。そうして痛むのが、緊張性の頭痛です。
 筋肉の緊張することなら、何でも原因になります。ストレス、疲れすぎ、目の疲れ、歯の噛み合わせ…。もちろん、普通の肩こりも原因の一つです。

2.血管性頭痛
 片頭痛などがこれにあたり、脳の血管が急激に拡張することによって、痛みが発生するとされています。視神経にも影響するのか、頭痛が起こる前に閃輝点と呼ばれる光が見える現象が起きることもあります。
 原因については、まだ良くわかっていませんが、朝の光を受けたとき、運動のあとなど、何らかのきっかけで起きるようです。

3.病気に伴う頭痛
 よく言われるのが、脳出血、くも膜下出血など、脳血管の損傷による痛みです。これは、脳のくも膜より下にある血管が切れ、周辺組織を圧迫することによって起こるものです。
 特徴は突発的な激痛で「バットで殴られたような」という表現をする人もいるくらいです。
 このような病気に伴う頭痛では、早めの対応が必要です。それまで経験したことのない痛みが突然起きたときには、すぐに病院に行くことをお勧めします。

 ところで、脳梗塞(脳の血管が詰まる)の場合には、ほとんど痛みがありません。ろれつが回らない、手足に力が入らないなどの症状がでます。もちろん、すぐ病院へ。

4.治療は
①緊張性頭痛 
 この頭痛には、鍼灸やマッサージがよく効きます。首や肩、頭部などを緩めることで、痛みを軽減できるからです。
 とくに首の上部、頭を支える部分と、首の下部、肩につながる部分は重要です。上部は頭皮の緊張に直接影響しますし、下部は首の筋肉の多くがつながっている部分ですから。治療としてはマッサージ、特殊なストレッチなどを使用しますが、即効を望む場合には鍼を使用することもあります。
 首の鍼というと、昔の「仕事人シリーズ」を思い浮かべて「危険なのでは?」と考える方も多いと思います。確かにこの部分には延髄(呼吸などを司る、重要な部分)がありますが、皮膚表面からはかなり深く、普通の鍼では届きません。届かなければ傷つけることもないので、心配する必要はないでしょう。

 緊張性頭痛に痛み止めを使いすぎると、身体が薬に慣れて、効果がなくなってくることもあります。また、薬そのものが頭痛の原因となることもありますので、薬を使用する場合には医師の指示を受けることが望ましいと言えます。

②血管性頭痛
 血管性の頭痛は脳内部の反応ですので、基本的には病院での治療となります。治療の中心は投薬で、症状に応じていくつもの種類の薬が開発されています。
 鍼灸やマッサージも、疲れをとったり、ストレス解消の意味では役に立つでしょう。

 緊張性頭痛、片頭痛ともに、疲れやストレス、睡眠不足などが誘因としてあげられます。つまり、他の多くの病気と同じように、規則的な生活、運動、そして睡眠が予防になるわけです。 健康の原則は、どの病気についてもあまり変わらないのかもしれません。

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2006年11月17日 (金)

冷え性の季節になりました

 この季節になると、手足が冷えて困る、という人が増えてきますね。
 冷えてくると手足の感覚が鈍くなり、痛みもでてきます。寒い季節の間、耐えるのはなかなかの難事です。今回は、冷え性の原因と対策を。

1.  冷え性の原因① … 熱が少ない場合
 人間は哺乳類の動物ですから、体温を一定に保たなければなりません。熱は主に肝臓と筋肉で作られ(幼児の場合には、首の後ろの褐色脂肪細胞)、血管を通して全身へ運ばれ、身体を暖かく保ちます。

 季節が寒くなってくると、身体はより多くの熱を作って体温が下がらないようにします。ところが肝臓や筋肉があまり熱を作らないと、それだけでは不足してしまいます。すると身体は熱を逃がさないために、逃げやすいところに血液を送るのをやめて、逃げにくいところに集中させるようになります。
 身体でもっとも熱が逃げやすいところ、それは細いのに表面積の大きな、手や足です。逆に逃げにくいのは胴体。そういうわけで手足の血流が(つまり体温の運搬が)制限され、冷たくなるのです。
 女性が男性に比べて冷え性を起こしやすい理由の一つは、筋肉量が少ないことです。もともとの熱産生が少ないのですね。

2.冷え性の原因② … 循環が悪い場合
 もう一つの原因は、血液循環が悪くなることです。前述のとおり体温は血液で運ばれます。循環が悪くなれば、熱も運ばれませんから冷えてきます。
 例えば、手の場合には、肩こりなどが理由に考えられます。肩の筋肉が緊張して血管を圧迫、血流を妨げるからです。足の場合には、むくみなどがあげられます。

 血流を妨げると言えば、ストレスの存在もはずすことができません。強いストレスを感じると血管は収縮して細くなり、血液も粘度が上がって流れにくくなります。手足の毛細血管にまで十分に血液がいきわたらないので、体温が運ばれず、冷え性となります。

3.冷え性対策① … 正統派
 熱を多く作り、循環を良くする。この二点を考えれば、規則的な運動をするのが一番の対策になりますね。
 運動で筋肉が増えれば、熱の産生量が増えますから、手足に回す熱の余裕もできてきます。さらに肩こりの解消、足のむくみなど循環不全も良くなりますから、二重の意味で冷え性の解消につながります。運動としては、ウォーキングなどに加えて、筋肉を鍛えられるようなものがいいでしょう。
 といって、なかなか続くものではないのが運動…。
 
4.冷え性対策② … 裏技
 ということで裏技です。肩こりやむくみなどの循環不全に対しては、マッサージと言う方法もありますし、冷え性を治すお灸のツボもあります。しかしここではもっと簡単な方法を。

 一つ目は、腹巻、カイロなどで腹部を温めること。これについては、少し前にテレビでも紹介していたので、知っている方も多いでしょう。
 手足が冷える原因の一つは、熱が足りなくなること。つまり熱が余るようにすれば、手足にまで体温を運ぶようになります。そこで腹巻やカイロで腹部を温め、熱を余らせるわけですね。原理から言えば、手足を直接温めるよりも、合理的です。

 二つ目は、風呂上りの手足に冷水をかけること。これは「寺子屋お産塾」(http://park11.wakwak.com/~hisao-t/)というホームページで紹介されていたもの。
 「暑い日には熱いものを飲むと、涼しくなる」というのを聞いたことはありませんか? 人体には、バランスをとるシステムが備わっており、熱いものを飲んで一時的に体温が上がると、今度は冷やそうとする働きが出るのです。その逆で、手足の先に水をかけて、体温が上がるのを利用するのです。
 コツとしては、ほんの一瞬だけ冷やすこと。時間をかけると、せっかく温まった身体が内部まで冷えてしまいます。表面だけを冷やすように、シャワーをさっとかけるくらいにしておきます。一瞬は冷たく感じますが、すぐに回復して、むしろ温かさを感じるようになります。何日も続けると、効果がはっきりしてきます。

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2006年11月 5日 (日)

足を治せば百病治る

 「万病が治る」とまでは言いません。しかし、足の歪みが全身に悪影響を及ぼすこと、足を治すことで多くの痛みや不調が治療できることは確かです。

1. 足の歪みとは
 ここで言っている足の歪みとは、足首の関節と、足裏を構成する小さな骨(足根骨と言います)の、「位置のズレ」「癒着による固定」を指しています。このような足の歪みは、普段はほとんど自覚されることがありません。レントゲンで撮影しても「異常なし」となりますが、歪みは身体各所のバランスを崩し、長い間に悪影響を広げてゆきます。

2.膝の痛み…原因は加齢だけではないAsiyugami
 膝痛は一般的には加齢が原因と言われています。しかし単に年齢が原因なら、すべての人が膝痛を起こさなければならないはず。そうなっていないということは、加齢以外の原因があると言うことです。

 これまでに見た膝痛の方には、ほとんど全員に足首の歪みが見られました(それ以外のケースは、リウマチと強度の外反母趾)。
 膝の関節は内側と外側に関節面があり、両方で体重を支えています。よくあるのは、踵の骨が内側にずれているケースです。図の左側が、正常な骨格で、重心の線が踵の中心から膝関節の中心を通っています。
 右側の骨格では踵が内側にずれ、重心の線が膝関節の内側を通っています。体重は内側だけにかかるため、内側が耐え切れずに炎症を起こします。膝が痛む、水が溜まってくる、などはこれによって起こります。
 痛みが出て時間がたっていない場合には、足の歪みをとり、重心を調整するだけで症状が好転します。まったく痛みを感じなくなった方も少なくありません。 

 痛いのを我慢して何年も過ごすと、関節自体が磨り減ってO脚変形してしまいます。こうなると、足の調整で重心を調整するのは難しくなります。なるべく早い治療が必要です。

3.骨盤の歪みだけを治してもKotubanyugami
 骨盤は三つの骨が輪状に組み合わされたものです。三箇所のつなぎ目(図では○印のところ)で動く柔軟性を持ち、身体の曲げ伸ばしや歩行時のときに、上下に動きます。
 ところが骨盤周辺の筋肉バランスが悪かったり、左右の重心に偏りがあると、上がったまま、下がったままで動けなくなります。これがいわゆる「骨盤の歪み」です。骨盤の歪みは腰痛や肩こり、脊椎の側湾(曲がり)の原因になります。

 骨盤歪みを引き起こす原因の一つが、足の歪みです。とくに関係が深いのは、つま先が上がらない、うまく伸ばせないなど、足首の固さ。動きに固さがあると、左右の足で蹴り出しの力が変わり、骨盤の荷重バランスが崩れて歪みを誘発します。逆に言うと、骨盤だけを治しても、足が歪んだままではまたすぐに歪んでしまうのです。
 土台である足の歪みから治さなければなりません。
 
4.その他
 首の寝違いを治療するときには、普通は首と肩、肋骨の上部を調整します。ところが、この部分を治療してもまだ痛みがあると言われた方がありました。筋肉の動きを見ていると、肩から足にかけて緊張が見られましたので、足を調整したところ、残っていた違和感が一度に消えてしまったといわれました。足の影響範囲の広さに驚かされました。

 足の歪みはとても大きな問題ですが、治療を行っているところはほとんどありません。足の歪みに合わせたクッションを作っているところもあり、それなりに有効ですが、足そのものを治さなければ根本的な対策とはいえないでしょう。
 足の可動性については、自分で行うストレッチでもある程度の効果が望めます。それでも感じがおかしいと思われるときは、どうぞご相談ください。 

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2006年10月 3日 (火)

腰痛いろいろ

 腰痛は、二本足で歩く人類の宿命だとか。日本人の8割は、一生に一度は腰痛を経験するそうです。しかし、腰痛と一口に言ってもタイプはさまざま。腰痛の分類と治療について、ご紹介します。

1. 疲労性腰痛
 「腰痛が持病で」という方の、ほとんどがこのタイプです。前かがみ、長時間のデスクワークなど、腰に負担のかかる仕事をしていると、筋肉に疲れが溜まってきます。疲れが軽い間は、一晩寝ればきれいさっぱり解消してしまいます。しかし疲れがある程度を超えると、筋肉が硬くなり、血液の流れを妨げます。血液の流れが悪いのでまた疲れ物質が溜まり、溜まると筋肉が硬くなって……。ということを繰り返して発生するのが、疲労性の腰痛です。
 最近は、ストレスも腰痛の主要な原因と考えられるようになりました。ストレスも筋肉を緊張させ、血液の循環を妨げますから、似たタイプの腰痛といえましょう。

 このタイプの腰痛は、じわじわと長引く痛みが特徴です。
 治療には、血液の循環を改善して疲れをとってしまえばよいわけで、ストレッチ、マッサージ、温浴などが有効です。また、このタイプの腰痛には鍼が良く効きます。深いところまでとどき、硬くなった筋肉をゆるめることができるからです。

2. ぎっくり腰
 重いものを持ったとき、急に動いたときなどに発生する急性の腰痛がぎっくり腰です。痛みはかなり強く、人によっては立ち上がるのにも苦労することがあります。
 原因は、現代医学でもまだ完全には解明されていませんが、骨盤の関節(仙腸関節)の捻挫、あるいは腰付近の筋肉が痙攣しているものとも言われています。たいていの場合は4、5日無理をせずにいれば治ります。

 治療としては鍼、AKA(関節運動学的アプローチ。関節を対象にした手技療法)などが有効です。痛みを除き、治療期間を短縮する効果があります。

 このぎっくり腰は、一度起こした方は何度も起こすのが特徴です。
 ぎっくり腰を繰り返す方には足腰に歪みを持っている場合が少なくありません。歪みが身体のバランスを崩して腰に負担をかけ、それが何かのきっかけでぎっくり腰として発症するようです。
 再発を防ぐため、ぎっくり腰を起こしたことのある方は原因からの治療が必要です。

3. 椎間板ヘルニアSekitui
 人間の背骨は、円筒形の骨と柔らかなクッションが交互に積み重なった、積み木のような構造をしています。クッション部分が柔軟に動くので、背中を曲げたり伸ばしたりできるわけです。
 ところが、何かの弾みでこのクッションがはみ出してしまうことがあります。これが椎間板ヘルニアです。はみ出したクッションが神経を圧迫するので、坐骨神経痛や、足のしびれをおこすこともあります。

 ヘルニアの治療というと、手術を連想する方が少なくありません。しかし現在は、よほどの重症でない限り手術をすることはありません。温存して自然に症状が治まるのを待つのが主流です(海外の研究ですが、ヘルニアの多くは数年以内に症状が消えるそうです)。

 ヘルニアそのものは、鍼灸やマッサージでは治療できません。しかし温存療法を行っている間、痛みやつらさを緩和するお手伝いはできます。

4.腰痛治療には健康保険が使える
 腰痛は、厚生労働省から鍼灸治療の対象疾患に指定されています。そのため医師の許可があれば健康保険で治療を受けることができます。
 健康保険を使った場合の自己負担は一回あたり数百円程度。また歩行が困難な場合には出張治療費も健康保険から出ることになっています。
 医師の許可を取るための同意書用紙は、治療院においてあります。長引く腰痛でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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2006年9月19日 (火)

鍼灸と不妊症・不育症

 鍼灸治療の適応症の一つに、不妊症・不育症があります。
 不妊症・不育症のうち病院で原因がわかるものはごく一部で、大半は、どこにも異常が見つけられません。異常が見つけられないから治療ができない、治療ができないから妊娠しないというのが不妊症の悩みなのです。
 実は我が家も、4回の流産を繰り返す不育症でした。しかしどこの病院でも検査結果に異常は見られず「そのうち、うまくいくこともあるから…」という言葉を聞くのが常だったのです。

