2009年10月12日 (月)

TAM手技療法に関する質問⑥

・M先生の質問
 TAMで、顎関節の操作も教えていただけませんか? 私としては、「誰でもTAM」的に顎の皮膚に前後左右にテンションをかけながら、その状態で顎を自動運動で開閉するくらいしか思いつかないもので・・・。

あと、感覚の件でもう一点!組織の三種類の感覚(2009年6月5日「TAM手技療法に関する質問①」参照)ですが、あれは動きの小さい関節(仙腸関節とか手・足根骨とか)でも感じ取れるものですか?また軽い力でテンションをかけなければならない時でも感じ取れるものですか?


・八起堂の回答

 顎関節症ですか。これはなかなかに難しいですね。TAMの技術的には確かに先生のおっしゃるとおり、前後左右のテンションをかけながら、口の開閉(これは自動運動で)をしてもらうのが良いと思います。あと、下顎骨を横から押し込んで、自動運動をしてもらうという手もあります。
 ただ、私自身の臨床では、TAMまたはAKAで直接、顎関節症の治療をしても、症状の軽減を見られたのはせいぜい数日でした。長続きしないのですね。顎関節はよく言われるように、歯並びなどの影響を受けやすい関節です。周辺の組織が顎関節を歪ませているところを解消しないと、根本的な解決にはならないのではないかと思われます。
 
 歯並び以外では、首、肩の筋肉などが影響しているのではないかと考えています。私自身、無茶をして肩を壊してから顎関節の調子が悪くなり、二度ばかりアゴが外れたことがあります(八起堂通信でも書いたと思いますが、アゴはずれは本当に同情してもらえません。タクシー運転手から病院の受付、看護婦から医者にまで笑われましたもの)。
 
 ということで、歯並びを点検の上、首周りの不自然な緊張がないかを調べて治療されるのが良いかと思われます。あまりお役に立てず、申し訳ありません。

 組織の感覚ですが、小さい関節でも感じ取れるものです。軽く操作する場合でも感じます。というか、この手ごたえで力加減を見ますので、感じたほうが安全ですね。といっても、私自身も仙腸関節でこれがわかるようになったのはせいぜいこの一年くらいのところですけど。ということで、気長にやってみてください。 
 他に磨いたほうが良い感覚として「不自然に動かない部分を感じ取る感覚」が上げられます。例えば上腕骨が動くとき、途中で回転の軸が変化するとか、コッドマンリズム(腕を挙上するとき、上腕骨と肩甲骨は、2:1の割合で動く)が途中から変化する、背骨を押したとき、弓のように全体として曲がってゆくはずが、いびつに曲がるとか。こちらのほうは、手で感じるとともに、目で見てもわかるようになります。

 まずは、患部の状態を感じとるほうに集中してみてください。患部の「おかしさ」がわかってくると、「これを解消すればいいんだ!」という形で具体的な技術の試行錯誤がやりやすくなり、急速に技術が進むようになります。

 というところでいかがでしょうか。

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2009年8月12日 (水)

TAM手技療法に関する質問⑤

M先生の質問
(前文略)

質問① 胸・腰椎の話が出ていますが、頚椎のTAM操作はどんなものでしょうか。また、胸鎖関節・肩鎖関節などのTAM操作も詳しく教えていただけると嬉しいです。

質問② ギックリ腰で寝起きがつらいような患者の場合、座位でも仙腸関節などのTAM操作はできますか?
 また、人工関節の場合はどうされてますか?

質問③ 池浦先生は鍼灸治療もされておられますが、TAMを鍼灸の理論の中で使うこともありますか?例えば、肩の前面が痛いとして、肺経の痛みだから母指にTAM操作をするとか、さらに飛躍して、肺経の陰陽交差を利用して胃経絡上の関節にTAM操作をするとか・・・。どうでしょうか?

質問④ 仙腸関節のTAM操作で、「骨盤を患者にとっての前屈、後屈となるように回転させ、仙腸関節に軸回旋を起こさせる」時ですが、これはもちろん、仙腸関節の可動範囲(つまり数ミリ単位)での、ほんのわずかな「前屈・後屈」という意味ですよね?患者の骨盤を、ガクンガクンと動かす訳ではないですよね?

 本当は細かい操作について、いろいろお聞きしたいこともあるんですが、そのへんはとにかく、臨床で回数をこなしてから改めておたずねいたします。

八起堂の返事
質問①
そうでした、頚椎の話を書いてませんね。実は頚椎には「誰でもできるTAM」の技法があって、いずれ書かねばと思っていたところでした。

 首の具体的な技法としては、患者仰臥位、術者は患者頭位置に。
 左右の手で患者の首(手根でも、四指でも可、やりやすいように)を挟み、片方の手を患者足方向へ、もう一方を患者頭方向へと引っ張ります。つまり首左右の組織を互い違いに引っ張るわけですね。これで首の皮膚、筋肉にテンションをかけます。また、頚椎も片方が上、片方が下へ向かう力を受けることで、少し斜めになるのではないかと考えています。
 その状態で手首を使い、患者の頭を左右に転がします(患者が痛くない速さ、範囲で)。この方法は首の筋肉、頚椎、皮下組織などにまとめて働きかける方法で、首のコリ、痛みがかなり減少します。本格的な治療の前フリとしても使えます。

 頚椎で特に不調の場所がわかる場合は、こんな技法があります。
・目標頚椎を下から押し上げつつ、頭を左右に転がす。
・ 目標頚椎を横から圧迫しつつ、患者の頭を持ち上げ、軽く前屈、後屈させる。
・ 頚椎付近で動きの悪い組織を狙い、皮下組織にテンションを与えて動かす方法。

 もちろん、それでも残る不調には、厳密な方向と精度での狙いが必要になりますが…。

 胸鎖関節ですが、患者側臥位か仰臥位で、鎖骨の胸鎖関節に近い部分の下に指を入れ、患者頭方向へ引き上げます。胸鎖関節を引き離すわけですね。そのまま肩甲骨を動かすことで胸鎖関節を運動させます。
 しかし、これよりも有効なのが、鎖骨下の皮膚・皮下組織を引っ張りながらの運動です。鎖骨下の組織、それもかなり鳥口突起に近い部分の皮膚・皮下組織を肩関節の方向へ引っ張ります。その状態で肩甲骨を動かし、鎖骨を運動させることで、胸部の負荷が解消されます。なお、鳥口突起周辺組織をひっぱりながらの運動は、肩関節の運動不調を解消する場合にも有効です。

 肩甲骨の運動は、胸鎖関節を中心とした円弧、というよりは球面運動になりますね。ところが、患者さんでこの運動が自分でできる人は決して多くはないのです。肩を動かしてください、というと、大抵は肩の上下運動だけで終わってしまいます。体幹部に沿った動き(肩甲骨の動きで言うと、内外へ動かす動き)がうまくできない人はわりといますし、ぐるっと動かせる人はもっと少ないです。なので、術者が動かしてやるほうが、たいていは大きな動きになります。大きな動きの方が、効果は出しやすいですね。
 具体的には、普通の動きで上下左右。できれば、患者さんの腕を挙上した状態で(肩甲骨が外に回った状態になる)、上下左右。この二つからはじめてください。もし、手応えで不調部がわかるようになったら、角度を変化させたり、押し引きを加えるなどして、小さい動きでも良くなります。

 この話に限らず、肩甲骨を十分に動かせている患者さんは少ないです。肩こりの患者さんの肩甲骨を十分に動かしておくと、それだけでかなりコリが解消します。とくに、外転(腕を挙上したとき、肩甲骨が大きく外に回りますよね)の状態で十分に動かすと、効果大です。というか、多くの肩こり患者さんでは、バリバリ音がします。癒着が剥がれているのでしょうねえ。「肩ってこんなに動くんですねえ」と言われることが多いです。

 肩鎖関節ですが、これは鎖骨と肩甲骨の間にテンションをかけます。具体的には、側臥位患者の後ろに立ち、片手の拇指を肩甲棘、四指を鎖骨にかけます。ここで四指を軽く握るなどの形でテンションをかけ、肩甲骨の運動を行います。
 この場合も、周辺の皮下組織への皮膚滑り法は有効です。

 質問② ギックリ腰で寝たり起きたりがつらい患者の場合、座位で仙腸関節などにTAM操作できますか? また、人工関節に関しては、どうされてますか?

 さすがに、座位のままでは仙腸関節の操作はちょっと…。
 以前に全身の過剰緊張で横になれなかった方を診た事があります。横になるとあちこちの痛み、頭痛、めまいが一度に襲ってくるので、1週間くらい、椅子に座ったまま眠っていたという方でした。
 この方の場合には、一番楽な座った姿勢のまま、両手、両足から施術を始めました。全身の筋肉、関節には相関関係がありますので、一部だけでも治療が進めば、それだけ全体も改善します。この方の場合には、最初は座った形での治療、二度目には横になれるようになったので、初めて普通の形で治療ができました。今にして考えれば、鍼を使っても良かったと思いますね。
 ぎっくり腰の場合も、鍼を使ってから、寝て治療するのはいかがでしょうか。

 人工関節についてですが、タイプにもよりますが、関節包、靭帯はほぼ原型のまま存在していると考えています。ただし関節包、靭帯ともに手術で傷がついており、その瘢痕組織が残っている分、柔軟性には欠けるはずです。
 瘢痕組織の分、普通の関節とは可動域の形が違ってきますが、技術的にはそれほど差はないと考えます。

 実際の臨床ですが…。
 これは私の考えすぎかもしれませんが、人工関節と骨の接続部は信頼してよいのでしょうかねえ。差込み型の股関節など、抜けたらどうしようかという怖さがあって、私は人工関節の患者さんの足を、強く牽引することができません。関節包や靭帯が、人工関節をまたいで骨に接続していれば、引っ張ろうがどうしようが問題ないのですが、患者さんで自分の人工関節の構造を理解している人はあまりいません。いちいちレントゲン写真を持ってきてもらうわけにもいきませんし…。
 というわけで、主に周辺組織の皮膚滑り法、ねじりと押し、曲げを使った技法を使用していることが多いです。牽引が必要なときは、おそるおそるやっています。
 恥ずかしながらの回答ですが…。

 質問③ 池浦先生は鍼灸治療もされておられますが、TAMを鍼灸の理論の中で使うこともありますか?例えば、肩の前面が痛いとして、肺経の痛みだから母指にTAM操作をするとか、さらに飛躍して、肺経の陰陽交差を利用して胃経絡上の関節にTAM操作をするとか・・・。どうでしょうか?

 治療において東洋医学的な思考をすることはほとんどありません。
 ただし、経絡と似た意味で、身体を縦に走る「関連性のライン」ははっきり感じますので、これは使います。
 この「関連性のライン」は、一部の症状が別の部分にまで波及する関連性のことです。手で触れて、筋肉の緊張としてたどることも出来ますし、ねじりと曲げをあわせた動きをしていると、関節可動域制限の関連として感じることも出来ます。
 例として挙げていただいた、肩と手の親指の関連は本当にあり、親指や手首が原因となって、肩に不調を起こしたと思われるケースは何度も見ました。
 この「縦の関連」については「誰にもわかる操体法の医学」(橋本敬三 農文協出版)に概論が書いてあり、私は大いに影響を受けました。

 なお、鍼を使うときは「トリガーポイント鍼療法」を基準にしてはいますが、トリガーポイントの思想にはこの「縦のライン」がありません。ということで、私の鍼はトリガーポイントと「縦のライン」の複合治療です。

 質問④ 仙腸関節のTAM操作で、「骨盤を患者にとっての前屈、後屈となるように回転させ、仙腸関節に軸回旋を起こさせる」時ですが、これはもちろん、仙腸関節の可動範囲(つまり数ミリ単位)での、ほんのわずかな「前屈・後屈」という意味ですよね?
患者の骨盤を、ガクンガクンと動かす訳ではないですよね?

 これについては、実際に見たらおそらくびっくりされるくらい動きが大きいです(笑)。患者さんの膝を持って操作するときには、さらに大きな動きです。
 というのは、この「TAMによる仙腸関節の調整」は、やや専門的ではあるものの「誰でもTAM」の一種ですから、それほど精密な動作ではないのです。

 仙腸関節は深いところにあり、運動の中心なので、腸骨棘の位置で数センチの動きも、仙腸関節では数ミリの動きに縮小されます。また骨盤を多少大きく動かしても、大きすぎる動きは骨盤の移動(主として腰椎の曲がり)によって吸収されるので、仙腸関節そのものにはさほど負担がかからないのです。痛みのない範囲でゆっくり行い、曲がらないものを無理に曲げることがなければ、まず問題ありません。以前に書いた、三種類の組織の感覚を頭においてもらえればよいかと思います。
 もちろん、本当にミリ単位の操作を行うこともありますが、安全性のためというよりは、正確な位置に力を作用させるためですね。

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2009年7月11日 (土)

TAM手技療法に関する質問④

M先生の質問

 お返事をいただき、本当にありがとうございます。背骨の操作、さっそく家内で練習してみたいと思います。
 なにはともあれ実践が大事、今後は少しずつ自分の臨床にTAMを、というのはまだ早すぎるので、「TAMもどき」を取り入れて行きたいと思います。

 そこで、もう少しだけ教えていただきたいのですが、TAMの操作中に患者が痛みを訴えた場合、その操作はしないほうがいいのでしょうか?あるいは多少痛くても無理のない範囲で操作したほうがいいのでしょうか?