 資格をとってからわかったことですが、鍼灸やマッサージには、不妊症・不育症に対する治療法が多々あります。たとえば、
・ 中条流の子宝の灸
 臍を頂点として、口の幅を一辺とした正三角形を描き、下の2点に灸を据える。美肌灸としての効果も。
・ 澤田流の太極療法
 主要穴に灸を据え、全身を整える治療法。婦人科系だけでなく幅広い病気や不調に効く。
 
 など。他にも多くの方法があります。我が家の場合には、八起堂独自の足首調整を行いました。何回かの治療の後「急にお腹が軽くなって、空間ができた気がする」という感想があり、流産することなく出産しました(ちなみに東洋医学では生命力・生殖力に関わる「腎経」も、生殖器を通る「肝経」も、栄養の吸収や循環に関わる「脾経」も、足首を通っています。東洋医学の人なら、当然だと言うかもしれません)。

 妊娠、出産については、現代医学でもまだわからないことが多々あります。それだけ微妙な問題なのですね。不妊症、不育症でも、病院の検査では発見できないくらいの、微妙な異常が原因となっているケースがあるのでしょう。
 鍼灸やマッサージでは「未病を治す」といって、まだ症状に表われていない異常、いわば病気の種を治療しようとします。その技術が有効なのでしょうね。

 鍼灸治療は副作用がほとんどなく、費用もあまりかからず、現代医学の治療と並行しても問題がありません。試してみる価値はあると思います。

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2006年9月 6日 (水)

身体の声を聴く治療

 自分でできる治療法の一つをご紹介します。
 目をつぶって、じっくりと自分の身体を点検してみましょう。ところどころに突っ張った感じや、重い感じがないでしょうか。これは身体に無理がかかっているという身体の声です。この声は障害の予防になるだけでなく、治療することさえもできる大事なサインです。

1. 感覚異常は異常の始まり
 しびれたり、ぴりぴりした痛みがでているとき。あるいは妙に重かったり、力が入りにくくなっているとき。これは身体の一部に無理がかかっていることを知らせているのです。
 身体の故障は次の順番で起きると言われています(操体法の橋本敬三氏)。
① 感覚の異常 → ②機能(動き)異常 → ③器質(組織)異常(変形、変質など)

 痛みや痺れなどのおかしな感覚が出たとき治療せずほうっておくと、やがて筋肉などの異常な緊張が生じて動かしにくくなってきます。それも放っておくと、ついには骨などの組織を変形させてしまうことになります。①の感覚異常の段階か、おそくとも②の機能異常の段階までに治療することができれば、大事にならずにすみます。
 その意味ではなるべく早い治療が必要ですが、この段階では病院は治療してくれません。治療院に行く手もありますが、なかなか気の進まないこともあります。そこで、自分での治療。軽い段階なら、自分でも治せるのです。

2.カウンターストレイン
 ローレンス・ジョーンズという人が創始した治療の方法です。自己治療として行うのに最適です。
 寝転がって、自分の身体の痛みや違和感を観察します。そして手や足の位置、体のひねりなど、いろいろ試しながら「最も痛くないポーズ」を探すのです。実際にやってみればわかりますが、このときのポーズは本当に奇妙な格好になります。右手と左手が別々の方向へ伸びていたり、首や胴体がねじれていたり。しかしそれが、その人にとっての最も楽な格好なら、それでいいのです。
 痛くないポーズ、楽なポーズが見つかったら、その姿勢で最低90秒、じっとしています。そのあと、ゆっくり動き出します。治療の手順はそれだけですが、痛みや痺れの幾分かは減少します。
 なぜこんな簡単なことで治療できるのか、はっきりしたことはわかっていません。仮説としては、「楽な姿勢」=「緊張がもっとも少ない姿勢」をとることで、異常緊張していた筋肉をゆるめ、リセットするのだと言われています。

3.操体法
 こちらは名前をみてわかるとおり、日本発祥の治療法です。開発したのは医師の橋本敬三氏。痛みのない、気持ちが良い感覚で治療する点はカウンターストレインと同じですが、動きを利用してより能動的に治療してゆきます。その効果は高く、専門に治療院を開くプロがいるほど。入り口は簡単で奥の深い治療法です。

 まずは診断を行います。といっても難しいことはありません。身体をいろんな方向へ動かして、動かしやすい方向、痛みのない方向を見つけるのです。
 例えば肩なら、右肩と左肩を片方ずつ上げてみます。身体に歪みのある場合には、必ず上がりやすい方、上がりにくい方があるはず。これが診断になります。
 治療は上がりやすい方の肩を、ゆっくりと上げてゆきます。無理なく上がるところで止めて、一呼吸。そして一気に脱力します。これを何度か繰り返します。
 それからもう一度左右の肩を比べると、さっきよりも左右の感覚が揃ってきているのがわかるはずです。なお動作のときに、誰かに軽い抵抗(指一本分くらいの力)をかけてもらうと、治療効果が上がりやすくなります。ですから、操体法は基本は二人組みです。

 足や腰、首など全身をこの要領で治療してゆくと、身体のバランスが整って調子が良くなってきます(首などでは「前 後ろ 右曲げ 左曲げ 右回し 左回し 伸ばす 縮める の八方向があります)。大事なのは、あくまで「気持ち良い方、痛くない方」へ動かすことです。間違っても、逆に動かしてはいけません。
 この治療法も、はっきりした原理はわかっていませんが、筋肉の異常な緊張が少なくなること、関節のズレが治ることなどが理由として言われています。

 この操体法は技術理論が明快で、誰にでも使用でき、しかも効果があるすぐれた治療法です。私は治療法として使うことはそれほど多くありませんが、理論に大きな影響を受けています。
 非常に面白いので、興味のある方は本を読まれることをお勧めします。操体法の本は大きな本屋なら必ず見つけられます。 

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2006年8月20日 (日)

リラックスは難しい

 「何もしていないのに肩がこるのよー」
 とおっしゃる方は少なくありません。そういう方の身体は、まず間違いなくあちこちが力んでしまっています。何もないときに力が入って、自分の力で肩を凝らしてしまっているのです。
 こういった方は、普通の人以上に筋肉を使っているわけなので、当然疲れやすくなりますし、あちこち痛くもなりやすいものです。

1.力んでしまう訳
 力が入ってしまう理由にもいろいろあります。
 一番大きな原因は、ストレスなどの精神的緊張です。ストレスは、基本的には身に危険が迫った時の反応。心拍数と血圧、血糖値が上がり、全身が運動に備えた状態になります。もちろん筋肉も力が入りやすい状態に。それが肩こりなどの疲れを生むわけですね。これは肩こりだけの話ではなく、腰痛などにもいえます。

 性格も関係します。それも真面目な方。真面目な方は何事も一生懸命やろうとしますから、常に緊張状態になってしまいます。疲れるのは同じですが、
(今回のテーマからは外れますが、身体の歪みからくる異常緊張もあります。この場合は身体の一部分に起こるのが特徴で、たいていは治療で歪みをとれば治ってしまいます)。

2.リラックスするのは難しい
「力が入っているのなら抜けば良いのでは」といいたいところですが、力を抜くというのは案外と難しいのです。それ以前に、力が入っているかどうかが自分ではわかりにくいものです。
 普通の生活をしていると「身体を動かすときには力を入れなくてはならない」という考えになり、力む習慣がつきやすいものです(スポーツや武道の経験者は、無駄な力を抜くことを学びますから、普通よりリラックスしやすいように思います。もっとも、筋トレ全盛の昨今では、逆効果になっている方も少なくありません)。

 精神的なストレス解消はそれぞれに考えていただくとして、身体的なリラックス方法を二つほど。

3.昼間のリラックス法
 身体の力を抜く練習の第一歩は「力が抜けた状態を覚えること」です。
 最初に、全身にグッと力を入れます(肩など、一部が気になる方は一部でも)。それから一気にダラーンと脱力します。こうすると、先に力を入れた反動で脱力しやすくなります。

 大事なのは、このときの「力が抜けた感覚」を覚えておくこと。一度感覚がわかれば、力が入っていることがわかりますので、力が抜きやすくなります。それでも脱力がやりにくいとおっしゃる方は、最初の「力を入れる→脱力」を用いて、力を抜きます。時々やるだけでも、疲れ方が違ってくるものです。

4.寝る前のリラックス法
 力が入ったままの状態では眠りにくいものです。脱力できれば眠りが深くなり、安眠につながります。

 酔っ払いや眠っている子供を抱き上げると重く感じますね。力が抜けた状態では、身体を重く感じるのです。この方法では、力を抜くと考えるよりも、身体の重さを意識します。
 横になった状態で深呼吸をします。ゆっくりと深呼吸をしながら、足の先が重くなるようにイメージします。足先が重くなったと思えたら、次は膝、次は大腿と、順次上の方へ意識を移します。全体が重いと感じられるようになったなら、全体に力が抜けてきた証拠です。

 リラックスすることの健康効果は、よく知られています。力を抜いて緊張を取ると、呼吸が鎮まり、血圧は下がり、肩こりは減って、ストレス解消にもつながります。なるべくならリラックスして日々の生活を送りたいものですね。

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2006年8月 5日 (土)

骨盤が歪むって?

 マスコミや健康情報で「骨盤の歪みが…」という言葉を見ない日はありませんね。今回は骨盤の歪みについて。

1.骨盤は三つの骨Kotubankaihei
 骨盤は、3つの骨がつながって輪状になったものです。後ろ側中央にあるのが、背骨を支える仙骨。その仙骨を左右から挟んでいるのが寛骨です。
 仙骨と寛骨の間は、仙腸関節という関節でつながっており、寛骨どうしは柔軟性のある繊維軟骨でつながっています。このことからわかるように、骨盤は柔軟性を持ち、動く骨なのです。

2.骨盤は動くKotubansoku_3
 右の図を見ればわかるように、仙骨は背骨につながり上体の重さを支えています。つまり立っている状態では、仙骨は真ん中が押し下げられるように力がかかっているのです。

 それが下がらないでいるのは、寛骨についた筋肉や、骨盤周辺の靭帯が支えているからです。筋力と体重の釣り合いなので、筋肉が力を出したり、体重のかかり方が変わったりすれば、動きます。

「あれ、それなら骨盤は歪んだり戻ったりするの?」と思われた方。そのとおりです。骨盤を包んでいる靭帯の弾力の範囲で、日常的に動いているものなのです。動きが数ミリ程度と小さいので、気づかないだけで。

 骨盤が動くのは、身体の運動を助けるためです。
 たとえば身体を右に傾けたとします。体重が多くかかる右側の寛骨は沈み、体重がかからなくなる左側の寛骨は浮かび上がります。結果として仙骨は右へ傾き、上体の動きを助けるのです。

3.動かなくなるのが、問題
 骨盤が問題を起こすのは、歪んだときではなく、歪みが戻らなくなったときです。

 片足が痛くて体重をかけられない。いつも同じ方の手で荷物を持つ。このように体重のかかる方向が決まっている方の場合には、片側の筋肉だけが疲労して硬くなり、骨盤を引っ張って歪めてしまいます。
 また腰に無理な負担がかかることを続けていることで骨盤付近の靭帯組織が硬くなり、骨盤の動きが阻害されることもあります。
 よく言われる「骨盤が歪んでいる状態」というのは、このように歪みが習慣化して、固定してしまった状態を言っているのです。

 骨盤の動きが悪いと、身体の運動を助ける力が落ちて、あちこちに負担がかかってきます。また、骨盤が歪んだ形で固定化していると、その骨盤にあわせて他の部分まで歪んでくることも少なくありません。このような場合は、やはり骨盤を柔軟にする必要があります。
 寝転んでリラックスした状態で、左右の足の開き角度が違う方、立っている姿を鏡に映して、肩の高さが左右で違う方などは、骨盤の歪みが固定化している可能性がありますね。

 骨盤の治療には主にAKA、TAMなどの手技療法を用います。ゆっくりと骨盤に力を加えて、固くなった組織をやわらかくしてゆきます。無理なことはしませんので、とくに痛みもありません。
 ついで骨盤を引っ張っている筋肉をほぐしたり、足の歪みを直すなど、原因となる部分を治療してゆきます。

付記
 整体を業としている人が「骨盤は昼は閉じて(真ん中が下がる)、夜は開く」と言っていました。「そんな非科学的な」と思うかもしれませんが、骨盤の構造を考えれば、納得がいきます。立っていることの多い昼間は、体重がかかり続けることで靭帯が伸び加減になり、仙骨が下がって閉じてくると考えられます。逆に体重のかからない夜は、昼間下がった分を回復させるために開いてくると考えられます。
 いずれにせよ、骨盤が正常に動くことが健康の条件です。

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2006年7月30日 (日)

足治療の三点

 今回は足の治療のポイント三点です。

1.ふくらはぎ
 長時間立っていたり、椅子に座って作業したりしていると、重力の影響で足に水分がたまってきます。これがいわゆる「むくみ」です。たまっている水分は主に血液とリンパ液です。
 リンパ液は皮膚のすぐ下にたまることが多く、放置すると足が太くなり、組織が硬くなってきます。血液は血管(静脈)を押し広げて溜まります。血管がミミズのように目立ってくる静脈瘤がそれです。静脈瘤は見た目にもよくありませんし、肺や脳に悪影響を与える血栓をつくりやすい性質があります。
 むくみに対しては、リンパ液や血液を心臓へ戻すマッサージを行います。

 ふくらはぎでもうひとつ問題なのは、筋肉の疲れです。ふくらはぎの筋肉は足首と足指を動かす働きを持っていますが、立っている時に足首をぐらつかせず、固定する役目も果たしています。歩いているときも、立っているときも、休まず働いているわけですね。この筋肉が硬くなると足の踏ん張りが利かず、疲れやすくなります。膝や腰にも負担がかかり、いためやすいものです。
 スポーツ選手の場合には、この筋肉が硬いとアキレス腱を切ってしまう原因にもなります。マッサージ、鍼などコリをほぐす治療が必要です。

2.足首
 この歪みについては以前も書いたことがあります。運動などで足首を捻挫したり痛めたりすると、その部分は硬く、動きにくくなってしまいます。場合によってはゆがんで固まることもあります。その影響は何年にもわたって残り、膝痛や腰痛の原因となるのです。このような足首の歪みは、マッサージで柔らかくし、治療する必要があります。簡単な膝痛などは、それだけで改善してしまうこともあります。