 また、ひとつの操作を行う回数や時間、頻度などに、何か注意点はありますでしょうか?例えば、「牽引しながら屈曲・伸展」する回数(何回以上はしないほうがいい、とか)、あるいはその牽引する時間(何秒くらい、とか)、週に何回くらいがいいか(毎日はしないほうがいい、とか)などの注意点があればアドバイスいただけませんでしょうか。


八起堂の返信

 TAMの操作と痛みについてですが、これは私自身の反省も踏まえて「痛いことはしないほうが良い」と言わせてください。
 最初のころ「癒着がとれれば治るんだ」とばかりに、強い力で操作したことがありましたが、施術後に痛みがでることが結構あったのです。患者も痛みに抵抗するので癒着の感覚がつかみにくくなる上、とても疲れました。

 技術の向上を考える上でも、痛みの無い操作の方が良いでしょう。
 ブログに載せた「セロハンテープを剥がす」たとえですが、テープを水平に近い方向で引っ張っても剥がれることは剥がれますよね。でも、上に引っ張ればその何分の一かの力で剥がせるはず。
 痛みを感じるような力で操作すると、多少強引でも治療効果が出てしまうために、より繊細な技術の向上を妨げてしまいます。痛みを感じない範囲での操作は結果が出づらく、いらいらすることもあると思いますが、試行錯誤が増えるため、結果的には早く上達すると思います。

 とはいえ、全く痛み無しと言うのも非現実的な話です。具体的には、患者が一瞬顔をしかめるくらいまで痛みまでで収めたいと考えています。
 操作がうまくいくときには、バリバリと癒着の取れる音がしていても、患者は痛みを感じません。派手な音がしているのに、患者はうとうとしているなどという、不思議なこともあります。

 なお、操作の強さに関しての注意ですが、上肢の操作は考えるより軽く、下肢の操作は考えるより強く行って下さい。上肢は繊細な運動を行う部位であるだけに、痛みを感じやすいものです。また下肢は体重を支えている丈夫な組織だけに、操作に力が要ることが多いのです。


 次に、操作を行う回数や時間、頻度ということでした。
 私は主として実費の治療をしているので、毎日というペースでの治療はほとんど経験がありません。ただ、患者が痛みを感じない程度の操作であれば、基本的にやりすぎということはないはずです。毎日もおそらく大丈夫でしょう。
 一度の治療で何度も同じ操作をすることについても、患者が苦痛を感じない限り、組織には無理がかかっていないはずです。単なる運動法とほとんど差がないので、大丈夫でしょう。

 ただし、一つの操作を何度も行うことは、あまり意味が無いと思います。
 TAMは基本的に癒着の剥離を目指します。癒着は正しい方向、正しい動きがあれば剥離するはずですね。ということは、正しい動きであれば一回で癒着が取れますし、正しくない動きであれば、何回やっても取れません。同じ動作の繰り返しは、少なくとも癒着の剥離においては意味がありません(マッサージ効果はあると思いますが)。
 私自身は「同じ操作は二度と行わない」ことを心がけ、施術中も角度や力加減、狙う場所などを一回ごと微妙に変えています。そうして問題が解消できる動きを探します。
 治療の目安は、関節や筋肉の状態です。うまく治療できたときには関節なら動きの軸が変化しますし、筋肉なら緊張が変わります。変化が起これば、その動きは正解。変化が起こらなければ、動きに新たな工夫を加えてゆきます。

 牽引の時間ということですが、時間の長さが問題になるのは、主として短縮した組織をストレッチするときですね。先日のメールで書いた「餅を引っ張るように、一定の力でずるずる延びるときは、その組織はストレッチできることを示しています」のように組織が伸びる場合には、その伸びが止まるときが終わりになります。一箇所の変化は長くても十数秒の間に起こると思います。

 なお、組織の伸長時間については、数分という時間を書いている本もあります。これは、目的とする組織状態の違いであると思われます。
 TAMの施術は「剥がし」が中心であり、伸長は短縮した組織が自然に伸びる範囲だけで行っています。つまり短縮は軽度のものを対称にしているということになるでしょう。
 長時間のストレッチを提唱する手技は、TAMの対象よりも、もっと硬化した組織を対象としているため、時間をかけているのだと思われます(剥がしを使わず伸長だけを用いるためかもしれませんが…)。
 剥がし、自然伸長だけでは効果が不十分な場合には、このような長時間のストレッチを必要とするケースもあるでしょう。ただし、手ごたえだけでなく、外見や動きの観察により適切な変形量を決めてから治療する必要があります。このあたりについては、私ももっと研究してみます。
 
>なにはともあれ実践が大事、今後は少しずつ自分の臨床にTAMを、
>というのはまだ早すぎるので、「TAMもどき」を取り入れて行きたいと思います。

 厳密に考えず、必要なところだけつまんで役立てていただければ、幸いです。

                            池浦誠

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2009年6月13日 (土)

TAM手技療法に関する質問②

・M先生からの質問

  池浦先生、お返事ありがとうございます!
 さっそくですが、お言葉に甘えていくつか質問させていただいてもよろしいでしょうか?

 質問① 仙腸関節調整についてなんですが、2008年12月10日の「TAM手技療法による仙腸関節の調整」の中で、骨盤上口の開閉による調整を説明されてますが、これと2005年11月23日の「AKAの治効理論⑧」にある「普段の臨床では、仙骨を固定し上前腸骨棘と坐骨を圧迫して滑らせる操作を行うことが多い」という手技との違いはなんですか?

 質問② AKAでは「まず仙腸関節を調整、次に胸鎖関節・・・」といった治療手順がとられるようですが、TAMではどういう治療手順をとられることが多いですか? 例えば膝が痛い場合は、まず膝を調整するのでしょうか?

 質問③ TAMがあまり効果を示さない疾患や症例はありますか?

 以上、三つの質問について、池浦先生がお手すきの時でけっこうですので、ご教授いただければ幸いです。本当に、お忙しい中、勝手申し上げましてすみません。私の方こそ、今後ともどうぞよろしくお願い致します。
  

・八起堂の返信

 メール拝見いたしました。質問の内容を見ますと、ブログを熱心に読んでいただいていることがよくわかります。自分の書いたことをきちんと受け止めてくださる方がいるのは、本当に幸せなことです。ありがとうございます。では。

 質問①ですが、私は仙腸関節は平面関節ではなく「骨盤の開閉を行う凹凸の関節」(ただし、荷重は前の部分にかかっている)と考えています。これについては「AKAの治効理論」で書いたとおりです。
 ご質問の2005年11月23日「普段の臨床では、仙骨を固定し上前腸骨棘と坐骨を圧迫して滑らせる操作を行うことが多い」は、外からの圧迫で仙腸関節を凸滑りさせる動きです。当時はまだTAMの出始めで、AKAの凸滑りの治療技術を残していたことによるものです。
 その後、テンションとモーションについてさらに考えるようになり、この動きにAKAの治効理論⑦に書いた「仙腸関節の前後への軸回旋の動き」を加えることで、「TAM手技療法による仙腸関節の調整」の動きに発展したのです。そんなわけで「仙骨を固定し上前腸骨棘と坐骨を圧迫して滑らせる操作」は、今は使っていません。

 質問②について
 AKAにおいては、全身のどんな症状についても、仙腸関節の不調が影響して起こったものであると考えます。「第一原因である仙腸関節を調整しない限り、いかなる治療も効かない」と考えるために、最初に仙腸関節を調整するのです。
 私は「関節に主従関係はない」と考える立場ですので、とくに治療の順番を気にすることはありません。どんな順番で行ってもいいと思います。
 私自身は、
①側臥位の肩→足
②反対側の側臥位の肩→足
③仰臥位で頭→足
④伏臥位で頭→足
 の手順で行っていますが、特に意味はありません。
 ただ、患者さんが「○○が痛い」と言っているときに杓子定規にやると「話を聞いてるの?」ということになるので、主訴の部分と関連部分を最初に調整してから、全身調整に入ることが多いです。

 なお、関節に主従関係はないと思いますが、関連性そのものは確実にあります。一つの関節が痛いと訴える方がいれば、どんなに時間がなくてもその上下の関節を調べて見なくてはなりません。不調のある関節のとなりの関節は、やはり不調を抱えていることが多いです。

 質問③について
 TAMは「組織の癒着をとる」ことを目的にした技術です。したがって、癒着に由来しない症状には効果を出しにくいです。例えば組織の断裂など、大きな変形がある場合には十分な効果は望めません。
 また、筋肉の極端な疲労による場合、炎症がひどく起きている場合には、TAMよりも筋肉のマッサージや冷却の方が効果が高いと思われます(ただし、炎症の後にはよく癒着が生じますから、その治療には有効です)。

 また、技術の性質上、苦手なものもあります。胸椎、腰椎は深くにあるため、不調の位置を調べにくく、正確なテンションとモーションをかけるのが難しい関節です。
 最初のころは「狙い」が不十分で、AKAを使っていたころと同程度の治療効果しか出せませんでした(あくまで当社比)。最近は技術の進歩で効果も上がってきましたが、まだまだ改良の余地はあると思います。

 苦手というのとはまた別ですが「狙った組織にテンションをかけ、それから必要な動きを与える」には、患者さんの筋力が邪魔になることがあります。筋肉が余りにたくましい人、筋肉の緊張が過剰で力を抜けない人の場合には、その筋力を超えて動かさなくてはならないので、かなり疲れます(笑)。最近は、患者さんの動きを誘導して、その動きに乗ってゆく方法を模索しています。
                          池浦誠 

 この項、まだ続きます。

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2009年6月 5日 (金)

TAM手技療法に関する質問①

 先日、熊本県のM先生から、TAM手技療法について質問をいただきました。
 他の方にも役に立つことがあるかもしれませんので、ご本人の許可を得て、掲載させていただきます。
 ただし、文面は必要に応じて省略、改変してあります。

・M先生のメール

「はじめまして。私は熊本で整骨院をしております、Mと申します。最近ブログを読ませていただき、TAM手技療法に大変興味がわき、メールさせていただきました。
 現在、八起堂さんのブログの「治療技術論」の部分をプリントアウトしてファイルして勉強しているんですが、もっと詳しく勉強したいと思っています。
 できましたら、TAMの勉強会のテキストをわけていただけませんでしょうか。本当はセミナーに参加しないといけないのでしょうが、なかなかそちらの方にまで行くことができませんので・・・。
 厚かましいことは充分承知しているつもりですが、それ以上に、もっとTAMのことを知りたく、お願いのメールをさせていただきました。よろしくお願い致します」


・八起堂の返信

 こちらこそはじめまして。八起堂治療院の池浦です。このたびはメールをありがとうございました。
 さて、お問い合わせの件ですが、実は講座で使ったテキストも、ほとんどブログと変わりません。というよりも、ブログの文章の体裁を整えただけのものがテキストになっています。講座では、原則だけ説明して、あとは質問に答えつつ具体的な方法を解説していますので…。

 TAMでは不調の原因を関節や筋肉の癒着と考えていますが、関節一つとってもその障害部位は様々です。例えば肩関節の不調でも、上部が動かない場合、前部が癒着している場合など、ケースによって原因がちがいます。そこで問題部位を治療するため「押す、引く・ねじる・ずらす・皮膚を引っ張る」など、ケースに合わせて動きを変え、原因の部分を「狙う」ようにします。そのため「肩はこれ」というような技法の一般化が難しいのです。もっとも重要な「狙う」ことが抜け落ちて、形骸化してしまう可能性がありますので…(「そのまま体操8」とか「寝違えの対応」のような、誰がやってもある程度の効果を出せる技法は別)。

 そこで、講座では基本原則を説明し、実技で「こんな動かし方もできるのかあ」というイメージだけを持って帰ってもらうことにしました。あとは各自試行錯誤してもらうほうが「原因を狙う」という目的に合った技術を身につけられると思いますので。
 TAMは、技術と言うよりもコンセプトですので「癒着をとる」という意識をもって試行錯誤していれば、講座など受けなくても使えるようになると思います。

 練習方法ですが、まずは「動かない部位、動きを制限している部位」を探すことに習熟してください。関節でしたら、回転の中心や、運動線の変化を見て、原因を見極めます。前面なのか後面なのか、内側なのか外側なのかくらいの大雑把なところから始めて、だんだん精度を上げていきましょう。筋肉、皮下組織なら、患者さんの身体を動かしながら、どの位置で組織が緊張するか、などを見て、判断してください。

 次に、狙う部分に適切なテンションをかけるようにします。
 組織の緊張度は、段階的に変わります。最初は、かける力に比例して抵抗が増える状態(ゴムをひっぱるようなもの。伸びるのに比例して抵抗感が大きくなる)。
 次に、一定の抵抗のまま伸長が起こる状態。餅を引っ張るような感じ。この段階では、短縮した組織に伸長が起きています(この状態では、短縮した組織が正常な状態になるよう、伸長が起きています。この伸長にも治療効果があります)。
 最後に、また急激に抵抗が増し、皮ベルトのような固い弾力を感じる状態。この状態が組織にテンションがかかった状態です。
 テンションが狙った場所にかかっているかどうかは、手応えと運動線から判断してください。

 テンションをかけられたら、このテンションを保ったまま、癒着が解消する方向を探して運動を行います。TAMの項目で書いたような、セロハンテープが剥がれる図を頭において、試行錯誤してみてください。

 テンションの操作、癒着のとれる運動の操作はかなり微妙な場合があり、数センチ、数ミリの差が重要になることもあります。最初はなるべくゆっくりした動作でやってみてください。

 以上、「より詳しい技法のテキスト」はお届けできませんが、不明点などお問い合わせくだされば、できるかぎりご説明したいと思います。
 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
                                 以上

 この項目、しばらく続きます。他にもTAM手技療法や、そのまま体操についての質問のある方がおられましたら、お気軽にコメントまたはメールでご連絡ください。

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2008年12月10日 (水)

TAM手技療法による仙腸関節の調整

 同業者向け。Kotuban

 先日、リンクにもある洛陽健康倶楽部において、TAM手技療法の講習会を行った。テキストはこのブログをベースにして作成したが、その際、仙腸関節調整についてブログで発表してなかったことに気がついた。遅ればせながら、仙腸関節に対するTAM治療について掲載する。

 Kanryaku_2 治療を行うに当たっては、構造・動きについて、それなりのイメージがなければならない。しかし仙腸関節は、未だにどのような運動を行うのか定説のない、不思議な関節である。運動範囲が小さく測定しづらいこと、身体の深い部分にあることなどが、その原因である。