3.足の裏
 足裏の治療といえばリフレクソロジー、いわゆる足ツボマッサージが有名ですが、足裏のツボ以外にも治療するべき箇所があります(ちなみに東洋医学では足裏にあるツボは湧泉というひとつだけ。リフレクソロジーはイギリス発祥で、その後中国に伝わったようです)。
 足裏の骨は、指骨を除いても11個あります。これらが靭帯でつながれ、小さな筋肉で支えられて形成されるのがいわゆる足のアーチです。逆に言えば、これらの靭帯や筋肉のケアをしなければ、足のアーチが変形し、いわゆる偏平足になってしまいます。治療としては足裏の靭帯を柔軟にし、血行をよくすることが必要です。(自宅でこれを行う方法としては、青竹踏みがあります)。

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2006年7月22日 (土)

肩こり治療の三点

 肩こりを治療するにも、肩ばかりを揉んでいては十分な効果が出せません。十分な効果を出すためのポイントは、三つあります。

1. 肩甲骨の回りKatakori
 一つ目は、言うまでもなく肩。それも肩甲骨です。肩甲骨は、肩の後ろにある三角形の骨で、胴体と腕をつなぐ重要な働きをしています。かなり大きな稼動範囲を持っていますが、日常的に動かすことは稀で、固くなってしまうことが多いものです。

 よくあるのは肩甲骨の前側、下側の筋肉が緊張するケース。肩甲骨は下に引っ張られるので、肩から首にかけての筋肉が、負けないよう対抗して引っ張り挙げようとします。
 そうなると肩から首にかけて強い肩こりを感じます。肩から首だけをいくら揉んでも、下から引っ張る力がある限り首、肩の筋肉は休めません。いつまでも凝ることになります。肩甲骨回りを治療しなければ、根本的な治療にならないわけです。

 治療では大きく動かしてから、周辺部を丁寧にほぐしてゆきます。

2.首の周り
 二つ目は、首の回りです。首の後ろ、背中とのつなぎ目あたりが硬くなっている方が少なくありません。この動きの悪さも、肩や首の筋肉を緊張させるもとですから、解消する必要があります。
 また、頭と首のつなぎ目部分が硬くなって、首の凝る人もいます。この場合は首に詰まった感じがあり、頭痛を伴うことが多いものです。
首と肩とのつなぎ目は、筋肉をゆっくりと伸ばし、滑らせるようにほぐします。

3.手と手首
 三つ目は手、それも手首と指です。
 指は、人間の関節で最も細かい動きが求められる部分です。手首はその指先を支えるために、柔軟な動きが求められる部分です。この二つの部分に不調があると、何をするにも力みが入り、肩が凝ってしまいます。とくに仕事でパソコンを使う方では、指をキーボードにあわせて曲げるので、肩こりがおきやすくなります。手首の治療が欠かせないゆえんです。
 手首の動きが良くなるようにマッサージし、必要に応じて指も施術します。

 使いすぎや、緊張しすぎの肩こりなら、この三箇所を押さえれば、かなり良くなります。もっとも、足腰の不調から肩に及んでいる場合には、やはり足腰から治療しなければなりません。

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2006年7月 9日 (日)

膝の痛み 加齢といわれても

 「病院で加齢と言われました」
 膝の痛みで来られた患者さんから、よく聞く言葉です。
 加齢と言えば専門用語っぽいですが、要するに「歳のせいですから諦めて下さい」といっているわけですね。しかし、本当に諦める必要があるのでしょうか。
 今回は、膝痛の治療について。

1.加齢による膝の痛み…変形性膝関節症
 曲げ伸ばしで痛い、正座ができないなどの膝の痛み。その原因の一つが加齢による「変形性膝関節症」です。膝の関節軟骨が磨り減り、痛みが出る症状です。
 関節軟骨は関節の間に入っている弾力ある組織で、膝の動きを良くする働きをしています。何らかの原因で磨耗が異常に進行すると、神経を刺激して痛みを感じるようになります。これが変形性膝関節症です。お医者さんが「加齢です」というときは、この症状をさしています。

 ところが加齢と言われた患者さんを見ていると、実際は加齢でない痛みの場合が多いのです。

2.加齢によらない膝の痛み…見分け方
 加齢による変形性関節症では、痛みは関節の隙間に現れます。膝を真っ直ぐ伸ばした状態で、膝蓋骨(膝のお皿)の下の端に指をあててください。そのまま横に指を滑らせると、線状の凹みに触れるはずです。これが上下の骨の境目、いわゆる膝関節の隙間です。典型的な変形性関節症ではこの隙間、とくに内側に痛みがでます。指で軽く押してみて、痛みがあるかどうかを確認してみてください。

 もう一つの見分け方は関節の音です。変形性膝関節症では、曲げ伸ばしのときにゴリゴリいうような摩擦音が発生することが多いのです。

 上記二つの要因に当てはまらない場合には、加齢による変形性膝関節症でない可能性が高いといえます。

3.加齢ではない痛み…関節の狂い
 関節の動きに歪みが出ている場合、本来はぶつからないところがぶつかって、痛みが出ます。この場合、狂いを修正すれば痛みを治療することができます。
また以前にも書きましたが、膝の痛みを起こす最大の原因が足関節の歪みです。この場合も歪みを修正して体重の偏りをなくせば、痛みが止まります。

 問題は、歪みを放置すると関節が早く磨り減ることです。磨耗が進んで本当の変形性膝関節症となると、治療が難しくなってしまいます。なるべく早いうちに歪みを正常化し、進行を予防することが必要です。 
 歳をとっていても、関節に狂いがなければ、磨耗はあまり進行しません。

4.加齢によらない膝の痛み…癒着と筋緊張
・癒着によるもの
 膝関節の曲げ伸ばしが上手くいかず、表面に引きつれるような痛みがある場合には、関節組織の癒着が考えられます。この場合は、マッサージで癒着を解消すれば、曲がるようになり、痛みも減少、または消失します。

・筋緊張によるもの
 関節の隙間から少し離れたところが痛い場合、また痛みの周辺に筋肉の盛り上がりがある場合。これは、筋緊張による痛みの可能性が高いといえます。筋緊張の原因としては、使いすぎや、身体のクセによるもの、足腰のゆがみによるものなどがあります。いずれにせよ、筋肉の緊張を治療すれば、痛みが減少・消失します。

5.加齢であっても
 では、本当に加齢による変形性膝関節症であった場合には?
この場合にも、適切な運動による筋肉の強化や、軟骨の再生で、痛みを減少できることが多いのです(先日の「ためしてガッテン」を見た方も多いでしょう)。
加齢現象は努力しだいで食い止められることが多いものです。まだ、諦める必要はありません。

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2006年5月17日 (水)

トリガーポイント鍼療法

 鍼灸といえば、東洋医学。ツボを駆使して神秘的な力で病気を治す。
…こういったイメージをお持ちの方は少なくないでしょう。もちろん、そういった鍼灸は今でも盛んです。しかし科学的な方向から鍼灸を考えようという人も増えてきています。今回は現代医学の鍼灸、トリガーポイント鍼療法の紹介です。

1. トリガーポイントとは
 トリガーポイントについては以前も書いたことがありますが、筋肉の中に現れる一種のシコリだと思ってください。

 筋肉組織は、疲れたり血行が悪くなったりすると、緊張して硬くなります。固くなった組織はますます血行が悪くなり、ますます固くなり…という悪循環によって、硬く変質してしまうことがあります。
 筋肉の一部が固くなっているだけなら良いのですが、このシコリが他の部分を緊張させたり、神経を圧迫したりして、痛みを発生させる原因となるのです。
 トリガーポイントという名前は、この組織が他痛みの原因でを発生させることにあります。痛みの引き金(トリガー)になる点(ポイント)ですね。

 トリガーポイントにも、発生しやすい位置があります。欧米の調査では、トリガーポイントの発生位置と、伝統的な鍼灸のツボ位置が、70%以上一致したという結果も出ていて、「これこそがツボの正体ではないか」という研究者もいます。

 トリガーポイント鍼治療は、この痛みの原因となるトリガーポイントを鍼で狙い撃ちして解消する治療法です。血行不良で変質した組織なので、鍼による血行改善効果で消えるのです。
 トリガーポイントが消えると、それが原因となって発生させていた痛みも消えます。治療場所、結果、ともにはっきりとした、わかりやすい治療法であるといえるでしょう。

2.東洋医学鍼療法との違い
 東洋医学との最大の違いは、トリガーポイントに「変質した筋肉組織」という実体があることです(超音波撮影なら、撮影することもできるそうです)。この組織異常を解消することで、症状を取ります。
原因と結果がはっきりしている分、治療方針も明確です。治療の効果も明確で、比較的即効性があります。とくに、痛みの治療などには効果が高いといえます。
 ただし、全身の関連性を考える思想はまだ発展段階です。

付記
 比較すれば、東洋医学は「気」という見えないものを治療対象にしています。治療でも「気」に関わる部分が得意で「なんとなく調子が悪い」というような状態(不定愁訴といいます)の治療に向いています。

3.八起堂では
 八起堂の治療は手技が中心ですが、鍼に関してはトリガーポイント治療法を使用しています。ただし、一般的にいわれる筋肉中のトリガーポイントだけでなく、皮下組織や人体などの部分が硬化したものも、治療対象として考えています。

 具体的には、筋肉の中で固まって柔軟性を失っている部分(トリガーポイントを含めて)を鍼やマッサージでほぐします。あわせて、皮膚、関節などの組織で動きが悪くなっている部分(癒着など)をマッサージ・運動法でほぐして柔らかくすることで、全身の動きの悪さを解消して行きます。

 八起堂は「身体の滞っているところ、偏っているところを解消すれば、本来の姿を取り戻せる」という考えです。「実体を対象とする」現代医学の方法と、「全身はつながっていて、無関係なところはない」とする東洋医学の思想の両方を取り入れているといえるでしょう。

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2006年5月 5日 (金)

運動、やらないよりマシ

 健康のために運動を。
 そう思う人は少なくないはず。だけど続かないのが運動ですね。よく新聞などで一日に一万歩は歩け、などと言いますが、仮に一歩を50センチと考えても5キロメートル。普通の人なら一時間は歩かなければなりません。
 厚生労働省の運動指針などは、15分のウォーミングアップのあと、20分から40分の運動、それから15分かけてクールダウンしろ、となっています。トレーニング理論としては正しいのですが、そんなにまとめて時間を取れる人は少ないでしょう。

 雑誌「ニュートン」で有名な竹内均氏は、生活の無駄な時間を徹底して省いた人でした。ある日テレビから聞こえてきたアナウンサーの言葉に耳を止めます。「ゴルフを一日やっていても、運動量は縄跳び五分くらいのものでしょう」(実際にはカロリー消費から言えばゴルフの方が上、心肺機能を鍛える上では縄跳びの方が上のはず)。
 そのとき「本当かどうかは知らないが、だったら一日に五分間の縄跳びをしよう」と決意したそうです。それから毎日五分間だけ縄跳びをして、83歳まで活躍しました。学者として、健康に必要な最小限の運動をする、という選択です
 普通の人にとっては、この考え方のほうが長続きしそうです。

 目的なしに運動をしても続かないもの。何のために運動するかを考えて、続きそうな方法を考えればいいと思います。
 そして運動すべてにいえることですが、どんな運動でも「やらないよりマシ」です。五分間でも、サボっても、適当でも、やらないよりはマシ。

 ちなみに私は先日から竹内式五分縄跳びを目指しています。目指して、というのはしょっちゅう忘れるからです。今は二日に一度くらいでしょうか。しかしそれでも体重は減少していますから、いくらかは効いているのでしょう。やらないよりマシ。これは三日坊主の私自身の、言い訳でもあります。

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2006年4月 5日 (水)

手足ねんざの後遺症

 以前にも書いたことがありますが、ケガをした部分の組織は癒着して、動きを妨げることがあります。とくに捻挫の治療には固定が不可欠なので、固定による関節の癒着も加わってしまいます。
 患者さんを診ているときに、このようなねんざ後遺症を見つけることは少なくありません。話を聞くと、ねんざをしたのは20年前だったりします。ねんざ後遺症はそれほど長く残り、いろいろな害をなします。

1. ねんざ後遺症の発見Tekadou
 ねんざ後遺症を発見する一番簡単な方法は、関節の動く範囲(可動範囲といいます)を見ることです。
 正常な手関節の可動範囲は、手の甲側にそらす角度が、だいたい70度くらい。掌側に曲げる角度が80度から90度とされています。
 もちろん個人差はありますが、この範囲よりも大幅に少ない場合は、何らかの原因で関節が動かなくなっていると考えられます。

Asikadou
 足首の可動範囲は、つま先を持ち上げる角度が20度です。足の裏側に下げる角度が50度くらいです。
同じく、動きが悪い場合は、関節が動かなくなっています。

もう一つの発見方法は、左右の手足関節を動かし比べてみることです。
挙げ下げ、曲げ、回転などの動きを左右一緒にしていて、左右の動き方に差がある場合は、ねんざの後遺症を疑っていいと思います。

2.手首の後遺症Tenenza
 手関節は、右の図にあるように、小さな骨の集合でできています(掌の根元の狭い範囲に、八個もの小さな骨があります)。この小さな骨が相互に動くことで、楽に動くことができるのです。
 手関節にねんざ後遺症があると、手首を動かすたびに腕全体によけいな力が必要になり、肩がこりやすくなります。
 この小さな骨は、手首の使いすぎでも固くなり、不調の原因になります。パソコンを使う人などは要注意です。

3.足首の後遺症
 足首も手首同様、小さな骨の集まりで構成されています。動かない場合の悪影響は、手首の関節以上です。足首は身体の土台ですから、足首が悪いと、全身に悪影響が及ぶのです。

 例えば足関節が動かないと、歩くときにつま先を持ち上げることができません。この場合、つまづかないように膝を高く持ち上げなければなりません。身体の傾きも大きくなり、膝や腰に負担がかかります。(何も無いところでつまづく人は、足首の不調を疑ったほうがいいでしょう)。

 もっと問題なのが、足首が歪んだまま固まっている場合です。この場合は膝や腰の関節に偏った体重がかかります。
 女性に多い膝の痛み、変形性膝関節症は、膝の骨が偏って磨り減る病気です。この原因の一つが足首の不調なのです。

 日本人の平均寿命は延び続けています。これから先の人生を楽しく過ごすために、いまから手首足首を手入れしてみませんか?