  AKAの本では仙腸関節を平面関節であると考えているようだ。しかし、骨格標本を見ればわかるが、仙腸関節は決して平面ではない。仙骨側に凹、腸骨側が凸になっているのがわかる。
 Hataraki_2 私は関節面の構造と、筋肉のつき方から「仙腸関節は、骨盤を運動させる軸となるもの」と考えている。右図にあるように、骨盤を開閉させ(上下に動かして)、ショックアブソーバーとしてはたらいたり、姿勢を変える補助的な動きをしているものと考えている。
 また仙腸関節の前側は逆ハの字型をしており体重を支えるのに適した構造になっているが、後ろ側はほぼ並行になって、重量を支える形をしてない。体重はほとんど前側で支え、後半は比較的自由に動くことで、前屈・後屈時の前後運動の補助もしていると考えられる。

  仙腸関節においても、緊張を与えながら動かして組織の伸展、癒着の開放を狙うという点では変わらない。仙腸関節のTAMは、骨盤の開閉の動きと、仙腸関節で起こる回旋の、二つの動きを組み合わせて用いる。

・手技
 患者は側臥位。右側を上にした側臥位なら、術者の左手を仙骨に当て、右手を上前腸骨棘にあてる。右手を患者から見ての後下方へ引き、骨盤上口が開くように操作する。そのまま骨盤を患者にとっての前屈、後屈となるように回転させ、仙腸関節に軸回旋を起こさせる。
 ついで上前腸骨棘を患者から見た前上方へ押し、骨盤上口が閉じるように操作する。そのまま骨盤を前屈・後屈になるよう回転させ、仙腸関節に軸回旋を起こさせる。

 患者の下肢を持ち股関節の内旋、外旋をつかって骨盤の開閉を行う方法もある。ただし、患者の身体が不安定になるので、わずかな動きが痛みを引き起こす患者には使用しないほうが良い。

 AKAでは仙腸関節の滑りにより、かえって痛みが増すことがあったが、この「骨盤開き・軸回旋」の組み合わせ運動では、まだ一例も悪化例を体験していない。これは、仙腸関節が凹凸と考える構造モデルの正しさを、間接的に証明するものと考えている。

付記
①AKA的には腸骨を凸すべりさせたいところだが、よほどの困難例でなければ、開閉だけで改善が見られる。運動範囲が狭く、すべる距離が短いからかもしれない。

②骨盤を開く・閉じる動作をゆっくりと行うだけでも仙腸関節の運動は多少改善する。最初はこちらから始めることをお勧めする。

③「骨盤を前屈・後屈になるよう回転させ、仙腸関節に軸回旋を起こさせる」の動作が難しければ、患者に腹式の深呼吸をしてもらうことで代用できる。

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2007年1月 7日 (日)

関節の治療効果を上げるために(後)

 前回は、関節の問題部位を調べる方法だった。今回は治療について。

 治療をしても、関節運動が解決されない場合がある。また治療後に関節が痛むこともある。これらの問題の根は一つである。本来治療するべきところに力かかからず、治療するべきでないところに力がかかっているのだ。
 治療するべきところに、適切に力がかかれば、治療効果も上がり、関係ない部位を損傷することもない。障害された部位に力がかかるように操作する必要がある。

3.AKAによる方法
 AKAの治療は、施術の運動線上にある癒着を剥がすのに向いている。したがって、問題点を特定したら、運動線がそこを通るように施術を行うとよい。
 例えば、肩関節の前部分で動きが悪ければ、下垂状態での外旋(内旋)、または水平外転(内転)の動きでAKAを行うと、治療効果を出しやすい。

 なお、AKAの施術は「ゆるみの位置」で行うこととされている。しかし施術位置を限定すると、アプローチできる障害も限られてしまう(例えば、関節の可動域終点付近で働く靭帯の癒着は治療できない)。
 関節の施術位置は、あくまで働きかけるべき関節包、靭帯にあわせるべきである。「ゆるみの位置」という概念は知識にとどめ、臨床上は忘れてよい。

4.TAMによる治療
 TAMは、障害部位を緊張させて動かす技術である。そのため、関節の位置、引き離し、ずらし、ねじりを組み合わせ、問題部位に力を集中させることを重視する。

●障害部位を緊張させる
①関節の位置Ichi_1
 関節包、靭帯は、関節の位置によって緊張度が異なる。
 例えば膝関節は、屈曲時には関節包の前面が緊張し、後面は弛緩する。伸展時にはその逆で、関節包の前面は弛緩し、後面が緊張する。上記「ゆるみの位置」の繰り返しになるが、もし前面の関節包に問題があるならば、屈曲位に近い位置で施術を行うべきである。
 関節の動きには屈曲、伸展、回旋などがあるので、関節によってはそれらを組み合わせる必要がある。「外転しながら外旋し、そのまま前方に挙上する」などという操作も必要になってくる。

②引き離しKatamuki
 一般的な引き離しは、関節面全体を引き離すように行う。しかし全体を一緒に引き伸ばすことになるので、良いところを傷つけ、悪いところに効果が及ばない可能性もある。
 引き離しは直線的ではなく、傾けて行うことで、狙った場所のみを集中して引き離すことができる。右の模式図では、右側の靭帯はゆるんだまま、左の靭帯のみ引き伸ばされているところをしめしている。

③ねじり
 ずらし、ねじりも関節包に緊張を与える方法である。
 ねじりは円運動であるから、回転の中心に近いところはあまり動かず、中心から遠いところが大きく動かされることになる。緊張を与えなくて良い部分を中心とし、緊張させたい部分を大きく動かすようにすれば、場所によって緊張を変えることができる。
 例えば、膝関節で外側の靭帯のみを緊張させたければ、内側を中心とする回転でねじりを与える。

④皮膚ずらし
 問題点に近い皮膚を牽引することで、関節包・靭帯に緊張を与える方法である。関節の状態にかかわりなく、変則的に緊張を与えることができるので、慣れれば便利な方法である。とくに、小さい関節、表層で癒着した関節のときに有効である。

⑤ずらし
 ずらしは、関節の位置を正常な位置から動かすことである。「AKAの治効理論」でも書いたように、大きな癒着を解消するのに使いやすい。
 他の動きと併用して使うことが多い。

●動きをつける
 緊張を保ったまま運動することにより、癒着、軽度の拘縮が解消され、治療効果が出るのがTAMの原理である。そこで上記したような動きを組み合わせて、緊張と運動を両立させる。例としては、
「ずらしと内外旋による緊張を維持しながら、屈曲・伸展を行う(肩関節など)」
「引き離しによる緊張を維持しながら、ねじり、屈曲・伸展を行う(足関節、指関節など)」
など、いくらでも考えられる。うまく治療ができたときには癒着の開放が起き(このとき、ピシッという音がすることもある)、急に可動域が広がる。
 
5. TAM治療の注意
①運動の並行
 TAMの動きについて説明すると「その『~ながら』がうまくできない」と言われることがある。たとえば「外旋を維持しながら屈曲」などというときの「~ながら」である。たいていの人は、屈曲しようとすれば外旋の力が抜け、外旋を維持しようとすれば屈曲する手が止まってしまう、というジレンマに陥る。まして「ずらしとねじりを維持しながら、外転」となると、混乱するという。

 2つ以上の連携動作が最初からできる人は、まずいない。ゆっくりと、確実な動作を心がけて、練習する必要がある。
 練習法としては、まず一つの動き(ねじり、ずらしがわかりやすい)で緊張をつくり、それを一定の力で維持する。その緊張を保ったまま、他の動きを少しずつ、ゆっくり試みて行くのが良い。

② 力に頼らない
 力が問題点に集中し、必要な方向への運動が行われれば、それほど大きな力は必要ない。逆に言えば、問題点がはっきりしていながらうまく開放が起こらない場合は、運動の方向が間違っていると言ってよい。
 うまく開放が起こらない時には、つい力を強くしがちである。しかし、それは治療に結びつかないばかりか、事故の原因にもなる。
 力を強くするのではなく、緊張を保ちつつ、開放の起こる方向を探すことが求められる。

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2006年12月14日 (木)

関節治療の効果を上げるために(前)

 以前「AKAの治効理論」という仮説を書いた(このブログのカテゴリー「治療技術論」または、2005年11月、12月)。そこでは、AKAの効果は「組織の緊張を伴う運動が、関節周辺組織の癒着・拘縮を開放することによる」とした。
 そこから「緊張状態での運動があれば、凹凸の法則にとらわれる必要はない」と考え、TAM(Tension And Motionの略)という手技療法を提唱した。
 今回はさらに、関節の障害部に狙いを定める技法について書く。

1.障害部分を狙う必要性
 AKAで治療を始めたころは、関節全体に治療を行っていた。たとえば肩関節なら肩関節全体の動きを考え、凹凸の法則にしたがって施術する。しかし、しばらく臨床を体験するうちに、それでは不十分だとわかってきた。
 肩の関節(肩甲上腕関節)を例に取ってみよう。肩関節に対してAKAを行うとき、一般的にはゆるみ位置での引き離し、水平の滑りのほか、外転方向の凹凸滑りを行うとされている。しかし関節を丁寧に観察するとわかるが、動きを妨げられている部分はケースによってさまざまである。
障害が関節の上下で起こっている場合などには、外転でのAKAは有効である。しかし関節の前面や後面で起こっている場合には、十分な効果を得るのが難しい。単なる外転の動きでは、これらの障害部位に緊張も運動も与えることができないからだ。
 効果的な治療のためには、どうしても関節内の問題箇所に、力を集中させなければならない。「狙う」方法が必要になるのだ。

2.障害箇所の検索方法
 臨床を行っているうちに誰でも自然にわかってくることだが、いくつかの注意点を覚えておくほうが効率が良い。

① 動かない場所を探す 
 関節を他動的に運動させ、その運動ラインを見る。正常な関節なら、正常な運動コースをたどる。ところが障害のある関節では、そうはならない。注意深く観察すると、運動のラインが正常と異なるカーブを描くのがわかるはずだ。とくに軽い牽引を行いながら運動させるとわかりやすい。 

 癒着・拘縮を起こしている場所は伸縮力がなく、動きが少ない。そのため、関節はこの癒着部を中心としたカーブを描くのである。したがってカーブの中心付近に癒着が存在することがわかる。
 膝関節を例に取ると、関節内側が動かない場合には、内側の動きが少なくなる。そのため伸展時には、下腿が内旋し、屈曲時には外旋することになる。

 この動きの良否は、水平滑りや、引き離しにおいても観察できる。いくつかの動きを試みて結果を総合すると、より精度が上がるだろう。

 この検索法の要領は、患者の身体を支える力を軽くし、抵抗に逆らわないように運動させることにある。強く保持していると、動きの変化がわからなくなってしまう。

②組み合わせ運動による検索
 上記、単純な関節運動でもある程度は癒着部がわかる。さらに精度を上げるには、いくつかの運動を組み合わせるのが良い。例えば、牽引しつつ内外転を行う、外旋させつつ屈曲伸展を行うなど。とくに一つの運動の可動域いっぱいで、別の運動を行うとわかりやすい。
 例えば、上腕骨をいっぱいに外旋させた状態で、挙上させる。正常な関節では挙上にしたがって自然に内旋が起こるが、動きの悪い関節では内旋が早く起こったり、途中で引っかかったりする。

 これはTAM法でいう「牽引運動法の第二法」、「ねじり法」と同様の動きであり、検索と同時に治療を行うこともできる。
 ただし動きが複雑なだけに、力が強すぎると危険を伴う。

③関節組織と、他組織の区別
 ある運動の異常が、関節の異常によるものか、筋肉など他の組織によるものかがわかりにくいこともある。とくに関節可動域の終点では筋緊張を伴いやすく、わかりづらい。
 このような場合、水平滑りによる検査では運動に筋肉が関与しにくい。
 また、関節に問題がある場合には運動終端の手応えが固く、筋肉の場合は弾力が感じられることが多い。
 しかし複関節や、長い腱をともなう関節では区別が難しく、研究の余地がある。

 次回、治療編。

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2006年8月28日 (月)

追試乞う…仙腸関節部の鍼

 専門家向け。

 仙腸関節部が腰痛の原因となることが多いのは知られている。この部分の治療としてはAKA(関節運動学的アプローチ)が使われるが、鍼による治療の可能性を試してみた。

 AKAの理論では仙腸関節障害とは仙腸関節の動きが阻害されることによって起こるとされている。仙腸関節は仙骨と腸骨(寛骨)の間にある関節で、靭帯により幾重にも補強されている。この靭帯の緊張度が仙腸関節の運動に関係していることは十分に考えられる。仙腸関節をまたいでいる靭帯の一部に鍼をし、変化を見た。

・刺鍼場所
 刺鍼は、大腸愈から外下方斜刺と、次リョウ穴付近から外方斜刺(仙骨孔は通さない)で、骨間仙腸靭帯と、後仙腸靭帯の刺激を目的とする。刺鍼による血行改善作用で、靭帯の柔軟性が増すことを期待する。

・健常者での実験
 テスト法としてはSLRを使用。寸六一番を上記にしたがって刺鍼、変化を見た。2人に刺鍼したところ、15°程度の改善を見た。

・腰痛患者への刺鍼
 急性の腰痛患者三人(いずれも軽度、自力での歩行が可能)に、同様の刺鍼を行った。3人中2人では疼痛が消失・軽減した。残り1人には自覚できる改善はなかった。
(なお、残り1人には手技での治療を行った。実験後は、いずれも下肢を中心に手技で施術、仙腸関節への負荷を減らすようにして、治療を終了した)。

・まとめ
「治療技術論」の「AKAの治効理論」でも書いたとおり、AKAの関節運動改善効果は、靭帯、関節包の癒着を改善することによると考えられる。しかし必ずしも癒着を取らなくとも、靭帯の柔軟性を増すだけで改善するのではないだろうか。上記の実験からは、その可能性を考えても良いように思われる(ただし理論で考える限り、仙腸関節にズレが生じている場合や、炎症が起きている場合には効果は望めないだろう)。

 AKAでの仙腸関節の治療は習得に時間がかかり、習熟するまでは危険も伴う。鍼による治療は施術の適応が限定され、効果も不安定だが、容易で危険も少ないため、選択肢の一つとして考える価値があるだろう。

 興味のある方は追試していただけると幸いである。

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2006年6月 1日 (木)

TAM手技療法⑤

4.ねじり法
 球関節などの関節では、ねじることで関節包を緊張させることが可能である。この方法は関節にねじりを加えて関節包を緊張させ、あわせて動かすことで癒着を解除する方法である。

 ねじり法は多くの関節で使用できるが、特に股関節で重要である。股関節は関節の適合性が高く、運動中にもほとんどズレが起こらない。この特徴はAKAなどの治療では不利に働く。凹凸の法則に従った外力を加えても関節の相対位置に変化がないため、効果を出すことが難しいのである。
 骨に力を加えるよりも、関節包にアプローチする方が治療効果が高い。

○技術
 患者は仰臥位。術者は患者の下肢を持ち上げ、股関節を内旋させる。一般的には下腿を外へ引いて内旋させるが、膝に痛みのある患者では大腿部を保持して行う。
 内旋の力はごく軽く、わずかに抵抗が出たところで止める(患者の自然な可動域の限界)。この状態で、股関節の関節包にはねじりの力がかかっている。
 内旋の緊張を保ったまま股関節の屈曲と伸展を行う。その後、同様に股関節を外旋させて、股関節の屈曲・伸展を行う。
 重要なのは、ねじりの緊張を保つことである。屈曲位、伸展位では、内・外旋の可動域が小さくなり、中間位では大きくなる傾向がある。一定の緊張を保つように、内・外旋の力を調節すること。緊張が持続できないと効果が上がらない。

 内・外旋を伴う屈曲、伸展の他、症状によっては内転・外転も考えうる。
 もう少し高度なやり方としては、股関節に緊張を保ったまま、円を描くように運動させる方法がある。緊張の持続が難しいが、関節可動域の全域にわたって施術することができる。

○注意
 股関節は、無理に動かすと痛みを生じやすい。骨粗しょう症の患者の場合には、骨折の恐れすらある。施術にあたっては、無理な力を加えることは禁物である。
 患者への施術は基本的にゆっくりと行う。また患者が力むなどして施術者の動きに抵抗した場合、無理に動かすべきではない。

付記
 解剖学的に言えば、股関節の関節包にねじりを加えるのは内・外旋ではなく屈曲・伸展の動きである。しかし屈曲と伸展でねじりを加えると、運動が煩雑になり一般化しにくい。そのため、外見からわかりやすい内旋・外旋を利用している。

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2006年5月22日 (月)

骨盤の開きによる妊婦の腰痛軽減例

 同業者向け。妻の妊娠から考えたこと②。
 妊娠後期に発生する腰痛を、骨盤上部を開くことで軽減した治療例について。
 これもまた一体験に過ぎないので、同業者の追試を期待する。

 妊娠も後半にかかると子宮が大きくなり、腰痛が発生しやすくなる。Habatakikotu
 治療技術論の「AKAの治効理論」でも書いたように、寛骨は仙腸関節と恥骨結合の二箇所を軸にして運動が可能と考えられる。運動は骨盤の上口が広がる(下口が閉じる)、または上口が閉じる(下口が開く)動きとなる。
 妊娠時、骨盤の上部は子宮の膨大によって左右に広げられる。骨盤の内面は内臓の荷重を支える役目も担っているので、骨盤上部が開いたほうが、荷重にも耐えやすい。
 今回、妊娠後期の急激な子宮膨大に骨盤がついていっていない可能性を考え、骨盤上部を開く施術を行った。

・手技
 患者は側臥位。仙骨に手を当てて固定し、逆の手で上前腸骨棘を尾骨方向へ引いた。骨盤の固定は主として靭帯によっているので、靭帯の伸長を考え軽い力を持続してかけることとする。骨盤上部がある程度開いたと触知できたところで、終了する。

・ 経過
 施術直後、腰痛は軽減した。その後、臨月に近くなるまで痛みが増大することはなかった。

・考察
 施術直後に結果が出て、それが持続したことを考えれば、一定の効果があったと考えても良いのではないか。

 その他、本人の感想と外見からの印象では、前方に突出していた腹部が、若干引っ込んだように感じられた。骨盤が広がったことで、子宮の落ち着きが良くなったのかもしれないが、精密な計測を行っていないので、保留する。

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2006年4月25日 (火)

背中に施術する妊娠線予防マッサージ

 同業者向け

 私事ながら先日、娘が生まれた。妊娠中、治療で試みたことをいくつか提案するので、臨床の一例として見ていただきたい。まずは背中に施術する妊娠線予防マッサージについて。

 妊娠線とは、妊婦の腹部に(場合によっては臀部、大腿部、胸部にも)できる皮膚の亀裂痕である。
 妊娠時の皮膚・皮下組織は、子宮の膨大、脂肪量の増大によって押し広げられる。皮下組織はある程度までは伸びるが、やがて伸びる余地がなくなると裂けて、その痕跡が残る。これが妊娠線である。最初は赤紫色、時間とともに白く薄くなるが、消えることは無い。
 一般的な妊娠線予防の方法としては、クリームを塗ってのマッサージが知られている。皮膚の柔軟性を増して伸びる余地を増やし、妊娠線を防ぐ方法である。また急激な体重増加を避けるのも有効とされている。

 今回試したのは、これとは別の方法である。
 妊娠線は、腹部の皮膚に余裕がなくなることで生じる。ならば皮膚の可動性を増して余裕を作れば、裂ける事を防げるのではないか。具体的には背中の皮膚を腹方向へストレッチし、腹部皮膚負担の軽減を図った。

・手技
 患者は妊婦なので、伏臥位は不可能であり、側臥位での施術になる。
 側臥位で脊椎付近に掌を当てる。なるべく面積を広く取るほうが、患者の痛みが少ない。垂直圧を加えて掌を密着させつつ、妊婦の脇腹方向へ力を加え、皮膚を引き伸ばしてゆく。一箇所に十数秒かけるくらいのゆっくりした速度が望ましい。
 施術後は皮膚の可動性を調べ、残っている部分にストレッチをかける。癒着の強い部分にはリリース手技を行って、十分な可動性を確保するまで続ける。なお施術部には浮遊肋があるので、強い垂直圧をかけないよう注意しなければならない。施術は着衣の上からでも可能だが、皮膚に直接施術を行うほうが簡単だった。

・経過
 今回は自分の家族なので、日々の調子を聞きながら施術を行った。7ヶ月頃より、腹部皮膚に強い緊張を感じるようになったというので施術を開始した。最初は腰椎の高さでのみ横方向へ施術した。施術後、腹部皮膚の緊張感が消え、痛みが軽減した。
 9ヶ月頃になると横方向のストレッチのみでは皮膚緊張を緩和しきれなくなったので、臀部皮膚を外上方向へリリース、肩甲骨付近の皮膚も外下方へリリースを行い、腹部皮膚の負担軽減を図った。
 結果としては妊娠中12キロの体重増加を見たが、妊娠線は発生しなかった。

・ 考察
 妊娠線の発生には個人差があり、何もしなくても発生しない場合もある。したがって、この治療が奏功したと言い切ることはできない。同業の方による追試を希望する。

 なおこの治療と関連があるかどうかはわからないが、出産時期は予定日から2週間遅れ、出生時体重は3500グラムを越えた。
 腹部皮膚に余裕を持たせることは子宮内圧を低く保つ可能性が高い。しかし出生時期や体重との関連性は不明である。

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2006年3月31日 (金)

TAM手技療法④

前回に引き続き、牽引運動法の第二法を。

 癒着の解消には、癒着に関わる組織を緊張させて運動する必要があると述べた。逆に言うと、癒着に関わる組織が緊張していなければ、十分な効果が得られない。
 前回書いたように、関節包・靭帯の構造が複雑な場合には、牽引の効果が及ばない部分が残る。このような場合に使用するのが第二法である。

○第二法
 なるべく多くの靭帯・関節包が緊張するように調整しながら力をかけ、癒着を解消してゆく方法である。技術の性質上、特定の関節を例にするとわかりにくくなるので、模式図を使用する。2hou

 右図は、関節の間に三本の靭帯がある場合の模式図である。

1.図①は単純に牽引した場合である。最も短い靭帯のみに力がかかり、緊張している。右の長い靭帯、斜めの靭帯は遊びを持ってゆるんでいる。

2. 短い靭帯の緊張を保ちつつ、他の靭帯の遊びをとるように運動させる。関節を傾けると、右側の靭帯が緊張する(図②)。
 左右の靭帯が緊張しているが、走行方向が異なる斜めの靭帯は緊張していない。

3.図②の緊張を保ったまま、三本目の靭帯の遊びをとる方向を探す。図の場合では横にずらし、三本目の靭帯が緊張するところまでもってゆく(図③)。実際には、動かしては戻し、という操作を繰り返すので、その過程で緊張した靭帯に「緊張・運動」が加わり、癒着の解消が起こる。
 とくに癒着の強い箇所を発見した場合には、そこに力を集中することで、解消する。

4.関節の構造上、すべての靭帯を同時に緊張させることはできない。癒着が解消したと思われる部分はゆるめ、他の靭帯を緊張させるように調節してゆく。

 実際の関節法や靭帯は、図のように分離してはいない。しかし付着部位や繊維の方向により、各部の緊張にばらつきが生じるのはたしかで、治療にはポイントを絞った操作が必要である。
 運動の方向は、関節を動かした時の感覚で決定する。図①のように一部の靭帯だけが緊張している場合には、緊張した靭帯は抵抗感を伝えてくる。抵抗感のある部分を避け、抵抗感の無い方向へ動かしてゆくと、ゆるんでいる靭帯の遊びをとることにつながる。

 この方法は正常な運動とは異なる運動を行うが、関節包や靭帯を軽く緊張させる範囲で行えば危険はない。むしろ図①のように一部の靭帯だけに力がかかるほうが危険で、効果を出そうとして強い力をかけると、短い靭帯が損傷してしまう(初心者のAKAで見られる)。

 第二法は、足関節、手関節など、構造が複雑な関節で使うことが多い。まれに膝・肘などでも使うことはあるが、あまり多くはない。
余談ながら、緊張を持続したまま遊びを取ってゆく方法は、肩甲骨周辺でも使用する。ただし、この場合の対象は関節包ではなく、筋肉・筋膜・皮膚の癒着である。

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2006年3月26日 (日)

TAM手技療法③

 手技名称を単にTAMとしていたが、ガンの薬物療法の一つに「TAM療法」という名称があるらしいので、混同を避けてTAM手技療法としておく。

3.牽引運動法
 関節の牽引と運動を併用することで靭帯・関節包の癒着をとる方法である。

 一般的なマッサージの手技にも牽引法はあるが、それで関節の不調が改善することは少ない。
 どの関節にも複数の靭帯があり、関節運動を正常範囲に制限している。個々の靭帯はそれぞれ付着部位・長さが異なるため、同時に緊張することはほとんどありえない。関節包も同様で、一方の関節包が緊張しているときには、逆方向の関節包はゆるみ、折りたたまれている。
 このような靭帯・関節包の性質から考えると、一つのポジションで牽引法を行っても、効果は一部に限られる(例えば膝では、伸展位でいくら牽引しても伸長するのは膝後方の靭帯、関節包のみ。膝前方の関節包に影響を与えることはできない)。
 また一方向のみの牽引では前述したとおり、「癒着の剥がれ」「繊維の引き離し」が起こらない。そのため通常の牽引法では効果が望みにくいと言える。

 TAM手技療法では牽引に運動を伴うことで、幅広い靭帯・関節包の癒着をリリースする。この牽引運動法は、膝関節から指関節まで、多くの関節で使用できる。
 関節の構造に応じて、第一法、第二法がある。

○ 第一法
 関節面を引き離すように牽引し、この牽引状態を保ったまま関節を運動させる。それにより関節包・靭帯の組織間に滑り、引き離しを起こさせ、不調を解消する方法である。簡単な方法なので、すでに使用している人も多いのではないだろうか。

 膝関節を例に取る。患者の姿勢は問わないが、リラックスしやすい姿勢が良い。仰臥位、側臥位、伏臥位、いずれでもかまわない。最も施術しやすいのはベッドに腰掛けて足を下ろした姿勢である(ただし関節可動域は制限される)。
 術者は患者の膝関節上を片手で保持し、もう一方の手で足首を保持する。TAMkenin

 右図のように関節を長軸方向へ牽引し、その牽引力を維持したまま、運動させる。牽引力は関節包に軽い緊張がかかる程度。運動は可動域全域にわたり、患者が苦痛を感じない程度にゆっくりと行う。
 緊張を伴う運動が関節可動域全体に行われることで、広い範囲の癒着が解消できる。

 牽引は、上記のように運動する骨(図では脛骨)の長軸方向に行うのが最も簡単である。ついで簡単なのが、固定する側の骨(図では大腿骨)の長軸方向へ脛骨を牽引しながら、運動する方法である。この二方向の牽引運動で改善が見られることが多い。
 
 症状によってはそれ以外の方向への牽引が有効なこともある。癒着の場所を見極めつつ、施術を行うべきである。
 ちなみに、この牽引を関節面にそって行う場合が、AKAでいう凹凸の法則となる。

 構造が簡単な関節では、上記第一法、または凹凸の法則で効果を出すことができる。しかし足関節など構造が複雑な関節では、十分な効果を発揮するに至らない。簡単な牽引では力がかからない関節包・靭帯が存在するためである。

次回は、このような場合に使用する牽引運動法の第二法について。

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2006年2月 6日 (月)