付記2008.11.17
 足首の簡易調整については、このブログの「そのまま体操8」を参照してください。簡単ですが、ある程度の効果が期待できます。
そのまま体操 http://hakkidou.cocolog-nifty.com/kawaraban/cat20225055/index.html

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2006年3月 6日 (月)

落語に出てくる鍼灸(後)

2.「太鼓腹」
 昔は「太鼓持ち」という職業がありました。遊びや歌で宴会を盛り上げたり、旦那たちの機嫌をとるのが仕事です。
 たいていの遊びに飽きた道楽者の若旦那が、気まぐれを起こしました。太鼓持ちの一八(いっぱち)を呼び出して、
「一八、俺は鍼をやってみたいんだが、どうだろう?」
「いいですねえ、鍼。あっしもちょうど、腰が疲れてましてねえ。では鍼医者を…」
「いや、打ってもらうんじゃあない。打つんだ、俺が」
「若旦那が? どっかで習ってきたんですか?」
「道具はそろえた。猫にも打った。引っかいて逃げたけどさ」
「よしてくださいよぉー!」
 逃げる一八を捕まえて、
「ご祝儀はたくさん出すから、頼む。な?」
説き伏せて寝かせ、その腹に鍼を…

…………………………………………………………………………………………………
 最初から腹に鍼を打つところを見ると、若旦那は無分流の治療を真似したのではないかと思います。この流儀は診断、治療に腹を重視し、太目の鍼を小槌で5、6㎜ていど打ち込む方法をとりました(痛みがかなり強かったようで、現在この方法を継承する人たちは先を丸くした金属棒を用い、刺さない治療をしています)。
 当時は鍼の材質も製法も未熟なため、鍼が折れることもしばしばありました。現在は材質も製法も良くなり、治療中に折れることはまずありません。
…………………………………………………………………………………………………
「いててて、痛い痛い、若旦那!」
「何やってんだ、動くから鍼が折れたじゃないか!」
 折れた鍼を抜くのに失敗、困った若旦那は一八を置いて出て行ってしまいます。そこに店の女将さんがやってきて、一八に言います。
「素人に治療させたら危ないに決まってるじゃないか。しょうがないねえ。…でも、お前もこのあたりじゃ名の知れた太鼓だ。お金にはなったんだろ?」
「いえ皮が破れて、なり(鳴り)ませんでした」

 お後がよろしいようで…。

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2006年3月 3日 (金)

落語に出てくる鍼灸(前)

 八起堂治療院も、おかげさまをもちまして、この三月三日で、めでたく開院一周年を迎えました。厚く御礼を申し上げます。
 鍼灸は昔からの日本の治療法。古い日本文化にも関わっています。今回は少し方向を変えて落語に出てくる昔の鍼灸の話など。

1.「強情灸」
 何でも意地を張りたがるのが江戸っ子。熱い風呂でも熱くないふりをして、得意がる性格。そんな男が二人そろって意地を張り合います。
 一人が「峰の灸」を据えてきた話をします。「熱い灸を表情一つ変えずに我慢するところを、美人が見て感心していた」と自慢するので、聞いていた男が意地になり、
「そんな灸なんざ何でもないや、灸ってのはこうやって据えるんだ!」
と腕にソフトクリームくらいの艾(もぐさ)をのせて、火をつけました。
「石川五右衛門を見てみろ、釜ゆでになりながら辞世の歌を詠んだんだ!」
と、威張ります。しかし肌に火が近づいてくると
「たいしたことないや。…あっ、石川五右衛門は…うっ」
 言葉が怪しくなってきますが…。

…………………………………………………………………………………………………
 この「峰の灸」は横浜の杉田に実在します。肌の上で艾を燃焼させる直接灸の一種ですが、大きさが並ではありません。
現在、普通の灸は直径が1㎜、高さ3㎜程度の小さな円錐形で、熱いのは一瞬、痕もほとんど残りません。ところが「峰の灸」では小指の先ほどもある大きな艾を使うそうです。それを背中に六つ、同時に据えるのですから、熱さは想像して余りあります。燃焼時間も長く、大きな痕が残ります。
 このようなお灸を「打膿灸」と言います。大きな火傷をさせることで、灸の痕をわざと化膿させ、病気に負けない力をつけます。実際、灸の後では血液中の白血球が増加し、免疫力が活性化することが証明されています。抗生物質も予防注射も無い時代には有効な方法だったでしょう。全国各地に、独特の打膿灸があります。
 もっとも免疫を活性化するだけなら、こんな大きなお灸は必要ありません。普通の小さなお灸で十分です。
…………………………………………………………………………………………………
「石川五右衛門は…、うっ、石川五右衛門は…」
「なんだよ、五右衛門がどうしたんだよ」
「石川五右衛門も…熱かったろうなあぁぁぁー!」


 私の手元にあるのは、古今亭志ん生のCD。枕(話の導入部)の、風呂の我慢比べのくだりが気に入っています。

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2006年2月19日 (日)

どこに治療にいきましょう?

 身体に不調が起きたとき、どこに治療に行くか迷うことがあります。風邪なら内科、鼻が悪ければ耳鼻科など、わかりやすいものがある一方、わかりにくいものもあります。その一つが、足腰や肩の痛み。病院のみならず、整骨院やマッサージなど、治療するところが様々。今回は、治療場所の選び方についてです。

1. 病院(整形外科)がおすすめのケース
●原因不明の痛み・始めて経験する痛み

 診断は医師の専売特許。またレントゲン、MRIなどの高度な検査機器を使用できるのも病院のみです。原因不明の痛みは、病院で検査して安心したほうがいいですね。
 腰痛などは内臓の病気(腎臓結石などが代表的)が原因で起こることがありますので、病院での検査を受ければ安心です。

●事故など、強い衝撃を受けた場合の痛み
 骨折や靭帯損傷などは外見からはわかりません。レントゲン撮影などで確認する必要があります。スポーツのねんざなども、必ず病院で検査を受けてください。子供の場合、ねんざと合わせて小さな骨折が起きることが多いのです。

 病院は「骨折」や「靭帯断裂」など、実際に組織が破壊されているケースの診断・治療が得意です。ただし「筋力バランスの崩れ」や「組織のちょっとした異常」など、レントゲンに写らない変化は治療対象に含まないことが多いです。

2.按摩・マッサージ・指圧がおすすめのケース
●肩こり、腰痛、疲れなど、ケガ以外の体調不良

 「いつもの肩こり」など慢性症状が向いています。
 また人間の身体はわりあいに些細なことで調子を崩すことがあります。そのような些細な異常は病院では治療対象になりませんが、マッサージ師などの手技療法では治療対象です。手の感覚で異常を調べ、わずかな歪みや固さ、バランスの崩れなどを見つけて治療します。

●疲れを取る・リラックス
 これはもう、言うまでもないですね。マッサージの得意分野です。

3.鍼灸がおすすめのケース
●肩こり、腰痛、疲れなど「ケガ以外の体調不良」
●疲れを取る・リラックス

 マッサージとよく似た分野が得意です。それに加えて、自律神経失調症や、不眠症など、現代医学で原因のわかりにくい不調(不定愁訴といいます)の治療を得意にしている治療家がたくさんいます。

4.整骨院・接骨院・ほねつぎがお勧めのケース
●「血の出ないケガ」一般

 柔道整復師はもともと、古流柔術(柔道の源流になった格闘技)の、治療技術から発展したもので「骨折・脱臼・捻挫・打撲」の専門家です。ただしレントゲンを使えませんので、骨折や脱臼、重いねんざは病院のほうがいいでしょう。急性の骨折・脱臼・捻挫・打撲に限りですが、健康保険を使えるのも嬉しいですね。

●事故予防のテーピング
 スポーツのケガを予防するテーピング。柔道整復師は、テーピングの専門家でもあります。スポーツをする前、ケガが不安なときは相談してみるといいでしょう。

5.カイロプラクティック・整体・クイックマッサージ
 ここまで解説した医師・マッサージ師、鍼灸師、柔道整復師はすべて、厚生労働大臣認定の国家資格でした。技術・医学知識に保証がありますし、事故を起こさないための訓練を受けています。

 ところがカイロや整体には資格制度がなく、未経験者でも開業できます。よく勉強した人がいる一方で、全くの素人が営業していることもあるのが現状です。素人の方にあたると、大ケガをすることさえあります。
 腕のいい人もいるらしく、うまく出会えれば良い治療を受けられる可能性があります。しかし知らない店にいきなり行くのは考えもの。評判をきき、少しでも不安なときは避けたほうがよいでしょう。

 「クイック」「リラクゼーション」など、マッサージを名乗らないマッサージは、たいてい素人アルバイトがマッサージする店です。治療効果は望めませんが、あまり危険なことはしないようです。軽いリラクゼーションが目的のときはいいかもしれません。

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2006年1月16日 (月)

コリの分類三種類

 「肩こり」などと一言で表現するコリですが、大きく分けて三種類のコリがあります。一つは急性のコリ。二つ目は慢性のコリ。そして、緊張性のコリです。それぞれ性質が異なり、有効な対処法も異なります。

1.急性のコリ
 急性のコリは、日々変動するコリです。重いものを持つ、仕事で手や腰を使いすぎた時などに出現します。
 このコリは、性質から言えば筋肉痛に似たものです。使いすぎた筋肉に疲労物質が溜まり、水分を引き込みます。水分を過剰に取り込んだ筋肉は膨れて固くなります。
 特徴としては、弾力があって固く膨らみ、押さえると痛みを感じます。

 治療時は、筋肉内の疲労物質を流し去ることを目的として、筋肉を大きく動かしたり、リンパマッサージの要領で血液を体幹に送り返したりというマッサージが有効です。なお、力を入れて揉むようなやり方は、筋肉の組織を破壊して痛み(いわゆる揉み返し)の原因になります。
 この急性コリは、以下の慢性コリ、緊張コリを原因として生じることもあります。

2.慢性のコリ
 慢性のコリは、コリが長引いて固定化したものです。
 コリで筋肉が固くなり、血管を圧迫することがあります。この場合、疲労物質の運び出しや酸素の補給ができないため、筋肉の疲労はますますひどくなります。疲労と循環不全の繰り返しで筋肉が弱り、固くなったのが、慢性化したコリです。

 特徴としては筋肉の一部、とくに深い部分に発生することが多いです。触れると、弾力のない、固い感触があります。もはや筋肉としての機能は失っており、自力で回復することもほとんどありません。運動時に鈍い痛みを発生することが多く、慢性の腰痛などによく見られます。

 治療にあたっては、ゆっくりした持続的なマッサージ、周辺からの循環改善などが必要です。鍼によって血流を良くし、改善を促すことも有効です。いずれにせよ、組織そのものが衰弱していますので、時間をかけて循環を改善してやることが必要です。

3.緊張性のコリ
 最後は、緊張性のコリです。これは、正確にはコリと言っていいかどうかわかりません。筋肉に、常に力が入っている状態になっているといえばわかりやすいでしょうか。
 緊張の原因となるものは様々です。肉体の要因としては、関節の歪み、皮膚の癒着などが挙げられます。小さな障害による不自然な力が、持続的な緊張を起こします。
 ついでストレスなどの精神的緊張。忙しいことが続くなどの要因もありますし、持って生まれた気性のようなものもあります。総じて、生真面目な人はこの緊張型のコリを作りやすいように思います。
 緊張型コリは、ピンと張り詰めた感触があります。革のように硬く、押したり動かしたりするときにも強い抵抗を感じます。
 
 治療ですが、関節の歪みや癒着が原因の場合には、その原因となるものを見つけ出し、取り除きます。原因を特定できれば治療は比較的簡単で、早く治癒します。
 精神的緊張の場合は、疲れをとることで緊張の改善を目指します。ただし、まじめな性格の人の場合には、ストレスがかかってまた緊張してしまうことが多いものです。そのため、緊張性のコリが慢性のコリに移行するのを防ぐ、ケアが主体となります。本人のリラックスが大きな効果を持つのは、いうまでもありません。

4.原因を取る!
 急性のコリは、普通のマッサージで簡単に治療できます。しかし原因が残っているかぎりはすぐに発生するので、この急性コリの部分だけしか治療しない場合には、
「マッサージを受けたのに、すぐにまたコリがもとに戻った」
 ということが起こります。原因を治さなければなりません。
 慢性のコリ、緊張性のコリを治療するには、時間も技術も必要です。しかし一度治療できれば、次にコリが発生するまでには少し間隔があります。つまり、慢性のコリを対象として繰り返し治療していれば、結果として全体としてのコリを減らすことができるのです。
 元から断つ。何でもそうですが、コリの治療にも重要です。

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2005年12月30日 (金)

骨盤が歪むとき

 骨盤という言葉はよく聞きますが、その構造はあまり知られていません。今回は、骨盤の話です。

1.骨盤は普段から動いているkotubanugoki
 骨盤は背骨の続きである仙骨と、左右の寛骨(いわゆる腰骨)の、三個の骨で構成されています。三箇所の継ぎ目(①恥骨結合、②③仙腸関節)があるので、少しではありますが、動きます。
 身体を前後左右に曲げたとき、歩くために足が動くときなど、骨盤は身体が動きやすいように形を変え、また元に戻ります。つまり、骨盤は日常的に変形しているのです。
 右の図にあるように、寛骨が羽ばたくように上下する動きと、仙腸関節での上下すべりが組み合わさって起こることで、身体の様々な動きに対応しています(実際には、この二つは複合して起こり、動きに法則性もありますが、説明が複雑になるので省きます)。

 問題になるのは、その変形が戻らずに、歪んだままになってしまう場合です。寛骨は足の骨につながっているので、この変形をしたままとなるといわゆる「左右の足の長さが異なる」状態になり、身体の各部に負担をかけます。
 骨盤が歪む原因は、主に二つです。

2. 筋力の偏りによる骨盤の歪み
 骨盤の上の端からは、腹筋や背筋などの筋肉が、骨盤の後ろ側から下方にかけては、足へ向かう筋肉が何本も走っています。正常な場合は、これらの筋肉がつりあって骨盤の形を保っています。しかし何かの理由で筋力に偏りができたり、筋肉が疲労して固くなると、骨盤の形が歪んだままになってしまうことがあるのです。
 長期化すると、周辺のスジなどが癒着したり、固くなったりしてさらに動きを妨げ、戻りが悪くなってしまいます。この場合は、癒着などを解消することが必要です。

3.仙腸関節が引っかかってしまう場合
 前ページの図②③の部分が仙腸関節といいます。この関節は、時々ずれて引っかかってしまうことがあります。ずれるといっても数ミリ程度のものなので、見た目にはほとんど変化はありません。しかし、骨盤の正常な動きは阻害されて歪んだままとなりますし、動作に痛みが伴うようになります。
 いわゆるぎっくり腰の中には、この仙腸関節の引っ掛かりが原因になっているものがあります(その他、腸腰筋の痙攣、椎間板ヘルニアなどが原因として挙げられます)。

4.骨盤の歪み治療は
 骨盤の歪みが単純に筋力によるものの場合は、生活習慣の見直しや、適切な体操、ストレッチによって元に戻せます。
 しかし、足のゆがみから影響が及んでいる場合や、古く固定化したコリがある場合、スジが固くなっている場合などは治りにくく、原因からの治療が必要です。
 仙腸関節の引っかかりは偶然もとに戻ることが多いようですが、手技療法で調整するほうが早く治ります。また他の原因によって、引っ掛かりが生じている場合、やはり原因からの治療をしないと、再発することが多々あります。

 八起堂での治療は、まず骨盤周辺の組織をマッサージでほぐし、仙腸関節を中心に骨盤を揺すって、柔らかい動きを取り戻すようにします。
 その後、周辺筋肉の緊張や足のバランスを見て、骨盤に偏った力がかからないように調整してゆきます。骨盤が気になる方は、どうぞご相談ください。

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2005年12月27日 (火)

健康番組の信頼度

 健康番組の数は、増える一方。そうなってくると気になるのは、番組の情報がどのくらい信頼できるかです。「今日の健康」などの本格的健康番組は別として、バラエティ系の番組の信頼度はバラバラ。視聴率の高そうな4番組に、独断と偏見でランキングをつけてみます。

1位 NHK「ためしてガッテン!」
 立川志の輔が司会する長寿番組。料理から便利情報まで何でもアリですが、健康情報番組としても、なかなか優秀です。一位に持ってきた理由は、信頼度の高さ。
 科学的な実験をやる際には、守らなければならない条件があります。
 ひとつ目は、比較対象を作ること。例えば食べ物なら、それを食べるグループ(実験群といいます)と、食べないグループ(比較群)を作り、結果を比べるのです。
 もうひとつは、結果の検証方法。実験はある程度の人数を使い、結果を統計学で処理して、初めて信用できる結果であると認められます。
 この条件を比較的よく守っている番組は「ためしてガッテン」だけ。扱う理論も医学的裏付けのしっかりしたものが多いです。他にも新しい学説を積極的に紹介するなど、見るべきところの多い番組です(ときどき、「サイエンスゼロ」とネタがかぶるのは、データ流用しているのかも)。
 しかし、なにかにつけ出てくる駄ジャレのセンスだけは、どうにかならないかと思います。

2位 「たけしの本当は怖い家庭の医学」
 頭痛や腹痛など、誰もが日常で経験する症状に、大きな病気が隠れている可能性を紹介する番組です。虫歯から死に至るなど、実話を元にしたストーリーを紹介してゆきます。
 かなり怖い番組です。取り上げられる内容は事実ですが、怖いケースばかりを拡大して取り上げているため、無駄に恐怖感をあおってしまうこともあります。しかし番組製作者のインタビューによれば、どうやら計算済みの模様です。
「健康に不安を持ち、病院に行ってもらうのが目的の番組なんです」
 とのこと。現在は、病院に行って検査をすれば、かなりの病気が早期発見できて、治療できる時代。ただ、多くの人が健康に自信をもつあまり、検査に行かないことが多いので、この番組を作ったそうです。害よりも益が多いと判断して、第二位。
 健康に無頓着なご家族をお持ちの方は、どうぞ。

3位 「おもいっきりテレビ」
 いわずと知れた、みのもんたの番組。食べ物の紹介に特徴があり、ココアなど、数々のブームを生み出してきました。
 この番組の特徴は、とにかくめまぐるしいこと。毎日、何種類かの食材を出してきて、紹介してくれます。「○○の成分が含まれているから○○に効く」ということなのですが、有効とされる成分は、他の食品でも摂れるものが多く、効果もはっきり結果のでるようなものではありません。表現はかなり大げさです。

 紹介するのは一般的な食品で、高価なもの、特殊なものなどは使いません。新しい食品に挑戦するきっかけになる場合もあるでしょうし、害もありませんから、一種の献立紹介番組としてみる分には悪くないでしょう。
 「おいしいのか、それ?」と思うような食材の組み合わせを紹介していることもありますが。

最下位 「あるある大事典」
 一番困った番組がこれ。構成が良くできているので、番組としては面白いのですが、信頼度は最下位です。

 番組は「簡単なテストをして問題を発見→理論の紹介→対処方法を紹介→実験で検証→実技」と続きますが、大抵、そのテストから問題があります。たとえば、
「目を閉じて足踏みをし、大きく動いていたら骨盤が歪んでいる証拠」
…このテストでは足の悪い人も、肩こりで頭を傾けるクセのある人も、みんな引っかかってしまいます。私が見た中で一番ひどかったのは「片足で一定時間立っていられない人は、酵素(体内で働くタンパク質)の働きが悪い」というテストでした。これはどう考えても、バランス感覚のテスト(三半規管と、運動神経)で、酵素とは無関係です。

 紹介される理論は、民間療法レベルの医学的根拠のないものが多く扱われています。番組中で行われる実験はごく少人数で、正確な結果を取る条件も守っていません。信頼度はきわめて低いといっていいでしょう。
 まあバラエティであるからにはいつも新しいネタを用意しなければならないわけで、ネタが尽きればキワモノに向かっていくのは仕方ないかもしれません。とはいえ、健康に関わることで、あまりいい加減なことを言ってもらっては困るのですが…。

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2005年12月10日 (土)

良いコーチの見分け方

 「子供にスポーツをさせたい」と考える方は多いでしょう。友達を作らせる、身体を鍛える、早いうちからスポーツをさせて将来に備える…。目的はさまざまですね。
 しかし、子供のスポーツは、やり方によってはマイナスになってしまうこともあります。それを決めるのは、指導するコーチの質です。

 先日、京都で少年野球のコーチが中学生を死なせてしまう事件がありました。このコーチが科した練習は、専門家をして「常識はずれの無茶」と言わしめるほどのものでした。
 私自身もこのような例を見たことがあります。ボランティアで高校野球部の治療をしたときのことですが、驚いたことに二十数名いた選手のほとんど全員が故障していました。腕の上がらない投手、腰痛の打者、膝が痛い野手…。
 普段、どういう練習をしているのかと聞くと「根性!根性!」と監督に怒鳴られながら猛練習をしているとのこと。しかし試合はいつも予選の一回戦で敗退。まともに動ける選手がいないのですから、あたりまえですね。

 残念ながら、安全への配慮も技術を向上させる方法も持っていない、名前ばかりのコーチがたくさんいます。子供にスポーツをさせるなら、良いコーチを選ぶことが絶対に必要です。見分ける方法を以下に並べます。

①怒鳴らない、殴らない
 子供を教えるのがコーチの仕事のはずです。しかし教えるよりも威張るのが好きでコーチになってしまう人が、少なからずいます。むやみに怒鳴りつける、殴ったり体罰を与える、口答えを許さない、などのコーチは、こういった人の可能性が高いです。子供の身体を壊し、心を傷つけますから、避けるのが賢明です。

②精神論よりも具体的指導
 試合では、精神力がものを言います。
 しかし毎日の練習中にも「根性!」とか「やる気がないのか!」とやたらに精神を問題にするコーチがいます。一見、熱心な指導をしているように見えますね。しかし大抵の場合は、具体的に指導する能力がないため、精神論を言っているに過ぎません。
 本当に知識や能力のあるコーチなら、どこが悪いのかを具体的に指摘し、克服する練習方法を教えるはずです。

③勝ち負けにこだわり過ぎない
 スポーツをするなら、勝つ楽しみを味わいたいもの。その意味では、勝とうとすることは間違っていません。しかし勝ちにこだわりすぎるコーチは、必ず無理な練習をさせます。もちろん試合に勝つことはできるでしょうが、故障で選手寿命を縮めてしまいます。「中学校の練習試合で勝利して故障、引退」では何のためのスポーツかわかりません。

 何よりも大事なポイントは、練習している子供の顔です。生き生きしているかどうか。疲れきったり、おびえた顔をしていないかどうか。
 大事な子供さんに、よいスポーツ環境を与えてあげてください。

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2005年12月 7日 (水)

故障しないスポーツトレーニング(後)

 日本のスポーツが根性主義になりやすい原因の一つは、トレーニング内容が「スピード・パワー、持久力」に偏っていることにあります。これはF1を例にとって言えば「エンジンが大きければ必ず勝てる」と言っているのと同じです。しかし実際にはエンジンが大きくても勝てません。ドライバーの運転技術が伴わなければ、パワーがあっても何の意味もないのです。
 スポーツで「ドライバーの運転技術」にあたるのは、脳の出す指令です。指令が巧みなら、正確で素早い「質の高い動き」をすることができます。

1.コーディネーショントレーニング
 コーディネーションとは、運動に必要とされる多種多様な能力を、まとめる能力のことです。いわば、能力のとりまとめをする能力です。
 運動能力と一言に言っても、その中には多くの要素が含まれています。

①定位能力   「何がどこにあるか」を認識する能力。
②変換能力   状況にあわせて動きを切り替える能力。
③リズム能力  いわゆるリズム感。
④反応能力   状況に適切に対応する力。「反射神経」に近いものです。
⑤バランス能力 体勢の立て直し、動作の始まりなどで重要です。
⑥連結能力   全身の動きを協調させる能力です。
⑦識別能力   動きの調整能力、道具を扱う能力などがこれに入ります。

 このような能力はすべての運動の基礎であり、上達の早さ、成績を左右します。コーディネーショントレーニングは、運動の基礎となるこのような能力を鍛えるトレーニングなのです。能力ごとに具体的な鍛え方が考案されていますので、興味のある方はインターネット・本などで調べてください。とくに中学生までの年齢で有効とされています。

参考 「順天堂大学助教授 東根明人先生のコーディネーショントレーニング」  
        http://minimini.jp/sports/pc/column/index.html   
   「NPO法人 日本コーディネーショントレーニング協会」
        http://www.coordinationtraining.com/

2.古武術系のトレーニング
 古武術の動きをスポーツに役立てようという動きも、盛んです。昔の武士が命を懸けて編み出した動きには、日常の動きとは別次元の高度な動きのエッセンスがあります。そこからスポーツのヒントを得ようとする考えです。
 手足の高度な協調や、普段は意識しない体幹部の動きなどを組み合わせ、力に頼らずに、早く、精密な動作を行います。

 先程のコーディネーショントレーニングは、すでに持っている運動の基礎力を高める方法でした。しかし古武術系のトレーニングは、全く新しい動きの方法を身につけようとします。身につけば大きな効果がありますが、日常とかけ離れた動き方をゼロから学ぶので、難しいのも事実です。
 教える人によって個性が大きく、理論にも違いがあります。自分の感覚に合うと思う人から、直接学ぶのが良いでしょう。

3.もっとも重要なトレーニング
 最後になりましたが、もっと簡単で重要なトレーニング方法があります。
「声に出して読む日本語」で有名な斉藤孝氏は、「五輪の身体」 (オリンピック選手の身体感覚に関するインタビュー集)で、こんなことを書いています。

「いい選手になれるかどうかの見極めは、意外に簡単だと私は考えている。それは練習や試合のときの意識の明晰さだ。具体的にチェックするには、選手を呼び止めて『いま何を意識しながら練習をしているのか?』と質問してみればいい。いま何のために何をしているのか。目的意識を明確に持っているものほど上達していく」

 例えばラケットの素振りをするときに、ただ漫然と素振りを繰り返すだけの人は上達しません。つねに、自分自身でテーマを持って練習する人が上達するのです。「肩に力が入らないようにする」でもかまいませんし「狙ったラインを正確に通るようにする」でもかまいません。テーマは人によって、日によって違うでしょう。
 自分の身体に注意していれば、どんな練習をすべきか、どこに無理がかかっているかがわかってきます。身体と会話することで、よりよく練習することができるのです。

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2005年12月 4日 (日)

故障しないスポーツトレーニング(前)

 マリナーズのイチローを、人は天才と呼びます。もちろん、持って生まれた才能はあるでしょう。しかしそれ以上に重要だったのは、彼と彼の父親が、野球やスポーツの理論を勉強したことです。きちんとした理論を学ぶことで、他の選手よりも効率的な練習をし、人に抜きん出ることができたのです。
 欧米のスポーツ界では、フォームからトレーニングの方法、食事に至るまで、良い成績を出すための理論的な研究をするのが当たり前になっています。
 今回は、トレーニングの方法論について、さわりを紹介します。くわしいことを知りたくなったら、本やインターネットで調べてください。

1.持久力をつけるにも理論がある
 持久力をつけるために、体力が尽きるまでランニングするというのが体育会系の常套手段。しかし、むやみなトレーニングが危険と隣りあわせなのもご存知のとおり。
 持久力をつけるにも、安全で効果的な方法があります。心肺機能を上げるのには、必要にして十分な運動負荷があるのです。目安の一つは、心拍数です。
 たとえば、有名な運動理論の一つ「マフェトン理論」では、一分あたりの心拍数が「180-年齢」になるのが、もっとも安全に持久力のつく運動強度であるとしています。この心拍数になるまで15分かけてアップ、この脈拍数を任意の時間継続した後、15分かけてクールダウンするのが良いとしています。

2.筋トレは諸刃の剣
 運動能力を上げるために筋トレをする人もありますが、なかなか難しいものです。
 最初の問題は、どの筋肉を鍛えるか。必要な場所についた筋肉はパワーになりますが、不必要な場所についた筋肉は、重いだけの邪魔ものです。スポーツにあわせ、適切な筋肉を鍛える必要があります。
 ついで、負荷と回数。筋トレは「荷重で筋肉を破損させると、再生するときに太くなる」という原理に基づいています。しかし負荷の程度が強すぎると、再生するとき筋肉内に結合組織(タンパク質の繊維成分)ができて、太いわりに固く、力の出ない筋肉になってしまいます。もちろん柔軟性の無い筋肉は大きなケガの原因です。
 筋トレは、専門家の指導のもとに行わなければ、成績を上げるどころか害になる場合があるのです。注意してください。