TAM手技療法②

専門家向け。

2.表皮緊張法
 関節付近の表皮をずらし、緊張させることで間接的に関節包を緊張させる。同時に関節運動を行い関節包内の癒着を解消する方法である。
 この方法は、表皮と関節包が近い関節であれば、大抵使用できる。手関節・足関節などのねんざ後遺症治療には欠かすことができない。また膝関節・肩関節など大きい関節では、AKA施術の後に残る部分的な癒着を取るのに有効である。
 ここでは、手関節・手根骨間関節を例にして説明する。

 最初に異常個所を調べる。手根骨間関節は数が多く形状が複雑なので、どの関節に異常が生じているかを特定することが必要である。
 方法としては関節周辺皮膚を前後左右に滑らせ、皮膚の可動性と皮膚につれて動く手根骨の可動性を調べる。ついで、周辺皮膚に手を触れたまま掌屈、背屈させる。とくに強く抵抗を感じる方向、皮膚の張り具合などから癒着の位置を特定する。ある程度の症例数を見ていれば、可動性の異常はすぐにわかる。
 余談ながら、このような皮膚の動きから癒着箇所を知る方法は、多くの関節で使用できる(深い部分の関節では、関節運動の運動軸の変移から関節異常の位置を把握するしかない)。

○ 前後方向の皮膚緊張te
 患者の手関節を術者の両手で支える。拇指で手関節の甲側を、示指と中指で掌側を支える。
 ここで拇指を肘方向へ、示指中指を指先方向へ動かし、表皮をずらす。ずらす範囲は自然に指が止まるところまで。これで皮膚と皮膚につながった関節包にテンションがかかる。この状態を維持したまま手関節を掌屈・背屈させる。ついで逆方向へ皮膚をずらしてテンションをかけ、掌屈・背屈を行う。
 このとき先ほどの検査で癒着があると思われた部分に、とくに力を集中させるようにすると癒着が剥がれやすい。

○ 横方向の皮膚緊張
 上記の縦方向のずらしに対して、横方向へ皮膚をずらしてテンションを与える方法がある。

 手根骨は数が多いため、癒着の発生が複雑である。臨床では縦横のずらしを組み合わせ、また前回紹介したずらし法などとも組み合わせて使用することで効果をあげることができる。
 
 「TAM手技療法」は不定期で掲載。

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2006年1月19日 (木)

TAM手技療法①

専門家向け。

 このブログの11月分「AKAの治効理論」で書いたように、AKAは関節周辺組織に緊張を伴う運動を起こし、軽度癒着を解消する技術と考えられる。AKAでは、そのために「凹凸のすべり」を用いる。凹凸にあわせた外力で関節にズレ(=周辺組織の緊張)を起こし、同時に運動させることで治療を行うのである。

 しかし関節周辺組織に緊張と動きを与えるのが重要ならば、別に凹凸の法則にこだわる必要はない。
 凹凸の法則を使わないで、関節周辺組織の緊張+動きで治療する技術を、仮にTAM(Tension And Motionの略)手技療法と呼んでいる。アプローチが異なるので、関節によってはAKAよりも効果を出しやすい。
 ここでは、TAM手技療法のうち簡単なものの概説を書く。それほど難しいものではないので、興味のある方は試していただきたい。ただし、責任は各自で。

1.ずらし法
 凹凸の法則では、関節の運動方向・または逆方向に外力を加え、関節にズレを生じさせている。ここでいうずらし法は、運動方向とは関係のない方向にあらかじめズレを生じさせ、緊張を与える方法である。関節包に与える緊張は、強くなくともよい。しかし一定の緊張が途切れることの無いよう、動かしながら適宜調節しなくてはならない。
 ずらし法は肘関節、手関節や足関節の一部、膝関節、肩鎖関節などに用いることができる。ただし強度の変形性膝関節症、リウマチなどは痛みが出やすく、別の方法が必要である。

 例として、腕尺関節をとりあげる。
 肘関節のうち、腕橈関節は凹凸のすべりがよく適応する、AKAに適した関節である。しかし腕尺関節は関節の適合性が高く、凹凸の法則に従った滑りを行ってもズレが起こらない。したがってAKAによる治療が難しい関節の一つである。

○単純なずらし
 上腕骨滑車に対して尺骨の滑車切痕を外側・内側にずらし、関節包に緊張を加える方法である。
 患者の右手に施術する場合、施術者の左手の四指で上腕骨の外側上顆を保持し、拇指で肘頭内側を保持する。この状態で握力を加えれば、肘頭は外側上顆に引き寄せられ、関節包に緊張が加わる。
関節包の緊張を保ったまま、術者右手で患者の肘関節に屈伸運動を行わせる。
 手を返し、四指で内側上顆を、拇指で肘頭外側を保持、逆方向の緊張を与えて同様に屈伸運動を行う。

○傾けるずらしhiji
 尺骨と上腕骨の接触を斜めにすることで、関節包に緊張を与える方法である。
 患者を仰臥位とする。患者の右前腕部を術者の右手で保持、左手で患者上腕骨端をベッドに押し付ける形で固定する。肘関節伸展位で、患者前腕を外側へ傾ける(右図)。これにより尺骨滑車切痕と上腕骨滑車が斜めの状態となり、関節包が緊張する。力の目安は、関節の遊びがなくなる程度(抵抗感の変化で感じ取ることができる)。この緊張を保ったまま、ゆっくりと肘関節を屈伸する。
 ついで、患者前腕を逆方向(内側)へ傾け、同様に屈伸運動を行う。
 なお肘関節屈曲時に上腕骨の内外旋が起こらないように注意すること。傾きによって生じた関節包の緊張が緩和され、効果が出ない。
傾ける方法ではテコの原理が働くため、軽い力で施術ができる。しかし施術者は患者に痛みを与えないよう、力の入れすぎに注意しなくてはならない。

 肘関節に不調があると、肩・首の緊張が起こりやすいので、肩こりを訴える患者には重要である。肘関節は、肘そのものの酷使やケガのほか、手関節の影響を受けて不調を起こすことが多い。

 TAM手技療法は、不定期でのせます。

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2005年12月24日 (土)

体壁内臓反射を中心にした仮説③

3.東洋医学古典と、体壁内臓反射論
 橋本敬三氏は、この考え方が東洋医学の古典にすでに書かれているという。いわゆる是動病と所生病である。
 「是動病とは、経絡の変動によって生ずる病である。身体の外から発生し、やがて内部に迫ろうとするものである。したがって浅い病であるといえる。所生病は臓腑、身体の内側から生じる病である。したがって深い病である」(代田文誌「鍼灸治療基礎学」)。
 経絡、つまり体表から始まる病気があると、古典でもすでに言われているのである。病の浅い深いというのはいわゆる病位を表すものであるが、鍼灸の効力の届きやすさを表している。つまるところ、鍼灸で直しやすいのが是動病、治しにくいのが所生病である。
 是動病は経絡から内蔵に及ぶ病、つまり体壁が原因となって内臓に病変を及ぼしている状態であろう。先ほどの理論で考えれば原因は体表の異常組織であり、鍼灸で解消すれば原因を取り除くことができる。したがって治療しやすいことになる。
 また、所生病は体表よりも内臓それ自体によって生じるものであると考えられる。原因が体表に無いので、内臓に働きかける手段は限られる。体壁内臓反射によるアウント・シュルツの法則、副交感神経優位状態にして身体の負担を減らすこと、および鍼灸の一般治効である白血球の増加や血行改善などが、その手段である。したがって、鍼灸治療を施しても、効果が望みにくいと考えられる。

 体壁内臓反射を病の原因として考えることは、他にも古典と一致する面を持っている。
 「未病」というのは、東洋医学に特徴的な概念である。経絡に病気の種はあるが、まだ病気としての症状が発現していない状態を表す。
 先ほどの話で言うと、体壁には原因となる組織異常があるが、影響の大きさが発症する閾値を越えていない状態となる。未病の状態に他の要因が加わり、発症の閾値を超えると、病として発症する。鍼灸刺激が未病を治すというのは、体壁に存在しているこのような異常を取り除くことをさすと考えられる。組織異常の除去で身体はそれだけ負担を減らすことが出来、病気から遠ざかるのである。

 また東洋医学においては、感情が病の原因となると見ている。これが七情と呼ばれるもので、極端な感情によって身体に悪影響を及ぼすものである。
 現代医学的にも、感情が身体的な緊張を伴うことはよく知られている。これら感情による緊張は身体組織に虚実さまざまな反応、異常組織を作りだす(前述の橋本敬三氏は「誰にもわかる操体法の医学」の中で「それぞれの感情が特定の姿勢を伴う」ことを、理由としてあげている)。
 このような視点も、経絡について考える際には必要になってくるであろう。

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2005年12月21日 (水)

体壁内臓反射を中心にした仮説②

 引き続き専門家向け

2.体壁内臓反射が先?
 鍼灸の世界を離れていくつかの健康法を想起してみてほしい。気功、太極拳、ヨガ、自彊術、ゆる体操など、自ら病気を治し、体質改善を称する健康法がいくつも存在している。そして実際に、ある程度の効果は認められているのである。
 これらの健康法には、共通する要素がある。それは力まずに全身を満遍なく運動させることである。例えば、太極拳などは全身の筋肉の80~90%も使用することがわかっている(ジョギングでは、約50%しか使っていない。半分の筋肉だけが働いている)。ヨガは特定の姿勢をとることで、普段は使わない組織を動かすことになる。このような条件が、いくつもの健康法に共通していることを考えると、満遍ない運動には健康増進の効果を期待できると言える。
 逆に、全身の筋肉が偏って使われ、また動かない部分があると、健康を損なう可能性があると推論することはできないか。

 話は鍼灸の経穴に戻る。
 上記のことから考えると、一般的に言われる体壁内臓反射の逆も言えるのではないか。つまり偏った使い方で作られた体壁の異常組織が、体壁内臓反射により内臓を刺激し、病変が作り出される可能性である。そして、この異常組織こそが経穴ではないかと考える。つまり、経穴は病変の結果ではなく、原因のひとつであると考えるのである。
 このモデルでの機序は、以下のようになる。

① 偏った身体の使い方、その他の理由で体表、あるいは筋肉に異常な組織ができる。
② 異常組織の情報は中枢神経に伝えられ、体壁内臓反射で臓器に負担がかかる。また異常組織は周辺組織に力学的な負荷を与え、姿勢変化などを通じて臓器に負担をかける。
③ 神経的、力学的な刺激は臓器に継続的な負荷をかけ続ける。しかし、まだ臓器の働きを阻害する限界を超えていない。これが未病の状態。
④ 病原菌その他で臓器に更なる負担がかかると、臓器の負担が発症の閾値を超え、病気として発症する。発症した場合には、さらに内臓体壁反射で経穴が明確になる。
⑤ 経穴に適切な刺激を与え、経穴部の異常を解消する。
⑥ 内臓の負担が減少、発症の閾値より下がることで病気が治癒する。

 経穴を探すときに、多くの鍼灸師は触感を頼りにしている。それは、経穴部の組織が、他の部分と比べて異常な感触を有しているからである。経穴部の組織が先に異常化していると考えても、とくに無理はないであろう。
 このモデルでは、先ほどの疑問点に答えることが出来る。
 一つ目の疑問点については、いうまでもない。鍼灸治療は原因のひとつを解消して臓腑の負担を減らすため、病気が治るのである。
 二つ目に付いても、鍼灸が経穴を解消する治療法であると考えれば説明がつく。継続的に存在していた経穴=原因を処理するので「身体を根本から治す」あるいは、「体質を変える」ことが可能になる(接触鍼による治療などは、組織を変化させることはない。しかし一部組織を意識させることで運動習慣を変えさせ、治療する働きがあるのかもしれない)。
 三つ目の経穴の大きさについても、経穴が原因であると考えれば説明がつく。異常組織の中でもっとも異常な部分、またはその作用の中心となる部分が、経穴となると考えられる。
このように、体壁内臓反射を先と考えると、内臓体壁反射を先とする理論の不足部分を補うことができるのである。

 なお、このような理論は私のオリジナルではない。操体法の橋本敬三氏が「誰にもわかる操体法の医学」(農山漁村文化協会刊)の中で、運動器が内臓も含めた身体異常の原因となる仮説を紹介している。
 橋本氏は同じ本の中で、是動病・所生病とのかかわりについても言及している。次回は、この是動病、所生病とのかかわりについて解説する。

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2005年12月17日 (土)

体壁内臓反射を中心にした仮説①

今回は、専門家向けです。

1. 内臓体壁反射の理論
 現代医学の立場から鍼灸の治効理論を考えるとき、真っ先にあげられるのが、いわゆる内臓体壁反射の理論である。これは、内臓の状態が神経の反射路を通じて、本来関係の無いはずの体壁(皮膚、筋肉)に反映されたものが経穴であると考える。また、鍼灸刺激は同じく体壁から反射路を通って内臓に刺激を与え、治療効果をあらわすと考えるものである。作用機序は以下のとおりである。

① 内臓に病変が起こる
② 内臓に分布する自律神経が病変による刺激を中枢神経に伝える。
③ 内臓体壁反射で、刺激が皮膚表面の運動器に伝えられ、経穴の反応が現れる。
④ 現れた経穴に適切な刺激を加えると、刺激が中枢神経に伝わる。
⑤ 体壁内臓反射で内臓が調整され、病気が治る。

 このモデルでは、経穴は病変の「結果」として体表に現れてくる(内臓が主、経穴は従となる)。
 このモデルは、現代医学の視点から経穴の治効理論を説明する良い考え方である。しかし、説明が弱い部分も存在する。ここではその三つを挙げる。
 一つ目は、治療機序の説明が弱いことである。内臓の状態が反射によって体壁に反映するのなら、その逆に経穴への刺激が内臓へ伝わることがあると考えるのは間違っていない。しかし、その刺激が病変を治癒させる方向へ向かう理由が説明できない。
 考えられるのはアルントシュルツの法則の「弱い刺激は生体活動を促進する」くらいであろうか。経穴への刺激が体壁内臓反射によって内臓への刺激となり、内臓活動を活発にして治療効果となると考えるのである。しかし、鍼灸による刺激はあくまで一時的なものに過ぎない。体壁内臓反射で継続的な変化を起こしうるだけの刺激となるだろうか(鍼による組織破壊や灸による小火傷が継続的な刺激となる可能性は考えられる)。
 二つ目の問題点は、東洋医学にかかわる人間がよく口にする「東洋医学は身体を根本から治す」あるいは、「体質を変えて、病気になりにくい身体にする」ということの説明がつかない。病変の結果として現れる経穴を刺激するのは、いわば後手の治療である。体質改善のような状態を説明するのは難しい。また鍼灸による体壁内臓反射はあくまで一時的な刺激である。永続的な変化は望みにくいのではないか。
 三つ目の問題点は、経穴の大きさである。経穴の位置・大きさはきわめて精密なもので、数ミリ、大きくても数センチの範囲に限定される。しかし内臓体壁反射の遠心路は運動神経と自律神経であるから、体壁における作用は、幅広い「範囲」として現れる。経穴の位置が厳密である理由を説明できない。
 これらの理由から考えて、内蔵体壁反射の理論だけでは十分な説明が出来ない。この理論には、さらに補足しなくてはならない要素があるように思われる。

 次回はこの続き

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2005年11月30日 (水)

AKAの治効理論⑩

14.末端から仙腸関節へ影響する可能性
 仙腸関節から他の関節へ一方的に影響が及ぶという理論を検討する
 AKAの本では、二次関節機能異常について、以下のような説明がなされている。
 「二次性関節機能異常では、関節包外の原因が存続する限り再発を繰り返す。したがって、物理療法および運動療法を加えて、関節包外の因子を可能な限り治療することが必要である」(p.69)

 仙腸関節に限らず、どの関節が不調を起こしても、必ず筋スパズムや筋の異常な緊張が発生する。上記の説明に従えば、それは他の関節にとっての関節包外因子となり、二次性の関節機能異常を引き起こすだろう。

 それでは、下肢や体幹部の関節に機能不全があったとしたらどうだろうか。
 臨床経験から言えば、足関節など身体局所の関節の機能不全は、仙腸関節付近の筋組織、軟部組織に異常な緊張を強いる(例えば、仙腸関節のテストとして使われるSLRは、足や膝を調整するだけでも向上する)。
 仙腸関節に関わる骨、特に腸骨には多くの筋肉が起始する。その筋肉に異常な緊張が加われば、仙腸関節にも異常な力が加わることは容易に想像できる。「一次性機能異常の90%は仙腸関節に起こる」とまで言われる仙腸関節が、この力を受けて影響されないはずがない。 
 末端の関節の機能不全が仙腸関節に二次性の機能不全を起こさせると考えるほうが自然である。
 つまり、AKAの本に書いてある理論にしたがっても、仙腸関節からのみ他関節に影響がおよぶ、という一方通行は成立しない。仙腸関節が特別な治療効果を持つという期待はしないほうが良い(JFで言う、腰仙関節も同じ)。

 ついでながら「仙腸関節を調整するだけで身体各所の痛みが消える」という事実はたしかに存在する。しかし効果は不安定で、上記したように継続性に乏しい。デモンストレーションとしてはともかく、実際の臨床ではあまり期待しないほうがいい。仙腸関節のみを治療しても、他の関節に原因が残っている限り、根本から治療したことにならず、何度でも再発するからだ。
 仙腸関節鎮痛の作用機序としては、仙腸関節を調整することで全身の緊張状態が減少、痛みの閾値が上がっている可能性が考えられる。
 ただ、AKAの本では実験の方法について詳しく書かれていない。実験の条件によっては、単なるプラセボの可能性も否定できない。

 私自身は、仙腸関節も他の関節と同列に扱っている。触れてみて動きの悪い場合は治療し、ついで周辺組織の関連性をたどって原因となる組織・関節をも治療するようにしている。なおSLR、Fadirfなどのテストは、多くの関節の影響を受ける。仙腸関節単体の動きを知るには精度が悪いため、直接、仙腸関節の動きを感知すべきだろう。

15.仙腸関節優位理論の背景を想像する
 では、なぜ仙腸関節が特殊な関節と考えられるようになったのか。
 一つには、他の治療法との差別化があるだろう。AKA以前には、仙腸関節に対して積極的にアプローチする治療法はなかった。他の治療法に対して特長を示し、権威付けるために仙腸関節の治療効果を大々的にとりあげたと思われる(同様にJFは、AKAとの差別化をするために仙腸関節治療を強力に否定している)。

 もう一つ、AKAの治効理論が完成していないために過剰な期待があったともいえる。治効理論がはっきりしている治療法は、その原理を見れば「どこまで有効で、どこからは無効である」という見極めができる。しかし治効理論がはっきりしていない技術では、はっきりしないが故に、有効性を過剰に期待してしまうのである(同様の思考は、東洋医学の一部にも見られる)。
 このような理論の傾向として、治療効果が出たときは「この治療は効く」とし、効果が出なかった場合は「本当は効くはずだが、技術が未熟だから効かないだけ」として、技術そのものの冷静な検討を避けていることが多い。
 治効理論の確立が望まれる。

16.臨床にあたって
 我々が学ぶものは「魔法」ではない。医学である以上、正しい事実に基づき誰もが学びうる「技術」でなくてはならない。
 AKAという治療法が優れた特性を持っていることは間違いない。それを学ぶ我々がなすべきことは、その治療法がどのような原理に基づき、どのような場合に有効で、どのような限界を持っているかを明らかにすることにある。そしてできうるならば学ぶ人の階段となるような、手がかりを作らねばならない。それによってこそ、人を救いうる「技術」として確立される。
 
 何度も言うが、この文章は個人的な仮説に過ぎない。したがって、これが必ず正しいと主張する気もないし、納得できる反論は、むしろ聞きたいと思っている。
 この文章がAKAを学ぶ人にとって何らかの足しになれば幸いである。

 以上「AKAの治効理論」終了。

まとめ
 身体構造を考える限りでは、他関節が仙腸関節に影響することも、多々あると考えられる。
 AKAの発展のためには、治効理論の確定、学習方法の確立が求められる。

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2005年11月27日 (日)

AKAの治効理論⑨

12.仙腸関節中心主義
 AKAでは、仙腸関節というたった一つの関節を非常に重要視する。全身のどのような痛みであってもまず疑うべきは仙腸関節の機能異常であるとし、仙腸関節の調整のみでほとんどの痛みが消えるので、それで痛みが残る場合に他の関節を治療するべきであると説く。また、仙腸関節の調整により全身の筋スパズムが消え、全身の関節運動が大幅に改善するともしている。
 しかし、本当にこのような万能治療が存在するのだろうか。

 「関節運動学的アプローチAKA」(医歯薬出版)では「一次性関節異常の90%は仙腸関節に発生する」(p.149)としている。一次性関節機能異常とは「関節包内にも包外にも器質的変化のないもの」(p.71)であり、メカニズムは「関節のズレ、関節液、軟部組織の機能的変化」、主として外力によって発生するという。
 関節機能異常には、他に二次性関節機能異常がある。これは関節包内には器質的変化がなく、関節包外からの影響で起こるもので、原因としては、骨の異常(主として破壊・変形)、筋・腱の異常、神経系の異常、筋スパズムを挙げている。

 AKAの理論では、仙腸関節の機能異常が筋スパズムによって全身の関節に及び、二次関節機能異常を起こすとしている。そのため、仙腸関節の治療をすれば、すべての痛みが軽減するとしているのである。
 この問題は、本当に仙腸関節が多くの不調の第一原因になりうるのか、また仙腸関節を治すだけで痛みが治るという説が、一般の説であるかどうかを検討する必要がある。

13.仙腸関節優位についての他の文献
 まずは、文献から見てみる。
 AKAは広く知られるようになり、多くの本でも扱われる。たとえば「理学療法ハンドブック」(協同医書出版社)は、AKAについて大々的に取り扱っている。しかし、仙腸関節が全身の疼痛を軽減する、あるいは仙腸関節の不調が全身に波及するというような仙腸関節中心理論は一切触れられていない。むしろ、取り除かれていると言ってよい。

 またAKAの本の著者の一人である宇都宮氏は、その後独立して「ジョイントファシリテーション」(以下JF)を提唱した。技術的な内容はAKAとあまり差は無いが、唯一の大きな相違として仙腸関節中心主義を否定している。全身の関節を統括しているのは仙腸関節ではなく、腰椎5番と仙骨の間にある腰仙関節であるとし、腰仙関節の治療によって全身の痛みを軽減できるとする。それで効果を上げているとすれば、仙腸関節のみが有効というわけではないことがわかる(とはいえ、この理論も関節に強い階級性を想定するという点ではAKAの仙腸関節理論と大同小異である)。

 文献を見る限りでは、AKAの「仙腸関節優位論」は、AKAの世界だけで通用している理論であると言っていいだろう。

まとめ
仙腸関節がすべてに優先するという理論は、AKA学習者以外では流通していない。特定グループ内だけのローカル理論と考えたほうが良い。

 次回は、構造と生理学から、仙腸関節万能論に対する疑問を。

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2005年11月23日 (水)

AKAの治効理論⑧

10.仙腸関節凸すべり
 仙腸関節の運動のうち、側屈の動きは左右の関節が別々の方向に動く必要がある。この運動を「片側ではうなずき、片側では起き上がる」としている本もあるが、それが非現実的であることは前々回に述べた(恥骨結合が切断されるか、仙腸関節が脱臼しない限り不可能)。

 仙腸関節面を後上方から見た場合、仙腸関節は中央がへこんだ、凹の形をしている。仙腸関節を平面関節と考えている文献があるが、関節面が浮いたりはずれたりしないという原則に従えば、ここで平面関節の動きが起きているとは考えにくい。腸骨を凸、仙骨を凹とする凹凸の関節と考えたほうが良いだろう。起こりうる動きは、凹凸のすべりである。sokkutu

 さて、側屈時の動きである。足が運動していない場合、側屈しても大腿骨骨頭の高さは変化しない。したがって、腸骨(寛骨)の運動は、大腿骨頭を中心に起こる。右側へ身体を傾けるとき、仙骨の右側は下がり、左側は上がる。恥骨結合はわずかにねじれ、傾く。運動の主動力は重力と筋力である。
 側屈を起こす、内腹斜筋や腰方形筋などの起始停止を考えれば、この荷重を作り出すのに好都合な位置についていることに気がつくだろう。

11.上下すべりも凹凸のすべりか?

 前回、仙腸関節の運動については骨盤全体の回転を主な動作としてあげた。jouge
 しかし仙骨の傾きが凹凸のすべりでできるのであれば、仙骨の上下運動もこのような凹凸すべりによって行いうるのではないか、という考えも浮かぶ。この考えに基づくモデルを右に示す。
 骨盤が恥骨結合と仙腸関節を軸に羽ばたくように運動するモデルである。
 骨、関節の構造上は矛盾がなく、運動に下半身の筋肉を使えるので、上半身の重量を押し返す復位にも問題がない。

 運動は、以下のようなメカニズムによる。
 仙骨には、上半身の体重がかかっている。これを支えるのは、骨盤の左右にある大腿骨頭である。つまり、骨盤は常に仙骨が下がろうとしている状態である。それが、大腿の外転筋や臀筋の力とつりあうことで、形が保たれている。

 前屈時は、上半身の体重に梃子の原理が働くため、これを支える腰方形筋など、上半身を支える筋肉の収縮力が大きくなる。これらの筋肉は腸骨の上端に起始しており、荷重が増えれば腸骨を引き上げ仙骨を押し下げるように働く。これがいわゆる仙骨下方滑りの動きである。前屈が終わり、上体が元に戻れば荷重が減り、仙骨は復位する。

 私の少ない臨床経験ではあるが、凹凸すべりを意識して動かしていると、仙腸関節をかなり大きく動かしても痛みや不調が起きていない。なお普段の臨床では、仙骨を固定し上前腸骨棘と坐骨を圧迫して滑らせる操作を行うことが多い(もちろん関節の状況によってアレンジを加えているのは言うまでもない)。

付記
 ところで、仙腸関節の動きとして言われる「うなずき運動」が起こりえないことは前回のべた。では、なぜこのような理論ができたのだろうか。おそらく仙腸関節の三日月形状を、運動線と誤解したことが、この理論を生んだのだと思われる(この三日月カーブに沿って滑るのが不可能なのは、前述したとおり)。

 AKAの本では仙腸関節を平面関節とした都合上、寛骨の羽ばたき運動を想定していない。そのため、左右への水平移動と上下への移動だけで、動きを説明する必要に迫られ、あのような無理な運動を考えたのだろう。Unazuki
 たとえばSLRで足を持ち上げるとき、寛骨もまた、持ち上げられる。実際には寛骨が仙腸関節と恥骨結合を軸に羽ばたき運動をしたのだが、仙腸関節を平面関節と考えた場合には、寛骨全体が上方へ移動したと考えるしかない。これを「寛骨が上がり、仙骨の位置が下がる」としたのだろう。
 前回書いたように、仙骨の運動としては仙腸関節前部を軸とした振り子運動がもっとも矛盾がない。
 この仙骨の移動と、仙骨自体の振り子運動が同時に起こるとき、動きの合成によって、あたかもうなずき運動が起こっているように見えたのではないだろうかと思われる。

 次回は、仙腸関節万能主義に対する疑問を。

今回のまとめ
 仙腸関節は、腸骨を凸、仙骨を凹とする凹凸の関節である可能性が高い。

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2005年11月18日 (金)

AKAの治効理論⑦

 このブログで紹介しているのは、構造と臨床経験から予測される仮説である。これが正しい、というわけではないが、多くの仮説が出ることが手技療法の発展には欠かせないという考えから発表している。この文章を読んで「別の仮説がある」という方は、すすんで発表していただけるとうれしい。