 特に成長期の子供は、筋トレをやりすぎないほうがいいと思います。成長期の骨は荷重に弱く、筋力ばかり鍛えすぎるとその部分から故障を起こしてしまうからです。
 筋力よりも、良いフォームを学ぶほうが有益です。良いフォームは、筋力によらずとも高い能力を出させてくれますし、故障を予防して選手生命を伸ばします。若いうちに良いフォームを身につけることは、一生使い続けられる財産になります。

 次回もこの続きで

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2005年10月22日 (土)

健康にスポーツに「バランス」

 愛・地球博でも話題になった最先端のロボットたち。やはり一番人気は歩くロボットでしょう。このロボットができたのはつい最近。バランスをとって歩くのはロボットにとってはとても難しいことで、実現には長い時間が必要でした。
 人間の場合にも、バランス感覚は重要です。健康のために、スポーツで成績を上げるために、バランストレーニングはいかがでしょうか。

1.健康にバランス
 バランストレーニングには、健康に役立つ要素が多々あります。
第一に、深部筋を鍛えられること。インナーマッスルと称して話題になっている、身体深部の筋肉は、姿勢を保つのに重要な働きをしています。バランス訓練をすることはこの深部筋を鍛える簡単な方法の一つです。
 第二に、リラックスが容易になること。バランス感覚が鈍いと、身体を支えるのに多くの筋力を必要とします。真っ直ぐ立っている棒は少ない力で支えられますが、斜めになるとかなり大きな力を出さないと支えられないようなものですね。バランス感覚が発達してくると必要な筋肉だけを使い、余分な筋肉をリラックスさせられるようになります。疲れやコリの予防に有効ですし、姿勢を正すことにもなります。
 第三に、ある程度お年を召した方の場合には転倒予防になります。転倒は、寝たきりの最大要因。これを防ぐことが必要です。

 健康維持のためのバランス運動にもざまざまなものがありますが、今回は特に簡単なものを。baransu
 立った状態から、片足を斜め前に踏み出します。両足の間隔は肩幅程度。その状態で、前足から後ろ足へ、後ろ足から前足へ、ゆっくりと体重を移動。これを繰り返すだけです。自然な呼吸で、力まないことが重要です。
 コツとしては、できる限り力を抜くことと、ゆっくり行うこと。ゆっくり行うほど、細かくバランスをとることになるので、練習になります。
 この運動は脚力の訓練にもなります。雨でウォーキングに出られないときに、代わりに行うのもいいでしょう。

2.スポーツにバランス
 スポーツの能力を上げようとするときには、筋力トレーニングや体力トレーニングをすることが一般的です。
 しかし、バランストレーニングにもそれに劣らない効果があります。筋力トレーニングや体力トレーニングは専門的な知識を持って行わないと事故や故障の原因になることがありますが、バランストレーニングにはその心配がありません。安全で効果の高いバランストレーニングを、取り入れてみる価値はあるでしょう。

 バランス感覚は、特にすばやい動作で必要になります。
 足元がぐらついたとき、手に持っていたものを投げ出してしまったことはありませんか? 人間の身体はバランスをとることを最優先していますので、不安定な状態ではどんな動作もおろそかになります。
 スポーツしている人の動きを見ていても、動いた後には必ず身体を立て直してから次の動作に入っています。バランス感覚が向上すると立て直しが早くなり、動きのタイムラグが小さくなってきます。その結果としてすばやい動作が可能になるのです(名選手はバランスが崩れたまま、あるいは積極的にバランスを崩しながら動作することがあります。これは、さらに高度なバランス感覚がないと不可能です)。

 また健康の項目で書いたように、バランス感覚が鈍いときには姿勢を保つために多くの筋肉が緊張しています。余分な力が入っている分だけ全身が固くなり、反応が遅くなります。
 いずれにせよ、バランス感覚の良否が運動成績に大きく関わることは確かです。

 訓練ですが、簡単なところでは片足立ちです。とくに、足のかかとを上げて行うと難しくなります。さらには、目を閉じて行う(転倒に注意してください)。
 もっと高度なバランス感覚を養成するには「バランスボード」(円盤の下面に、支点となる突起をつけたもの)、「バランスディスク」(空気の入ったやわらかい円盤)といった、専用の器具が数千円程度で販売されています。ホームセンター・スポーツ用品店などで探してみてください。

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2005年10月16日 (日)

お灸ってどんなもの?

 灸も、昔は一般的な治療法でした。しかし近代になって、「熱い」「やけどの痕が残る」ということで敬遠され、はやらなくなってきました。
 しかし最近は灸の方法も変わりました。あとの残らないお灸を試してみませんか?

1. お灸はこんなもの
 灸というのは、もぐさを燃やして行う、温熱治療法の一つです。
 もぐさの原料は草餅にも使われる、蓬(ヨモギ)です。正確には、蓬の葉の裏にある白い毛。刈り取ったヨモギを乾燥し、石臼で挽いたあと、ふるいにかけて毛だけを集める。それを何度も繰り返して出来上がるのが、艾(もぐさ)です。治療ではこれを小さくひねって肌に乗せ、燃やします。

 昔は、この直接肌に載せる方法(直接灸)しかありませんでした。しかも、大きなお灸を使うことが多く、痕が残ってしまうことが多かったのです。しかし近年は、どの治療院でも、小さく捻ったもぐさを使うので、痕はあまり残りません。
 八起堂の治療では、灸点紙というシール状の紙を貼り、その上にもぐさを載せて燃やします。熱は一瞬感じる程度で、ほとんどの場合、痕が残ることはありません(もぐさのヤニが一週間程度、残ることはあります)。

2. お灸の歴史
 灸治療の歴史も、鍼治療と同様、数千年前の中国にまでさかのぼるといわれています。日本には538年の仏教伝来とともに伝わり、その後、独自の発展をしました。

 お灸の歴史が鍼と異なるのは、民間療法として発展したことです。
鍼治療は専門家が行ってきたため、診断・治療ともに複雑・精密な体系をもっています。灸にも同様の体系はありますが、それに加えて素人が自分で行うために、
「~の病気には○○のツボ」というような、症状別の使い方(特効穴)が発展しました。腫れ物の灸、子宝の灸など、多くのツボが伝わっています。
 明治に入って西洋医学が中心になっても、灸は民間治療として命脈を保ってきました。その後「せんねん灸」のような簡単で痕が残りにくいお灸ができて、また一般に使われるようになっています。

3. お灸はなぜ効く?
 科学的には、お灸の効果は二つの理論から説明されます。一つは、小さい火傷による作用です。お灸の火傷は、肌が少し赤くなる程度の軽いものですが、この刺激によって、細胞から特殊なタンパク質が発生します。このタンパク質には身体の免疫力を活性化する働きがあり、細菌に対する抵抗力を高め、炎症を抑えてくれます。
 もう一つは血行促進の作用です。お灸の熱作用による反射で血管が拡張し、たくさんの血が流れます。これが、例えば肩こりには血行改善効果として効くわけです。
 この血行促進作用は、単にお灸を据えた場所のみに効く訳ではありません。神経の反射、筋緊張の連鎖を通して、他の場所や内臓にも影響が及びます。それによって、不調や病気が解消するわけです。

 しかし特効穴になると、この理論だけでは説明しきれません。situmin

例えば、不眠に使う「失眠」。便秘に使う「神門(澤田流)」。これらは私もよく使うツボで、場所を正確にとれば、比較的よく効きます。しかし灸点と作用場所が離れすぎていて、上記理論では説明しにくいのです。
 まあ、理論がわからなくても「副作用がない・危険もない・そこそこ効く」となれば、使わない手はないですね。

4. 治療・使い方
 八起堂の治療も、お灸に関しては、この特効穴を中心に使っています。
 お灸をするたびに治療院に来ていただくのも大変なので、ツボの位置だけ決定して、あとは自宅でせんねん灸などをすえていただくことにしています。

 せんねん灸、すえ方のコツは、我慢しないこと。火をつけるとだんだん熱くなってきますから、「熱い!」と思ったところですぐに除けることです。我慢すると、水泡ができたりしますし、まれに痕が残ることもあります。
 熱いと思った時点で、効果は十分。無理せず、気持ちよく使ってください。

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2005年10月 1日 (土)

鍼(はり)ってどんなもの?(後)

3. 治療の方法は?
 鍼は、マッサージでは及ばないような身体の深いところにまで働きかけることができます。また、比較的即効性が見られるのも、特徴のひとつでしょう。
 現在の日本では、大きく分けて三つの流れがあります。

 ひとつは、中国で発達した中医学。現代医学と全く異なる体系を持ち、経絡(身体を流れる気の通り道といわれています)、漢方、運動、食事などを総合的に考える医学です。いかにも中国らしく、診断・治療ともにきわめて複雑です。

 ついで、日本の伝統をもとに昭和の初期に確立された経絡治療。脈から内臓(五臓六腑)の虚実を診断し、気の流れを調整して治すやり方です。理論はシンプルにまとめられていますが、術者には精密な感覚と特殊なセンスが必要です。

 最後に現代医学的治療。痛みをもたらす筋肉のコリ(トリガーポイント)を解き、神経を刺激して活性化するなど、現代医学の視点から機能障害を治療してゆきます。

 治療家はそれぞれの適性や価値観に合った方法を学び、自分なりのアレンジを加えて治療方法を確立します。
 八起堂は現代医学を中心にした治療を行いますが、経絡についても「身体組織の力学的な連鎖」と考え、治療に応用しています。伝統医学を現代医学的に扱うことを目指す点で、折衷派と言えましょう。

4. 鍼は危なくない
 もともと鍼灸は、全身のバランスをとって治癒力を活性化する治療です。薬や手術のように大きな力で働きかけるものではないので、重篤な副作用はまず起こりません(ただし、重い心臓障害などをお持ちの場合には注意が必要です)。

 鍼が身体に刺さるのは危なくないの、という声もあります。確かに、肺や延髄など、人体には刺すと危険な箇所がいくつかあります。しかし逆に言うと、その部分を避けているかぎり、危険はありません。そのために鍼灸師は人体の構造を勉強し、国家試験を受けるわけですから、安心していただいて大丈夫です。
 また、病気の感染や鍼が折れる事故についてですが、八起堂を含めほとんどの鍼灸院が鍼・鍼管ともに使い捨てのものを使用しています。したがって、病気感染、鍼折れ(金属疲労が原因)、ともにまず起こりません。

 安全で、意外な効果のある治療法。興味をもたれた方は、一度いかがでしょうか。

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2005年9月28日 (水)

鍼(はり)ってどんなもの?(前)

 しばらくぶりに本業の話です。

 鍼灸治療という言葉は、たいていの人が聞いたことがあると思います。しかし、実際にどんなことをするのかは、受けてみるまでわからないことが多いでしょう。今回は鍼治療を説明します。

1. 鍼はこんなものhari
 右の図は、鍼の絵です。ステンレスなどの金属で作られており、長さは3㎝から6㎝くらい、太さは0.14㎜から0.20㎜くらいです(八起堂で使用するもの。もっと長いもの、太いものもあります)。人間の髪の毛が大体0.10㎜の太さですから、かなり細いです。
 鍼は細くしなやかなため、そのままで刺すのは困難です。鍼管といわれる管を使って1~2㎜刺し、あとは必要な深さまで指で支えて送りこみます。
 鍼を刺すときの痛みは、ほとんどありません。鍼がツボに当たった瞬間には「響き」というジーンとした感覚が起こることが多いのですが、痛みとは別の感覚です。慣れてくると、これが気持ちいいという人も多いです。

2. 鍼の歴史
 鍼治療は数千年前の中国で始まったといわれています。当初は尖った石を使っていたようですが、その後、動物の骨や金属の鍼に変わりました。当時の墳墓などからもこうした鍼が発見されています。当初は痛みに関連のあるところを刺すという簡単な方法だったと考えられますが、二千年程前に気・経絡という理論が体系付けられ、治療法が確立しました。
 その後、時代により様々なアレンジが加えられ、世界に広まりました。アメリカでは代替医療(現代医学以外の医療)の中で、もっとも多く使われているそうです。

 後編では治療法などを。

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2005年9月18日 (日)

マッサージでやせる?

 「マッサージで体重は減りますか」という質問を受けることがあります。希望を持って聞いていただいているようなのですが(笑)、最初に結論から言うと
「水分を減らすお手伝いはできます。しかし脂肪分を減らすことは難しいです」
ということになります。

1.筋肉の水分が減る
 マッサージで減らせる水分には、二つの種類があります。ひとつは、筋肉のコリに溜まった水分です。
 肩こりなどのコリは、筋肉内に疲労物質(乳酸など)が溜まった状態です。このような物質があると、浸透圧の関係で組織に水分が溜まります。運動の後、筋肉痛で筋肉がぱんぱんに膨れ上がった状態と似ています。マッサージにより疲労物質が体外に出ると、一緒にあった水分も体外に排出されてゆきます。

2.皮下組織のリンパ液が減る
 もうひとつの水分は、皮下組織に溜まったリンパ液です。リンパ液は血液から組織に滲み出した液体成分で、細胞を養い、老廃物を運んで血液に戻っていきます。
 正常な状態では、リンパ液は自然に血管に戻っていくのですが、いろいろな理由で流れが阻害され、皮下に溜まってしまうことがあります。これが「むくみ」です。むくみは体重を増やす原因であるほか、心臓に負担をかけ、また循環を妨げることから冷え性の原因にもなります。
 マッサージによってリンパの通り道になる組織をやわらかくすると、流れを改善することができます。とくに、リンパ液の帰り道であるリンパ節・皮下組織への施術が効果的です。

3.やっぱり人まかせでは限界が
 確かに、マッサージの後で急に体重が減った、と報告してくださった方は何人もいらっしゃいます。ただし、ほとんどの方は1~2キロ減ったところまで。そこでぴたっと止まってしまったそうです。おそらく、そこまでが余分な水分だったのでしょう。
 脂肪を減らすには、残念ながら努力が必要なようです。食事はビタミン、ミネラルをバランスよく十分に。身体の水分を減らし、コリをとって楽になったところで楽しく運動。 

 やっぱり、楽して痩せる方法はないようで…。

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2005年9月16日 (金)

お会いしないですむように

 少し前に健康診断を受けました。結果は「異常なし」だったのですが、それを説明する女医さんが、この上ないほどの上機嫌。あまりにもニコニコ顔だったので、つられて笑ってしまいました。