9.仙腸関節はうなずかない
 前提で、仙腸関節のみを動かす筋肉(仙骨と腸骨に起始停止する筋肉)がないことは述べた。仙腸関節を動かす筋肉がないということは、何を意味するか。それは、仙骨前部が、腸骨に対して上方・下方に滑る、いわゆる「うなずき・起き上がり運動」が存在しないということである。

 自然の立位状態では、仙骨前部には上体の体重がすべてかかる。これが下方に滑るということは、起き上がり時、その体重を上方へ押し返さなければ復位できないことを示す。ここに筋肉がなければ、この押し返しが不可能なのである。hukui
 書籍「ペルビック・アプローチ」では、肛門挙筋がこの役を果たすとしているが、この筋は恥骨・坐骨から起始して仙椎下部と尾骨に停止している。仙骨の後端を前下方に引く筋肉であって、仙骨前端を持ち上げる力はない。しいて言えば、梃子(てこ)の原理によって持ち上げることは有り得る。しかしこの場合は、仙腸関節の後方に復位の軸となる部分がなくてはならない。前述したとおり、仙腸関節の後部には軸になるような骨構造は存在しない。軸になるような強固な靭帯構造も存在しない。
 そもそも最大の問題は、肛門挙筋という筋肉が、小さいことである。とても上半身の体重を挙上できるほどの力を持ってはいない。

 もうひとつ、仙骨を復位させる方法がある。仙腸関節前端の、逆ハの字型の斜面に、左右から力が加わる可能性である。左右から十分な力がかかれば、斜面に沿った押上げによって、仙骨前端が持ちあがる。syamen
 ところが、仙腸関節の角度を考えると、この運動を起こすには左右の腸骨が体重の数倍という力で圧迫される必要がある。左右の腸骨を引き寄せる筋肉は、腹筋であるが、一般的な起き上がり運動時、腹筋はあまり緊張していない。この方法での復位も可能性は薄いといえよう。

 以上のことから、仙腸関節がうなずき=前部の下方すべりを起こすとしたら、自力で復位することはかなり難しい。自力で戻れない運動が日常の運動で起こるとは考えにくいため、うなずき・起き上がり運動が自然状態で起こっていることはないだろう。

 とすれば、仙腸関節の動きは、どうなるか。Senkotukaiten
 前回、上体の体重を支えているのは、仙腸関節の前部であると書いた。「逆ハの字」型で、関節面の向きも体重を支えるのに適した形状であり、最も下方に滑りにくい形状をしている。力学的には、狭い部分で重量の大半を支えている場合、そこは運動の支点となる。
 構造から見ると、この仙腸関節前端を軸に仙骨後端が上下に移動する回転運動が、考えうる仮説の一つである。このような回転運動なら、上体の運動にしたがって起こり、復位にも問題がない。

 ところで、仙骨と腸骨の接点が変化しないのでは、側屈も前後屈もできないのではないか、と考えた人もいるかもしれない。また、仙骨が腸骨に対して下方に移動することはないのか、と考える人もいるだろう。
 これら二つの問題は、仙腸関節が平面関節ではなく、凸滑りする関節だと考えると、解明することができる。次回は、仙腸関節の凸すべりについて。

今回のまとめ
 仙骨前端が下方にすべる、いわゆる「うなずき運動」は、復位が不可能なことから可能性が薄い。仙骨前端の「逆ハの字」部分を軸に、回転運動している可能性が高いと考える。

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2005年11月13日 (日)

AKAの治効理論⑥

7.仙腸関節仮説の前提
 前回の文献的データを踏まえ、仙腸関節の動きについて仮説を立てる。この際に考慮するべき構造上の特徴を最初にあげておく。

① 形状についてsentyou
A.側面から見た形状は、多くブーメランのような「くの字」型をしている(右図)。
B.後上方から見た場合、関節面は凹の形状を有している(左図)。
C.関節面はねじれを有している。前方部では関節面はやや下向きで、左右をあわせると「逆ハの字」型をしている。後方部では左右の面は平行になる。
D.関節面には、細かい凹凸が不規則に存在する。

②周辺組織について
A.仙腸関節だけを動かす筋肉は存在しない。
B.仙腸関節を構成する左右の腸骨(寛骨)は、前方で恥骨結合を介してつながり、構造的には左右の寛骨、仙骨の三骨による楕円形を構成している。
C.仙腸関節には上半身の体重がすべてかかる。

③関節運動の原則
A.自然な運動では、関節は面で接触する。傾いたりねじれたりして点で接触することはない。
B.関節が運動の終端部にある場合、靭帯が関節の位置を保つ。中間部にある場合、筋肉の張力が位置を保つ。このような支えがない場合は、関節は重力その他の外力によって運動する。

 これらの前提については、多くの方は異議を唱えないと思われる。これを前提に、仙腸関節の運動を考察する。

8.仙腸関節面の「くの字」型と運動
 仙腸関節の「くの字」型を見ると、この形に沿って運動すると考えやすい。この運動は、AKAの本などが想定する仙骨の「起き上がり・上方移動」「前屈・下方移動」にも当てはまる。しかし仙腸関節の構造を厳密に考えると、この運動はありえないことがわかる。matigai

 図は、仙腸関節の運動を横から見た図である。仮に仙骨を固定し、腸骨がこのカーブに沿って運動する場合、恥骨結合は仙骨後方に中心を持つ円周上を運動することになる。「前屈・後屈」など、左右が同時に運動する場合には、これで問題はない。
 しかし、側屈など左右が逆方向に運動するケースになると、これは成り立たない。例えば左の恥骨は上へ、右の恥骨は下へ運動することは、恥骨結合が切断されないかぎり起こりえないのである。
 仙腸関節の運動を考えるさいには、恥骨結合を考慮しなくてはならないのである。

 力学的に見れば、「くの字」型は体重を支えるために出来上がった構造であると考えられる。
 脊椎は腰部で大きく曲がって、仙骨の前端につながっている。上半身の体重は、腰椎を介して仙腸関節にかかるため、荷重は仙腸関節の前半分にかかることになる。仙腸関節の前端に、体重を支えるための構造が必要である。
 これらを考えると、いわゆる仙腸関節の「くの字」型、縦部分は、もっとも重量のかかる部分が発達し、面積が広くなったものであると考えられる。
 仙腸関節面のねじれ(前で「逆ハの字」、後で並行になる)も、この荷重分布を証明している。後半分は、重量を支えるという役目はほとんど持っていないと言っていい。

・今回のまとめ
 仙腸関節の「くの字」型にそって運動が起こることはない。この「くの字」は、運動線を表すのでなく、体重を支える構造である。
 上半身の重量は、ほとんどが仙腸関節の前部分にかかる。後ろ側は、重量を支える役目をしていない。

 次回も引き続き、仙腸関節の運動を。

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2005年11月 9日 (水)

AKAの治効理論⑤

6.仙腸関節の運動理論・書籍編
 AKAを学ぶ上では、仙腸関節は避けて通れない。しかし、この仙腸関節の構造は複雑で、運動の理論も統一されていないのが現状である。八起堂の仮説を記載する前に、一般に販売されている本の記載理論を概説する。

・ 「関節運動学的アプローチ AKA」(医歯薬出版株式会社)
 この本における仙腸関節の運動は、以下のように集約することができる。仙腸関節については平面関節という立場をとっている。

① 仙骨・腸骨の前後回転は、必ず上下移動を伴うとしている。仙骨が前屈するときは、仙骨全体が前下方に沈み込む。また、仙骨が後屈するときは、仙骨全体が後上方に浮き上がる。腸骨の下方移動には前方回旋が、上方移動には後方回旋がともなう。なお、仙骨と腸骨は、逆方向に回転するとしている。
② 仙腸関節の運動は矢状面の運動としてのみ考えている。腸骨の内外転、内外旋を想定しない。
③ 左右非対称の運動(側屈など)では、①②の運動が左右別々に起こる。上方移動、下方移動には必ず前屈、後屈が生じるので、仙骨の側屈はねじれを伴うことになる。
④ 大腿骨が外転するとき、および外旋するときには腸骨は上方移動・後方回旋、仙骨が前屈するとしている。

・ 『図解 関節・運動器の機能解剖(上肢・脊柱編、下肢編)』(共同医書出版社)
 基本的には仙腸関節の運動には言及していない。
「上肢・脊柱編」のp.157「仙骨は前方に強く凹状をなす」では仙腸関節を「非常に強大な軸」として扱っている部分がある。しかしこれは「仙骨の上半分にかかる垂直の圧力」と「仙骨の下半分を前方へ牽引する仙結節靭帯の力」が仙腸関節前後でつりあっているという意味であり、運動する軸として扱っているわけではない。

・ 『分冊 解剖学アトラスⅠ』(文光堂)
「仙腸関節・・・関節面は寛骨の耳状面と仙骨の耳状面である。両関節面は繊維軟骨で覆われている。非常に強靭な関節包がこのほとんど動かない関節を包んでいる。この関節は半関節を意味する。」(p.184) 運動には言及していない。

・ 「動きの解剖学Ⅰ」(科学新聞社)
 仙腸関節の運動について言及しているが、出産時の産道を確保する運動についてのみである。
 要約すれば、腸骨の上部が開くと共に仙骨が後屈し(起き上がり)、腸骨の下部が開くと共に仙骨の前屈が起こるという説である。しかし、この運動は腸骨内の産道を新生児が通り抜けるためのものであり、運動時に起こる仙腸関節の運動と同一であるかどうかはわからない。

・ 「カパンディ 関節の生理学Ⅲ 体幹・脊柱」(医歯薬出版株式会社)
 仙腸関節について、多くの記述がある。要約すると以下のとおり。
「仙腸関節を展開すると、全体として表面はかなり不規則であるが、線路のような骨梁が、円弧状に存在する。この骨梁は仙骨側に2本、腸骨側に1本であり、かみ合った形になっている。ただし、上部、中部、下部では骨梁のあり方に差があり、上部では仙骨が凹、中央でも仙骨が凹、下部では仙骨が凸になっている」
 動きについては、多彩な記載が有る。しかしやはり出産時の運動のみについてかかれており、平常動作時の運動については、解説していない。
 まず「仙骨のうなずきと起き上がり運動の古典的考え方」として、前出の「動きの解剖学Ⅰ」にあるのと同じ、腸骨の内外転による仙骨の前屈後屈を記載している。その他、各種の理論がかかれているが、本としての結論は出していない。各理論については下図に表示する。 sentyouundou

・ 「構造医学~自然治癒のカギは重力にある」(エンタプライズ社)
きわめて独特の理論を展開している本である。
「仙腸関節は、関節面の直接の接触によって体重を支えているのではない。仙腸関節に体重がかかることによって関節包内の滑液に流れが起き、その流れが発生する圧力によって体重を支えている」
仙腸関節の動きについては具体的な記述がなく、凹凸がどのような流れを起こしているかについても記述がない。少なくとも、AKAを学ぶ上では益するところはあまりない。

・ 「ペルビック・アプローチ」(医道の日本社)
 仙腸関節の調整治療を書いた本であり、仙腸関節についての記述がきわめて多いことに特徴がある。
 この本では仙腸関節について標本調査を行い、年齢ごとの仙腸関節面の状態について記述している。仙腸関節の面は幼いときには平面に近く、成長にしたがって仙骨の凹面、腸骨の凸面の骨梁が形成されるとしている(この構造は、前出「カパンディ 関節の生理学」と同じである)。そして、この骨梁に沿ってのすべり運動が起きるとしている。なお、関節面は年齢を重ねると次第に損傷し、軟骨の剥離などが起きてくるが、可動性は一生存続するという。
 運動については、AKAの本と同様の仙骨前屈-下方移動、後屈-上方移動を記載し、さらに腸骨の内外旋について記述している。それによると、仙骨の前屈時、腸骨は後上方に回転しつつ、前方が広がり、後方が閉じる。仙骨の後屈時には逆に前下方に回転しつつ、後方が広がり、前方が閉じる(腸骨の前方回旋-下方移動-内旋)としている。

 これだけならべるだけでも、多くの意見が一致していない事がわかる。実際の問題、仙腸関節という深い部分の関節の、数ミリという動きを察知することは不可能に近い。現時点では、構造と力学から考えて仮説を立てる以外にないと思われる。
 次回は、八起堂の仙腸関節の動きの仮説について。

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2005年11月 5日 (土)

AKAの治効理論④

5.凹凸のすべり技術、長所と限界
 凹凸すべりの長所は、まず「安全」である。凹凸すべりは「正常な関節運動の再現」から発展した動きである。したがって、それを基準にした施術は正常な関節運動から大きく逸脱することがなく、脱臼・捻挫などの恐れが少ない。これは、大きな長所といえる。
 また、関節面の凹凸にしたがって動きが決定されるので、関節の形状さえわかれば操作を行うことができる。

 しかしながら凹凸すべりは、AKAの限界を作り出してもいる。
 凹凸すべりの問題の一つは、治療が画一的になりやすいことである。例えば膝関節に不調がある場合、凹凸の法則に従えば、膝関節への施術は前後方向の凹凸すべり操作となる。
 しかし同じ膝関節の不調でも、問題部位は患者により、状態により異なる。例えば膝蓋骨上部なり、外側部なりに問題があるとしよう。治療の操作が、問題になっている特定の部位に集中されなければ、十分な効果は望みがたい。しかし凹凸すべりはこのような状況を想定しておらず、関節全体に決まりどおりの治療をすることしかできないのである。

 肩関節などの球関節では、凹凸すべり運動を多方向から行えば、必要部位を治療できる。しかし蝶番関節、鞍関節など、運動方向の限られた関節では、凹凸すべりだけでは十分な効果を出せないことが多い(AKAの本に「水平の滑り、軸回旋」などの操作が多数記載されているのは、その不足を補うためであろう)。
 臨床的には、関節に捻りを加えたり、傾けたり、凹凸法則の逆を行うなど、凹凸すべりを越えて適切な場所に働きかけなければならないケースが多いのである。