 医療に対する不審が渦巻くこのごろ。医者は金のために人の不幸を願っているのではないか、という疑いをもってしまうこともあります。たしかに医療は、体調を崩して苦しむ人がいて、初めて成立する仕事です。「人の不幸によって成り立つ」面があるのは否めません。
 しかし大抵の人間は、目の前の人の不幸を喜ぶようにはできていません。多くの人の不幸を見てきた医者なら、なおのこと。上に書いた女医さんは「異常ありません」という言葉を口にするのが嬉しくて、つい笑ってしまったのではないかと思います。
 ほとんどの医者は、治ってほしい、できればずっと健康であってほしいと願っているのではないでしょうか。

 治療院の仕事も同じです。
 誰でも本当は治療院などに来なくてすむほうがいいにきまっています。健康なまま過ごせれば何より。
 それでも調子を崩してしまったとき、やむを得ず治療をするのが、私たちの仕事です。ですから、なるべく早く根本から治ってもらう方法、それから何年も調子を崩さないですむ方法を、追求し続けているのです。できるだけ、お会いしないですむように。

 

 みなさんと、八起堂治療院でお会いしないことを祈っております。

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2005年9月14日 (水)

ひざの痛みはなぜ起こる?(後)

2.筋力の低下が膝を壊すhizakin
 太ももの筋肉は、膝を伸ばす働きをしています。そしてもうひとつ、膝関節を支え、安定させるという役目も担っています(上の図)。
 若く、活動が旺盛な間は筋力があるため、膝が安定しています。ところが歳をとってくると筋力が低下してしまうことが多く、膝を十分に支えることができなくなってしまいます。支えを失った膝関節はぐらつき、傾きます。片側だけに体重がかかった膝関節は長い間に磨り減って、痛みを生じるようになります。


3.足の骨がずれているとkakatoyugami
 足は全身の土台、という話を以前に書きました。足の骨に狂いがあって、体重を真っ直ぐに支えられないと、やはり関節に偏った負荷がかかります(下の図)
 今までに膝痛をみた経験では、踵の骨が内側にずれているケースが多く見受けられました。その他、足首が固くなって、背屈(つま先を上げる)が不十分な場合にも、痛みの出る方が見受けられます。

4.治療には
 病院でのヒアルロン酸の注射、グルコサミンのサプリメントなど、治療の方法は多々ありますが、まず荷重の偏りを改善しなければ、一時的な効果しかありません。
 第一にするべきことは、足の筋肉の強化です。よく言われる膝痛体操がそれで、一日にわずか数分の体操でも筋力が増加し、膝の痛みが減少することがあります。
 その他、足に合わない靴を履かないこと、体重を減らすことなども膝に良い影響があります。もうひとつ、外反母趾がある場合にも、ひどい膝痛が起こることが多いです。外反母趾は軽いうちに治療しておくことをお勧めします。

 いずれにせよ、膝の変形が進行する前に対策をとることが必要です。  

 足の骨にズレがある場合には、残念ながら専門的な治療が必要です。気になる時は、お気軽にご相談ください。

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2005年9月11日 (日)

ひざの痛みはなぜ起こる?(前)

 階段の昇り降りが痛い、曲げ伸ばしがつらい…。こうした膝の悩みをお持ちの方は多いでしょう。老化とともに起きる膝痛の多くは、変形性膝関節症が原因です。

1. 磨り減る膝の骨
 変形性膝関節症は膝の関節軟骨が磨り減って痛む症状で、50代以上の女性に多く見られます。
 一般的には「歳をとれば誰でも軟骨は磨り減るから」といわれますが、何歳になっても膝が痛くならない方も多くおられます。老化だけが原因ではありません。herukansetu
 膝の関節には、右の図でわかるように、内側と外側の二つの関節面があります。内側と外側の両方に、平均して体重がかかっていれば、めったなことで変形性膝関節症は起こりません。
 しかし片方に体重が集中してしまうと、一部だけが磨り減って変形し、痛みがおこってくるのです。
 体重の偏りが起こる理由は、大きく分けて二つ。ひとつは、筋力の低下によるもの。もうひとつは、骨格の歪みによるものです。

後編は、筋力低下と骨格の歪みの説明を。

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2005年8月29日 (月)

減塩への道は、砂糖抜き料理から

私の父が語る思い出話のひとつに「名古屋のすき焼き」があります。名古屋のある店ですき焼きを食べているとき、店員に味を尋ねられたとのこと。
「味、どうですか?」
ここで「味が薄い」というと、醤油が鍋に注がれます。逆に「味が濃い」というと、砂糖が鍋に放り込まれたそうです。どちらで答えても、調味料が増えて行くばかりで閉口した、という話でした。
これがこの店だけのことなのか、名古屋全体がそうなのかはわかりません。しかし、この鍋を「身体に悪そう」と思うのは、私だけではないと思います。

作家でありながら、後に料理研究家として有名になった丸元淑生さんは、著書の中で、料理に砂糖を使う風習を厳しく批判しておられます。いわく、
「食物の味は、すなわち栄養の味である。本当においしいものは、それだけの栄養があるからだ。料理に味とカロリーだけの砂糖が入ると味覚が破壊され、本当の味がわからなくなる。また、味付けの砂糖分、カロリーも増える」と。

甘味は人間が本能的に好む味なので、それを入れたくなる気持ちはわかります。しかし、砂糖の味は強すぎるので、バランスをとるために、塩と醤油が必要になってきます。

逆に砂糖を抜きにして料理を作ると、塩と醤油の使用量は格段に減ります。砂糖のカバーが消え、塩辛さが際立って感じられるために、量が少なくてすむようになるのです。

身体のために塩を控えめにしている方。塩だけを減らすよりも、砂糖もいっしょに抜くほうが、味の上で楽だと思います。それでも物足りなければカツオ節や昆布のダシ、さらに唐辛子や胡椒を加えるのも手です。
ちょっと試してみませんか?

 丸元さんの料理本は最先端の栄養学に沿ったもので、この他にも役立つことがたくさん書いてあります。興味のある方は、書店でご覧になると面白いと思います。

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2005年8月26日 (金)

四十肩、五十肩、肩関節周囲炎(後)

2.痛みが減ってくる中期
一般的な経過では、発症から数ヶ月くらいで痛みが減少してきます。そして、腕の動く範囲が狭くなったことがわかります。これが中期です。
可動範囲の減少は、炎症の後遺症です。炎症時、腫れた関節まわりに溜まる組織液にはコラーゲンなどの膠質成分が含まれています。癒着の項目で書いたように、それが「いらない部分まで接着してしまう」ことがあるのです。この時期、痛みはまだ残っていますが、動かさないでいると癒着がひどくなります。痛くない範囲で動かすことが必要です。

3.動かない後期
だいたい一年くらいで、ほとんどの人の炎症がおさまります。こうなると痛みはあまりなく、動かしにくさだけが残ります。これが後期です。
普通は使っているうちに動きが改善してゆき、完全に治ります。しかし治癒の過程で運動が足りないと癒着がひどくなり、そのまま固まってしまうことがあります。積極的に動かして回復させることが必要です。

4.治療は
初期では、強く緊張した筋肉をゆるめて、筋力バランスをとることが中心になります。肩、腕、肘から腰まで、肩関節に影響を及ぼす場所の筋肉をマッサージでやわらかくし、ストレッチで伸ばします。筋肉を緩め、炎症を抑えるのには、鍼も有効です。

中期では筋力バランスをとることに加えて、癒着部分が固定しないように軽い関節運動と、関節周辺組織に対するマッサージを行います。

後期の場合には、動きを回復することが目的です。関節運動法、癒着をとるマッサージを行いますが、すでに炎症が終わっているため1~2回でかなりの効果が期待できます。
 
 昔は、この五十肩を「寿命痛」と呼んでいました。長生きすることによって起こってくる、痛みだと考えていたのですね。
ちなみに六十代、七十代でなっても、呼び名はやっぱり五十肩です。

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2005年8月24日 (水)

四十肩、五十肩、肩関節周囲炎(前)

肩が痛んであがらない症状が四十代で現れた場合を、四十肩と呼びます。五十代で現れると、五十肩。では、三十代で現れた場合は? … これは、三十肩と言うのを遠慮して、肩関節周囲炎といいます。そして、これが正式名称です。

1. 痛んで仕方ない初期gojuukata
 初期は、肩の炎症と激痛。上げることと、後ろに回すことができなくなります。

 実は肩関節周囲炎の原因については、まだはっきりした結論が出ていません。 
 有力な仮説としては、老化によって肩周辺の筋力がアンバランスになることがあげられています。

 肩の関節は、人体でもっとも動きのいい関節です。しかし、骨と骨とのつながりが弱く、前後左右を筋肉が支えています。この筋肉が主なものだけで4本、それ以外にもかかわりを持つ筋肉は10本ほどにも及びます。
 老化などの不調でバランスが崩れ、それぞれの筋力が食い違ってくると、骨の位置がずれてしまいます。

 図2は上の筋肉が弱くなった状態。腕の骨が下に下がって、関節の端にぶつかり、腫れあがって痛むようになります。これが、肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)の始まりです。炎症ですから、じっとしていてもつらいほど痛みます。この時期はあまり動かさず、冷やして炎症を軽減するようにします。

次回はこの続き、中期、後期とそれぞれの対策です。

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2005年8月20日 (土)

虫刺されに保冷剤

 虫刺されの時に塗る、塗り薬。たくさん種類がありますね。これら虫刺されにつける薬の主成分はどれも同じ、抗ヒスタミン剤と清涼剤です。
 清涼剤は単に「スーッ」とする感じを与える成分なので、実質的な成分は抗ヒスタミン剤ということになります。
 虫に刺されたときには、虫の毒に反応してヒスタミンという成分が放出されます。ヒスタミンは、花粉症などアレルギーにも関わる物質として有名ですね。血管から水分を出させる働きがあり、それがあの腫れを作り出します。また、神経を刺激して、かゆみを生じさせる働きもあります。
 抗ヒスタミン剤は、そのヒスタミンの働きを抑えることで、虫刺されの腫れ、かゆみを抑えるのです。

 ところで、虫刺されの薬、塗ってから効き出すまでにしばらくの時間がかかります。この間、我慢するよりも簡単なのが、保冷剤です。ケーキなどを買ったときに入れてもらう保冷剤を冷凍庫に入れておいて、虫刺されの場所に当てます。
 冷却によって腫れが抑えられ、また感覚を鈍らせることでかゆみも抑えられます。それに、当てているだけでも冷たくて気持ちのいいものです。だまされたと思って、一度お試しください。

 ところで、虫刺されにアンモニアを塗るという習慣が昔は一般的でした。これは虫の毒が酸性であると考えられていた時代に提唱された方法です。
 しかし実際には、一部のアリを除いてアンモニアで中和されるような毒はないことがわかっています。それどころか、アンモニアの刺激で皮膚や筋肉を損傷することもあるので、つけないほうがむしろ安全です(アンモニアをつけすぎて、指を駄目にしてしまったケースさえあるといいます)。どうぞ、虫刺されにアンモニアをつけることのないように、お気をつけください。

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2005年8月17日 (水)

足マッサージいろいろ(後)

3.ドイツ式ポドロジー
 欧米は靴文化が発達しているため、靴と健康の関係がよく研究されています。その中でもドイツは優秀な靴を作り出す、足先進国です。
 そのドイツで生まれたポドロジー(足学)は足の構造・力学を研究し、それを整えることで全身の調子を整えようという技術です。
 もっとも日本におけるポドロジーはリフレクソロジーと同様、公的な資格が存在しませんので、どれだけの人が本格的に学んでいるかは不明です。多くの店の営業内容も、巻き爪の処理や魚の目、角質の除去などで、足の構造・力学まで扱っているところは少ないようです(インターネットで調べる限りでは、テーピングで力学的な調整を行える店も、少数ながらあるようです)。
 巻き爪や魚の目でも、足の痛みから体重の不均衡を生じますから、それを解消することは、意味のあることだといえるでしょう。

4.八起堂の足の治療

 八起堂治療院の治療は、ポドロジーに似ています。足の構造や動きに異常があると、その異常が全身に及ぶという考えは共通です。ただし、テーピングなどの道具は使いません。
 八起堂の治療は動きを取り戻す医療マッサージです。足の治療でもそれは同じで、足にある小さい骨(足根骨…そっこんこつ)の柔軟性を取り戻すことで、重心が適当な位置に収まるようにしてゆきます。
 とくに重視しているのは、sokkonkotu
① 足の骨と足首の骨の間(脛距関節・足首の可動性に関係します)
② 指の根元の、各関節(足のアーチの柔軟性に関係します)
③ 足首の骨とかかとの骨の間(距踵関節・重心のかかり方に関係します)
などです。

 治療は手技で行います。少しずつ揺すり、動かしながら、固くなった部分を解いてゆきます。重心が定まると、膝や腰の負担が減り、いろいろな不調が改善してゆきます。

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2005年8月15日 (月)

足マッサージいろいろ(前)

 足のマッサージが大流行しています。メジャーな英国式リフレクソロジー、痛さで有名な台湾式足ツボマッサージ。最近は、ドイツのポドロジー(足学)を取り入れた、足のケアも流行の予感。今回は、足のケアの話です。

1.英国式リフレクソロジー
 リフレクソロジー(reflexology)は、神経の反射を意味するreflexと、学問を表すlogyを組み合わせた言葉です。足裏に全身の状態が反映されていると考え、各部の状態を反映している部分(反射区といいます)を刺激して不調を改善するとしています。
 英国式の特徴として、よく言われているのは、あまり痛くないこと。ゆったりムード、リラックス重視のようです。施術を受けているうちに寝てしまったという声も、よく聞かれます。

2.台湾式足ツボ (足裏)マッサージ
 台湾式足ツボ (足裏)マッサージは、中国古来の医学と、英国式リフレクソロジーをミックスした、足裏のマッサージです。

 英国式と同じように足裏に全身の状態が反映されていると考え、その部分を刺激します。「痛い部分が悪い」として、それを刺激することを重視するため、痛みは強いことが多いようです。しかし「この痛みがないと受けた気がしない」というファンもたくさんいます。

 英国式にせよ、台湾式にせよ、足裏に全身状態が反映するという理論には、いまのところ科学的根拠は見つかっていません。反射区(ツボ)の位置も、施術者によってばらばらで、基準もないようです。
 ただし「自分にとって気持ちがいい」施術を受ければ、副交感神経優位(リラックス)の状態になります。この状態は気持ちよく眠っているときに似て、血行が良くなり、内臓の活動が活発になります。足のマッサージを気持ちよく感じるなら、ある程度の回復効果は見込めるでしょう。
 リフレクソロジーや足ツボマッサージには公的な資格がないため、技術レベルも人によってまちまちです。選ぶには、試しに受けてみて気持ちのいいところを選ぶとよいでしょう。