 凹凸すべり、もう一つの問題は、関節包に緊張を与えるために関節面(骨)の移動を使用していることである。正常位置から少しずれた位置で関節運動を行うことで組織に緊張と運動が与えられ、治療効果が現われてくる。
 この方法は、肩の関節など自由度の高い関節では効果を出しやすい。しかし股関節などの適合性の良い関節では、関節面の移動がほとんど望めない。したがって凹凸の外力をかけても組織に影響が及ばず、効果を出すのが難しい。
 AKAを使用して治療を行うには、このような凹凸すべり操作の特徴を知り、アレンジを加える必要がある。

 次回は、仙腸関節の動きについて。

今回のまとめ
凹凸すべり技術は、安全という長所とともに、短所も備えている。臨床的には、凹凸すべりにとらわれない工夫も必要である。

付記…派生技術としてのTAM
 上記の理由から、八起堂治療院では普通のAKAとあわせ、凹凸のすべりを使わない方法も使用している。4章で紹介した「緊張と運動の併用」を発展させたもので、関節のみならず、皮下組織や筋膜にも応用することができる。ただ、関節以外も対象とすること、凹凸すべりを使わないことから、もはやAKAと呼ぶことはできず、仮にTAM(Tension And Motionの略)と呼んでいる。
 TAMの簡単な例としては、第一肋椎関節の操作がある。実験してみたい方のために、手順を紹介しておく。

・施術前に首・肩の動きをテストする。
・第七頚椎の棘突起から両側に三横指離れたところを前下方に向かって押圧する(押圧方向が、胸骨柄あたりに向かうように)。押圧を維持したまま、深呼吸を1~2回行う。
・ 以上で操作終了。首・肩の再テスト。多くの場合、可動性の向上が見られる。

 第七頚椎の高さには、第一胸椎の横突起と第一肋骨の接合部がある。第一肋骨を前下方に押すことで、肋横関節の関節包・靭帯に緊張が加わる。その緊張を維持したまま深呼吸で第一肋骨を運動させると、関節包・靭帯の繊維が開放され、動きの改善が起こるのである。
 なお、この操作は肩こりや寝違えの痛みを減少させるのにも有効である。
 TAMのその他の技術については、機会があれば言及する。

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2005年11月 2日 (水)

AKAの治効理論③

 専門家向け…。

4.関節拘縮とAKA
 靭帯・関節包の組織は、結合組織が何層にも重なって構成されている。特に靭帯・関節包外側の繊維膜は、膠原繊維で構成されており、弾性繊維をほとんど含まない。これは、この繊維膜が大きな強度を持っていること、および、伸縮性が小さいことを示している。正常な状態では、それぞれの繊維は柔軟性を持ち、相互にわずかな滑りをともなって、関節運動に対応している。しかし拘縮を起こした関節包・靭帯では、膠原繊維間に不規則な結びつきが起こり、柔軟性が失われていることが知られている。
 このように軽度の拘縮が関節運動を阻害している場合、治療操作で拘縮を解消すれば、関節運動は改善すると言える。AKAは、このような拘縮を改善している可能性がある(もちろん長期臥床などで関節包の拘縮が極度に進んでいる場合にはAKAの適応ではない)。

 一般的な拘縮の改善方法としてはストレッチが知られている。しかし、AKAの場合にはストレッチほど時間をかけることなく、効果を出せていることが多い。単なる伸長運動とは異なるメカニズムが働いていると考えてよい。
 ストレッチが伸長を目的とした一方向の力であるのに対して、AKAでは、骨運動と凹凸の外力の、二つの力を共存させている。これが最大の差である。kansetuhou

 右図の①は関節包・靭帯の模式図である。このように方向の違う組織が重なり合って、関節をとりまいている。この関節包に癒着が起きている状態を拘縮と考えると、治療のためには組織の引き離しを行わなければならない。
 前回、平面上のセロハンテープを剥がす場合を、例として扱った。
 前回の場合は引き離しの方向だけを考えればよかったが、セロハンテープが張り付いているのが固い面でなく、ビニールシートのような柔軟性のあるものだったらどうだろうか。普通に引き離そうとしても、ビニールシートがテープにつれて動き、剥がれないだろう。
 このような状況は、軟部組織同士の癒着では容易に起こりうる。シンプルなストレッチでは組織の一部が伸長されるが、柔軟性があるため、癒着組織が引き離されるには至らないのである(図③)。また、片方の繊維のみに負荷がかかり、痛みを覚える。場合によっては繊維が傷つくこともある。

 ビニールシートに張り付いたテープを引き離すには、ビニールシートをピンと張ればよい。テープを引いてもビニールシートはついてこず、引き離すことができる。同様に、癒着している繊維の両方に張力を与えた状態で運動が起これば、癒着の開放が起こせる。
 図④は、一度に二つの力が加えられた状態を示す。まず関節包に力をかけて、関節包・靭帯に張力を掛ける。張力そのものは、さほど大きくなくとも良い。この張力を保ったまま、関節運動を行うのである。繊維はそれぞれに起始停止が異なるので、張力を保ったまま運動するとそれぞれの動きにズレが生じ、癒着が引き離される。

 したがって、AKAで効果を出すためには、外力をゆるみなく維持することと、関節運動の二つを両立・維持させることが必要だと考えられる。

 ここまで読んで「それなら、外力の維持と関節運動の両立さえあれば、凹凸すべりはいらないのか?」と考えた方もいるかもしれない。結論から言ってしまえばそのとおりで、治療臨床的には凹凸すべりの操作は必ずしも必要ではない。それどころか、凹凸の法則を離れたほうが、治療効果が出る場合も多い。
 次回は、凹凸すべりの意味と限界について。

・今回のまとめ
 関節の軽度拘縮に対するAKAは、二つの力の両立によって効果が出ている可能性がある。外力の維持と関節運動の両立が難しいので、AKAの習得には時間がかかる。

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2005年10月29日 (土)

AKAの治効理論②

 しばらく、専門家向けです。

 前述したとおり、靭帯や関節包の異常には、二通りのケースが考えられる。一つは、靭帯・関節包が他の組織に癒着するケース。もう一つは結合組織が伸縮性を失う、拘縮のケースである。この二つの異常とAKAの関係について考察する。

3.癒着とAKAyutyakuundou
 関節周辺の癒着は、関節包と骨組織等との間、または関節包・靭帯の組織同士で起こる。図は関節包内部で癒着を起こしているケースを表現したものである。癒着により可動域は制限され、場合によっては痛みが発生する。
 癒着は繊維成分の沈着が起こる可能性のあるところではすべて発生する可能性がある。しかし日常的生活での関節運動で解消できる癒着は自然に解消されるので、残るのは解消しにくい部分の癒着であろう。

 癒着の解消しやすい場所と解消しにくい場所を決めるのは、癒着の位置と、関節運動の方向である。serohan
 右の図は、平面に貼り付けたセロハンテープを引き剥がす場合の模式図である。貼り付けたセロハンテープを①のように水平方向に引いても、テープは剥がれない。接着面にとって強い方向だからである。しかし②のように、上方に引けば簡単に剥がれてくる。つまり、関節の生理的な運動方向で解消しにくい癒着も、十分にコントロールされた関節運動によれば、開放することができる。
 つまりAKAによる凹凸すべりの効果は、癒着解消に必要な、特殊な関節運動を起こさせることではないかと推測できる。hakuri

 凹凸のすべりは、普通の他動運動に加えて関節面にあわせた外力を加えるものであることは、前述した。右図のように関節に加える外力が適切な場合には、通常の関節運動範囲を超える動きが生じる。それによって癒着部の開放が起こり、可動域が改善する(実際、肩関節などあそびの大きい関節では、施術中に癒着が開放されるのが手ごたえや音でわかる)。
 癒着の問題についていえば、凹凸すべりを行う意味は「関節の運動方向を変化させることで、癒着の解消を起こす」となるであろう。

 さて、このような大きな癒着のみではなく、関節包・靭帯などの軽度拘縮による関節運動制限もある。次回は、拘縮についてのAKAの治効理論である。

・今回のまとめ
AKAで用いられる凹凸のすべりは、関節運動方向を変化させることで、自然な関節運動では改善できない癒着を解消する意味を持っていると推測される。

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2005年10月26日 (水)

AKAの治効理論①

 今回の記事は、同業の専門家向けのものです。過度に専門的なので、一般の方は読み飛ばしてください。

 AKA(関節運動学的アプローチ)は効果的な治療法であり、関連書籍も講座もある。しかし、その治効理論は未だに判明していない。その意味ではAKAはいまだに「やった、効いた、治った」の「三た療法」のレベルにあるといえる。もちろん患者にとっては、効果があれば理論はどうでもいい。しかし困るのは、それを学ぶ者である。
 理論のある技術は、操作の意味が明確である。学ぶにあたっても「方向・力の大きさ」などを理論から推測し、無駄の少ない試行錯誤ができる。しかし「三た療法」では、教える側さえ何を狙って治療しているのかわからないために「へたな鉄砲も数打ちゃあたる」式の試行錯誤を重ねるしかない。上達までに莫大な時間を浪費してしまう。
 AKAは、現代医学にもとづく治療法である。現代医学の枠組みを使えば、治効理論を確定することはできないまでも、推測による仮説を立てることはできる。この文章は、その仮説の一つである。AKAを学ぶ人のヒントとなれば幸いである。

1. AKAとは「凹凸にあわせた外力を加えての他動運動」
 AKAは、関節運動を改善し痛みや機能不全を治療する技術である。比較的小さい力で、即時に効果を得ることができるという特徴がある。outotu
 AKAの基本手技は、関節の引き離しと滑りである。特に滑りについては、他動運動と同時に関節面に合わせた外力を加えるという特徴を持っている。例えば、運動する側の関節面が凸であれば骨運動と反対方向、凹であれば骨運動と同方向へ、骨を圧迫して関節包内の滑り運動を助ける(凹凸の法則。図を参照のこと)。他の治療とAKAを分ける、もっとも大きな特徴はこの凹凸のすべりである。
 AKAの技術を定義するなら、
「関節の凹凸にあわせた外力を加えつつ行う、他動運動」
 となる。この定義にしたがって、効果の理由を推測する。

2. 関節運動異常の原因とAKA
 AKAの治効理論を考えるにあたっては、AKAが関節のどの組織に働きかけているかを考える必要がある。関節を構成している要素は、
a.関節の両面を構成している骨・関節軟骨
b.関節内液
c.関節を運動させる筋肉
d.関節包と靭帯
 となる。関節運動の障害はこのいずれかの組織の異常によって発生する。したがってAKAの治効を考えるには、これらの組織のうち、引き離し・凹凸の滑りによって改善する可能性の高いものが、有力な候補となる。以下、個別に検討する。

a.骨と関節軟骨
 骨および関節軟骨に起こりうる組織異常は、関節面の破壊・変形または癒着である。加齢、事故などにより関節面が破壊された場合(変形性膝関節症など)、関節面が相互に張り付く癒着が起きた場合には、滑り運動は起こらず関節運動は制限される。
 これらの異常のうち、破壊・変形は、AKAで行うような引き離し・滑りによって改善する可能性はない。関節面の癒着で完全な骨癒合が起こっているものも、改善の可能性はない。関節面の一時的な癒着は、引きはなしによって解消しうる。しかし凹滑り、凸滑りのような滑り技法とは、とくに関係がない。
 以上から考えて、AKAは関節の骨または軟骨に働きかける治療法ではないと考えてよい。

b.関節内液
 関節液が関節の運動に影響をもたらす場合には、関節液の不足や過剰、粘度の不足や過剰などが考えられる。一般的にはこのような問題は注射や抗炎症剤で改善される。
 このような関節液の問題を、AKAのような関節運動で短時間に改善することは不可能である。したがって、この関節内液も、AKAの治効とは関係ないと言える。

c.筋肉
 関節周辺の筋肉の状態が関節運動に大きな影響をもたらしていることはよくある。
 しかしAKAの手技はあまり筋肉に力をかけない。直接、筋肉に働きかけている可能性は低いといえる。
 筋肉の支配神経に対する再教育という説もあるが、AKAの操作はほとんどの場合、筋弛緩状態で行われるので、神経教育効果はあまり期待できない。また、一度で効果を出すことが多いことを考えても、神経教育により効果が出ている可能性は低いといえる。
 さらに問題なのは、AKAの特徴である凹凸すべりが、筋肉には影響を及ぼさないことである。凹凸すべり運動も、単なる運動も、筋肉にとってはただの他動運動であり、そこに差があるとは考えにくい。
 以上から、筋肉・神経に対してアプローチしている可能性は完全に否定はできないものの、低いといっていいだろう。

d.関節包・靭帯
 関節包、靭帯のような結合組織に起こりうる異常は、癒着と拘縮である。結合組織は、タンパク質の繊維成分でできており、血液・リンパ液中のタンパク質繊維成分の沈着により、動きが悪くなることがある。沈着は炎症時、長期固定時などに顕著である。
 結合組織が他の組織と接着した場合を、癒着という。また結合組織の繊維が不揃いに配列された場合には伸縮性を失い、動きを阻害する。これを拘縮という。
 関節の一部に拘縮・癒着が起きた場合には、関節運動の方向や可動域の制限が起こる。
 これら繊維成分の沈着は比較的容易に起こるが、運動やマッサージ(強擦法など)によって解消することが可能である。
 関節包などの軽度の癒着は、運動によって改善しうる。しかも、癒着の剥離に対しては運動の方向が重要である。凹凸の法則が関係する可能性が高いといえよう。

 以上、a~dの組織異常のうち、AKAの「関節の凹凸にあわせた外力を加えつつ行う、他動運動」操作で改善する可能性が最も高いのは、結合組織の異常である。AKAはこの結合組織の異常を解消する技術であると、推測できる。
 次回は、AKAの特徴である凹すべり、凸すべりが結合組織の異常を解消する原理について考察する。

・今回のまとめ
AKAは、関節包や靭帯などの結合組織に働きかける技術である可能性が高い。

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