 次回は、ドイツのポドロジーと、八起堂の治療です。

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2005年8月11日 (木)

健康保険でマッサージ(後)

3.治療代金は?  
マッサージの治療代金は、医師の認定した治療箇所数によって決定されます。両手両足・体幹部(胴体)のそれぞれについて、1ヶ所当たり240円で計算します。したがって金額は240円(1ヶ所)~1200円(5ヶ所)となります。 仮に片手と両足の3ヶ所を治療すると、一回あたりの治療費は720円。健康保険の場合は患者さんの自己負担が3割で、216円。お年寄りだと1割負担なので、72円になります。

医師が「往療が必要」と認めた場合には、私たちマッサージ師がお宅まで伺う費用(往療費)も健康保険の対象となります。往療費は距離によって異なりますが、一回あたりの自己負担分は数百円程度だと考えていただいていいと思います。
(なお、医師が「往療は不要」と判断した場合には、往療費は保険の対象となりません。直接治療院に来ていただくか、往療費を別途頂くことになります)。

4.保険治療が適する場合
実費の治療と、保険の治療は、時間や回数の点で性質が異なってきます。
実費での治療では50分の時間を集中的に使えるので、身体の深部のコリや癒着を連続してとってゆくことができます。したがって身体を変化させ、不調を原因から除去するという目的に適しています。
保険治療では一回あたりの治療時間は15分~20分くらいと制限されていますが、治療費用が安くてすみます。リハビリ中など、日常的な治療が必要な方、慢性的な疼痛を伴う方に有効だといえます。

5.条件が厳しい、鍼灸の保険
鍼灸治療も、保険で行うことができます。ただし適用条件はマッサージよりもかなり厳しく「神経痛、リウマチ、腰痛症、五十肩、頚腕症候群(首・肩・腕にしびれや痛みがあるもの)、頚椎捻挫後遺症(むち打ち)など」に限られます。
マッサージとの最大の違いは、同じ病気で病院と鍼灸治療を併用できないことです。たとえば、病院でリウマチの薬をもらいながら、リウマチを対象に鍼灸を受けることはできないのです(別の病気は可。五十肩で鍼灸治療を受けながら、リウマチで病院に行く等は、大丈夫です)。
「病院の治療は体質に合わない」という方は、信頼できる鍼灸師に一度お尋ねください。

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2005年8月 8日 (月)

健康保険でマッサージ(前)

 マッサージは、一般的には保険がきかないものと思われています。
しかし、国家資格を持っているマッサージ師の施術は医療の一環ですので、健康保険を使うことができるのです。
 今回は、健康保険を使ったマッサージについて、説明します。

1.医師の同意が必要
 健康保険でのマッサージは、現代医学に沿った医療のひとつですので、適用には医師の同意が必要です。病院で診察を受け、医師に「マッサージ治療が必要と認める」という同意書(用紙は治療院に置いています)を書いてもらうことによって、健康保険が適用できるようになります。健康保険でのマッサージは、病院の治療と並行して受けることができます。

2.健康保険適用の条件
 健康保険でマッサージを行う条件は「病名を問わず、関節拘縮または筋萎縮・筋マヒ」となっています。残念ながら「肩こり」「疲労」は、健康保険マッサージの対象にはなりません。

 関節拘縮というのは関節が固くなり、曲がりにくい状態です。筋萎縮は筋肉が弱り、筋力が低下している状態。筋マヒは、神経の障害で筋肉が動かなくなっている状態です。
 これらの状態は、脳梗塞などによる手足のマヒ、骨折や手術の後遺症、リウマチによる関節の変形などで生じます。膝関節が変形して痛む、変形性膝関節症なども、この部類に入ります。
 「病名を問わず」という言葉のとおり、原因となった病気や事故に関わりなく、すべて保険マッサージの対象となります。

 その他、手足に慢性の不調を抱えている場合、障害をお持ちの場合には、健康保険の適用になる可能性が高いといえます。いわゆる「寝たきり」の場合には、ほとんどの場合、健康保険でのマッサージが可能です。
 保険による治療を受けたい方は、まず一度、お近くのマッサージ師にご相談ください。近くのマッサージ師を知らないという場合には、居住都道府県の鍼灸マッサージ師会に問い合わせてください。(全日本鍼灸マッサージ師会のホームページhttp://www.zensin.or.jp/

 後半は、料金などについてさらに詳しく説明します。

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2005年8月 5日 (金)

「だるさ・眠さ」は回復の証

 当院のマッサージでは、いわゆる「痛いもみ返し」はあまり起こりません。
 しかし、施術を受けた次の日に「だるい」「やたらと眠い」状態になる人があります。初めて治療を受ける方や、長年のコリを持っている方に多いようです。yurukarada

 だるさは、それまで緊張していた身体が、一度にゆるむことによって生じます。
 コリで固くなっているとき、筋肉は柔軟性を失っています。ひどく疲労しているのですが、感覚が鈍っているために疲れを感じません。
 施術後は筋肉がゆるむので、鈍っていた感覚も回復し、それまで感じなかった疲れを自覚します。それが「だるさ」です。このとき筋肉の血流は増し、筋組織は回復を始めています。

 眠気もまた、ゆるみの証拠です。脳は神経を通して、全身の状態を常に把握し続けています。コリや緊張があると、そのストレス信号が脳に送られ続け、脳も緊張状態になります。「身体が疲れているのに眠れない」というのがこのケースです(潜在的な緊張は、不眠の原因のひとつです)。
 施術で筋肉がゆるむと、脳はストレス状態から開放されるために、強い眠気を感じます。眠ることで、身体はさらに回復します。

 だるさも眠気も身体が回復するのに必要な作用です。ほとんどの場合は1~2日で終わりますので心配はいりません。

 なお、マッサージの後には、筋肉から乳酸などの「疲労物質」が出てきます。この疲労物質を体から流し出すためには、水分が必要です。水やお茶をたくさん飲んで、ゆっくり休んで下さい。お風呂は、すぐに入っていただいてかまいません。

付記
 「だるくなるのはオーバードーゼ(刺激が強すぎる)」とは、鍼灸マッサージ学校時代に聞いた言葉です。しかし、ある程度「もとに戻らない治療」を心がける場合には「だるさ眠さ」は避けて通れないように思います。根本的な治療には、身体を大きく変えなければならないのですから。
 もちろん体力がない人、お年寄りなど、急激な変化が負担になる場合には、加減するのですけど。

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2005年8月 1日 (月)

コリは病気も呼ぶ(後)

3.コリとツボ

 最後は、コリとツボの話です。少し専門的になりますが…。

 鍼灸や指圧でいうツボには、決まった位置というものがありません。本や解説図では大体の位置を書いてありますが、それはめやすに過ぎないのです。
 実際に治療に使うには皮膚・筋肉の反応を探って微妙な調整をし、正確な一点を選ぶ必要があります。そのツボの選定が、プロの仕事というわけです。

 ツボを選ぶには、皮膚のわずかな凹みや色、圧痛などさまざまな変化を調べて選びます。その中で、もっとも当てにされているもののひとつが硬結です。これは言ってみればコリの中心のようなものです。
では、なぜそのようなコリを解くことが治療につながるのでしょうか。

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 現代医学的にはこれを、神経の反射で説明しています。
 人間の全身には神経が張り巡らされていて、すべて脳の管理下にあります。内臓から情報を受け取って内臓へ指示を出す。皮膚、筋肉から情報を受け取って、皮膚、筋肉へ指示を出す。脳は、そういう仕事をしています。しかし、この情報が混線することがあるのです。

 内臓から「調子が悪い」という指示を受け取って、内臓へ指示を出すはずが、皮膚・筋肉にも指示が行き、一部の筋肉を緊張させます。これを「内臓体壁反射」といいます(図①)。虫垂炎の時に腹筋が極端に緊張するのは、その例のひとつです。
 そこで、その反応が現れた皮膚・筋肉に鍼灸で刺激を与えることで、内臓を治療できるとするのが「体壁内臓反射」です(図②)。
つまり神経の混線によって、筋肉のコリと、内臓の病変が関わっているというわけですね。

 こう考えてみると、コリも奥が深いです。
 私ももっと勉強しなくては…。

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2005年7月30日 (土)

肩こり(補)

 このページからリンクを張っている万里さんのブログ「万里の道をゆく」で「肩こりは病気もよぶ」を取り上げていただきました。

八起堂通信の昨日と今日は「コリは病気もよぶ」という題でたかが肩こりとは侮れないことが書いてある(中略)ああ、恐ろしい・・・


 ちょっと怖く書きすぎたかもしれないなー、と思って自分で読んでみたら、たしかに怖いですね。「たけしの本当は怖い家庭の医学」みたい。そこで、ちょっと補足を。

 肩こりが血圧を上げたり、ストレスの元になって悪影響をもたらすのは、慢性化した、かなり強いコリの場合です。常時肩こり、全身コリ、コリで背中が盛り上がっているような状態を考えていただければ、いいと思います。
 「昨日仕事しすぎたわ~」という、一過性のコリは、あまり関係しません。一過性のコリは、しばらく休息したら、すぐに戻りますしね。

 慢性的に肩こりのひどい方は、生真面目な方が多いようです。仕事など、無理してでも頑張ってしまうタイプですね。もともとストレスを抱えているところに、さらに肩こりのストレスが、のしかかってくる。相乗効果で、身体がダメージを受けるわけです。
 対策として、第一に必要なのは十分な休息です。次に必要なのは軽い運動。運動は血管を広げ、弾力をもたらして、血液の流れをよくします。(万里さんのされた水泳は、全身を大きく動かしますから、本当にいい運動ですね)

 もうひとつ付け加えるなら、それだけ肩がこるということは、どこかで無理をしているという、サインだといえます。仕事のやり方だったり、運動不足だったり、ものの考え方だったり(些細なところでは、メガネの度とか)。生活をいい方向に改めるチャンスだと考えることもできるのです。
 肩こりは怖い面もありますが、そういうことを知らせてくれているのだと思えば、それはそれで愛しく思えてきたりはしませんか? …私はしませんが。

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2005年7月29日 (金)

コリは病気も呼ぶ(中)

2.ストレスは万病の元
肩こりや腰痛の痛み、不快感は、それだけでストレスの原因になります。普通の人よりもひとつ、ストレスの原因を多く持っていることになるわけですね。ストレスは全身を交感神経優位の状態(ピリピリ、イライラした緊張状態)にしてしまいます。
またコリ筋肉そのものも、脳に信号を送り続けて交感神経優位の状態にする働きをします。

交感神経は人が危険なときに働く自律神経です。もともとは、人間の先祖が外敵にあった時、逃げたり戦ったりに必要だった反応です。
交感神経優位の状態では血糖値が上がり、脈拍は増加します。その一方で血管は細くなり、血圧は上昇します。内臓への血液は押さえられ、消化器の活動は低下します。

このような、交感神経優位の反応が、長時間続くことによって起こるのが、ストレス性の病気です。
ストレス過剰から来る病気は、数え切れないほどあります。特にかかわりが深いのが、心臓病などの循環器系障害。胃潰瘍などの消化器系の病気も、よく知られています。上記したように血糖値も高くなりますので、糖尿病にも関わってきます。
また、ストレスは免疫の働きも弱めますので、免疫の関わる病気はすべて、注意が必要です。

 最後は、コリ・内科疾患と関係の深い、ツボの話です。

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2005年7月27日 (水)

コリは病気も呼ぶ(前)

東洋医学では、内臓と身体表面(皮膚、筋肉など)には密接な関係があるといっています。そして現代医学から見ても、内臓と身体の表面には関係があるのです。
前回は身体の一部が不調だと、他の部分まで不調になることを説明しました。しかし、その影響は筋肉や関節だけでなく、内臓にも及びます。今回は、内臓と筋肉の関係です。

1. コリは血管を圧迫するkinnikukekkan

コリは、疲労によって溜まった老廃物で、筋肉が腫れた状態です。筋肉は弾力を失い、硬くなります。前回も書いたように、一部の緊張は他に及びますので、他の部分も緊張するようになります。
血管は筋肉の隙間を縫って全身に届けられていますから、その筋肉が固くなると、血管も筋肉に挟まれて、細くなります。水まきをしているときに、ホースを踏んだところを想像していただければわかると思いますが、細い血管では、血液がうまく流れません。
抵抗が大きい血管に血液を通すために、心臓は大きな力で働きます。そのため全身の筋肉が緊張している人では、血圧が上がりやすくなります。
 若い人であれば、この血圧上昇は許容範囲内です。しかし動脈硬化など、もともと血管が狭く、固い状態の人では、無視できません。
高血圧は、心筋梗塞などの心臓病、脳内出血など、悪影響を起こす可能性を増加させます。

 次回はこの続き、コリとストレスの関係です。

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2005年7月25日 (月)

痛みの犯人は意外なところ(後)

2.重心のズレasikatamuku
人間は本能的に、頭をまっすぐに保とうとします。
したがって、何らかの原因で体が傾くと、頭をまっすぐに保つために身体を曲げるのです。
右の図は、足に痛みのある場合です。ふつうは痛みのある足をかばって、体重をかけないようにしますので、重心が変わり、身体は傾きます。するとバランスをとるために背中を曲げて、頭を中心に持ってくることになります。
不自然な姿勢は、身体のあちこちの筋肉・関節に負担をかけるため、痛みが出てきます。 肩と腰は逆方向に傾くことが多く、体重をかける側の足は内側へ、かけない側の足は外側へねじれることが多いようです。この時点での体の歪み(姿勢)は、原因が治れば治ります。しかし、長引くと筋肉にクセがつき、治りにくくなってしまいます。痛みの原因になるものは、早いうちに解消することが必要です。
足の痛みには、ウオノメなどの簡単なものから、外反母趾、足首の癒着などがあります。ウオノメは外用薬で簡単に治療できますし、外反母趾も軽い間なら治療ができます。(整形外科の病院に行くと、矯正器具が健康保険で買えることがあります。医師に相談してみてください)。

3.治療に当たっては
腰痛、膝痛はやはり足からきていることが多いようです。特に、左右で差のある場合には、その傾向は強くなります。
肩こりは、手先から来る場合、足腰から来る場合、歯や眼など上から来る場合と多様です。実際の治療では、筋肉の緊張や張りをたどって原因を探し、治療します。

今までの体験ですが、寝違いの痛みが、足の調整で消えたことがありました。S字型の側湾が、股関節の治療で回復したこともあります。人体は複雑です。